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六章~目指す場所~
みんな大抵欲深い
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「さ、最終戦は騎馬戦!」
「まだやるんですね。もうそれぞれ自由に遊べばいいのに」
「水着のティナ様が目の前に居るのに」
「フィオちゃんが居るのに」
『このまま諦められるはずがない! そして俺たちのケツの仇を取る!』
西野さんと宮園さんがタイミングを合わせて俺に向かってビシッと指を差してきた。二人は微妙に内股になってる……あぁ…………タコさんやっちゃったのね。にしても、この二人欲望に忠実というか、丸出しというか、こんな事でいいのか? とりあえずフィオ達にはドン引きされてるが、目的を達成する為の手段のせいで目的遠退いてるんですけど。
「ねぇワタル、騎馬戦てどんな事をするの?」
「ん? あぁ~…………」
どんな感じだったっけ? 運動会でやったような、やってないような? 数人で組んでやるものな気がするけど、この人数だし二人一組の肩車だろうか?
「くじで決めた二人一組で肩車をして他のチームを転かすか騎手から布をはぎ取れば勝ちです」
『肩車…………』
フィオとティナが固まったんだが? 何か変な事があったか?
「嫌」
「私も嫌よ! ワタル以外の男に触れられるのはい絶対に嫌!」
あぁ、肩車って密着するもんなぁ…………俺がするのかっ!? それを俺がやるのかっ!? いや、なんかそれは……俺じゃなくてもフィオとティナの二人が組めば…………いやいやいや、そのチームには誰も勝てないからゲームにならない。
「なら適当に、女同士で組めばいいんじゃ――」
「それでいいんですか如月さん! 本当にくじ決めじゃなくていいんですか? 後悔しませんか? 男同士で肩車しますかっ!?」
うっ!? そう言われると気色が悪いんだが、然りとて俺が誰かを乗せるのも乗るのもなんか……よく考えたら俺ってこの中じゃたぶん腕力は一番非力だし。
「あ~、俺は辞た――ぃいいい!?」
「ダメよ。ワタルは私と組むのだから」
「ダメ」
「いや、服掴まれても、二人同時に肩車出来る巨体じゃないし、二人が組めばいいんじゃないか?」
「あ、それは無しです。反則級にパワーバランスが悪過ぎるので」
「という事よ」
「んじゃぁ惧瀞さんとか」
「……そうね、惧瀞なら別にいいけれど、私かフィオが惧瀞と組めばどちらかは他と組まないといけなくなるのよ? そうなった時ワタルが居ないと女が少ないのだから他の男と組む確率が高くなるわ」
まぁ、西野さん達はそれを狙っての事だろう。ビーチバレーでも運良く組めてたからもう一度、と思ってもおかしくはない。遠藤と結城さんが睨んできている、フィオ達がぐずって惧瀞さんとのペアを取られるのが不満ってところだろうか?
「でもどうせくじだぞ?」
「そうですそうです。ささ、引いてください。さっきと同じで、同じマークの人がペアですよ」
宮園さんがずいっとくじの箱を近付けてきた。
「ふん、今度は秘策があるのよ。もさ!」
『きゅ』
ティナがもさを頭に乗せてくじを引いた。それに反応してフィオがもさを取り上げたけど既に引いた後、というかそれで運気が上がるのか? そういうシステムなのっ!? 宝石の持ち主、若しくは飼い主じゃないと駄目なんじゃ? それとも、もさを装備すればいいのか? もさは運アップの装備品扱いか? フィオも同じ様にして引いている。ティナがハートマークでフィオが星、一応二人はバラけたな。さあ引け、と言わんばかりに二人にじぃっと見られる。
「分かった、引くって……ハートだ」
「やったー。私の相手はワタルね」
喜ぶティナとは対照的にフィオが絶望していて、もさに頭を撫でられている。先に乗っけたティナの望みが優先された? 一番好きな飼い主優先じゃないのか? もさの意思とは別なのか? …………カーバンクルって分からない、無事にヴァーンシアに戻れるだろうか。
「あっ、フィオさん、私はフィオさんとみたいです。よろしくお願いしますね」
「……惧瀞なら我慢する」
こっちの世界に来てからそれなりに長い時間一緒に居る分惧瀞さんへの信頼があるのか、拗ねた様子だったのが少し改善した。そしてフィオとティナと組めなかった二名と、惧瀞さんのペアが決まった事を知った二名が絶望している。ゲームと言う口実とはいえ、好きな相手と接触できる機会ってのは大事な事だったらしい。結城さんまで態度で分かる程落ち込んでるのは少し意外だった…………なのに惧瀞さんは気付いた様子がなく、分かっている人たちは呆れているが。
「ティナ様の」
「フィオちゃんの」
『馬になりたかったー! くっそー、騎馬戦が最後のチャンスだったのに――』
「あの~、今騎馬戦って聞こえたんですけど、俺たちも丁度騎馬戦をやろうと思ってたところなんで仲間に入れてもらえませんか? 人数が多い方が盛り上がるだろうし」
チャラ男複数が現れた。丁度やろうと思っていた? その割には、女の子を物色するかのようにキョロキョロしながら近付いてきたし、今はティナばっかり見てるし、嘘くさい。宮園さんも気付いたらしく少し顔をしかめている。
「いや、それは……いや、いいだろう。一緒にやろう! 他にも参加したい方はいませんかー! 如月さんと異世界人のお二人との騎馬戦ですよー! 最後まで残ったペアには如月さんから豪華賞品が進呈されまーす! ティナ様たちに関する事も如月さんから頼んでもらえば多少は融通してもらえますよー」
この人何言い出してんだ!? ちょっと盛り上げる為にここに居る人間だけで言ってただけの事を人でごった返した浜に居る人たちに呼びかけるってどういう事だっ!? ……ほら、なんかざわざわし始めたよ。
「あの! 豪華賞品って言うのはなんなんですか?」
豪華賞品って言葉に魅かれた人と、ティナ達の名前に興味を持った人とが群がってきた。
「そこはある程度自由に注文可能という事になってます」
今の言葉で参加すると言い出す人が一気に出てきた。何好き勝手な事言ってるんだ!? 俺は見ず知らずの相手に何か贈るなんて嫌だぞ?
「何勝手言ってるんですか? ここに一緒に来た人たちならともかく、名前も知らない、顔も見た事のない人たちに何かしたり贈ったりするなんて嫌ですよ」
「それについては問題無いです。この海水浴場に居るのは一般人で、俺たちは違うんですよ? 勝者は絶対に俺たちの中から出ますって……それに、ティナ様との肩車が叶わず、ティナ様と如月さんがペアになって勝利も怪しくなってきた今、乱戦に賭けるしか俺たちには望みがないんです」
無茶苦茶言い始めた…………一般人を利用して自分の欲望成就を目指すのか。
「俺が馬役か…………」
「ワタルは私に乗りたいの?」
変な言い方するなよ。視線が突き刺さってきて痛いよ。
「そうじゃなくて、俺よりティナの方が力あるし、たぶん俺の方が軽いし」
「……どうして私の方がワタルより重い事になってるのかしら?」
おぉう……殺気とまではいかないまでも、息苦しくなる程の威圧感が。
「いや、ティナの方が少し身長あるし、その……胸の分重いかなぁって」
「…………そうね、確かに胸の部分はワタルより重いでしょうけれど、引き締まっているから他の部分は細身なのよ? 男のワタルより重いはずないわ」
俺より重い発言が気に食わないらしい。俺より身長がデカくて、重そうなものが二つもあるんだから重くても普通だと思うんだけど、撤回しないと納得しそうにない。
「あ、あぁ、そうかも?」
「そうよ、そういう訳だから私が乗るわね」
まぁ、ティナに乗れと言われても乗れる気がしないからそれでいいけど――。
「これヤバくね?」
「なにが?」
ぷにぷにすべすべの太ももに顔が挟まれてるんですけど! 柔らかくてはりがあってみずみずしくてヤバい! でもって、やっぱり自分のと同じくらいの体重を上にプラスされるってのはバランスが悪くてふらふらする。
「ワタルもう少ししっかりしなさい。そんなにふらふらしたら私が重過ぎるみたいじゃない。こんなに注目されている状態でそんな風に思われるなんて心外だわ」
「それについては大丈夫だ。もっと凄い光景があった」
「もっと凄い光景? ……そうみたいね。とても奇妙だわ」
俺たちがフラついている事よりも目を引くもの、小学生と大差ないフィオが大人の惧瀞さんを肩車している光景、いや、力関係を考えたらこれが普通なんだろうけども、どう見ても子供に見えるフィオの上に、明らかに大人な体型の惧瀞さんが乗っているというのはなんとも――。
「ぶぶっ!? ぺっぺっ! じゃりじゃりする…………」
それなりに離れた位置に居たのに子供と思った事を察知したフィオが砂を蹴り上げて被せてきた。巻き添えを食った人多数、フィオチームは他人任せにしようと距離を取り始めている。俺もラスボスは後に回そう、水鉄砲の時みたいに奇跡的に脱落する可能性もあるし。
「ねぇワタル、固まってどうしたの?」
「わっ、わぁあああっ、お、お? うおぉぉぉおおおおおおっ!?」
「きゃっ!? ちょ、ワタルしっかりしなさいよ!」
俺が動かずにいた事を心配したティナが身体を曲げて覗き込んできた。頭に感じた柔らかいものと間近にあるティナの顔に驚いてのけ反ったのが悪かった。バランスを崩して一気に後退って数十メートル程バック走する事になった。
「ど、どうにか持ち堪えたけど、やっぱりバランス悪い」
柔らかいものが柔らかすぎて、ぷにぷにふよふよでヤバすぎるだろ! だって柔らかすぎるもの。
「わ、ワタル、ワタル……ちょっと、早く移動しなさい。早くはやく」
ティナが焦った様子でパシパシ頭を叩いてきた。
「何焦ってるんだよ。別に逃げなくてもフィオ以外なら余裕だろ?」
「そうじゃないわよ。つるつるなのにもじゃもじゃでムキムキでもっこりの変な生き物が居るのよっ!?」
「は? なに言って――げっ!? なんじゃありゃあ、気色悪い…………」
「でしょ!? 早く離れなさい!」
ティナが見ている方向に居たのは、天辺が薄らって側面と後頭部は汚い感じに散らかってるおっさん。ハゲなのに体毛が激濃で前も後ろももじゃもじゃ、ゴリゴリのマッチョでブーメラン…………気持ち悪さをかき集めたようなおっさん。体質とかもあるんだろうけど、公衆の面前になにを晒してるんだよ、ハゲはどうにもならなくても他はもう少しどうにかする努力をしてもいいんじゃないだろうか?
「なんなのよあれはっ!? 本当に人間なの?」
おっさん人間として認識されてない!? そんなに嫌か? ……嫌だな。エルフって見た目が綺麗なのばっかりだったし、相当な衝撃なんだろう。
「あれは……騎馬の上のゴリ」
「…………そう、この世界には変な種族が居るのね」
おっさん新種族として確立されちゃった。もういいや、あの人はそういう種族って事で通そう。とりあえず近くで見たくないのでおっさんからも距離を取る。
「始めますよーっ! 人が多くなり過ぎたので乱戦になって怪我しない様にだけ気を付けてくださーい!」
乱戦になるように企んだやつが何言ってるんだよ。
「あっという間に囲まれているのだけれど」
「人が多いうちに数で囲って潰すって作戦なんじゃないか?」
にしても、多過ぎじゃないか? 全員がこっちを狙ってきてるくらいの勢いなんだが、この中に宮園さん達も紛れてるんだろうけど人が多過ぎて分からんな。
「囲んだ程度で勝てると思われるなんて、随分と軽く見られているのね」
フィオもティナも戦ってるところを殆ど放送されてないから一般人は二人に強いってイメージがあまりないのかもしれない。
『先に如月チームを潰せーっ!』
「っ! ちょ、ワタル! 来た、後ろからゴリ来た! 早く逃げなさい、負けないけど近付くのが嫌!」
「周りを倒さないと逃げ道ないって」
「いいから進みなさい。来たら倒すから早く離れて」
どんだけおっさん嫌われてんだよ。
『きゃぁあああーっ!?』
他のチームをかき分けるように倒しながら前進していたらすれ違ったチーム、通り過ぎたチームから悲鳴が上がった。
「なんで悲鳴――ティナ? 前見えないんだけど」
「見なくていいわ」
いや、意味分かんねぇ。ティナに片手で目を塞がれて前が見えない。
「こんなのでどうやって動けって言うんだよ? ただでさえバランスが悪いのに何も見えない状態じゃどうにもならんだろ。大体、悲鳴の原因は何だよ?」
「布を剥ぎ取ったからでしょ。こんな遊びをするなんて、人間って破廉恥ね」
布を剥ぎ取った? 破廉恥? …………。
「なぁティナ、どこの布を剥ぎ取った?」
「色々ね。胸とか腰とか、頭に巻いているのもね」
「何やってんだ!? 取っていいのは頭に巻いてるタオルだけだ! 返せ、剥ぎ取った物返せ! 今すぐに!」
「もう捨てたわ。それに頭に巻いてない人間もいるわよ? 私も巻いていないし」
海にポイ捨てするなよ…………巻いてないってどうするんだ? 準備不足だろ、一旦中止に――。
「来たわよワタル! 右! 右に行きなさい」
「指示出さずに視界を返せ!」
「ダメよ、他の女が見えちゃうじゃない」
そりゃお前のせいだろうがっ!?
「ほら来たわよ」
「きゃあああああー!」
指示通りに右に動いたら悲鳴、お前何やってんだよ。
「これ以上女の水着を剥ぐなよ」
「? 今のは男よ」
公然わいせつ! これ以上は勘弁してください。遊びに来たのに心労が半端ないです。
「男のも駄目だ。もう剥ぐな」
「でも向こうも私を剥ごうとしているわよ?」
なんなんだ…………酔ってんの? 酔ってるよねぇ? でないと普通に女の水着を剥ぎに来てる変質者だもの。
「というかタオル巻いてないからだろ、巻け。剥ぎ取ったやつでいいから巻け」
「嫌よ。変な臭いするもの」
「…………なら巻かなくていいから剥ぐのは止めろ、押して転かせ。相手がどうだろうと普通の人間相手なら負ける事は無いんだから問題ないだろ。そして視界を返せ――って、うおっ!?」
視界が急に明るくなったと思ったら、誰かの足の裏が目の前にあった。
「危ないだろうがフィオ、騎馬なんだから大人しくしてろよ」
「運ぶだけなのは楽しくない」
そういう問題かっ! ようやく戻った視界には死屍累々とした光景が広がっていた。水着を剥がれて顔まで海水に浸かっている人とそれを眺める人、気絶しているのか浮いて漂ってる人、肩車の状態を保って立ってる人はいない。さっきのゴリも浮いている、水着が脱げていないのが唯一の救いか。
「これって……ティナとフィオがやったのか?」
「私は五分の一位よ? 残りは殆どフィオがやったわ」
騎馬が何やってんだ……上の惧瀞さんが困り顔だろうが――っ!? これもう騎馬戦じゃないよ。騎馬が攻撃してきてるもの、飛び蹴りしてくるもの。フィオの飛び蹴りをどうにか躱したけど、これ勝てんだろ。フィオを相手するなら強化は必須だ、やっても勝てる気しないけど。
「フィオが凄くても惧瀞を剥げば私たちの勝ちよ」
「だから剥ぐなと言っとるだろうが!」
「ふぇあっ!? ティア様剥いでいいのは頭に巻いてるタオルですよ」
ティナと惧瀞さんが組み合って押し合いをしてるが、力では圧倒的にティナが有利なんだからそのまま倒せばいいだろ。
「ふぃ、フィオ~、お前は騎馬なんだから騎手を運んでればいいんだよ。なんで騎馬同士が組み合ってるんだよ」
「最近訓練してない」
これ遊びのはずだろ、ハードな訓練を兼ねるなよ。
「うわっ!? 蹴りを止めろ、滅茶苦茶速いじゃないか。どんな威力だ!? 死ぬわ!」
「平気、加減してる」
「平気なわけあるか――あ、あ、あぁ…………」
「ちょ、ワタル――きゃあ」
蹴りを躱そうとのけ反った状態のまま後ろ向きに海に沈んだ。
「もう~、ワタルのせいで負けちゃったじゃない」
俺のせいじゃないだろ、剣も無い状態だし、こんなもん誰も勝てんわ!
「フィオちゃんチームの勝利! ゲーム終了でーす!」
どうにか終わった。ぐだぐだな感じだったが変な勝者が出なかっただけ良かったとしよう。
「まだやるんですね。もうそれぞれ自由に遊べばいいのに」
「水着のティナ様が目の前に居るのに」
「フィオちゃんが居るのに」
『このまま諦められるはずがない! そして俺たちのケツの仇を取る!』
西野さんと宮園さんがタイミングを合わせて俺に向かってビシッと指を差してきた。二人は微妙に内股になってる……あぁ…………タコさんやっちゃったのね。にしても、この二人欲望に忠実というか、丸出しというか、こんな事でいいのか? とりあえずフィオ達にはドン引きされてるが、目的を達成する為の手段のせいで目的遠退いてるんですけど。
「ねぇワタル、騎馬戦てどんな事をするの?」
「ん? あぁ~…………」
どんな感じだったっけ? 運動会でやったような、やってないような? 数人で組んでやるものな気がするけど、この人数だし二人一組の肩車だろうか?
「くじで決めた二人一組で肩車をして他のチームを転かすか騎手から布をはぎ取れば勝ちです」
『肩車…………』
フィオとティナが固まったんだが? 何か変な事があったか?
「嫌」
「私も嫌よ! ワタル以外の男に触れられるのはい絶対に嫌!」
あぁ、肩車って密着するもんなぁ…………俺がするのかっ!? それを俺がやるのかっ!? いや、なんかそれは……俺じゃなくてもフィオとティナの二人が組めば…………いやいやいや、そのチームには誰も勝てないからゲームにならない。
「なら適当に、女同士で組めばいいんじゃ――」
「それでいいんですか如月さん! 本当にくじ決めじゃなくていいんですか? 後悔しませんか? 男同士で肩車しますかっ!?」
うっ!? そう言われると気色が悪いんだが、然りとて俺が誰かを乗せるのも乗るのもなんか……よく考えたら俺ってこの中じゃたぶん腕力は一番非力だし。
「あ~、俺は辞た――ぃいいい!?」
「ダメよ。ワタルは私と組むのだから」
「ダメ」
「いや、服掴まれても、二人同時に肩車出来る巨体じゃないし、二人が組めばいいんじゃないか?」
「あ、それは無しです。反則級にパワーバランスが悪過ぎるので」
「という事よ」
「んじゃぁ惧瀞さんとか」
「……そうね、惧瀞なら別にいいけれど、私かフィオが惧瀞と組めばどちらかは他と組まないといけなくなるのよ? そうなった時ワタルが居ないと女が少ないのだから他の男と組む確率が高くなるわ」
まぁ、西野さん達はそれを狙っての事だろう。ビーチバレーでも運良く組めてたからもう一度、と思ってもおかしくはない。遠藤と結城さんが睨んできている、フィオ達がぐずって惧瀞さんとのペアを取られるのが不満ってところだろうか?
「でもどうせくじだぞ?」
「そうですそうです。ささ、引いてください。さっきと同じで、同じマークの人がペアですよ」
宮園さんがずいっとくじの箱を近付けてきた。
「ふん、今度は秘策があるのよ。もさ!」
『きゅ』
ティナがもさを頭に乗せてくじを引いた。それに反応してフィオがもさを取り上げたけど既に引いた後、というかそれで運気が上がるのか? そういうシステムなのっ!? 宝石の持ち主、若しくは飼い主じゃないと駄目なんじゃ? それとも、もさを装備すればいいのか? もさは運アップの装備品扱いか? フィオも同じ様にして引いている。ティナがハートマークでフィオが星、一応二人はバラけたな。さあ引け、と言わんばかりに二人にじぃっと見られる。
「分かった、引くって……ハートだ」
「やったー。私の相手はワタルね」
喜ぶティナとは対照的にフィオが絶望していて、もさに頭を撫でられている。先に乗っけたティナの望みが優先された? 一番好きな飼い主優先じゃないのか? もさの意思とは別なのか? …………カーバンクルって分からない、無事にヴァーンシアに戻れるだろうか。
「あっ、フィオさん、私はフィオさんとみたいです。よろしくお願いしますね」
「……惧瀞なら我慢する」
こっちの世界に来てからそれなりに長い時間一緒に居る分惧瀞さんへの信頼があるのか、拗ねた様子だったのが少し改善した。そしてフィオとティナと組めなかった二名と、惧瀞さんのペアが決まった事を知った二名が絶望している。ゲームと言う口実とはいえ、好きな相手と接触できる機会ってのは大事な事だったらしい。結城さんまで態度で分かる程落ち込んでるのは少し意外だった…………なのに惧瀞さんは気付いた様子がなく、分かっている人たちは呆れているが。
「ティナ様の」
「フィオちゃんの」
『馬になりたかったー! くっそー、騎馬戦が最後のチャンスだったのに――』
「あの~、今騎馬戦って聞こえたんですけど、俺たちも丁度騎馬戦をやろうと思ってたところなんで仲間に入れてもらえませんか? 人数が多い方が盛り上がるだろうし」
チャラ男複数が現れた。丁度やろうと思っていた? その割には、女の子を物色するかのようにキョロキョロしながら近付いてきたし、今はティナばっかり見てるし、嘘くさい。宮園さんも気付いたらしく少し顔をしかめている。
「いや、それは……いや、いいだろう。一緒にやろう! 他にも参加したい方はいませんかー! 如月さんと異世界人のお二人との騎馬戦ですよー! 最後まで残ったペアには如月さんから豪華賞品が進呈されまーす! ティナ様たちに関する事も如月さんから頼んでもらえば多少は融通してもらえますよー」
この人何言い出してんだ!? ちょっと盛り上げる為にここに居る人間だけで言ってただけの事を人でごった返した浜に居る人たちに呼びかけるってどういう事だっ!? ……ほら、なんかざわざわし始めたよ。
「あの! 豪華賞品って言うのはなんなんですか?」
豪華賞品って言葉に魅かれた人と、ティナ達の名前に興味を持った人とが群がってきた。
「そこはある程度自由に注文可能という事になってます」
今の言葉で参加すると言い出す人が一気に出てきた。何好き勝手な事言ってるんだ!? 俺は見ず知らずの相手に何か贈るなんて嫌だぞ?
「何勝手言ってるんですか? ここに一緒に来た人たちならともかく、名前も知らない、顔も見た事のない人たちに何かしたり贈ったりするなんて嫌ですよ」
「それについては問題無いです。この海水浴場に居るのは一般人で、俺たちは違うんですよ? 勝者は絶対に俺たちの中から出ますって……それに、ティナ様との肩車が叶わず、ティナ様と如月さんがペアになって勝利も怪しくなってきた今、乱戦に賭けるしか俺たちには望みがないんです」
無茶苦茶言い始めた…………一般人を利用して自分の欲望成就を目指すのか。
「俺が馬役か…………」
「ワタルは私に乗りたいの?」
変な言い方するなよ。視線が突き刺さってきて痛いよ。
「そうじゃなくて、俺よりティナの方が力あるし、たぶん俺の方が軽いし」
「……どうして私の方がワタルより重い事になってるのかしら?」
おぉう……殺気とまではいかないまでも、息苦しくなる程の威圧感が。
「いや、ティナの方が少し身長あるし、その……胸の分重いかなぁって」
「…………そうね、確かに胸の部分はワタルより重いでしょうけれど、引き締まっているから他の部分は細身なのよ? 男のワタルより重いはずないわ」
俺より重い発言が気に食わないらしい。俺より身長がデカくて、重そうなものが二つもあるんだから重くても普通だと思うんだけど、撤回しないと納得しそうにない。
「あ、あぁ、そうかも?」
「そうよ、そういう訳だから私が乗るわね」
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「これヤバくね?」
「なにが?」
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「ぶぶっ!? ぺっぺっ! じゃりじゃりする…………」
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「ねぇワタル、固まってどうしたの?」
「わっ、わぁあああっ、お、お? うおぉぉぉおおおおおおっ!?」
「きゃっ!? ちょ、ワタルしっかりしなさいよ!」
俺が動かずにいた事を心配したティナが身体を曲げて覗き込んできた。頭に感じた柔らかいものと間近にあるティナの顔に驚いてのけ反ったのが悪かった。バランスを崩して一気に後退って数十メートル程バック走する事になった。
「ど、どうにか持ち堪えたけど、やっぱりバランス悪い」
柔らかいものが柔らかすぎて、ぷにぷにふよふよでヤバすぎるだろ! だって柔らかすぎるもの。
「わ、ワタル、ワタル……ちょっと、早く移動しなさい。早くはやく」
ティナが焦った様子でパシパシ頭を叩いてきた。
「何焦ってるんだよ。別に逃げなくてもフィオ以外なら余裕だろ?」
「そうじゃないわよ。つるつるなのにもじゃもじゃでムキムキでもっこりの変な生き物が居るのよっ!?」
「は? なに言って――げっ!? なんじゃありゃあ、気色悪い…………」
「でしょ!? 早く離れなさい!」
ティナが見ている方向に居たのは、天辺が薄らって側面と後頭部は汚い感じに散らかってるおっさん。ハゲなのに体毛が激濃で前も後ろももじゃもじゃ、ゴリゴリのマッチョでブーメラン…………気持ち悪さをかき集めたようなおっさん。体質とかもあるんだろうけど、公衆の面前になにを晒してるんだよ、ハゲはどうにもならなくても他はもう少しどうにかする努力をしてもいいんじゃないだろうか?
「なんなのよあれはっ!? 本当に人間なの?」
おっさん人間として認識されてない!? そんなに嫌か? ……嫌だな。エルフって見た目が綺麗なのばっかりだったし、相当な衝撃なんだろう。
「あれは……騎馬の上のゴリ」
「…………そう、この世界には変な種族が居るのね」
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「始めますよーっ! 人が多くなり過ぎたので乱戦になって怪我しない様にだけ気を付けてくださーい!」
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「あっという間に囲まれているのだけれど」
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にしても、多過ぎじゃないか? 全員がこっちを狙ってきてるくらいの勢いなんだが、この中に宮園さん達も紛れてるんだろうけど人が多過ぎて分からんな。
「囲んだ程度で勝てると思われるなんて、随分と軽く見られているのね」
フィオもティナも戦ってるところを殆ど放送されてないから一般人は二人に強いってイメージがあまりないのかもしれない。
『先に如月チームを潰せーっ!』
「っ! ちょ、ワタル! 来た、後ろからゴリ来た! 早く逃げなさい、負けないけど近付くのが嫌!」
「周りを倒さないと逃げ道ないって」
「いいから進みなさい。来たら倒すから早く離れて」
どんだけおっさん嫌われてんだよ。
『きゃぁあああーっ!?』
他のチームをかき分けるように倒しながら前進していたらすれ違ったチーム、通り過ぎたチームから悲鳴が上がった。
「なんで悲鳴――ティナ? 前見えないんだけど」
「見なくていいわ」
いや、意味分かんねぇ。ティナに片手で目を塞がれて前が見えない。
「こんなのでどうやって動けって言うんだよ? ただでさえバランスが悪いのに何も見えない状態じゃどうにもならんだろ。大体、悲鳴の原因は何だよ?」
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「なぁティナ、どこの布を剥ぎ取った?」
「色々ね。胸とか腰とか、頭に巻いているのもね」
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「ほら来たわよ」
「きゃあああああー!」
指示通りに右に動いたら悲鳴、お前何やってんだよ。
「これ以上女の水着を剥ぐなよ」
「? 今のは男よ」
公然わいせつ! これ以上は勘弁してください。遊びに来たのに心労が半端ないです。
「男のも駄目だ。もう剥ぐな」
「でも向こうも私を剥ごうとしているわよ?」
なんなんだ…………酔ってんの? 酔ってるよねぇ? でないと普通に女の水着を剥ぎに来てる変質者だもの。
「というかタオル巻いてないからだろ、巻け。剥ぎ取ったやつでいいから巻け」
「嫌よ。変な臭いするもの」
「…………なら巻かなくていいから剥ぐのは止めろ、押して転かせ。相手がどうだろうと普通の人間相手なら負ける事は無いんだから問題ないだろ。そして視界を返せ――って、うおっ!?」
視界が急に明るくなったと思ったら、誰かの足の裏が目の前にあった。
「危ないだろうがフィオ、騎馬なんだから大人しくしてろよ」
「運ぶだけなのは楽しくない」
そういう問題かっ! ようやく戻った視界には死屍累々とした光景が広がっていた。水着を剥がれて顔まで海水に浸かっている人とそれを眺める人、気絶しているのか浮いて漂ってる人、肩車の状態を保って立ってる人はいない。さっきのゴリも浮いている、水着が脱げていないのが唯一の救いか。
「これって……ティナとフィオがやったのか?」
「私は五分の一位よ? 残りは殆どフィオがやったわ」
騎馬が何やってんだ……上の惧瀞さんが困り顔だろうが――っ!? これもう騎馬戦じゃないよ。騎馬が攻撃してきてるもの、飛び蹴りしてくるもの。フィオの飛び蹴りをどうにか躱したけど、これ勝てんだろ。フィオを相手するなら強化は必須だ、やっても勝てる気しないけど。
「フィオが凄くても惧瀞を剥げば私たちの勝ちよ」
「だから剥ぐなと言っとるだろうが!」
「ふぇあっ!? ティア様剥いでいいのは頭に巻いてるタオルですよ」
ティナと惧瀞さんが組み合って押し合いをしてるが、力では圧倒的にティナが有利なんだからそのまま倒せばいいだろ。
「ふぃ、フィオ~、お前は騎馬なんだから騎手を運んでればいいんだよ。なんで騎馬同士が組み合ってるんだよ」
「最近訓練してない」
これ遊びのはずだろ、ハードな訓練を兼ねるなよ。
「うわっ!? 蹴りを止めろ、滅茶苦茶速いじゃないか。どんな威力だ!? 死ぬわ!」
「平気、加減してる」
「平気なわけあるか――あ、あ、あぁ…………」
「ちょ、ワタル――きゃあ」
蹴りを躱そうとのけ反った状態のまま後ろ向きに海に沈んだ。
「もう~、ワタルのせいで負けちゃったじゃない」
俺のせいじゃないだろ、剣も無い状態だし、こんなもん誰も勝てんわ!
「フィオちゃんチームの勝利! ゲーム終了でーす!」
どうにか終わった。ぐだぐだな感じだったが変な勝者が出なかっただけ良かったとしよう。
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婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
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長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。
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ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。
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