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湯屋《テルマ》にて 2 # R15 ……ほんのり
しおりを挟む「旦那様は……この館を御使いになるのに向いていらっしゃる」
サウナと水風呂の後、男は施術台の上にうつ伏せに寝、ローラの施術を受けていた。
「そうか……? ーーむ。……さすが、上手いな」
基本、もどかしいくらいの柔らかさで摩りながら、絶妙なポイントで痛気持ち良い指圧を加えては、また澱みを流す。
「ふふ……先程少し言いましたように、私共が侍るのを好まれない方や、……そうですね、口淫で我慢比べをしてしまう方、交接のみを目的とする方は……湯屋がご提供する癒しを受け取るのは難しいので……」
男の笑のツボにはいったのか、“我慢比べ”に、男は、くっくっと笑い、「水をくれ」とローラに言う。
「はい、只今」
ローラは水を口に含み、身体を返して半身を起こした男に口づけた。
水が口移され、それから、湿った水音と共に口づけが交わされた。
「やはり……向いていらっしゃる」
ふふ……と笑み、ローラは口づけた。
「俺は、出先で巡り会った祭りは、楽しむことにしているんだよ。“我慢比べ”もせん。……玄人に見栄を張っても仕方ないだろ。まぁ、水くらい好きに飲ませろ、とか言う奴は確かに向かないか」
「それに……詮索なさらない」
「…………娼館で無粋だろうが。皆、訳有りだろう? 聞いたところで“田舎に病気の母親が”とかな。嘘でも、真実でも、聞いて困ることは端から聞かない方が良いんだよ」
「ご経験が?」
「いや、経験者からの有難い忠告だ」
「……ふふ。それに旦那は、私が薄物を脱がないことにも触れないでしょう?」
「疵な。それこそ、無粋だろ。どうした、折檻でもされたのか」
脱がない薄物が、疵を隠しているのは見れば分かる。聞かないで済ませていたが、ローラから水を向けられ、男は問うてみることにした。
「……これは、私の……罪の痕。……本当なら、例え死なずに済んだとしても最下層の奴隷であるべきなのに」
ローラに付き合い、話を続けることを選んでくれた男に感謝しながら、ローラは施術を続けつつ語る。
「……それでも、赦されてここに居るんだろ。そのチョーカーの……お前の主人にも」
革ではなく、白金細工のチョーカーにタグ。紛れもなく、それなりの地位のある者の、ローラは持ち物である筈だった。
「そうです。私の神と……それだけでなく、多くの人々の慈悲で……私は生かされた」
「……お前、それでも辛いんだな」
「はい……時折。ーーごめんなさい。……お客様にお縋りするような真似をしてしまいました。それに、本当はご案内する前に、私が咎人であることをお断りしておかねばならなかったのに」
「いや、赦されてココにいるんだろ。それは構わな……ーーそれ、止めろ」
臀部のある一点で、男がローラにストップを掛けた。
「申し訳ありません、悦くないですか」
ローラは心得ており、手は止めない。
「……悦過ぎて、ーー勃つ」
男は、本気で唸った。
「なら……このままで……」
「……お前を部屋へは呼べないのか?」
ローラは首を振る。
「私は、お部屋に伺えるような身ではありませんので……もし、旦那様のお情けを頂けるならーー今、どうぞここで……」
━━━* †……━━━* †……━━━* †……
僕(♀)、大学の部活(当然、体育会系)で、マッサージ仕込まれたから、得意なのですよね。
弟にせがまれて、時折マッサージしてやりましたが、その時の彼の台詞を拝借しました(爆)
臀部の窪みのやや上でしたでしょうか……。
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