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4.噂話
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あの後、無事に城に帰った私は誰にも見つからないように部屋に戻り服を着替えた。目立つ髪を編み込み予備のメイドキャップに押し込んで整えると急いで部屋を出る。
やはり城内は殿下が船から落ちたことで騒ぎなっていた。
船は嵐が収まるのを待って、周辺を探し夜が明けると同時に一度港に帰ってきているらしい。これから殿下の捜索に小型船が出るという。
そんな噂を耳に入れながら、帰ってきている船に素知らぬ顔で乗り込み仲間たちと合流した。みんなは私がいないことに気にしていなかったのか「もうどこに行ってたの!はい、客室に行ってシーツお願いね」と言ってきた。私は急いで仕事に取り掛かった。
山のような汚れた洗濯物を抱えて城に戻った時に、殿下が見つかったという噂が入ってくる。
がやがやとうるさい中、私たちメイドはただ仕事をこなす忙しい1日を過ごした。
噂では殿下は半日後には目を覚ましたらしい。
それでも、静養するべく数日間はベッドの上だったという。
そして、見つけたくれた女性は丘向こうの修道女らしかった。殿下のために使われたハンカチからわかったらしい。
しかしお礼にと使者を送った時には彼女の姿はそこにはいなかった。
なんでも、行儀見習いとして数ヶ月だけ滞在していたらしくすでに生家に帰ったあとだったとか。
それこそ、人魚なのでは?とまで囁かれている。
あれから半月ほどたつがどれもこれもローテーションで休憩をしている際、噂好きのおばさま方が食堂で話してくれた。殿下の誕生日会も終わり忙しさがひと段落したおばさま方の口にも余裕が出てきたらしく軽くなっている。
どこから情報を得てくるのか?
でも、そのおかげで、話のきっかけさえ見つかれば「人魚」の噂なども聞けるようになっていた。
「ほんと、フィーは人魚が好きだねぇ」
度々聞くのでそんな風にまで言われるようになっている。
「面白い話があれば真っ先に教えてあげるよ」
「人魚なら、アルフ様が詳しいらしいよ」
「この城には人魚にまつわる本があるそうよ」
そうなのか・・・。
おばさま方、情報をありがとう。
偉い人に聞くのは無理でも本は読みたいものである。だがメイドが本があるだろう図書館に入るわけにはいかない。どうしたものかと悩んでしまった。
「みなさんは、人魚を直接見たことはないのですか?」
「ないない!」
「あるわけないわよ。海の上にいるんだから」
「陸に上がったら人魚じゃないでしょう」
声を立て笑い合うおばさま方。
「人間を惑わす人魚様だよ。怖いじゃないか」
「フィーだけだね。そんな事を言うのは」
「そうそう、男を海に引き込む魅惑の歌を歌う人魚なんて怖いだけよ」
ちがう!人魚は本当は寂しい生き物なの!
そう否定できなかった。だから、陸に上がった人魚を私は見た・・・とは言えなかった。
推し黙って聞き役にてっする私。
そんな私にお呼びがかかる。
「フィー。フィーはいる?」
若くして侍女頭になったアンナ様だ。
下働きなどもいるごった返しの食堂に来るなんて珍しい。
「はい。ここです」
話を止め立ち上がる。
「そこにいたのね。アルフ様があなたを呼んでるわ。ついてきて」
よくイケメンで殿下たちからも信頼されていると噂にもあがるアルフ様が私を呼んでいるというのか。
自分は何をやらかした?
思い当たるものがあるとすれば一つだが、あれは・・・大丈夫だと思いたい。他には・・・あるようでないような・・・。
首を傾げてしまった。
やはり城内は殿下が船から落ちたことで騒ぎなっていた。
船は嵐が収まるのを待って、周辺を探し夜が明けると同時に一度港に帰ってきているらしい。これから殿下の捜索に小型船が出るという。
そんな噂を耳に入れながら、帰ってきている船に素知らぬ顔で乗り込み仲間たちと合流した。みんなは私がいないことに気にしていなかったのか「もうどこに行ってたの!はい、客室に行ってシーツお願いね」と言ってきた。私は急いで仕事に取り掛かった。
山のような汚れた洗濯物を抱えて城に戻った時に、殿下が見つかったという噂が入ってくる。
がやがやとうるさい中、私たちメイドはただ仕事をこなす忙しい1日を過ごした。
噂では殿下は半日後には目を覚ましたらしい。
それでも、静養するべく数日間はベッドの上だったという。
そして、見つけたくれた女性は丘向こうの修道女らしかった。殿下のために使われたハンカチからわかったらしい。
しかしお礼にと使者を送った時には彼女の姿はそこにはいなかった。
なんでも、行儀見習いとして数ヶ月だけ滞在していたらしくすでに生家に帰ったあとだったとか。
それこそ、人魚なのでは?とまで囁かれている。
あれから半月ほどたつがどれもこれもローテーションで休憩をしている際、噂好きのおばさま方が食堂で話してくれた。殿下の誕生日会も終わり忙しさがひと段落したおばさま方の口にも余裕が出てきたらしく軽くなっている。
どこから情報を得てくるのか?
でも、そのおかげで、話のきっかけさえ見つかれば「人魚」の噂なども聞けるようになっていた。
「ほんと、フィーは人魚が好きだねぇ」
度々聞くのでそんな風にまで言われるようになっている。
「面白い話があれば真っ先に教えてあげるよ」
「人魚なら、アルフ様が詳しいらしいよ」
「この城には人魚にまつわる本があるそうよ」
そうなのか・・・。
おばさま方、情報をありがとう。
偉い人に聞くのは無理でも本は読みたいものである。だがメイドが本があるだろう図書館に入るわけにはいかない。どうしたものかと悩んでしまった。
「みなさんは、人魚を直接見たことはないのですか?」
「ないない!」
「あるわけないわよ。海の上にいるんだから」
「陸に上がったら人魚じゃないでしょう」
声を立て笑い合うおばさま方。
「人間を惑わす人魚様だよ。怖いじゃないか」
「フィーだけだね。そんな事を言うのは」
「そうそう、男を海に引き込む魅惑の歌を歌う人魚なんて怖いだけよ」
ちがう!人魚は本当は寂しい生き物なの!
そう否定できなかった。だから、陸に上がった人魚を私は見た・・・とは言えなかった。
推し黙って聞き役にてっする私。
そんな私にお呼びがかかる。
「フィー。フィーはいる?」
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「はい。ここです」
話を止め立ち上がる。
「そこにいたのね。アルフ様があなたを呼んでるわ。ついてきて」
よくイケメンで殿下たちからも信頼されていると噂にもあがるアルフ様が私を呼んでいるというのか。
自分は何をやらかした?
思い当たるものがあるとすれば一つだが、あれは・・・大丈夫だと思いたい。他には・・・あるようでないような・・・。
首を傾げてしまった。
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