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44.彼の姿
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ロイド殿下とソレイユ様の婚約式のを明後日に控えた日、私は休みをとっていた。
ルナ様のこともあって疲れていたのもあったが、セイネ様とリュート殿下の関係が近くなったこともあり、私がいるとお邪魔虫に感じたのもあって忙しい中息抜きをさせてもらったのだ。
すべてを受け入れ運命に身を任すつもりなのか、決意を決めた日からセイネ様は変わられた。背筋が伸び自信が溢れたような顔になった。そんなセイネ様にリュート様は心を奪われたようだ。
互いに伸ばしあっているように思えた。
今頃は2人は静かで親密な時間を過ごしているに違いない。
2人のことは2人の問題なのだから、もう時期お役ごめんになるだろう。
そうなれば、もう図書館にも来れなくなる。
そんな思いもあって、思い残しがないように図書館にきた。
どのみちほとんど読み終わっている。
あとは、例の日記くらいだ。
読もうか少し悩んだが、結局読むことにしたのだ。ルナ様の真珠の話で日記をことを思い出したからだ。
この少年も真珠をもらっていたな・・・と。
隅に隠されたようにある本を持ってくると明るい場所で読み始めた。
◇◇◇◇◇
『レイ』
少年は私の名前を呼ぶ。
なぜだろう。甘い響きがあるのは気のせいだろうか?
少年は私を見るといつも笑いながら駆け寄ってきた。
『見て!身長伸びたでしょう!』
自慢そうにくるりとその場で回ってみせた。
『伸びたわね。もっと伸びるの?それで終わり?』
どのくらい身長は伸びるのだろう。私より大きくなるのだろうか?
興味本位で聞いてみる。
『まだ伸びる予定だよ。格好いい大人になるから待っていてよ』
『格好いい大人ってどんなものなの?』
泡沫人の表現はわからないことがある。
少年は私の質問にちゃんと答えてくれるので好きだ。
『えっと・・・。格好いいは格好いいだよ。レイが見惚れるくらいの男になるから』
『見惚れるくらい?面白いわ。どんなものか楽しみにしてるわ』
頬を膨らませる少年が可愛くて私は笑った。
『これをあげる』
私は一粒の真珠を青年に手渡した。
『これは?』
『誕生日祝いよ。泡沫人は誕生日の祝いに何か送るんでしょう?私が初めて育て物よ。形が悪いけど、それくらいしか贈るものがなかったの。我慢して』
不安になりながら渡す。
『プレゼント』というのを知って何を贈ろうか悩んだ。この間初めて育ててできた真珠をあげることにした。真珠作りは難しい。
形は涙形だったが、色も輝きも満足するものだった。だからあげようと思った。彼に持っていてほしいと。
彼は目は垂れた。すごくすごく大切そうに握りしめてくれる。
『ありがとう。大切にする』
その顔を見てあげてよかったと思った。
しばらくして彼は透けて色のない石をくれた。それはキラキラと輝いていた。
空に透かしてみるとその輝きは増しす。
『綺麗・・・』
『これをレイの首に飾らせてくれない?』
『首?いいわよ』
彼はその石を細かな鎖に通して首にかけててくれた。自分で見ることはできなかったが、海の水に写った自分の胸元が輝いているようだった。
『どう?似合う?』
『似合うよ』
とてもいい笑顔。見ているこっちが照れてしまいそうなくらい飛び切りの表情だった。
『レイ。昨日、浜辺に倒れていた人を助けたんだが。その人はもしかして人魚?』
しばらく彼とは会えていなかった。
久々に会った彼が私に会った直後にそう聞いてきた。私は表情を固くし、頷いた。
『やっぱり』
『どうして・・・わかったの?』
フィレイネのことだ。昨日、薬を飲んで泡沫人になった。
同じ銀髪とはいえあまり似ていないので姉妹だと勘づかれるわけはないと思っていたから、こんなに早くバレてしまったことに驚いた。
『これでも人魚である君と知り合いだよ。人魚は『泡沫人』『光の国』『海の上』っていうし、世間知らずだし、キラキラしたものが好きだからね』
『そんな認識??』
『そう。彼女は喋れないから直接的な表現はないけど、行動が不自然・・・知らないことが多いからね』
『そう・・・』
フィレイネは一体なにをしたのだろう。フィレイネの行動を思うと恥ずかしくなった。
かといって、実は私が早い段階で海の上を行き来しているのは言っていないので、教えることはできない。
『昔のレネを見ているようだった』
幼い頃のように屈託なく笑う。
『もう!あれは忘れてって!』
『ごめん、ごめん』
恥ずかしいのことをいつまでも覚えている彼に水をとばした。
ひとしきり笑い合った後、私は彼に言った。
『彼女をお願いできる?』
『わかった』
彼は頷いてくれた。
なのに・・・。
あんなことが起こるなんて思わなかった。
ごめんなさい。
私が良かれと思ってしたことがあなたを悲しめることになるなんて思わなかったー。
ルナ様のこともあって疲れていたのもあったが、セイネ様とリュート殿下の関係が近くなったこともあり、私がいるとお邪魔虫に感じたのもあって忙しい中息抜きをさせてもらったのだ。
すべてを受け入れ運命に身を任すつもりなのか、決意を決めた日からセイネ様は変わられた。背筋が伸び自信が溢れたような顔になった。そんなセイネ様にリュート様は心を奪われたようだ。
互いに伸ばしあっているように思えた。
今頃は2人は静かで親密な時間を過ごしているに違いない。
2人のことは2人の問題なのだから、もう時期お役ごめんになるだろう。
そうなれば、もう図書館にも来れなくなる。
そんな思いもあって、思い残しがないように図書館にきた。
どのみちほとんど読み終わっている。
あとは、例の日記くらいだ。
読もうか少し悩んだが、結局読むことにしたのだ。ルナ様の真珠の話で日記をことを思い出したからだ。
この少年も真珠をもらっていたな・・・と。
隅に隠されたようにある本を持ってくると明るい場所で読み始めた。
◇◇◇◇◇
『レイ』
少年は私の名前を呼ぶ。
なぜだろう。甘い響きがあるのは気のせいだろうか?
少年は私を見るといつも笑いながら駆け寄ってきた。
『見て!身長伸びたでしょう!』
自慢そうにくるりとその場で回ってみせた。
『伸びたわね。もっと伸びるの?それで終わり?』
どのくらい身長は伸びるのだろう。私より大きくなるのだろうか?
興味本位で聞いてみる。
『まだ伸びる予定だよ。格好いい大人になるから待っていてよ』
『格好いい大人ってどんなものなの?』
泡沫人の表現はわからないことがある。
少年は私の質問にちゃんと答えてくれるので好きだ。
『えっと・・・。格好いいは格好いいだよ。レイが見惚れるくらいの男になるから』
『見惚れるくらい?面白いわ。どんなものか楽しみにしてるわ』
頬を膨らませる少年が可愛くて私は笑った。
『これをあげる』
私は一粒の真珠を青年に手渡した。
『これは?』
『誕生日祝いよ。泡沫人は誕生日の祝いに何か送るんでしょう?私が初めて育て物よ。形が悪いけど、それくらいしか贈るものがなかったの。我慢して』
不安になりながら渡す。
『プレゼント』というのを知って何を贈ろうか悩んだ。この間初めて育ててできた真珠をあげることにした。真珠作りは難しい。
形は涙形だったが、色も輝きも満足するものだった。だからあげようと思った。彼に持っていてほしいと。
彼は目は垂れた。すごくすごく大切そうに握りしめてくれる。
『ありがとう。大切にする』
その顔を見てあげてよかったと思った。
しばらくして彼は透けて色のない石をくれた。それはキラキラと輝いていた。
空に透かしてみるとその輝きは増しす。
『綺麗・・・』
『これをレイの首に飾らせてくれない?』
『首?いいわよ』
彼はその石を細かな鎖に通して首にかけててくれた。自分で見ることはできなかったが、海の水に写った自分の胸元が輝いているようだった。
『どう?似合う?』
『似合うよ』
とてもいい笑顔。見ているこっちが照れてしまいそうなくらい飛び切りの表情だった。
『レイ。昨日、浜辺に倒れていた人を助けたんだが。その人はもしかして人魚?』
しばらく彼とは会えていなかった。
久々に会った彼が私に会った直後にそう聞いてきた。私は表情を固くし、頷いた。
『やっぱり』
『どうして・・・わかったの?』
フィレイネのことだ。昨日、薬を飲んで泡沫人になった。
同じ銀髪とはいえあまり似ていないので姉妹だと勘づかれるわけはないと思っていたから、こんなに早くバレてしまったことに驚いた。
『これでも人魚である君と知り合いだよ。人魚は『泡沫人』『光の国』『海の上』っていうし、世間知らずだし、キラキラしたものが好きだからね』
『そんな認識??』
『そう。彼女は喋れないから直接的な表現はないけど、行動が不自然・・・知らないことが多いからね』
『そう・・・』
フィレイネは一体なにをしたのだろう。フィレイネの行動を思うと恥ずかしくなった。
かといって、実は私が早い段階で海の上を行き来しているのは言っていないので、教えることはできない。
『昔のレネを見ているようだった』
幼い頃のように屈託なく笑う。
『もう!あれは忘れてって!』
『ごめん、ごめん』
恥ずかしいのことをいつまでも覚えている彼に水をとばした。
ひとしきり笑い合った後、私は彼に言った。
『彼女をお願いできる?』
『わかった』
彼は頷いてくれた。
なのに・・・。
あんなことが起こるなんて思わなかった。
ごめんなさい。
私が良かれと思ってしたことがあなたを悲しめることになるなんて思わなかったー。
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