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番外編~フィオ・ソリチュード~
黒白の雷
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落下するワタルをクーニャが拾い上げた直後、虚空が裂けた。
黒い裂け目がどんどん広がり、そこから戦場へ魔物が零れ落ちた。
「ッ!」
なんでワタルの周りはこうも問題ばっかり――スヴァログ討伐で安心して止まってた足が自然と戦場の中央へと駆け出す。
ワタルがクーニャから飛び降りたのが見えた。
やっぱりまためんどくさい事に――。
味方に襲い掛かる魔物を押さえて撤退の支援をするつもりなんだろうけど――。
「邪魔!」
群がって来る魔物を薙ぎ払っても次から次へと現れてワタルへの道を塞いでくる。
「邪魔を……するなッ!」
勢いをつけてアル・マヒクを振り抜いて一帯の敵の胴体を両断する。
ピンクにスヴァログ、連戦で消耗してるはず、クーニャが傍に居るとしてもこの魔物の数は尋常じゃない、一度退かせないと――。
魔物の大群を斬り裂いて進んでいるとクーニャ達の側に変なものが現れた。
赤いブヨブヨが人も魔物も関係なく呑み込んでいく、怯えて矢を放つ兵士も居るけどその攻撃の尽くが直撃してもなんの効果も出してない。
物理的な攻撃が通らない……?
「っ!? 駄目っ!」
馬鹿、馬鹿、馬鹿! 人も魔物もブヨブヨから離れようとしてるのに一人だけ向かっていくワタルの姿が見えた。
クーニャ何やってるの、早く止めて!
流れに逆らって立ち塞がる魔物を斬りふせる――時間が掛かり過ぎる。
「退けぇッ!」
跳び上がり回転の勢いを付けたアル・マヒクで魔物を叩き潰して勢いをそのままに大地を割る。
道が拓けた――その直後にワタルがブヨブヨに飲まれていくのが見えた。
「ワタルーッ!」
急げ急げ急げ! 邪魔するものは殺し尽くせ、今すぐにワタルを――。
飛び上がりまた道を塞ぐ魔物を踏み付け進んでいるとブヨブヨが光ってワタルを吐き出した、黒雷は効くんだ……。
クーニャがワタルを拾い上げてそのまま離脱していく、私ももうここに用は無い。
「っ! フィオ、乗れ」
上昇する為に羽ばたこうとしたクーニャが私を見つけて低空飛行しながら手を伸ばしてきた。
そこに飛び乗って一気に戦場から離脱する。
「クーニャ意外と目が良い」
「ふん、主が大切にしておる者くらい見分けがつく、それよりも急いで戻らねば」
私を乗せたのとは反対の手に視線をやったクーニャが唸る。
「っ! 怪我してるの!?」
「いや、怪我は無いと思うが……急に倒れてしまったからな――おい危ないぞ!」
ワタルの居る方に飛び移って私は言葉を失った。
なんでピンクを抱えてるの……馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、もしかしてこれを助ける為にブヨブヨに突っ込んだ……?
私は長いため息をつきながらワタルの呼吸を確認する、ついでにピンクも。
呼吸は安定してる、外傷は火傷が少し、スヴァログと戦った事を考えれば軽症、薬を塗れば数日で痕も消えるはず。
「まったく……っ!」
離れていく戦場の大地に大きな亀裂が走った。
殆どの魔物がその地割れに飲まれているように見える。
アドラの覚醒者……?
どちらにしてもすぐに自陣に魔物の危険が向かってくる事はなくなったみたい。
「そいつを寄越せッ! 首を落として串刺しにしてやるッ!」
「いいや、そんなのじゃ生ぬるい、細切れにして獣に喰わせろ!」
「すぐに殺すんじゃねぇ! 目をくり抜いて何されるか分かんねぇ恐怖を散々味わわせたあとだ!」
「皆落ち着きたまえ! 全員彼女たちから離れるんだ!」
「ですが団長――」
「離れるんだ。彼らはスヴァログを倒せるほどの強者だ、もし彼らが本気で敵対すればどうなるか考えるんだ。僕が話を聞く、それまでは首狩りアリスは枷を付けて檻の中へ、それでいいかな? これが今僕に出来る最大の譲歩だよ」
「それでいい」
ピンクを連れたまま戻ると案の定な出迎えを受けた。
私としては引き渡してしまいたいけど……きっと目覚めたワタルはこれの所在と無事を気にする。
そうなった時に殺させたなんて言ったら……はぁ、今回めんどくさい事ばっかり……。
「君たちは僕らに敵対するつもりかい? 彼はアドラにつくつもりかな?」
「それはない、ワタルはアドラを嫌ってる。起きたら確認してみればいい、あれは……ただの病気」
「病気?」
「そう、病気」
めんどくさい病気、なんであんな敵まで助けるの……。
「……はぁ、やれやれ、分かった。ただしアリスを無罪放免とはいかないよ?」
助けた以上ここに預けて処刑させるなんて事はあり得ない、なら――。
「魔物」
「え?」
「どうせ対処に困ってるでしょ、ワタルは魔物相手なら殲滅の手伝いをする。スヴァログを殺せる人間と神龍の力、要らない?」
たぶんワタルが選択しそうな案を騎士に提案する。
「はは……まさかそう来るとはね、しかし本当に黒雷君は首狩りアリスの為にそこまでの大仕事を引き受けてくれるのかな? 既にスヴァログ討伐は果たされた。ティナ殿下が負傷された事を考えても帰国したがるのでは?」
「わざわざ助けて連れ帰ったのにここで殺されるのを納得するような人間じゃない、強行したら暴れる、かもしれない」
「それはそれは……スヴァログを倒した人間と神龍様との敵対は避けたいところだね……分かった。彼が目覚めたらその案を出してみよう、君は、ここに居るのかい?」
「ん」
私はアリスの入れられた檻の前に座り込む。
頭が許可してもさっきの様子から考えて他が納得するとは思えない。
これはアリスの為じゃない、ワタルの心の為、そう無理矢理納得して私は見張りをする。
「フィオ~、見張りご苦労さん――って、何してんだ……一応負傷者だろ」
如何ともし難い不満をアリスにぶつけているとワタルが天幕に入ってきた。
「気絶してるだけ、怪我はもうない。それに敵……なんでピンクを助けたの?」
「なんでだと思う?」
「…………ろりこんだから?」
私だけじゃダメなの?
この前クーニャが増えたのにまたこんな……。
「冗談はさておき、なんで助けたの?」
敵なのは分かってるはず、今までとは違う、明らかな危険人物で殺戮者、別にワタルを好きなわけでもない。
ワタルは食べ物を私に渡すと隣に座り込んだ。
「助けてって言われたから、かな。子供が死ぬのを見たくなかったってのもある……それにしても、こんな場所だからしょうがないけど、もっと良い物食べたいよなぁ、リオ達の飯なら最高」
最高に馬鹿でワタルらしい理由だった。
「ん。早く帰ろ?」
「まぁ、そうなんだけど……アリスの身柄引き渡しの為に魔物殲滅の手伝いをする事になりました」
「…………」
やっぱり引き受けた……となるとこれ、うちに住むの……? すごく嫌。
「はぁ……ワタルのばか」
「フィオ~? ……そりゃこの娘は敵だけどさ、フィオと同じでずっと一人だったんだろ? 誰かと一緒に居る幸せとかも知らないまま魔物に喰われるなんて可哀想だと思わないか?」
「……でも、敵。それに、なんで『誰か』がワタルなの?」
全部くれるって言ったのに……私たち家族のなのに。
「別にそれは決まってないって、アドラじゃない場所で暮らして、色んな人に出会ってアリス自身がその相手を見つけられたらいいなって思ってる。フィオみたいに、な?」
私みたいにって……こんな目を引くのがすぐ近くに居たら結局ワタルを選ぶってば……。
「はぁ……こんなの連れて帰ったらリオ達が危ない」
「そこはまぁ、慣れるまで暫くの間は俺かフィオが必ず一緒に居るって事で」
もうワタルに興味持たれる未来しか見えないんだけど……。
「…………ワタルと二人きりになれなくなる」
リオたちは二人きりになれるのに私だけ見張り……もっと構って欲しいのに。
「ワタルくすぐったい」
膝を抱えてワタルから顔を逸してると後ろから抱きしめられた。
今するのはズルい……。
「嫌か?」
嫌なはずがない、もっと構って、もっと甘えさせて、もっと私を見て欲しい。
目を閉じるとワタルが混乱してあたふたしてるのが伝わってくる。
して、くれるかな……?
「な~にしてるのかしらぁ?」
なんとなく分かってたけど……実際邪魔されるとちょっとだけムカつく……動けるって事はワタルが意識の無い間傍に付いてたりしそうなものだけど、それならちょっとくらい待ってくれてもいいのに。
「うわっ!? てぃ、ティナ!? なんでここに? さっきもう休むって」
やっぱり一緒に居たんだ……なら今は私の番にしてくれてもいいのに。
「ティナ、邪魔。ここまで連れて帰ってあげたんだから少しくらい我慢して」
「い・や・よ! 私だってさっきクーニャのせいでキスしそびれたんだもの。するなら私が先よ――というか場所代わりなさい」
むぅ、ワタルの腕の中に潜り込もうとしてくる。
ここは今は私の場所!
「いってー!? 何すんだ二人とも」
ワタルのせいで喧嘩してるのに余所見をするワタルの頬をティナと一緒に抓った。
アリスを見てるワタルが悪い。
「ワタルの事で争ってるのに余所見して他の女なんか見てるからよ。ねぇ?」
「ん。『誰か』はワタルじゃないんでしょ? あっち見ちゃダメ」
「本当に怪我はもうないのかなって見てただけだろ、変な意図はないって――はいはい、俺が悪いですよ。だからその目やめれ」
まだアリスを見ようとするワタルを睨むと困り顔になって視線を逸らした。
「また見てる」
「しかも今度は胸よ。もう、見たいならここにあるでしょ!」
我慢しかねたティナがワタルの頭を抱いて自分のの胸に埋めた。
む~、小さいのがいいのか大ききのがいいのかはっきりして欲しい。
それとも胸なら何でもいいの?
「ほら、ティナは完全には治ってないんだからもう戻って休め」
「ぁ……」
ワタルがティナを抱え上げて天幕を出ようと立ち上がったのを見て勝手に声が漏れた。
今日は一緒に居られない――。
「……私もここで寝るわ。どうせワタルもフィオに付き合ってここで見張りをしながら寝るつもりなんでしょう? 私だけ仲間外れはいやよ」
っ! ……もしかしてさっきの声聞こえてた?
「いやよ、って……ここ何もないぞ? 簡易的な物とはいえ寝台あった方が良いんじゃないのか?」
「いーの、ワタルが居るかどうかの方が大事だもの。私はこっち貰うわね」
「なら私はこっち」
ティナはワタルの腕から抜け出て座り込ませると左肩に凭れた。
同じようにして私は右肩に。
ティナ、ありがとう。
「よっし、行くか」
「うむ、主と共に居れば幾億の敵の屍の山とて築けようぞ」
「じゃあフィオ、こっち頼むな」
「……ん」
早朝、クーニャがワタルを乗せて舞い上がる。
魔物に飛行するようなのは見られない、空の上は安全、私が付いて行っても出来る事は無い。
それは分かってる……けど、やっぱり戦場に向かうワタルに付いて行かずに見送るっていうのはすごくもやもやする。
ティナやアリスの事があるからこっちに居る理由はあるけど――。
「むー、なんで私たちはこっちなのよ~、どうせワタルとクーニャの二人がかりで落雷を引き起こしてたら逃げられる魔物なんて殆ど居るはず無いんだから暇じゃない、ならあっちでも――」
「油断して負傷したのにその言い草……』
「っ! わ、分かってるわよ、ワタルに心配させちゃってる事くらい……帰ったら鍛錬頑張るわ」
クーニャは魔物が死体漁りをする戦場の外周に炎を放って覆い尽くした。
「……クーニャ私たちと戦った時はかなり手加減してたのね」
ティナの言う通りあの時見た炎の比じゃない火力が魔物の逃げ道を奪う、そして――。
「こ、これがクロイツを救った英雄と神龍の力……」
ハイランドの兵士たちは言葉を失ってただ息を呑む。
目の前に広がるのは世界が壊れていくような光景、黒と白の雷が戦場に降り注いで地を砕き魔物を穿ち討ち滅ぼす。
雑なように見えて雷は的確に魔物たちを撃ち抜いていく。
大群に対してはもう圧倒的にワタルの方が強い、それを実感する光景、それは嬉しい事のはずなのにこの胸騒ぎはなに……?
「抜けてくる魔物は殆ど居ないわね」
命からがら炎を抜けてきたオークの首を落したティナはため息をついて戦場の空を見上げた。
「クーニャにまで心配されてるのね……」
クーニャはよく見てる、外周の炎を抜けようとする魔物が居たら集中的に雷を落として防いでるからこっちの仕事はほぼ無い。
「ティナ様! 抜けてきた数匹程度我々にお任せください、負傷されたばかりなのですからどうぞ後方へ――」
「私の夫が戦っているのよ? 後方でのほほんとしてられるわけないでしょ」
「そうは申されましても……」
立場的に扱いづらいティナが負傷したせいでこれ以上問題を起こさないようにと下らせたがってるけど……ティナは聞きそうにない。
殲滅が進んで魔物の三分の二くらいが倒れた頃に異変が起こった。
不意にワタルたちの所に黒い影が現れた。
そして――クーニャが落下した。
「一体何が……? あれが神龍様を落したのか? あの黒いドラゴンは一体……アドラはスヴァログ以外も飼いならしていたのか!?」
「っ! フィオ行くわよ――」
「ティナっ!」
空間を切り裂いて跳躍しようとしたティナを押し倒した瞬間自陣が爆発した。
なに、今の攻撃……ワタルのレールガンみたいな――。
「足が、足がぁ!」
「医療班を早く!」
戦塵が舞い上がって視界が悪い、更に悪い事に風向きが変わったせいで炎の燃え広がり方が変わって煙が戦場を包んでる。
見る事で移動先を決めるティナの能力にこの視界の悪さは最悪かもしれない。
「フィオ……いったい何が……?」
「攻撃を受けた。たぶんクーニャを落したやつ」
「っ! そうよ、早くワタルの所に――なにこれ……視界が……一度上に跳ぶわ」
「ん」
ティナの手を取り上空から戦場を見下ろす。
そこは遠くから見ていた以上の地獄が広がっていた。
烟る戦場のそこかしこで燃え続ける死体と魔物、煙の途切れる隙間から確認出来るだけでも炎がかなり広がって戦場を焼き尽くそうとしている。
そしてその煙と炎の奥から響くレールガンの音、戦ってる――。
「ティナ!」
「分かってる、分かってるわよ、急かさないで――一気には無理ね」
そう言うとまだ燃えていない場所に一度下りてそこから更に音のする方へ、そして地割れに近付いた時に私たちは敵を見つけた。
浮遊する黒龍の背からボロボロのワタルを見下ろして飄々と拍手をしている女――。
「ティナ、上から」
「了解よ」
女はこっちを察知してない、これ以上何かする前に始末する。
「凄い凄~い。崖を崩壊させてイーターを埋めちゃうなんて、ちょ~と調子に乗り過ぎちゃったわね、ディーに怒られそう。頼まれたお使いも残ってるのはこれだけになっちゃったし――」
「死んで」
黒龍の更に上に跳んだティナに投げられて一気に降下してその勢いのままにタナトスで女の首を削いだ。
「くっ!? かはっ……なめるな! 人間風情が!」
浅いッ! なに今の手応え――当たった瞬間に体をずらして深手を避けた……?
まだ動く女にティナが追撃を仕掛けたものの鎗の一薙で私たちは地上に落とされた。
当たった瞬間タナトスの呪いを受けたはず……それでも尚反応出来るほどの技量があった。
「がはっ……クソッ! …………いいわ、今回は退いてあげる。でもこんなのは一時凌ぎよ。私たち魔物はいずれこの世界を支配する。人間同士で下らない戦に興じているような奴らには勝ち目はない。せいぜい残り時間を有意義に過ごすことね。それじゃあね、ボウヤ、また遊びましょう」
捨て台詞を吐くと女とドラゴンは虚空へと消えていった。
それと同時に緊張が解けたのかワタルが崩れ落ちた。
「ワタル、大丈夫?」
傷が多い……それでも致命傷は避けてる。
あの相手なら生き延びただけで十分……最初から私も一緒に居ればこんな傷すら作らせなかったのに……アリスのせいで……次にあの女が現れた時は私が殺す。
「傷だらけじゃない! 早く治療を受けないと!」
「どうにか、かな? 死ぬような怪我はしてないからそんなに騒がなくても――」
「騒ぐに決まってるでしょ! 大好きな人が怪我をしたのよ? 心配で堪らないんだから!」
リオ達も心配するよね……空なら大丈夫なんて考えた自分の甘さが嫌になる。
「来てくれて助かった。ありがとな」
「……最初から一緒だったら怪我なんてさせなかったのに」
ごめんなさい……。
「…………そう睨むなよ。討ち漏らしを処理するのだって大事だったんだし。それに、アスモデウス相手だとフィオだって怪我してたかもしれないんだからこれで良かったよ」
…………私と戦い慣れてるワタルがそう思うほどの敵だった。
確かにあの状態から逃げられるなんて思ってなかった。
さっき仕留められなかったのは大きな痛手かもしれない……それでも、タナトスで傷は付けた。
次こそ必ず――。
「心配してくれるのは嬉しいけど、無理しちゃダメ」
「分かったよ、悪かった。それで、そっちの仕事は済んだのか?」
誤魔化すようにワタルが頭を撫でてきた。
傷は多いけど手の力はしっかりしてるし見た目ほど大変な怪我じゃないみたい。
成長してくれててよかった、これからも厳しくしよ。
「ん。戦場から逃げ出せた魔物は居ない。上からも確認したけど動いているのは居ない。仕事は終わり」
「疲れた~。いよっし! 帰ろうぜ」
機嫌が良い……むぅ~、そんなにアリスを連れて帰れるのが嬉しいの……?
浮気者!
黒い裂け目がどんどん広がり、そこから戦場へ魔物が零れ落ちた。
「ッ!」
なんでワタルの周りはこうも問題ばっかり――スヴァログ討伐で安心して止まってた足が自然と戦場の中央へと駆け出す。
ワタルがクーニャから飛び降りたのが見えた。
やっぱりまためんどくさい事に――。
味方に襲い掛かる魔物を押さえて撤退の支援をするつもりなんだろうけど――。
「邪魔!」
群がって来る魔物を薙ぎ払っても次から次へと現れてワタルへの道を塞いでくる。
「邪魔を……するなッ!」
勢いをつけてアル・マヒクを振り抜いて一帯の敵の胴体を両断する。
ピンクにスヴァログ、連戦で消耗してるはず、クーニャが傍に居るとしてもこの魔物の数は尋常じゃない、一度退かせないと――。
魔物の大群を斬り裂いて進んでいるとクーニャ達の側に変なものが現れた。
赤いブヨブヨが人も魔物も関係なく呑み込んでいく、怯えて矢を放つ兵士も居るけどその攻撃の尽くが直撃してもなんの効果も出してない。
物理的な攻撃が通らない……?
「っ!? 駄目っ!」
馬鹿、馬鹿、馬鹿! 人も魔物もブヨブヨから離れようとしてるのに一人だけ向かっていくワタルの姿が見えた。
クーニャ何やってるの、早く止めて!
流れに逆らって立ち塞がる魔物を斬りふせる――時間が掛かり過ぎる。
「退けぇッ!」
跳び上がり回転の勢いを付けたアル・マヒクで魔物を叩き潰して勢いをそのままに大地を割る。
道が拓けた――その直後にワタルがブヨブヨに飲まれていくのが見えた。
「ワタルーッ!」
急げ急げ急げ! 邪魔するものは殺し尽くせ、今すぐにワタルを――。
飛び上がりまた道を塞ぐ魔物を踏み付け進んでいるとブヨブヨが光ってワタルを吐き出した、黒雷は効くんだ……。
クーニャがワタルを拾い上げてそのまま離脱していく、私ももうここに用は無い。
「っ! フィオ、乗れ」
上昇する為に羽ばたこうとしたクーニャが私を見つけて低空飛行しながら手を伸ばしてきた。
そこに飛び乗って一気に戦場から離脱する。
「クーニャ意外と目が良い」
「ふん、主が大切にしておる者くらい見分けがつく、それよりも急いで戻らねば」
私を乗せたのとは反対の手に視線をやったクーニャが唸る。
「っ! 怪我してるの!?」
「いや、怪我は無いと思うが……急に倒れてしまったからな――おい危ないぞ!」
ワタルの居る方に飛び移って私は言葉を失った。
なんでピンクを抱えてるの……馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、もしかしてこれを助ける為にブヨブヨに突っ込んだ……?
私は長いため息をつきながらワタルの呼吸を確認する、ついでにピンクも。
呼吸は安定してる、外傷は火傷が少し、スヴァログと戦った事を考えれば軽症、薬を塗れば数日で痕も消えるはず。
「まったく……っ!」
離れていく戦場の大地に大きな亀裂が走った。
殆どの魔物がその地割れに飲まれているように見える。
アドラの覚醒者……?
どちらにしてもすぐに自陣に魔物の危険が向かってくる事はなくなったみたい。
「そいつを寄越せッ! 首を落として串刺しにしてやるッ!」
「いいや、そんなのじゃ生ぬるい、細切れにして獣に喰わせろ!」
「すぐに殺すんじゃねぇ! 目をくり抜いて何されるか分かんねぇ恐怖を散々味わわせたあとだ!」
「皆落ち着きたまえ! 全員彼女たちから離れるんだ!」
「ですが団長――」
「離れるんだ。彼らはスヴァログを倒せるほどの強者だ、もし彼らが本気で敵対すればどうなるか考えるんだ。僕が話を聞く、それまでは首狩りアリスは枷を付けて檻の中へ、それでいいかな? これが今僕に出来る最大の譲歩だよ」
「それでいい」
ピンクを連れたまま戻ると案の定な出迎えを受けた。
私としては引き渡してしまいたいけど……きっと目覚めたワタルはこれの所在と無事を気にする。
そうなった時に殺させたなんて言ったら……はぁ、今回めんどくさい事ばっかり……。
「君たちは僕らに敵対するつもりかい? 彼はアドラにつくつもりかな?」
「それはない、ワタルはアドラを嫌ってる。起きたら確認してみればいい、あれは……ただの病気」
「病気?」
「そう、病気」
めんどくさい病気、なんであんな敵まで助けるの……。
「……はぁ、やれやれ、分かった。ただしアリスを無罪放免とはいかないよ?」
助けた以上ここに預けて処刑させるなんて事はあり得ない、なら――。
「魔物」
「え?」
「どうせ対処に困ってるでしょ、ワタルは魔物相手なら殲滅の手伝いをする。スヴァログを殺せる人間と神龍の力、要らない?」
たぶんワタルが選択しそうな案を騎士に提案する。
「はは……まさかそう来るとはね、しかし本当に黒雷君は首狩りアリスの為にそこまでの大仕事を引き受けてくれるのかな? 既にスヴァログ討伐は果たされた。ティナ殿下が負傷された事を考えても帰国したがるのでは?」
「わざわざ助けて連れ帰ったのにここで殺されるのを納得するような人間じゃない、強行したら暴れる、かもしれない」
「それはそれは……スヴァログを倒した人間と神龍様との敵対は避けたいところだね……分かった。彼が目覚めたらその案を出してみよう、君は、ここに居るのかい?」
「ん」
私はアリスの入れられた檻の前に座り込む。
頭が許可してもさっきの様子から考えて他が納得するとは思えない。
これはアリスの為じゃない、ワタルの心の為、そう無理矢理納得して私は見張りをする。
「フィオ~、見張りご苦労さん――って、何してんだ……一応負傷者だろ」
如何ともし難い不満をアリスにぶつけているとワタルが天幕に入ってきた。
「気絶してるだけ、怪我はもうない。それに敵……なんでピンクを助けたの?」
「なんでだと思う?」
「…………ろりこんだから?」
私だけじゃダメなの?
この前クーニャが増えたのにまたこんな……。
「冗談はさておき、なんで助けたの?」
敵なのは分かってるはず、今までとは違う、明らかな危険人物で殺戮者、別にワタルを好きなわけでもない。
ワタルは食べ物を私に渡すと隣に座り込んだ。
「助けてって言われたから、かな。子供が死ぬのを見たくなかったってのもある……それにしても、こんな場所だからしょうがないけど、もっと良い物食べたいよなぁ、リオ達の飯なら最高」
最高に馬鹿でワタルらしい理由だった。
「ん。早く帰ろ?」
「まぁ、そうなんだけど……アリスの身柄引き渡しの為に魔物殲滅の手伝いをする事になりました」
「…………」
やっぱり引き受けた……となるとこれ、うちに住むの……? すごく嫌。
「はぁ……ワタルのばか」
「フィオ~? ……そりゃこの娘は敵だけどさ、フィオと同じでずっと一人だったんだろ? 誰かと一緒に居る幸せとかも知らないまま魔物に喰われるなんて可哀想だと思わないか?」
「……でも、敵。それに、なんで『誰か』がワタルなの?」
全部くれるって言ったのに……私たち家族のなのに。
「別にそれは決まってないって、アドラじゃない場所で暮らして、色んな人に出会ってアリス自身がその相手を見つけられたらいいなって思ってる。フィオみたいに、な?」
私みたいにって……こんな目を引くのがすぐ近くに居たら結局ワタルを選ぶってば……。
「はぁ……こんなの連れて帰ったらリオ達が危ない」
「そこはまぁ、慣れるまで暫くの間は俺かフィオが必ず一緒に居るって事で」
もうワタルに興味持たれる未来しか見えないんだけど……。
「…………ワタルと二人きりになれなくなる」
リオたちは二人きりになれるのに私だけ見張り……もっと構って欲しいのに。
「ワタルくすぐったい」
膝を抱えてワタルから顔を逸してると後ろから抱きしめられた。
今するのはズルい……。
「嫌か?」
嫌なはずがない、もっと構って、もっと甘えさせて、もっと私を見て欲しい。
目を閉じるとワタルが混乱してあたふたしてるのが伝わってくる。
して、くれるかな……?
「な~にしてるのかしらぁ?」
なんとなく分かってたけど……実際邪魔されるとちょっとだけムカつく……動けるって事はワタルが意識の無い間傍に付いてたりしそうなものだけど、それならちょっとくらい待ってくれてもいいのに。
「うわっ!? てぃ、ティナ!? なんでここに? さっきもう休むって」
やっぱり一緒に居たんだ……なら今は私の番にしてくれてもいいのに。
「ティナ、邪魔。ここまで連れて帰ってあげたんだから少しくらい我慢して」
「い・や・よ! 私だってさっきクーニャのせいでキスしそびれたんだもの。するなら私が先よ――というか場所代わりなさい」
むぅ、ワタルの腕の中に潜り込もうとしてくる。
ここは今は私の場所!
「いってー!? 何すんだ二人とも」
ワタルのせいで喧嘩してるのに余所見をするワタルの頬をティナと一緒に抓った。
アリスを見てるワタルが悪い。
「ワタルの事で争ってるのに余所見して他の女なんか見てるからよ。ねぇ?」
「ん。『誰か』はワタルじゃないんでしょ? あっち見ちゃダメ」
「本当に怪我はもうないのかなって見てただけだろ、変な意図はないって――はいはい、俺が悪いですよ。だからその目やめれ」
まだアリスを見ようとするワタルを睨むと困り顔になって視線を逸らした。
「また見てる」
「しかも今度は胸よ。もう、見たいならここにあるでしょ!」
我慢しかねたティナがワタルの頭を抱いて自分のの胸に埋めた。
む~、小さいのがいいのか大ききのがいいのかはっきりして欲しい。
それとも胸なら何でもいいの?
「ほら、ティナは完全には治ってないんだからもう戻って休め」
「ぁ……」
ワタルがティナを抱え上げて天幕を出ようと立ち上がったのを見て勝手に声が漏れた。
今日は一緒に居られない――。
「……私もここで寝るわ。どうせワタルもフィオに付き合ってここで見張りをしながら寝るつもりなんでしょう? 私だけ仲間外れはいやよ」
っ! ……もしかしてさっきの声聞こえてた?
「いやよ、って……ここ何もないぞ? 簡易的な物とはいえ寝台あった方が良いんじゃないのか?」
「いーの、ワタルが居るかどうかの方が大事だもの。私はこっち貰うわね」
「なら私はこっち」
ティナはワタルの腕から抜け出て座り込ませると左肩に凭れた。
同じようにして私は右肩に。
ティナ、ありがとう。
「よっし、行くか」
「うむ、主と共に居れば幾億の敵の屍の山とて築けようぞ」
「じゃあフィオ、こっち頼むな」
「……ん」
早朝、クーニャがワタルを乗せて舞い上がる。
魔物に飛行するようなのは見られない、空の上は安全、私が付いて行っても出来る事は無い。
それは分かってる……けど、やっぱり戦場に向かうワタルに付いて行かずに見送るっていうのはすごくもやもやする。
ティナやアリスの事があるからこっちに居る理由はあるけど――。
「むー、なんで私たちはこっちなのよ~、どうせワタルとクーニャの二人がかりで落雷を引き起こしてたら逃げられる魔物なんて殆ど居るはず無いんだから暇じゃない、ならあっちでも――」
「油断して負傷したのにその言い草……』
「っ! わ、分かってるわよ、ワタルに心配させちゃってる事くらい……帰ったら鍛錬頑張るわ」
クーニャは魔物が死体漁りをする戦場の外周に炎を放って覆い尽くした。
「……クーニャ私たちと戦った時はかなり手加減してたのね」
ティナの言う通りあの時見た炎の比じゃない火力が魔物の逃げ道を奪う、そして――。
「こ、これがクロイツを救った英雄と神龍の力……」
ハイランドの兵士たちは言葉を失ってただ息を呑む。
目の前に広がるのは世界が壊れていくような光景、黒と白の雷が戦場に降り注いで地を砕き魔物を穿ち討ち滅ぼす。
雑なように見えて雷は的確に魔物たちを撃ち抜いていく。
大群に対してはもう圧倒的にワタルの方が強い、それを実感する光景、それは嬉しい事のはずなのにこの胸騒ぎはなに……?
「抜けてくる魔物は殆ど居ないわね」
命からがら炎を抜けてきたオークの首を落したティナはため息をついて戦場の空を見上げた。
「クーニャにまで心配されてるのね……」
クーニャはよく見てる、外周の炎を抜けようとする魔物が居たら集中的に雷を落として防いでるからこっちの仕事はほぼ無い。
「ティナ様! 抜けてきた数匹程度我々にお任せください、負傷されたばかりなのですからどうぞ後方へ――」
「私の夫が戦っているのよ? 後方でのほほんとしてられるわけないでしょ」
「そうは申されましても……」
立場的に扱いづらいティナが負傷したせいでこれ以上問題を起こさないようにと下らせたがってるけど……ティナは聞きそうにない。
殲滅が進んで魔物の三分の二くらいが倒れた頃に異変が起こった。
不意にワタルたちの所に黒い影が現れた。
そして――クーニャが落下した。
「一体何が……? あれが神龍様を落したのか? あの黒いドラゴンは一体……アドラはスヴァログ以外も飼いならしていたのか!?」
「っ! フィオ行くわよ――」
「ティナっ!」
空間を切り裂いて跳躍しようとしたティナを押し倒した瞬間自陣が爆発した。
なに、今の攻撃……ワタルのレールガンみたいな――。
「足が、足がぁ!」
「医療班を早く!」
戦塵が舞い上がって視界が悪い、更に悪い事に風向きが変わったせいで炎の燃え広がり方が変わって煙が戦場を包んでる。
見る事で移動先を決めるティナの能力にこの視界の悪さは最悪かもしれない。
「フィオ……いったい何が……?」
「攻撃を受けた。たぶんクーニャを落したやつ」
「っ! そうよ、早くワタルの所に――なにこれ……視界が……一度上に跳ぶわ」
「ん」
ティナの手を取り上空から戦場を見下ろす。
そこは遠くから見ていた以上の地獄が広がっていた。
烟る戦場のそこかしこで燃え続ける死体と魔物、煙の途切れる隙間から確認出来るだけでも炎がかなり広がって戦場を焼き尽くそうとしている。
そしてその煙と炎の奥から響くレールガンの音、戦ってる――。
「ティナ!」
「分かってる、分かってるわよ、急かさないで――一気には無理ね」
そう言うとまだ燃えていない場所に一度下りてそこから更に音のする方へ、そして地割れに近付いた時に私たちは敵を見つけた。
浮遊する黒龍の背からボロボロのワタルを見下ろして飄々と拍手をしている女――。
「ティナ、上から」
「了解よ」
女はこっちを察知してない、これ以上何かする前に始末する。
「凄い凄~い。崖を崩壊させてイーターを埋めちゃうなんて、ちょ~と調子に乗り過ぎちゃったわね、ディーに怒られそう。頼まれたお使いも残ってるのはこれだけになっちゃったし――」
「死んで」
黒龍の更に上に跳んだティナに投げられて一気に降下してその勢いのままにタナトスで女の首を削いだ。
「くっ!? かはっ……なめるな! 人間風情が!」
浅いッ! なに今の手応え――当たった瞬間に体をずらして深手を避けた……?
まだ動く女にティナが追撃を仕掛けたものの鎗の一薙で私たちは地上に落とされた。
当たった瞬間タナトスの呪いを受けたはず……それでも尚反応出来るほどの技量があった。
「がはっ……クソッ! …………いいわ、今回は退いてあげる。でもこんなのは一時凌ぎよ。私たち魔物はいずれこの世界を支配する。人間同士で下らない戦に興じているような奴らには勝ち目はない。せいぜい残り時間を有意義に過ごすことね。それじゃあね、ボウヤ、また遊びましょう」
捨て台詞を吐くと女とドラゴンは虚空へと消えていった。
それと同時に緊張が解けたのかワタルが崩れ落ちた。
「ワタル、大丈夫?」
傷が多い……それでも致命傷は避けてる。
あの相手なら生き延びただけで十分……最初から私も一緒に居ればこんな傷すら作らせなかったのに……アリスのせいで……次にあの女が現れた時は私が殺す。
「傷だらけじゃない! 早く治療を受けないと!」
「どうにか、かな? 死ぬような怪我はしてないからそんなに騒がなくても――」
「騒ぐに決まってるでしょ! 大好きな人が怪我をしたのよ? 心配で堪らないんだから!」
リオ達も心配するよね……空なら大丈夫なんて考えた自分の甘さが嫌になる。
「来てくれて助かった。ありがとな」
「……最初から一緒だったら怪我なんてさせなかったのに」
ごめんなさい……。
「…………そう睨むなよ。討ち漏らしを処理するのだって大事だったんだし。それに、アスモデウス相手だとフィオだって怪我してたかもしれないんだからこれで良かったよ」
…………私と戦い慣れてるワタルがそう思うほどの敵だった。
確かにあの状態から逃げられるなんて思ってなかった。
さっき仕留められなかったのは大きな痛手かもしれない……それでも、タナトスで傷は付けた。
次こそ必ず――。
「心配してくれるのは嬉しいけど、無理しちゃダメ」
「分かったよ、悪かった。それで、そっちの仕事は済んだのか?」
誤魔化すようにワタルが頭を撫でてきた。
傷は多いけど手の力はしっかりしてるし見た目ほど大変な怪我じゃないみたい。
成長してくれててよかった、これからも厳しくしよ。
「ん。戦場から逃げ出せた魔物は居ない。上からも確認したけど動いているのは居ない。仕事は終わり」
「疲れた~。いよっし! 帰ろうぜ」
機嫌が良い……むぅ~、そんなにアリスを連れて帰れるのが嬉しいの……?
浮気者!
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