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終章~人魔大戦~
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空気を震わせる爆撃の音が地の底まで響いてくる。小休止を挟んで坑道内から北上を始めて既に半日が経ったが地上から不安を掻き立てる音が止むことはない。いや、爆音が聞こえている間は氷壁が突破されてないって事だから安心なのか? まぁ爆音と極僅かな揺れは生き埋めという不安を掻き立てているが。
「そろそろツヴィトだな、やっぱりあのオークが言った通りにフィアトに行くべきだったんじゃないの?」
「二度も罠に掛かってるのに魔物側の言葉を鵜呑みに出来るはずないじゃないですか」
「これだから猪馬鹿娘は……少しはものを考えたらどうだ?」
俺とシュテルケは残念なもの見るような瞳をリュンヌに向けた。
「なんだよお前らその目はー! 別に閉じ込められたっていいじゃんか、脱出の方法があるんだから意味無いぞ?」
「だから、それもズィアヴァロに知られてるって事ですよ。魔物と土人形で足止めさせられますよ」
ドワーフ達の話では既にツヴィトに入ったという、移動は疾速、掘削能力も使い通常ルートを避けてある程度直線距離を行っているからか山登りをするよりも早い。ここまではズィアヴァロの目には捕まっていない、魔物の量も俺たちを警戒しているようなものではない。俺たちの拠点の近いツヴィト辺りまでの魔物は地上に出て進軍しているのと、即席で打った手が上手く行っている、か?
「このまま進んで、奴が真っ直ぐエアトを目指しているとすればドリットとツヴィトを繋ぐ辺りでかち合うだろうな。タカアキ、本当にお前たちは――」
「救います。貴方たちに自由を取り戻してみせる、そう約束しましたよね」
「そうだったな、我らはそれを信じた。その為にこの命を――」
「命を使うのはなしですよ。生きてもらわないと俺が約束を守れないですから」
剣を交えただけでどうしてそこまで打ち解けられるのか、初めてシュテルケと会った時のチリチリとした威圧感は今は微塵もない。ソレイユの話だとシュタールは排他的だって事だったんだが……話してみてよほど気が合ったのか天明の強さを認めたのか、シュテルケの態度からは信頼さえ窺える。天明の人徳か。
「その約束から俺は除外しておけ、理由はどうあれズィアヴァロ側に付く判断をした責任を取らねばならぬ」
「死ぬ事で取れる責任なんてないですよ。悔やむ気持ちがあるなら生きて尽力する事です。況してや貴方は長でしょう? それなら尚のことそうするべきです、貴方に付いてきた人達の為にも」
「そうですシュテルケ様、咎は我ら全員で背負います。どうか全員で生き残りドワーフの未来の為に力を尽くしましょう!」
「お前達………」
もしもの時は命を懸けるつもりだったらしいシュテルケの険しい表情が幾分柔らかいものになった後再び引き締まった。死ぬ覚悟が生き残る覚悟に変わった瞬間だろう。
地上からの交信でズィアヴァロの人形たちの発生ポイントの移動が確認されている。キューブによる別の存在が原因の可能性もあるが――。
『っ!? フィアトで閉じ込めたはずだが? 何故ここには貴様らが居る?』
通路を抜けて広い空洞になった採掘跡に出たところで坑道を塞ぎそうな程な大男に出くわした。巨体、だがオークのような横幅のある感じじゃない。高身長でマッシブなその体つきは対峙しただけでも一瞬攻撃を躊躇う程の威圧感があった。外見からして恐らくハイオークのはずだが……エルフの要素は殆ど見られない醜悪な顔、かろうじてエルフの血を引いていると分かるのは長い耳くらいか……それにしてもデカい。
口振りからしてこいつがズィアヴァロで惧瀞さん達の変装による囮を俺たちと認識していたようだ。そのおかげでようやくここで奴と遭遇した。囮の方は落盤で身動きが取れないものの無事で別の部隊が救出に向かっているって話だったしアハトとノントに向かったシュタールの戦士達は人質を発見、土人形に囲まれたため突破が出来ず天井を崩して籠城しているが無事、あとはこいつさえ倒せば地上で暴れてる土の化け物たちは文字通り土に帰るはず。一気に仕留める! 雷迅全開で素早く剣を構え動く暇を与えずミスリル玉を射出した。
『なんだこれは!? この先見の義眼がなければ消し飛んでいたな……だが、面白い! これで装備を試せる、ドワーフ共じゃあ素の状態で勝てるから楽しめもしなかった。まぁ、お前もこの一撃で終わりだがな――』
なんだこいつの動きはっ!? 雷迅に匹敵――いや、それ以上――ズィアヴァロの動きに反応して雷迅で回避行動を取ったはずがそれに合わせて俺の胸にジャマダハルが伸びてきた。フィオが俺に飛び付き押し倒そうとしているが狙いはブレない、それどころか俺諸共フィオまで殺す気だ。
「バカフィオ、対処するならこっちでしょう! アダマンタイトには効かなくても生身になら――なっ!?」
アリスが大鎌を俺たちとズィアヴァロの間に割り込ませ、伸びてくる腕を勢いのままに掻き斬るように振り上げた。相手の動きに合わせた完璧なカウンター……そのはずだった。のに、奴は刃から逃れてアリスの間合いから距離を取っていた。あの巨体でああも動けるのは瞬迅の首飾りってやつのおかげか?
「全員あのジャマダハルには決して打ち合うな」
「あーっ!? 私のアダマスが!?」
オリハルコンとミスリルの合金製の大鎌の刃を気付かせる事なく切り落とした!? 俺も、アリスすら見えていなかったのか!?
「天明全開でやれ! あの剣は――」
「分かってる。ディアボロスの時から研鑽を積んだのは航だけじゃない。単純な腕力とスピードの勝負は俺の領分だ」
天明の振るう大剣、魂の剣が凄まじい空気の流れを生みながらズィアヴァロのジャマダハルと打ち合う、あれと打ち合えるのは天明だけか……空洞内に響き渡る剣戟は凄まじく、衝突の衝撃も相当なもののようで若干天明が押し負けている。
「私だって!」
『ほぅ? 先程の動きといい、良い動きだドワーフ娘。まだ特殊武具を隠していたな? それも貰い受けるぞっ!』
「私はドワーフじゃなーい!」
ジャマダハルと相殺させる為に持ってきた大盾を構え剣戟の中に飛び込んだアリスだったが直撃の寸前にズィアヴァロは右手の剣を引っ込め、左の拳打へと切り替え壁際まで殴り飛ばした。混血といえども大盾は重すぎるのかアリスは本来のスピードに達していなかった、その上奴は義眼で何かを見たようで盾には一切剣を向けず拳打で対処している。アリスと天明の両方を相手にしながらも未だに優位を保つだけの身体能力と戦闘技術、更にはこれ以上の加勢を防ごうと土人形を大量に作り出した。生身の部分に触れてしまえば腐食が始まる、そんなものの対処はどうしても慎重になってしまう。その遅れを狙って土人形を増産する、それが天明たちをも取り囲み動きを制限する。それを好機とばかりに土人形の陰から土人形諸共貫く不意打ちを繰り返し天明を追い詰めていく、アリスは分断され近付く事すら儘ならない。空洞内は既に乱戦、黒雷を縫うように放ち敵を破壊していくが乱戦状態だと全ての範囲をカバーするのは難しく、破壊したそばから次が現れ向かってくるせいで俺たちはズィアヴァロにまで手が回らない。
「あー、もう! こんなに敵味方入り乱れてたら指弾が打ち辛い!」
『面白い戦法を使うじゃないか鬱陶しい馬鹿女――これは使えるな』
天明と打ち合う合間にリュンヌ達が使う指弾を真似て複数の石をリュンヌに向けて発射した。力は凄くともドワーフに弾丸を避けるほどのスピードは無い――っ! 届け!
「お、お前――当たったのか!? 大丈夫か? なんで庇った!?」
弾丸は殆ど叩き落とした。だが、飛ばされた石塊の中にアダマンタイトを含んだものがあったらしく、短剣の刃を砕いて俺の左肩に破片が突き刺さり血を溢れさせた。
「俺は救えるものは絶対に救うんだよ。もうちょい気を付けたらどうです? ソレイユさんをまた泣かす気ですか」
「うっ…………」
「旦那様! 大丈夫なのじゃ? ……破片が深くまで入り込んでおる――取り出すのは、この場では難しそうなのじゃ。無理に動かすと中が更に傷付く、旦那様は離れて能力での支援に回るのじゃ」
駆け寄ったミシャが傷を確認して顔を青くした。通りで僅かな動きでも身体を裂かれるような激痛が走るわけだ。刃の破片が現在進行形で内側から切り裂いているんだからな。
「ミシャ、それよりも防御を。硬い樹皮を持つ植物でドワーフ達とズィアヴァロを分断してくれ、ドワーフの速さじゃ弾丸に対処出来ない」
「それは……分かったのじゃ、だから旦那様は後退を――」
「悪いが駄目だ。無差別ならまだしもこの乱戦の中離れた位置からの対処は難しい。今戦力のバランスが崩れたら天明が押し切られる、やるしかないんだよ」
そう、これ以上土人形が増えたら確実に天明が押し負ける。処理し続ける役は必要だ。それに――。
「やっぱ来るか……ドワーフは樹木の陰で魔物に対処を! 土人形は俺が削る!」
坑道内に響き渡る戦闘音を聞きつけてベートの群れに加えてオークが数十体現れて襲い来る。広い空洞の半分を樹木で仕切り右半分に天明とズィアヴァロ、左半分にドワーフと魔物が戦闘を繰り広げる。そして両面に広がっている土人形を移動を繰り返しながら俺が対処する。作り出している奴が右側に居る以上土人形は右側に偏る、左側を殲滅して新たな土人形を右側で処理出来ればドワーフ達の仕事は早く済むはず。
「ならワタルは私が守る」
移動の隙を突いて飛来した弾丸を蹴り砕いてフィオが俺の傍に付いて疾走する。
「助かった、指弾の対処は任せていいか?」
「当然」
フィオと共に動き回り左右の戦力バランスが崩れないよう奔走し、左側の土人形が大幅に減ったところで右側に移り新たな土人形の移動を阻害する。向こうの土人形は数体だった、あれなら指弾で対処出来る、魔物の処理が残っているが十分に対応出来ていた。あとは土人形を押さえて天明達が有利に動けるようにしてやれば――。
『まったく、他人様の領地に入り込んで好き勝手してくれる。貴様もいい加減鬱陶しいぞ! 何故アダマンタイトでもない剣が切れない!?』
土人形を巻き込みながら黒雷を伸ばしズィアヴァロに向けたがジャマダハルで切り裂かれてしまう。が、剣での防御が出来ない状態のところへ天明が大剣を振り抜く。躱されてしまうが動きを制限されているという意識がズィアヴァロを苛立たせ動きが粗雑になっていく。天明に近付けば電撃への対処で大剣への防御が出来ず、離れれば死角からのティナの銃撃とリュンヌの指弾が襲う。剣を振り抜こうにもアリスの持つ大盾が気になって思うように振り回せない状態が続きズィアヴァロの表情は苛立ちに歪む。
『勝てもしないくせに何度も何度も……死を与えていたはずの馬鹿女が何故ここに居る!? あ゛あ゛鬱陶しい、今度は確実に速攻で腐らせてやる。腐臭を放つゴミと成り果てろ!』
させるかっ! 目の前で誰かに死なれるなんて二度と御免だ。頭を過る苦い記憶に押されて突進するズィアヴァロとリュンヌの間に割り込むように駆け出した。
『掛かったな! 今一番邪魔なのは貴様なんだよ!』
「当たんなきゃいいんだろうがっ!」
僅かに首を傾けた瞬間顔の隣を突き抜けていく冷たい刃、掠ったのかチリチリとした熱さが左頬に広がるが大丈夫、身体は動く。守る為に動き続けろと心が叫ぶ!
『何を笑っている、一度躱した程度でいい気になるなよ人間風情がっ!』
突き抜けた刃がスライドしてこちらに迫る、それをズィアヴァロの懐に飛び込み躱した。
『馬鹿が、武器はジャマダハルだけじゃない。じわじわ腐る恐怖の中で死ね』
リュンヌを抱えたまま迫るズィアヴァロの手を股下を抜ける事で躱して距離を取る、その間リュンヌは抱えられたまま指弾を放ちその一発が耳飾りを弾き飛ばした。
『どこまでも食い下がる……鬱陶しい事この上ない。人間も、ドワーフも、エルフすらも! 俺たちに劣る家畜に過ぎないくせに、刃向かえばどうなるか身をもって知れ』
「航! ――ぐ、お……さっきまでとは段違いに重い――っ!?」
異常な速さで間合いを詰めてアッパーのように振り上げられた切っ先を俺たちを押し退けた天明が受けたが勢いを殺す事は出来ず大剣がかち上げられてしまう。そして返す刀で隙の出来た天明にジャマダハルが振り下ろされる。寸前で天明の服を引き、後ろに引き倒した事でどうにか避けたがズィアヴァロの連撃はまだ続こうとしていた。
「こっち!」
不意に現れたティナに空間の裂け目に引き込まれて俺たちは鬼気迫るズィアヴァロの攻撃から逃れ離れた位置へと出た。
『それがなんだ?』
離れたはずの距離を瞬く間に縮め再び凶刃が打ち込まれ迎撃する天明との激しい打ち合いが再開した。あの剣が邪魔だ。どうにか大盾で相殺させないと……アリスに目配せをして再度黒雷を操りズィアヴァロの死角をティナ達と狙う、指弾と銃弾は左手の籠手で受けてやり過ごすが黒雷はそうはいかない。天明に打ち込んだ流れのまま身体を回転させて電撃を切り裂く。完璧な不意打ちでも義眼による先読みで回避する、だが不意打ちをやり過ごした後に僅かだが必ず動きが遅くなる。先読みをする事で何らかの負荷があるのか、それとも先読みには何か制限が? ……でもこれは使える。剣戟の合間に対応せざるを得ない攻撃を連続して仕掛け、意図を汲んだアリスとフィオが連携して突貫する。奴は盾を持つアリスの動きを読んだんだろう、アリスを避けて黒雷に振るったであろう一撃は、持ち手がフィオに代わった大盾に激突した。大盾の陰に隠れて持ち手を交代したのが功を奏した。刃は砕け、盾は亀裂が入り崩れ去った。
『貴様ら――』
「終わりだズィアヴァロ!」
『嘗めるな小僧っ、まだ俺には能力とこの籠手がある!』
渾身の力で振り下ろされる大剣の剣身を殴り付け斬撃の軌道をずらして直撃を避けてそのまま天明の胴に一撃を見舞った。天明は血を吐き壁に激突して倒れ込む、腐食を避ける為に咄嗟に片手を滑り込ませてガントレットで受けていたが相当にダメージを負ったらしく身じろぎすらしない。
「天明!」
『先ずは一匹、乗り込んできたという事は貴様らが主力だろう? 貴様らさえ始末すれば後は簡単だ。地上の奴らを無力化して奴隷にするだけだ』
「させるかよ!」
『さっきの奴より遅いが、怪我が効いているのかな?』
ニタリと嗤い剛腕を振り抜いてくる。天明が吹っ飛ぶ威力だ、受けることは出来ない。紙一重で躱し続け黒雷を纏った剣で斬り上げるが奴も感電を警戒して異常に距離を取る。
「逃がさない」
「私たちが隙を作るわ、ワタルは黒雷での攻撃を続けなさい!」
『ドワーフのくせにすばしっこい奴らだ』
「だから私たちはドワーフじゃなーい!」
憤慨したアリスが剣を振るい、状態が崩れたところへフィオがタナトスで斬りつける。
『この程度がなんだ? こんな小さな傷を付けた程度か?』
受けた傷の小ささに驕り大振りを打ち込み地を割り壁を崩して土煙を舞わすが次第に動きは悪くなり威力も落ちている。俺が放つ電撃は確実に回避しているが不規則な動きを先読みした後の反応の遅れは相変わらず、それを利用して躱した電撃二つをフィオとアリスそれぞれが殴る事で軌道を変えて命中させた。響き渡る絶叫、しかしズィアヴァロは倒れず相手を睨み殺すような形相で咆哮する。
『何故人間の貴様らがでしゃばる!? ドワーフの事など関係ないだろう!? 何故俺たちの侵攻を待っていられない? 煩わしいんだよぞろぞろと……使われるためだけに生まれた下等な種族が!』
「……お前たちはそうやって人を弄ぶ、殺し奪い、虐げ平穏を侵し理不尽に壊していく……俺はそういうのが許せないんだ!」
ズィアヴァロは逆上して土人形を溢れさせフィオ達が対応に追われている間に俺へと突貫してくる。
『こいつらの柱は貴様だろう? 柱が無くなればこいつらは崩せる。俺の為に死ね』
スピードが完全に乗った突進、あの巨体でこのスピードなら躱せないはず――奴が間近に迫った瞬間ミスリル玉を発射した。しかし奴は反応して籠手で受けたまま勢いを殺せず壁際に押し込まれていく。っ! 天明が立ち上がったのを目にした俺は連射して一気に壁際に押しやった。
『効かんわ! こんなもの何度受けようと――』
「終わりだ。俺たちの、勝ちだ」
天明の大剣が大男を両断した。ズィアヴァロは斬られた事に気付いた様子もなく二つに別れた。次の瞬間土人形たちは動きを止め、土塊と化した。どうやら本当に終わったようだった。
「毎度毎度疲れる」
気の抜けた俺は救援が来るまでその場にへたり込むのだった。
「そろそろツヴィトだな、やっぱりあのオークが言った通りにフィアトに行くべきだったんじゃないの?」
「二度も罠に掛かってるのに魔物側の言葉を鵜呑みに出来るはずないじゃないですか」
「これだから猪馬鹿娘は……少しはものを考えたらどうだ?」
俺とシュテルケは残念なもの見るような瞳をリュンヌに向けた。
「なんだよお前らその目はー! 別に閉じ込められたっていいじゃんか、脱出の方法があるんだから意味無いぞ?」
「だから、それもズィアヴァロに知られてるって事ですよ。魔物と土人形で足止めさせられますよ」
ドワーフ達の話では既にツヴィトに入ったという、移動は疾速、掘削能力も使い通常ルートを避けてある程度直線距離を行っているからか山登りをするよりも早い。ここまではズィアヴァロの目には捕まっていない、魔物の量も俺たちを警戒しているようなものではない。俺たちの拠点の近いツヴィト辺りまでの魔物は地上に出て進軍しているのと、即席で打った手が上手く行っている、か?
「このまま進んで、奴が真っ直ぐエアトを目指しているとすればドリットとツヴィトを繋ぐ辺りでかち合うだろうな。タカアキ、本当にお前たちは――」
「救います。貴方たちに自由を取り戻してみせる、そう約束しましたよね」
「そうだったな、我らはそれを信じた。その為にこの命を――」
「命を使うのはなしですよ。生きてもらわないと俺が約束を守れないですから」
剣を交えただけでどうしてそこまで打ち解けられるのか、初めてシュテルケと会った時のチリチリとした威圧感は今は微塵もない。ソレイユの話だとシュタールは排他的だって事だったんだが……話してみてよほど気が合ったのか天明の強さを認めたのか、シュテルケの態度からは信頼さえ窺える。天明の人徳か。
「その約束から俺は除外しておけ、理由はどうあれズィアヴァロ側に付く判断をした責任を取らねばならぬ」
「死ぬ事で取れる責任なんてないですよ。悔やむ気持ちがあるなら生きて尽力する事です。況してや貴方は長でしょう? それなら尚のことそうするべきです、貴方に付いてきた人達の為にも」
「そうですシュテルケ様、咎は我ら全員で背負います。どうか全員で生き残りドワーフの未来の為に力を尽くしましょう!」
「お前達………」
もしもの時は命を懸けるつもりだったらしいシュテルケの険しい表情が幾分柔らかいものになった後再び引き締まった。死ぬ覚悟が生き残る覚悟に変わった瞬間だろう。
地上からの交信でズィアヴァロの人形たちの発生ポイントの移動が確認されている。キューブによる別の存在が原因の可能性もあるが――。
『っ!? フィアトで閉じ込めたはずだが? 何故ここには貴様らが居る?』
通路を抜けて広い空洞になった採掘跡に出たところで坑道を塞ぎそうな程な大男に出くわした。巨体、だがオークのような横幅のある感じじゃない。高身長でマッシブなその体つきは対峙しただけでも一瞬攻撃を躊躇う程の威圧感があった。外見からして恐らくハイオークのはずだが……エルフの要素は殆ど見られない醜悪な顔、かろうじてエルフの血を引いていると分かるのは長い耳くらいか……それにしてもデカい。
口振りからしてこいつがズィアヴァロで惧瀞さん達の変装による囮を俺たちと認識していたようだ。そのおかげでようやくここで奴と遭遇した。囮の方は落盤で身動きが取れないものの無事で別の部隊が救出に向かっているって話だったしアハトとノントに向かったシュタールの戦士達は人質を発見、土人形に囲まれたため突破が出来ず天井を崩して籠城しているが無事、あとはこいつさえ倒せば地上で暴れてる土の化け物たちは文字通り土に帰るはず。一気に仕留める! 雷迅全開で素早く剣を構え動く暇を与えずミスリル玉を射出した。
『なんだこれは!? この先見の義眼がなければ消し飛んでいたな……だが、面白い! これで装備を試せる、ドワーフ共じゃあ素の状態で勝てるから楽しめもしなかった。まぁ、お前もこの一撃で終わりだがな――』
なんだこいつの動きはっ!? 雷迅に匹敵――いや、それ以上――ズィアヴァロの動きに反応して雷迅で回避行動を取ったはずがそれに合わせて俺の胸にジャマダハルが伸びてきた。フィオが俺に飛び付き押し倒そうとしているが狙いはブレない、それどころか俺諸共フィオまで殺す気だ。
「バカフィオ、対処するならこっちでしょう! アダマンタイトには効かなくても生身になら――なっ!?」
アリスが大鎌を俺たちとズィアヴァロの間に割り込ませ、伸びてくる腕を勢いのままに掻き斬るように振り上げた。相手の動きに合わせた完璧なカウンター……そのはずだった。のに、奴は刃から逃れてアリスの間合いから距離を取っていた。あの巨体でああも動けるのは瞬迅の首飾りってやつのおかげか?
「全員あのジャマダハルには決して打ち合うな」
「あーっ!? 私のアダマスが!?」
オリハルコンとミスリルの合金製の大鎌の刃を気付かせる事なく切り落とした!? 俺も、アリスすら見えていなかったのか!?
「天明全開でやれ! あの剣は――」
「分かってる。ディアボロスの時から研鑽を積んだのは航だけじゃない。単純な腕力とスピードの勝負は俺の領分だ」
天明の振るう大剣、魂の剣が凄まじい空気の流れを生みながらズィアヴァロのジャマダハルと打ち合う、あれと打ち合えるのは天明だけか……空洞内に響き渡る剣戟は凄まじく、衝突の衝撃も相当なもののようで若干天明が押し負けている。
「私だって!」
『ほぅ? 先程の動きといい、良い動きだドワーフ娘。まだ特殊武具を隠していたな? それも貰い受けるぞっ!』
「私はドワーフじゃなーい!」
ジャマダハルと相殺させる為に持ってきた大盾を構え剣戟の中に飛び込んだアリスだったが直撃の寸前にズィアヴァロは右手の剣を引っ込め、左の拳打へと切り替え壁際まで殴り飛ばした。混血といえども大盾は重すぎるのかアリスは本来のスピードに達していなかった、その上奴は義眼で何かを見たようで盾には一切剣を向けず拳打で対処している。アリスと天明の両方を相手にしながらも未だに優位を保つだけの身体能力と戦闘技術、更にはこれ以上の加勢を防ごうと土人形を大量に作り出した。生身の部分に触れてしまえば腐食が始まる、そんなものの対処はどうしても慎重になってしまう。その遅れを狙って土人形を増産する、それが天明たちをも取り囲み動きを制限する。それを好機とばかりに土人形の陰から土人形諸共貫く不意打ちを繰り返し天明を追い詰めていく、アリスは分断され近付く事すら儘ならない。空洞内は既に乱戦、黒雷を縫うように放ち敵を破壊していくが乱戦状態だと全ての範囲をカバーするのは難しく、破壊したそばから次が現れ向かってくるせいで俺たちはズィアヴァロにまで手が回らない。
「あー、もう! こんなに敵味方入り乱れてたら指弾が打ち辛い!」
『面白い戦法を使うじゃないか鬱陶しい馬鹿女――これは使えるな』
天明と打ち合う合間にリュンヌ達が使う指弾を真似て複数の石をリュンヌに向けて発射した。力は凄くともドワーフに弾丸を避けるほどのスピードは無い――っ! 届け!
「お、お前――当たったのか!? 大丈夫か? なんで庇った!?」
弾丸は殆ど叩き落とした。だが、飛ばされた石塊の中にアダマンタイトを含んだものがあったらしく、短剣の刃を砕いて俺の左肩に破片が突き刺さり血を溢れさせた。
「俺は救えるものは絶対に救うんだよ。もうちょい気を付けたらどうです? ソレイユさんをまた泣かす気ですか」
「うっ…………」
「旦那様! 大丈夫なのじゃ? ……破片が深くまで入り込んでおる――取り出すのは、この場では難しそうなのじゃ。無理に動かすと中が更に傷付く、旦那様は離れて能力での支援に回るのじゃ」
駆け寄ったミシャが傷を確認して顔を青くした。通りで僅かな動きでも身体を裂かれるような激痛が走るわけだ。刃の破片が現在進行形で内側から切り裂いているんだからな。
「ミシャ、それよりも防御を。硬い樹皮を持つ植物でドワーフ達とズィアヴァロを分断してくれ、ドワーフの速さじゃ弾丸に対処出来ない」
「それは……分かったのじゃ、だから旦那様は後退を――」
「悪いが駄目だ。無差別ならまだしもこの乱戦の中離れた位置からの対処は難しい。今戦力のバランスが崩れたら天明が押し切られる、やるしかないんだよ」
そう、これ以上土人形が増えたら確実に天明が押し負ける。処理し続ける役は必要だ。それに――。
「やっぱ来るか……ドワーフは樹木の陰で魔物に対処を! 土人形は俺が削る!」
坑道内に響き渡る戦闘音を聞きつけてベートの群れに加えてオークが数十体現れて襲い来る。広い空洞の半分を樹木で仕切り右半分に天明とズィアヴァロ、左半分にドワーフと魔物が戦闘を繰り広げる。そして両面に広がっている土人形を移動を繰り返しながら俺が対処する。作り出している奴が右側に居る以上土人形は右側に偏る、左側を殲滅して新たな土人形を右側で処理出来ればドワーフ達の仕事は早く済むはず。
「ならワタルは私が守る」
移動の隙を突いて飛来した弾丸を蹴り砕いてフィオが俺の傍に付いて疾走する。
「助かった、指弾の対処は任せていいか?」
「当然」
フィオと共に動き回り左右の戦力バランスが崩れないよう奔走し、左側の土人形が大幅に減ったところで右側に移り新たな土人形の移動を阻害する。向こうの土人形は数体だった、あれなら指弾で対処出来る、魔物の処理が残っているが十分に対応出来ていた。あとは土人形を押さえて天明達が有利に動けるようにしてやれば――。
『まったく、他人様の領地に入り込んで好き勝手してくれる。貴様もいい加減鬱陶しいぞ! 何故アダマンタイトでもない剣が切れない!?』
土人形を巻き込みながら黒雷を伸ばしズィアヴァロに向けたがジャマダハルで切り裂かれてしまう。が、剣での防御が出来ない状態のところへ天明が大剣を振り抜く。躱されてしまうが動きを制限されているという意識がズィアヴァロを苛立たせ動きが粗雑になっていく。天明に近付けば電撃への対処で大剣への防御が出来ず、離れれば死角からのティナの銃撃とリュンヌの指弾が襲う。剣を振り抜こうにもアリスの持つ大盾が気になって思うように振り回せない状態が続きズィアヴァロの表情は苛立ちに歪む。
『勝てもしないくせに何度も何度も……死を与えていたはずの馬鹿女が何故ここに居る!? あ゛あ゛鬱陶しい、今度は確実に速攻で腐らせてやる。腐臭を放つゴミと成り果てろ!』
させるかっ! 目の前で誰かに死なれるなんて二度と御免だ。頭を過る苦い記憶に押されて突進するズィアヴァロとリュンヌの間に割り込むように駆け出した。
『掛かったな! 今一番邪魔なのは貴様なんだよ!』
「当たんなきゃいいんだろうがっ!」
僅かに首を傾けた瞬間顔の隣を突き抜けていく冷たい刃、掠ったのかチリチリとした熱さが左頬に広がるが大丈夫、身体は動く。守る為に動き続けろと心が叫ぶ!
『何を笑っている、一度躱した程度でいい気になるなよ人間風情がっ!』
突き抜けた刃がスライドしてこちらに迫る、それをズィアヴァロの懐に飛び込み躱した。
『馬鹿が、武器はジャマダハルだけじゃない。じわじわ腐る恐怖の中で死ね』
リュンヌを抱えたまま迫るズィアヴァロの手を股下を抜ける事で躱して距離を取る、その間リュンヌは抱えられたまま指弾を放ちその一発が耳飾りを弾き飛ばした。
『どこまでも食い下がる……鬱陶しい事この上ない。人間も、ドワーフも、エルフすらも! 俺たちに劣る家畜に過ぎないくせに、刃向かえばどうなるか身をもって知れ』
「航! ――ぐ、お……さっきまでとは段違いに重い――っ!?」
異常な速さで間合いを詰めてアッパーのように振り上げられた切っ先を俺たちを押し退けた天明が受けたが勢いを殺す事は出来ず大剣がかち上げられてしまう。そして返す刀で隙の出来た天明にジャマダハルが振り下ろされる。寸前で天明の服を引き、後ろに引き倒した事でどうにか避けたがズィアヴァロの連撃はまだ続こうとしていた。
「こっち!」
不意に現れたティナに空間の裂け目に引き込まれて俺たちは鬼気迫るズィアヴァロの攻撃から逃れ離れた位置へと出た。
『それがなんだ?』
離れたはずの距離を瞬く間に縮め再び凶刃が打ち込まれ迎撃する天明との激しい打ち合いが再開した。あの剣が邪魔だ。どうにか大盾で相殺させないと……アリスに目配せをして再度黒雷を操りズィアヴァロの死角をティナ達と狙う、指弾と銃弾は左手の籠手で受けてやり過ごすが黒雷はそうはいかない。天明に打ち込んだ流れのまま身体を回転させて電撃を切り裂く。完璧な不意打ちでも義眼による先読みで回避する、だが不意打ちをやり過ごした後に僅かだが必ず動きが遅くなる。先読みをする事で何らかの負荷があるのか、それとも先読みには何か制限が? ……でもこれは使える。剣戟の合間に対応せざるを得ない攻撃を連続して仕掛け、意図を汲んだアリスとフィオが連携して突貫する。奴は盾を持つアリスの動きを読んだんだろう、アリスを避けて黒雷に振るったであろう一撃は、持ち手がフィオに代わった大盾に激突した。大盾の陰に隠れて持ち手を交代したのが功を奏した。刃は砕け、盾は亀裂が入り崩れ去った。
『貴様ら――』
「終わりだズィアヴァロ!」
『嘗めるな小僧っ、まだ俺には能力とこの籠手がある!』
渾身の力で振り下ろされる大剣の剣身を殴り付け斬撃の軌道をずらして直撃を避けてそのまま天明の胴に一撃を見舞った。天明は血を吐き壁に激突して倒れ込む、腐食を避ける為に咄嗟に片手を滑り込ませてガントレットで受けていたが相当にダメージを負ったらしく身じろぎすらしない。
「天明!」
『先ずは一匹、乗り込んできたという事は貴様らが主力だろう? 貴様らさえ始末すれば後は簡単だ。地上の奴らを無力化して奴隷にするだけだ』
「させるかよ!」
『さっきの奴より遅いが、怪我が効いているのかな?』
ニタリと嗤い剛腕を振り抜いてくる。天明が吹っ飛ぶ威力だ、受けることは出来ない。紙一重で躱し続け黒雷を纏った剣で斬り上げるが奴も感電を警戒して異常に距離を取る。
「逃がさない」
「私たちが隙を作るわ、ワタルは黒雷での攻撃を続けなさい!」
『ドワーフのくせにすばしっこい奴らだ』
「だから私たちはドワーフじゃなーい!」
憤慨したアリスが剣を振るい、状態が崩れたところへフィオがタナトスで斬りつける。
『この程度がなんだ? こんな小さな傷を付けた程度か?』
受けた傷の小ささに驕り大振りを打ち込み地を割り壁を崩して土煙を舞わすが次第に動きは悪くなり威力も落ちている。俺が放つ電撃は確実に回避しているが不規則な動きを先読みした後の反応の遅れは相変わらず、それを利用して躱した電撃二つをフィオとアリスそれぞれが殴る事で軌道を変えて命中させた。響き渡る絶叫、しかしズィアヴァロは倒れず相手を睨み殺すような形相で咆哮する。
『何故人間の貴様らがでしゃばる!? ドワーフの事など関係ないだろう!? 何故俺たちの侵攻を待っていられない? 煩わしいんだよぞろぞろと……使われるためだけに生まれた下等な種族が!』
「……お前たちはそうやって人を弄ぶ、殺し奪い、虐げ平穏を侵し理不尽に壊していく……俺はそういうのが許せないんだ!」
ズィアヴァロは逆上して土人形を溢れさせフィオ達が対応に追われている間に俺へと突貫してくる。
『こいつらの柱は貴様だろう? 柱が無くなればこいつらは崩せる。俺の為に死ね』
スピードが完全に乗った突進、あの巨体でこのスピードなら躱せないはず――奴が間近に迫った瞬間ミスリル玉を発射した。しかし奴は反応して籠手で受けたまま勢いを殺せず壁際に押し込まれていく。っ! 天明が立ち上がったのを目にした俺は連射して一気に壁際に押しやった。
『効かんわ! こんなもの何度受けようと――』
「終わりだ。俺たちの、勝ちだ」
天明の大剣が大男を両断した。ズィアヴァロは斬られた事に気付いた様子もなく二つに別れた。次の瞬間土人形たちは動きを止め、土塊と化した。どうやら本当に終わったようだった。
「毎度毎度疲れる」
気の抜けた俺は救援が来るまでその場にへたり込むのだった。
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