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 彼からはわたしの声に驚いたのがバタバタと去ってゆく。

 時間の無駄だ。

 傷のある手を洗い、席に戻る。

 教科書がズタズタ。
 今日もらったばかりのものを・・・。
 怒りが湧く。
 教科書がどう作られてるのか知ってるのかしら?
 誰のお金でできていると思っているのかしら?
 税金よ。税金。
 平民、貴族全ての人からでている税金よ。
 
 内容を決める為に学者が集まり、あーでもないこーでもないと考えて作られてるのよ。
 彼らだってタダ働きじゃないのだから給料はいるし、本にする為に印刷代だって馬鹿にならない。印刷工場の作業員にも給料がはらわれているの!!
 どれも無料のボランティアじゃないの。国が依頼してるの。だから税金で賄ってるの!!
 しかも、教科書を買うのには両親から『学費』と言う形から出てるの!

 ただじゃないのよ?
 わかってないの?
 大事にしなきゃならないでしょう!!

 開いた口が塞がらないわ。

「アンジェリーナ嬢、どうかしましたか?」

 さっきの彼が笑う。

「あなた名前は?」
「同じクラスなのにしらないのか?ケニー・ブライド。ブライド伯爵子息だ」

 知らんわ。

「では、はじめに、わたしはアンジュです。人違いと言っておきます。次にブライド伯爵家に教科書代請求します」
「はああ?」
「見ればわかる事をわざわざ口にした。ならば、あなたが犯人でしょう」
「俺がしただと?証拠は?」
「この部屋にいた全ての方です。見てないはずはありませんわよね。今いる方でも半数はいますもの。誰かは見てますわ。もし、見ていないと言うならば、その方も共犯です。知らなかった?まあ、貴族として無能なのですね。
 貴族たる者、足の引っ張り合いは日常茶飯事。そんな世の中を生き抜くには犯罪に気付かないとは・・・まともな生き方は到底無理かと・・・」
 
 まあ、わざと見逃して恩を売る、こともありますけどね。

「教科書一冊。たかがとは思いますが、教科書を買い直すと親が知ればどうでしょう・・・。真面目に受けていないか、学園で何があったと思うのかも・・・。物をも大切にできないのなら・・・ふふっ。ブライド伯爵子息覚悟をしてください。
 後、わたしの名前を間違ったこともお伝えしますね」


 わたしは教科書を鞄に入れると教室から出ていった。
 教室からは彼の怒声が上がった。



 わたしは家に帰ると、侍女のエイテルが出迎えた。

「お嬢様。学園は?」
「それどころでないわ。エイテル。ブライド伯爵に抗議文を。そして、アンジェリーナ・クラウドを調べて」
「詳しく教えてください」

 思う事がたくさんありすぎて端折ってしまった。

 エイテルにお茶を入れてもらいながら今日あった事を話す。

 エイテルは話を理解してくれると部屋をでていった。
 
 
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