黒の瞳の覚醒者

一条光

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終章~人魔大戦~

心ある者の本能

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 聖火が常にザハルを包み関節を損傷させ続けているおかげで僅かに動きを狂わせる事で俺たちの生存率を上げている。
 フィオ達混血者の身体能力がいくら優れているといっても魔王の筋力には敵わない。今の魔王に打撃では温い、だが斬撃では新たに分体を増やしかねないこの状況では黒雷と聖火、光の軌跡が頼みの綱だ。
 躱す、躱す、躱す。時に光の軌跡安全圏から外れるアスモデウスの手を引き軌跡を辿る。
 目の前に在るというのに手に入らない苛立ちでけだものの王が咆哮する。その光景は世界見ている者たちを萎縮させる。
 だから俺も吼える。異常なプレッシャーを払い除ける為に、世界の心が折れないように。この世界俺たちは負けないのだと奮い立たせる。

 しまった!? 世界の声ノイズに気を取られての僅かなミス、踏み込む位置の選択間違い。攻撃は躱せる、でも――。
 世界は沸く。怪物を手玉に取って同士討ちをさせたのだと、この場に居る者には緊張が走る。俺を排除しようとした一撃が分体の首を殴り飛ばした。これ以上増えられるのはマズい――。

 増えない……? 五体が分裂の上限か! それなら――待っていたとばかりに少女達が舞う。知性無くアスモデウス獲物を追う怪物には捉えられない神速の少女達が魔王を斬り刻む。
 世界が沸き、称賛の言葉を贈る。そんなものに慣れていないらしい双子はむず痒そうに頬を朱に染めて武器を握る手に力を込める。

 再生速度が僅かに落ちている? タナトスが原因か? ……だがフィオが斬った分体以外も……分裂による劣化? 緋玉にも劣化が発生しているとしたら? 分裂は危機じゃなく好機――。
 フィオ達に合わせてレーヴァテインで光の軌跡奴を壊せる軌道をなぞり振るう。
 現れるのは五つの球体、それを上空から飛来した鎗が刺し貫いた。
 だがこれで終わりではない、緋玉も再生する。だからを維持する。

 集まる欠片を再度砕いていく、その時変化が起こった。五つ分の欠片が一点に集まり元の姿を形成した。
『少シ眠ッテイタカ……随分ト疲弊シテイルナ、殲滅状態面白イモノデモ見タカ』
 疲弊……? そういえば、打ち付ける慈雨が弱くなっている。リディアも限界が近いんだ。慈雨に任せて常に光の軌跡を辿る無理の連続、その上やった事は無駄だと言われるのはなかなかにきつい――それでも今の俺たちの役目は時間稼ぎなんだ。

 俺の残像を叩く巨腕、懐へと飛び、フィオと共に前後から連撃に次ぐ連撃、傷は瞬く間に消える。本当に刃が通っているのか疑いたくなるレベルだ。
 なんで衰えない? 今フィオは二十は斬った。それだけタナトスの呪いを受けていれば再生に遅延が出てもおかしくないはずなのに――まさかの状態に再生されているのか?
 醜悪なオークの王の満面の笑み、その意味を悟った時には遅かった。大きな拳が俺を――。
「にゃはははははは、見よクーニャ! 妾バッチリなタイミングで登場なのじゃ!」
『っ!?』
「えぇい分かったからしっかり縛っておけ!」
「当然、ぐるぐる巻き巻き蔦達磨なのじゃ!」
 拳の風圧に当てられて尻餅をついたまま声のした一点を見つめる。もう見る事が出来ないかもしれないと思っていた笑顔がそこにある。

『コレガドウシタ?』
「ふにゃん!? どうしてあの巻き巻き状態で動けるのじゃ!? 旦那様――」
「大丈夫だぞ、あたし達が間に合ったぞ」
 部分顕現したクーニャがリュン子を連れてザハルに立ちはだかる。振り下ろされた全てを叩き潰す一撃は細腕に受け止められていた。
『ッ!? ナンダコノ奇妙ナ生キ物ハ? 何故ソノ体デ――』
「はっはっはー、魔王とか言ってもこの程度か。この大一番に参加してるドワーフとしては、同胞に希望を見せる為にも一発決めないとなっ! ドワーフは腕力最強だぞッ!」
 世界俺たちは唖然と目の前の現実に目を向ける。あの小さな身体で怪物の巨体を持ち上げた挙げ句にかなり遠くまでぶん投げた!? リュン子怖っ! 馬鹿力が過ぎる。今後怒らせるような事は避けよう。
「主、何を目を点にしている。儂とてあの程度簡単に出来るのだぞ」
「クーニャ! それは妾が先だと言うたのじゃ! 旦那様~、会いたかったのじゃ~」
 身を寄せていたクーニャを押し退けてミシャが頬擦りしてくる。
 温かい、生きている。あぁ、本当に目覚めたんだ。大切なぬくもりが腕の中にある安心感が疲労を忘れさせる。

「ミシャごめん、俺――」
「よいのじゃ。妾は気にしておらぬし許し合えるのも家族なのじゃ、妾の方こそ遅れて申し訳ないのじゃ」
「再会は嬉しいだろうが暢気にしている場合じゃないぞ。ミシャ縛れ! 私の聖火と合わせて奴の動きを狂わせる」
「ほいきた了解なのじゃ! 何度でも蔦達磨にしてやるのじゃ」
 木々を薙ぎ倒して現れたザハルが石柱を振るい周囲一帯を薙ぐ。蔓草の戒めと関節を損傷させ続ける聖火で動きに乱れが生じそこを追撃する。

 慈雨が小降りに……もう効果は殆ど期待出来ないな。疲労と負傷……疲労はともかく負傷だけは誰にも負わせない。
ニクトモ判断ノツカヌ奇妙ナ虫ケラガ、超常ノ存在ト言ウモノヲ教エテヤロウ』
「ぬっ!? 力が増してるぞ」
『我ノ貴様等ヘノ対応コレハ驕リデモ不遜デモ慢心デモナイ。余裕ト言ウモノダ。弱者ノ爪ニ屈スル事ハナク、弱者ノ牙ニ殺サレル事モナイ。我ト貴様等ニハソレダケノ差ガアル……ダガ、詫ビテヤロウ』
 何を言い始めた? 詫びる? 大人しく追放を受け入れると言うのか?
『詫ビテヤロウ。教エテヤロウ、
 巨体が消える。それは突然の事ではあるがザハルと斬り結んだここに居る者ならば対応は出来た。だがパワータイプのリュン子には追えるはずのない速さだった。
 突然自身を覆う影に振り返った先には彼女の頭を握り潰しても余りある巨大な拳が迫っていた。
 絶妙な距離だ。速さに対応出来る者が届かない、跳躍では届かない、アスモデウスの飛翔も僅かに届かないだろう。

「何を嗤っている、小さき者よ。強引ではあったがこやつは主の家族に加わり大切な、欠けてはならぬ者となった。それを嘲り殺めようというのであれば相応の覚悟をするがよい、儂が類する者達に仇なす害意は全て滅却するッ!」
 落ちる拳を殴り返したクーニャはザハルの肩諸共に腕を空の彼方へ飛ばし、白雷が猛りリュン子を保護するように展開している。
「主よ、礼を言うぞ。部分顕現この状態は小回りが利いて何かと便利だ」
『マタ矮小ナル虫ケラガ』
「大きさに拘るなど無能だけだ。儂の主はどっちも愛するぞ、貴様よりも余程獣の王だ」
 ちょっと待って何言ってんの!? 俺まだ誰にも手を出してません!
「帰ったら乱れ狂う宴だと言うし……儂は初めてであるから一対一の方が良いのだが……むぅ、困った主だ」
 待て、ちょっと待てほんと待て! 悩ましげにため息吐くな。俺そんな事言ってないでしょうよ! 言ってるのはアスモデウスとロフィア! というか少し口閉じよう。これ全世界に放映中なんですけど!? 世界中のロリコンの殺意が聞こえるようだ…………というか聞こえる。聞こえすぎる。
『おい、欲望余計なものまで集まっているぞ。集まった思いの純度が下がる。くだらん事をするな』
 俺が悪いんですかっ!?

『何故動カヌ? ……封印前ニハコノヨウナ虫ケラハ存在シナカッタ』
「何故動かせぬか、だと? それは儂には守るべきものがあるからだ! 童共、追い付いたのなら存分に力を発揮しろ」
 クーニャ少女と組み合う怪物を包むように冷気が流れ込み、そこへ一陣が吹き抜けた。
 怪物の下半身は凍り付き、自由だった上半身は一人の騎士によって斬り裂かれた。
 黄色い声援と野太い声援が上がる。流石人気者の騎士団長、男からの声援も多い。
「お前らどうやって……下はどうしたんだ?」
「陣でね。下の様子は美緒ちゃんに見せてもらうといい、毒島さんと黒井君が奮戦してて単体向きな俺は邪魔だと言われたよ」
 美緒が繋いでくれた視覚では毒島と導が敵を屠り多くの味方を守っている姿が見えた。
「下は安定してる……から、僕たちはここを終わらせに来たんだッ」
 ディーを視界に映し顔を歪めた優夜と瑞原だったがすぐに切り替え目の前の脅威ザハルに集中した。

『マダ増エルカ、喰ワレルダケノ有象無象ガ』
「ははは……見えてはいたけど実際にこの目で見るとまた異様なものだ」
 普通なら確実に殺している手応えがあるのに元の姿で立ち塞がられる威圧感、それは戦い慣れている天明をもたじろがせる。
 僅かな隙、だが知性の戻った魔王は見逃さない――しかし振るう拳は天明に到達する前に蜂の巣にされる。
『ッ!? ナンダコレハ?』
 銃撃という経験した事のない攻撃に今度はザハルが一瞬たじろいだ。
「ミシャさん縛って! 僕が上から凍らせる」
「了解なのじゃ! さっきの何倍も巻いてやるのじゃ
!」
 蔓草に縛り上げられた所を氷結させられたザハルはそれでも尚氷に罅を入れる。広がる氷は奴の体の芯まで凍てつかせる事は叶わず息を荒くした魔王の再生の熱に砕かれる。
「良いぞミシャ、ユウヤ! 私たちは動きを鈍らせる事に徹するんだ」
 マジか……炎が氷を包んでいるのに。燃やし分けは分かっているが聖火にも温かさはあったから氷に全く影響を与えていないのは驚きだった。ナハトは完全に聖火をコントロールしている。更に追い風が吹き冷気と炎を後押しする。
「あたしだって負けてられないぞ。心血を注いだヤグルシとアイムールを受けてみろッ」
 腰に携えていた二挺の斧を投げ放ったリュン子は腕を交差させる。それに合わせたように斧は曲線を描き左右からザハルの胴を分断した。

 押している。このままであればディーが追放先を創造する時間は十分に稼げる。
『我ハ言ッタナ、現実ヲ教エテヤルト。調子付クノモココマデダ、先ズハ隠レ潜ム者共ダ』
 鼻をヒクつかせた魔王が木々に突撃するのよりほんの少し早く駆け出した。
 惧瀞さんとアルを抱えて樹木を蹴った直後木々は薙ぎ倒される。
 俺たちは風に舞いザハルから離れるが追撃の丸太が飛んでくる。黒雷と弾雨で防ぎきり地面に降り立つ。

 肉だ、虫けらだと蔑む相手を捕らえられない苛立ちか再び魔王が咆哮する。だが今度は世界は怯まない、この世界俺たちが勝つのだと心から信じているから。
 圧倒的な個体であるのに相手の意志を折る事が出来ない、自身に恐怖せずに立ち向かい凌ぐ者たち。その事実がどうしようもなく魔王を苛立たせ咆哮に乗る殺気が増していく。ここに居る女を雌ではなく壊してもいい殺意の対象とするほどに。

 誰も油断などしていなかった。光の軌跡も見えていて最善を選択していた――そのはずなのに……光は黒に染まり、途絶えた。
 全員の攻撃で全身を消失したザハルが、フィオを喰らいながら再生した現れた
 異常、緋玉が出現しなかった。元居た位置から随分と移動している。何故、何故、何故!
 下半身を残し噴き上がる鮮血、その光景を見た瞬間、怒りよりも何よりも意識は途絶え闇に落ちた。

(お兄様、お兄様! 時間がありません! フィオ姉様――いえ皆様を早く魔王から引き離してください!)
 なにが……? 意識が飛んでいた? この戦闘中に? 眼前ではリュン子の斧がザハルを引き裂こうとしていた。
(お兄様! 失ってしまいます! 急いで!)
 ティア、なにを――。
(早く!)
 引き離すったって……視界に異常の片鱗を見た。黒ずむ軌跡、そこに嫌なものを感じて黒雷でザハルを覆い周囲から全員を遠ざけた。その刹那にフィオの残像をザハルが喰らった。
 冷や汗が背中を伝う、俺は今ティアの言葉かなければ反応出来ていなかったに違いない。俺は……

 ティア、どうして分かった? 戦闘には縁のない彼女には予測しえないもののはずだ。百戦錬磨のフィオ達ですら驚きを隠せていないのだ。
(私は、見ましたから……フィオ姉様を、失った、お兄様が暴走して、過去の悲劇の再来となって、しまった地獄を見て、きました。ですから私はに、触れたのです。お兄様に、世界の敵に、なってほしくない)
 暴走? 世界に触れた? 分かる事はティアのおかげで全員が無事と言うことだ。
 世界に触れたというのはつまり世界から時間を抜き出して巻き戻させたって事じゃないのか? の時間をその身に引き受ける。たった数秒だったとしてもいったいどれ程の負荷が――おいティア無事なのか?
(お兄様……この、時戻しは何度も、出来る事ではありません。どうか、自分を強く持って、あらゆる異常に、目を凝らして……もう一度、異世界の脅威を呼び込めば暴走すれば、その時はこの世界は滅びます)
 俺はそんな事を……? そんな光景を見たなら思いを集める作戦も…………。
(はい、あの瞬間……お兄様が、最も危険な、存在となりました。ですが、作戦の方は安心してください、時戻しで私以外は、覚えていないはずです。知り得ているのは能力ちからを借りる為に、お話したナハトの父おじ様だけです)
(婿殿、そのまま行きなさい。本来看過できないが君は必要だ。皆を守れ! ナハトを幸せにしてくれ)
 俺は赦されない罪を犯したんだろう。それでもチャンスをもらった。
 ありがたい事だ。なら、失わない為にこの力の全てを!

 もう少しだと言うディーの声が世界俺たちに響き渡る。それに世界はまた沸き上がり更なる祈りが集まる、その莫大な力の流れにザハルも感付いた。
『ソンナ玩具ヲドウスル気ダ? ソレダケノチカラデモ我ヲ消シ去レナイ事ハ理解出来ルダロウ? 諦メヨ。膝ヲ突ケ。こうべヲ垂レヨ』
 その拳から衝撃波を発生させてディーやリディアを引き倒す。
「っ!! 大丈夫か!」
『安心しろ、やり遂げる。準備をしておけ』
 この戦いも大詰めだ。
 不穏なものを感じてか、恭順しない事に苛立ってか、魔王の暴れっぷりは苛烈さを増す。負傷を厭う必要がないからこその攻撃、このメンバーを相手にしても尚反撃をしてくる。その動きは一切の予断を許さない。
 それでも俺たちは掴み取る。全員が生き残る道を、全員が笑える未来を。

『完成だ! 繋げッ!』
『下ラヌ事ハサセヌ、コイツガ鍵ダナ?』
 俺一人に的を絞り猛攻を加える。ミシャ達の枷などものともせずに。
 慎重に、然れど大胆に軌跡を辿る。勝つ、勝って帰る。あるのはその一念、これはなにがなんでも貫き通す。
 ティナがスタンバイしている、世界を繋ぐべくザハルから距離を取りたいが……なかなかどうしてしつこい。
 振るわれる拳を流し、動きを止めるために頭部だけを損傷させ続けようと黒雷を放とうとした瞬間魔王は嗤った。
『オ前ハ他ガ壊レルノヲ酷ク恐レル、ソウイウ戦イ方ダ。ナラバコレハドウスル?』
 体を捻り背後に迫ったフィオを捕らえ盾にする。
『止マッタナ、愚カナ事ダ』
「愚か? これは、大切なものを守りたいのは心ある者俺たちの本能だッ!」
 黒雷を放ちフィオがそれを弾いてザハルの顔面に叩き込む。
 憤怒したザハルはフィオを上空に放り投げ――軌跡が黒に染まり始める。
 アル翼のある者クーニャ達も反応が追い付いていない。軌跡を見た俺だけが跳んだ。
 フィオを押しやり黒の軌跡から外す。そして俺は完全に軌跡と重なった。スローモーションで極悪な拳が迫る。届かない、追い付かない、みんなの驚愕だけがやけにはっきりと見える――足掻け! 諦めるな! 鍵がないとこの作戦は――黒雷を放ち剣を構える。

「それが航の本能なら、これはの本能なのかな」
 誰も追い付かないはずの時間、そこに突然現れた糞親父に黒の軌跡から押し出される。目の前で、父親だったはずのものがへしゃげた。
「あ……? あぁ……あああああっ! ッ! フィオっ、来い!」
 着地と共にティナに目配せして空間の裂け目を作りフィオと一緒にアル・マヒクを構える。どこからか走ってきたもさふさが肩に乗る。これで確実にに繋がる。
 飛び上がっていたザハルが落ちてきた所へ全身全霊を使ったレールガンを放った。
 閃光が視界を埋め尽くし魔王を飲み込む為の風が巻き起こる。ザハルの咆哮とそれが消えると辺りには静けさが戻った。
 誰も言葉を発さず、互いの顔を見合わせる。誰が笑った。それは波となり世界に広がる。爆発でも起きたような大歓声。
「あーうるせー! やかましい!」
「まぁ、今くらいはしょうがないね」

 美緒に視覚のリンクを切ってもらいそれに近付く。父親だったもの……もっと色々言いたい事があった。ぶん殴りもしたかった、母さんの墓に手を合わせさせもしたかった。それなのに――。
「なんだよあの死に方……何しゃしゃり出てんだよ。あれで償ったつもりかよ!」
「ワタル、辛かったら我慢しなくていいのよ。その人がどんな人かは知らないけれど大切な人なんでしょう?」
「ティナ……別に大切なんかじゃない。俺はディーと同じだからな…………」
「そんな事ないわ。だってワタル泣いているもの」
 俺は泣いてなんか……泣いているのか? こんな奴の為に? クソッ、何で小さい頃のまともな家族だった思い出ばかり思い出す。恨みはどうした? 憎しみはどうした? 何でこんなに苦しいんだ。
「俺……俺は…………っ!」
 許してやればよかった。他にもっと接し方があった。でももうそれも今更だ。
「いいのよ泣いて」
 ティナに抱かれて涙を流す。そこへレヴィが現れて――。
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「とどめ刺す」
「きゃー、ちょっとワタル落ち着いて! みんなワタルを止めてー」
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