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15、アルト視点
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少年に前金要求されて渡した後、治療院から離れ大通りに出た。
「ちょっとここで待ってろ」
「おい!!」
そう言って、少年は離れ人混みに紛れていく。
どういうことだ?
「物乞いだったのですかね?」
信用してよかったのだろうかと不安になる。でも少年の眼差しは本当だったと思いたい。
「しばらく待ってみよう」
10分ほどしてもまだ帰ってこないのでアリナ嬢が形のいい眉を顰めた。
「アルト様。やはり待つのは無駄じゃありません?」
「あと、少しだけ」
信じたい。
「お待たせ」
背後から声をかけられ、慌てて振り向くと、少年が手に布を持って立っていた。
「おまえ・・・」
「はい、これを着て」
手渡して来たのは少し汚れた生成りのマントだ。
「その姿は流石に目立つからな。そっちのお姫様は頭まで被った方がいいぞ。俺の知ってるお嬢様は気にしないけど」
アリナ嬢は少し抵抗があるのかマントを着る動作がゆっくりになっている。
「今からいくとこはあんまり治安はよくないから、喋んなよ。俺が頑張って聞いてやるから、聞いていたらいい。納得したら後でしっかりと払いは弾んでもらうぜ」
少年は嬉々としていいのける。
そして連れられてやって来たのは裏路地の酒場だった。
中は蝋燭をケチっているのか薄暗くジメジメしている。
「よぉ!」
少年が入るなり挨拶をすると、カウンターにいたガタイのいいの男がダンっとテーブルを叩いた。
「なあにがよぉ・・・だ。ガキがこんな場所に来るんじゃねぇって何度言わせんだ!!」
「ひっ」
大きな声にアリナ嬢が肩を振るわせた。
「おっちゃん、声が大きい。今日は冷やかしじゃねぇよ。セイジョサマ様の噂を知りたいっていう人を連れて来たんだよ」
「聖女様?・・・あぁ?・・・ああっ・・・、ーが言ってた・・・?」
男が小さく少年に呟く。
なんなのであろうー?
「じゃねぇ?よく知らんけど。っか、俺もそろそろ大人の仲間入りしてぇんだけど?」
「ぬかせ。まだガキはガキだ。いけねぇ、
客人すまんな。こっちに座んな」
そう言われ、怖くて動けなくなっているアリナ嬢を支えるようにしてカウンターへと導いた。
「ここは小僧任せた」
「たっく。こんな時は俺にたよるんだから」
「こういうのは適役だろ」
男は少年の頭を豪快になでまわす。
「わかったよ!」
パシリと男の手を振り払うと、少年はその場にいた者や入ってきた者たちにあの女について知っていることはないかと聞き回ってくれた。
この場に慣れているのか大人たちは少年を邪険にするどころか気さくに話をしている。無駄話も多かったが、的確に聞いてくれるのでありがたい。
彼らは僕らのことは眼中に内容だった。
話される噂をただ耳にしていくだけ。あの女のことだけでなく、ありとあらゆる知らない話を聞く羽目になったのだが、それは貴重なことであった。
2時間ほどして少年は戻ってくる。
「こんなもんでいいか。じゃあ、おっちゃんいくわ」
「おうよ!兄ちゃん、お代はあんたが奢ってくれ」
「・・・」
僕は懐に手を入れたまま固まった。
「すまない。こういうところの相場はいくらくらいなんだ?」
「うそっ!はははっ!真面目に聞いてくるなんて笑ける!!んなこと聞いたら吹っかけてくるだろ!」
少年が腹を抱えて笑う。
「うるさい」
「小僧笑ってやるな。そうさな、大事な人に小さなプレゼントするくらいの気持ちでいいさ」
曖昧だが、なんとなくわかった気もした。
お金を払い、男に声をかける。
「ありがとう」
「いや。・・・幸運を祈ってるよ」
男はニヤリと笑い軽く手を振ってくれた。
酒場をでると、再び大通りにむかう。
「ちょっとここで待ってろ」
「おい!!」
そう言って、少年は離れ人混みに紛れていく。
どういうことだ?
「物乞いだったのですかね?」
信用してよかったのだろうかと不安になる。でも少年の眼差しは本当だったと思いたい。
「しばらく待ってみよう」
10分ほどしてもまだ帰ってこないのでアリナ嬢が形のいい眉を顰めた。
「アルト様。やはり待つのは無駄じゃありません?」
「あと、少しだけ」
信じたい。
「お待たせ」
背後から声をかけられ、慌てて振り向くと、少年が手に布を持って立っていた。
「おまえ・・・」
「はい、これを着て」
手渡して来たのは少し汚れた生成りのマントだ。
「その姿は流石に目立つからな。そっちのお姫様は頭まで被った方がいいぞ。俺の知ってるお嬢様は気にしないけど」
アリナ嬢は少し抵抗があるのかマントを着る動作がゆっくりになっている。
「今からいくとこはあんまり治安はよくないから、喋んなよ。俺が頑張って聞いてやるから、聞いていたらいい。納得したら後でしっかりと払いは弾んでもらうぜ」
少年は嬉々としていいのける。
そして連れられてやって来たのは裏路地の酒場だった。
中は蝋燭をケチっているのか薄暗くジメジメしている。
「よぉ!」
少年が入るなり挨拶をすると、カウンターにいたガタイのいいの男がダンっとテーブルを叩いた。
「なあにがよぉ・・・だ。ガキがこんな場所に来るんじゃねぇって何度言わせんだ!!」
「ひっ」
大きな声にアリナ嬢が肩を振るわせた。
「おっちゃん、声が大きい。今日は冷やかしじゃねぇよ。セイジョサマ様の噂を知りたいっていう人を連れて来たんだよ」
「聖女様?・・・あぁ?・・・ああっ・・・、ーが言ってた・・・?」
男が小さく少年に呟く。
なんなのであろうー?
「じゃねぇ?よく知らんけど。っか、俺もそろそろ大人の仲間入りしてぇんだけど?」
「ぬかせ。まだガキはガキだ。いけねぇ、
客人すまんな。こっちに座んな」
そう言われ、怖くて動けなくなっているアリナ嬢を支えるようにしてカウンターへと導いた。
「ここは小僧任せた」
「たっく。こんな時は俺にたよるんだから」
「こういうのは適役だろ」
男は少年の頭を豪快になでまわす。
「わかったよ!」
パシリと男の手を振り払うと、少年はその場にいた者や入ってきた者たちにあの女について知っていることはないかと聞き回ってくれた。
この場に慣れているのか大人たちは少年を邪険にするどころか気さくに話をしている。無駄話も多かったが、的確に聞いてくれるのでありがたい。
彼らは僕らのことは眼中に内容だった。
話される噂をただ耳にしていくだけ。あの女のことだけでなく、ありとあらゆる知らない話を聞く羽目になったのだが、それは貴重なことであった。
2時間ほどして少年は戻ってくる。
「こんなもんでいいか。じゃあ、おっちゃんいくわ」
「おうよ!兄ちゃん、お代はあんたが奢ってくれ」
「・・・」
僕は懐に手を入れたまま固まった。
「すまない。こういうところの相場はいくらくらいなんだ?」
「うそっ!はははっ!真面目に聞いてくるなんて笑ける!!んなこと聞いたら吹っかけてくるだろ!」
少年が腹を抱えて笑う。
「うるさい」
「小僧笑ってやるな。そうさな、大事な人に小さなプレゼントするくらいの気持ちでいいさ」
曖昧だが、なんとなくわかった気もした。
お金を払い、男に声をかける。
「ありがとう」
「いや。・・・幸運を祈ってるよ」
男はニヤリと笑い軽く手を振ってくれた。
酒場をでると、再び大通りにむかう。
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