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またもリッチな夜でした
その3
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美香が家に帰った頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
「只今ー」
そう告げて玄関の敷居を潜った美香を、静けさだけが迎えた。帰宅が少々遅くなったが、父も弟も未だ帰ってはいないらしい。
些か怪訝な顔をして、美香は廊下の先にある居間へと繋がる扉を開く。煌々と明かりの灯されたリビングには珍しくテレビも点けられてはおらず、他所の家に紛れ込んだかのような錯覚を美香は一瞬抱いたのであった。
その静かなリビングの隅の方で、母の里穂が電話に立っていた。
何やら神妙かつ丁寧な様子で受話器の向こうの相手と話し込む母の様子を横目で見ながら、美香は鞄を床に置く。その後、美香が手洗いを済ませて洗面所から出て来ると、面白くもなさそうな表情を浮かべた母がテーブルの脇に佇んでいた。
美香が努めて無関心を装いつつもその傍らを通り抜けようとした時、里穂は徐に口を開いた。
「達也が入院するって」
「ふーん……」
反射的に気の無い返事を発してから一拍を置いた後、美香は弟に関する通達を出し抜けに遣した相手へと弾かれたように顔を向けた。
「……何だって!?」
リビングの奥、テレビの脇に置かれたクッションに身を沈めて寝ていたアビシニアンが、出し抜けに上がった声に耳をぴくりと動かした。
俄かに慌てた素振りを覗かせる娘の前で、里穂はポロシャツの襟元の辺りを掻きながら億劫そうに説明を遣す。
「今、サッカー部の顧問の先生から連絡が来たんだけど、部活の練習中に怪我をしたんだって。何でも屋内練習で仲間を背負って階段を昇るって言うトレーニングをしてたんだけども、その時に足を痛めて病院で検査が必要になったんだそうよ。自分じゃ歩けないみたい」
「え!? え、何!? 骨折!?」
「骨には異常は無いらしいわよ。そんな見るからに『やっちゃった』って感じの怪我ではないんですって」
過分に取り乱す美香に対して、里穂は物憂げでこそあれ実に落ち着いた口調で答える。
「まあ、軽くて捻挫か、重くて靭帯損傷か……そんな所かしらね。余程重い症状であれば病院から付き添いの要請が来るんでしょうけど」
「大丈夫なの!?」
「そりゃ、あんた、飽くまで脚の怪我なんだから命に係わるって事はまず無いでしょ。直に達也からも電話が掛かって来ると思うけど、取り急ぎ私は明日病院へ説明を受けに行くから」
尚も動揺する美香の前で、里穂は幾分沈んだ息をついた。
「当面の着替えとか洗面道具とかも持って行かないとね。あんたも何か入用な物が思い当たるなら、後で適当に纏めといてくれる?」
「う、うん……」
浮かない面持ちで首肯した美香の前で、里穂は台所の方へと歩いて行く。静かなリビングは人の少なさも相まって、余計に寒々とした空気を漂わせるのだった。
壁に掛けられた時計が長針をぴくりと震わせた。
クッションから身を起こしたアビシニアンが、口を大きく広げて欠伸を漏らした。
翌日、実に気乗りしない面持ちで、美香は学校の自分の席に腰を下ろしたのであった。
外は今日もどんよりとした曇り空であり、汚水を吸った綿のような鼠色の雲が空の大半を覆っていたが、一方で朝の教室内は今日も歓声が満ち溢れ、外の空模様とは対照的な明るさを充満させていた。
その中で一人、空模様と同じく晴れない表情を浮かべて外を眺めていた美香の前方で、黒板横の扉が開かれる。
新たに教室に入って来た人影は二つ。
担任である月影司と、彼に伴われて入室した男子生徒であった。
今日は深緑色のスーツに身を包んだ司は、雑多に談笑を続けている生徒達へと教壇から呼び掛ける。
「はい、皆さん、お早う御座います。今朝は少し早いですが、これから転入生の紹介をしたいと思います」
おおー、と言うざわめきが撹拌された洗剤から盛り上がる泡のように、教室のあちらこちらで俄かに上がった。
そんな中、美香は寧ろ不承不承の体で顔を持ち上げる。
黒板を背に佇む司の左隣に、彼は立っていた。
長身である司と並び立ったが故か、背丈は幾分低いように見える。その所為だろうか、顔も些か丸みを帯び、全体的に発育途上の印象を周囲に与えるのだった。
頭髪は幾らか癖を帯びていたが、どうやらこれは生来のもののようで、手入れ自体は良く行き届いており顔立ちと共に全体的に整った印象を抱かせる。眉目秀麗と評する程でもないが、それもまた隣に立つ司が目立ち過ぎる所為であるやも知れなかった。
美香を含めた多くの生徒の見つめる先、件の転入生は司に促されて朗らかに声を発する。
「どうも初めまして。宮沢亮一と言います」
名乗った亮一の後ろで、司が黒板に彼の名前を大きく書いて見せた。
当の転入生は飽くまでも朗らかに、自分の新しい居場所へ呼び掛ける。
「父の仕事の都合で、今度御簾嘉戸市へ引っ越して来ました。趣味は音楽鑑賞。得意科目は化学です」
歓声と拍手とが、朝の教室内に幾重にも鳴り響いた。
その渦中にあって、美香はぴくりと瞼を震わせる。
何故だろうか。
賑やかな歓迎の声が繰り返し湧き上がる教室内に於いて一人、正に只一人、美香は怪訝な面持ちを浮かべていたのであった。
相手の発言内容や口調が癇に障ったと言う訳ではない。そんな間接的な事柄ではなく、もっと直感的な違和感をこの時彼女は抱いたのだった。
前方に佇む転入生の、その全身の輪郭から、微かに黄色い淀みのような『何か』が滲み出しているように美香には見えたのである。さながら全身から僅かに煙を漏れ出させているかのように、十数歩先に佇む少年の輪郭は奇妙に揺らいで少女の瞳に映った。
無論、そんなおかしなものが実際に見える筈が無い。制服と光とのコントラスト、或いは照明に対しての微妙な立ち位置の問題なのだろうか。
釈然としない表情を湛える美香の前で、その転入生、宮沢亮一は一礼した。
「今日から宜しくお願いします」
朗らかな挨拶に導かれるようにして、割れんばかりの拍手が朝の教室に鳴り響いた。
それ自体は何の変哲も無い、朝の学校の一幕であった。
それから少々の時間が、いつも通り滞り無く過ぎて行った。
昼休みに入る頃には美香が朝方抱いた疑念は大分薄らいだものの、別の警戒感のようなものが代わりに鎌首を擡げ始めたのであった。
そしてそれはどうやら、クラスの女子の多くが共通して抱き始めたもののようであった。
漠然とした警戒の焦点となるのは、無論、新たに入って来た男子生徒に対してである。
新たなクラスに入ってから半日と経たぬ内、当の転入生、宮沢亮一は随分と周囲に馴染んだようであった。
今、その亮一はクラスの数人の男子の輪の中に入り、雑談で絶え間無く盛り上がっている最中であった。主に好きな俳優や芸人の話題に興じ、時に国内外の歌手やロックバンドの事なども口の端に昇っているようである。
当人も周りも、忌憚や物怖じなどは一切覗かせない。
あたかも何ヶ月も前からこの教室に通っているかのように、亮一は周囲に至極平然と溶け込んでいたのであった。
席の幾つかを挟んで進むそうした事態を、美香は何処か冷ややかに眺めていた。
「……何か、わざとらしくない、ああいうの?」
美香の机の前で、同じ方向を見ていた顕子がぼそりと呟いた。
「……うーん」
否定とも肯定とも付かぬ相槌を打ち、美香も机に頬杖を付いて依然仲間内で笑い合っている亮一を見つめた。
我の強い、或いは押し付けがましい性格の持ち主と言う訳ではなさそうだが、遠慮と言う言葉とも無縁そうである。事実、昼休み前の科目は体育であり、男子の方は校庭でラグビーを行なっていたようだが、既にその時点で周りの男子とはある程度以上の結束が出来上がっていたようであった。
美香の前の席に腰を下ろした昭乃が、眼鏡を直しがてら鼻息をつく。
「ま、実際あれぐらいの方がいいんじゃないの? 本人だって第一印象の決まる日だから気張ってるってのあるだろうし、変におどおどされたりしてもこっちも対応に困る訳だし」
「確かにそうだけど……」
「何事も積極的な方がいいんでしょ。特に男は」
渋い面持ちを浮かべた顕子へと、昭乃はさばさばとした口調で言い捨てた。
その傍らで、美香は離れた場所に立つ亮一を尚も見つめ続けた。
朝に垣間見えた奇妙なちらつきを、今はもう認める事は無い。
やはり錯覚であったのだろうか。
美香が訝った矢先、その眼差しの先で、亮一が矢庭に振り返った。
不意の出来事に、美香も思わず目を見張る。席を一列隔てて、美香と亮一は、ばったりと顔を合わせていたのであった。
咄嗟の対応に苦慮する美香の前で、しかし、亮一は肩越しに女子達の方を見つめたまま、笑顔で片手を振って見せる。
「ヘーイ、宜しくゥー!」
湛えた表情と相違せぬ、翳りの欠片も無い声であった。
そして間を空けず、亮一は顔を戻すと、また付近の男子達とお喋りを始めた。
何やら肩透かしを食らった体で、美香は一連の様子を半ば呆れた感覚で眺めていた。
「……何だろうね、ありゃ……」
傍らで顕子がやはり呆れた口調で呟くのを、美香は黙って聞き流した。
窓の外は依然として暗く、教室内の照明はより白々と輝いていた。
「只今ー」
そう告げて玄関の敷居を潜った美香を、静けさだけが迎えた。帰宅が少々遅くなったが、父も弟も未だ帰ってはいないらしい。
些か怪訝な顔をして、美香は廊下の先にある居間へと繋がる扉を開く。煌々と明かりの灯されたリビングには珍しくテレビも点けられてはおらず、他所の家に紛れ込んだかのような錯覚を美香は一瞬抱いたのであった。
その静かなリビングの隅の方で、母の里穂が電話に立っていた。
何やら神妙かつ丁寧な様子で受話器の向こうの相手と話し込む母の様子を横目で見ながら、美香は鞄を床に置く。その後、美香が手洗いを済ませて洗面所から出て来ると、面白くもなさそうな表情を浮かべた母がテーブルの脇に佇んでいた。
美香が努めて無関心を装いつつもその傍らを通り抜けようとした時、里穂は徐に口を開いた。
「達也が入院するって」
「ふーん……」
反射的に気の無い返事を発してから一拍を置いた後、美香は弟に関する通達を出し抜けに遣した相手へと弾かれたように顔を向けた。
「……何だって!?」
リビングの奥、テレビの脇に置かれたクッションに身を沈めて寝ていたアビシニアンが、出し抜けに上がった声に耳をぴくりと動かした。
俄かに慌てた素振りを覗かせる娘の前で、里穂はポロシャツの襟元の辺りを掻きながら億劫そうに説明を遣す。
「今、サッカー部の顧問の先生から連絡が来たんだけど、部活の練習中に怪我をしたんだって。何でも屋内練習で仲間を背負って階段を昇るって言うトレーニングをしてたんだけども、その時に足を痛めて病院で検査が必要になったんだそうよ。自分じゃ歩けないみたい」
「え!? え、何!? 骨折!?」
「骨には異常は無いらしいわよ。そんな見るからに『やっちゃった』って感じの怪我ではないんですって」
過分に取り乱す美香に対して、里穂は物憂げでこそあれ実に落ち着いた口調で答える。
「まあ、軽くて捻挫か、重くて靭帯損傷か……そんな所かしらね。余程重い症状であれば病院から付き添いの要請が来るんでしょうけど」
「大丈夫なの!?」
「そりゃ、あんた、飽くまで脚の怪我なんだから命に係わるって事はまず無いでしょ。直に達也からも電話が掛かって来ると思うけど、取り急ぎ私は明日病院へ説明を受けに行くから」
尚も動揺する美香の前で、里穂は幾分沈んだ息をついた。
「当面の着替えとか洗面道具とかも持って行かないとね。あんたも何か入用な物が思い当たるなら、後で適当に纏めといてくれる?」
「う、うん……」
浮かない面持ちで首肯した美香の前で、里穂は台所の方へと歩いて行く。静かなリビングは人の少なさも相まって、余計に寒々とした空気を漂わせるのだった。
壁に掛けられた時計が長針をぴくりと震わせた。
クッションから身を起こしたアビシニアンが、口を大きく広げて欠伸を漏らした。
翌日、実に気乗りしない面持ちで、美香は学校の自分の席に腰を下ろしたのであった。
外は今日もどんよりとした曇り空であり、汚水を吸った綿のような鼠色の雲が空の大半を覆っていたが、一方で朝の教室内は今日も歓声が満ち溢れ、外の空模様とは対照的な明るさを充満させていた。
その中で一人、空模様と同じく晴れない表情を浮かべて外を眺めていた美香の前方で、黒板横の扉が開かれる。
新たに教室に入って来た人影は二つ。
担任である月影司と、彼に伴われて入室した男子生徒であった。
今日は深緑色のスーツに身を包んだ司は、雑多に談笑を続けている生徒達へと教壇から呼び掛ける。
「はい、皆さん、お早う御座います。今朝は少し早いですが、これから転入生の紹介をしたいと思います」
おおー、と言うざわめきが撹拌された洗剤から盛り上がる泡のように、教室のあちらこちらで俄かに上がった。
そんな中、美香は寧ろ不承不承の体で顔を持ち上げる。
黒板を背に佇む司の左隣に、彼は立っていた。
長身である司と並び立ったが故か、背丈は幾分低いように見える。その所為だろうか、顔も些か丸みを帯び、全体的に発育途上の印象を周囲に与えるのだった。
頭髪は幾らか癖を帯びていたが、どうやらこれは生来のもののようで、手入れ自体は良く行き届いており顔立ちと共に全体的に整った印象を抱かせる。眉目秀麗と評する程でもないが、それもまた隣に立つ司が目立ち過ぎる所為であるやも知れなかった。
美香を含めた多くの生徒の見つめる先、件の転入生は司に促されて朗らかに声を発する。
「どうも初めまして。宮沢亮一と言います」
名乗った亮一の後ろで、司が黒板に彼の名前を大きく書いて見せた。
当の転入生は飽くまでも朗らかに、自分の新しい居場所へ呼び掛ける。
「父の仕事の都合で、今度御簾嘉戸市へ引っ越して来ました。趣味は音楽鑑賞。得意科目は化学です」
歓声と拍手とが、朝の教室内に幾重にも鳴り響いた。
その渦中にあって、美香はぴくりと瞼を震わせる。
何故だろうか。
賑やかな歓迎の声が繰り返し湧き上がる教室内に於いて一人、正に只一人、美香は怪訝な面持ちを浮かべていたのであった。
相手の発言内容や口調が癇に障ったと言う訳ではない。そんな間接的な事柄ではなく、もっと直感的な違和感をこの時彼女は抱いたのだった。
前方に佇む転入生の、その全身の輪郭から、微かに黄色い淀みのような『何か』が滲み出しているように美香には見えたのである。さながら全身から僅かに煙を漏れ出させているかのように、十数歩先に佇む少年の輪郭は奇妙に揺らいで少女の瞳に映った。
無論、そんなおかしなものが実際に見える筈が無い。制服と光とのコントラスト、或いは照明に対しての微妙な立ち位置の問題なのだろうか。
釈然としない表情を湛える美香の前で、その転入生、宮沢亮一は一礼した。
「今日から宜しくお願いします」
朗らかな挨拶に導かれるようにして、割れんばかりの拍手が朝の教室に鳴り響いた。
それ自体は何の変哲も無い、朝の学校の一幕であった。
それから少々の時間が、いつも通り滞り無く過ぎて行った。
昼休みに入る頃には美香が朝方抱いた疑念は大分薄らいだものの、別の警戒感のようなものが代わりに鎌首を擡げ始めたのであった。
そしてそれはどうやら、クラスの女子の多くが共通して抱き始めたもののようであった。
漠然とした警戒の焦点となるのは、無論、新たに入って来た男子生徒に対してである。
新たなクラスに入ってから半日と経たぬ内、当の転入生、宮沢亮一は随分と周囲に馴染んだようであった。
今、その亮一はクラスの数人の男子の輪の中に入り、雑談で絶え間無く盛り上がっている最中であった。主に好きな俳優や芸人の話題に興じ、時に国内外の歌手やロックバンドの事なども口の端に昇っているようである。
当人も周りも、忌憚や物怖じなどは一切覗かせない。
あたかも何ヶ月も前からこの教室に通っているかのように、亮一は周囲に至極平然と溶け込んでいたのであった。
席の幾つかを挟んで進むそうした事態を、美香は何処か冷ややかに眺めていた。
「……何か、わざとらしくない、ああいうの?」
美香の机の前で、同じ方向を見ていた顕子がぼそりと呟いた。
「……うーん」
否定とも肯定とも付かぬ相槌を打ち、美香も机に頬杖を付いて依然仲間内で笑い合っている亮一を見つめた。
我の強い、或いは押し付けがましい性格の持ち主と言う訳ではなさそうだが、遠慮と言う言葉とも無縁そうである。事実、昼休み前の科目は体育であり、男子の方は校庭でラグビーを行なっていたようだが、既にその時点で周りの男子とはある程度以上の結束が出来上がっていたようであった。
美香の前の席に腰を下ろした昭乃が、眼鏡を直しがてら鼻息をつく。
「ま、実際あれぐらいの方がいいんじゃないの? 本人だって第一印象の決まる日だから気張ってるってのあるだろうし、変におどおどされたりしてもこっちも対応に困る訳だし」
「確かにそうだけど……」
「何事も積極的な方がいいんでしょ。特に男は」
渋い面持ちを浮かべた顕子へと、昭乃はさばさばとした口調で言い捨てた。
その傍らで、美香は離れた場所に立つ亮一を尚も見つめ続けた。
朝に垣間見えた奇妙なちらつきを、今はもう認める事は無い。
やはり錯覚であったのだろうか。
美香が訝った矢先、その眼差しの先で、亮一が矢庭に振り返った。
不意の出来事に、美香も思わず目を見張る。席を一列隔てて、美香と亮一は、ばったりと顔を合わせていたのであった。
咄嗟の対応に苦慮する美香の前で、しかし、亮一は肩越しに女子達の方を見つめたまま、笑顔で片手を振って見せる。
「ヘーイ、宜しくゥー!」
湛えた表情と相違せぬ、翳りの欠片も無い声であった。
そして間を空けず、亮一は顔を戻すと、また付近の男子達とお喋りを始めた。
何やら肩透かしを食らった体で、美香は一連の様子を半ば呆れた感覚で眺めていた。
「……何だろうね、ありゃ……」
傍らで顕子がやはり呆れた口調で呟くのを、美香は黙って聞き流した。
窓の外は依然として暗く、教室内の照明はより白々と輝いていた。
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