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番外編.バルト母
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なんなの!なんなのよ、あの女!!
いきなりバルトに紹介され、帝国から迎かい入れたというアルミスとかいう女。
私が住んでいる王都の別宅に来たバルトと女性。凛とした感じの背が高くて気持ちいいほど姿勢が良いのが印象的だったが、私を冷たい黒い瞳で見下ろしてきたのだった。
その目は笑ってなかった。
口は笑ってみていたが、目は笑っていない。
「お義母様ですか?わたしはアルミスと言いますわ。よろしくお願いします」
怖い!
バルトをみれば、あの子の表情はなかった。
無我の境地というのだろうか、目がいってしまっている。
何があったの?
数週間前・・・つまりエフタール風邪がやっと治ったころ・・・エフタール風邪から逃れるように海外旅行を終え王都のにある別宅に帰ってみると手紙が来ていたのだ。
王太子殿下の新しい婚約者である皇妹殿下から、紹介していただいた女性と結婚することになったと・・・。
あの子がサリーナと婚姻関係がなかったことには驚き少しばかりの罪悪感が生まれたが、ほんの少しだけのこと。逆に婚姻関係がなくて喜んだが、そのせいでバルトが王太子殿下の右腕から降ろされることになったのだから、サリーナに対して怒りの方が大きかった。
でも、今回のことを聞いて、再び王太子殿下から信用を得ることができたのだと、喜んでいたのに、これはなんだ!
夫を立てるどころか、威張っているではないか!
この女の横で小さくなっているバルトが可哀想ではないか!
追い出してやる!
私は負けじと見返してやった。
「お義母様。お話がありますわ」
「そう、私もじっくり嫁の勤めを話したいですわね。教育してあげます」
嫁がどんなものか教育してあげるわ。
そう思っていると、彼女はその唇をくいっと持ちあげた。
「お義母様はお金を湯水のように使うのが嫁の勤めですか?」
「はっ?」
何を言った?
彼女はわざとらしくため息をついた。
「お義母様もアルスターニ伯爵に嫁がれてきたのですわよね。つまり『嫁』として。そのお義母様は今、どんなお暮らしをしていますか?」
「えっ?」
「旅行や買い物ばかりですわよね。一月でいくらお使いになったかご存知ですの?」
「それは・・・、私の慰労のためよ」
「慰労?どんな事をなさっての?」
「それは・・・」
くそっ!
この女!
「ご自分のしでかした事を振り返って、お義母様に模範にすべき事があれば、嫁の勤めのお話、並びに教育を受けますが、いかがでしょう?」
何ですって・・・。
言葉が出てこなかった。
「もし、ございませんのでしたら受けなくてもよろしいわね」
にっこりと笑ってきた。
「それと、今までのようにお金は使わせることはできません」
「何ですって!」
「働かざるもの食うべからず」
「へぇ?」
「あなたのお金ではないと言っているのですわ」
「まぁ、アルスター二前伯爵夫人に向かってなんて言い草!」
生意気にもふっと鼻で笑ってきた。
瞬きもしない黒い目が私を見つめてくる。
なんなのよ~!!
「『前』ですよね。あなたの時代は終わったのですわ。『前』ですので、『現』にお従いくださいませ」
くうううぅっ!!
「『前』だからこそ、敬うべきでしょうが!」
「何を?」
素で聞き返してくる。
「あっ?」
「どのような敬うべき事をなさっていましたの?」
「あの・・・」
「お金を使う事を見習えと?いいですわね~。でもそれでは金食い虫でしかありませんが」
「それは・・・」
「過去の帳簿を拝見しましたが、見事なまでの使いよう。違う意味で感服しましたわ」
呆れた目で見てこないでよ。
「前伯爵様が可哀想になるほどの使いっぷり。で、何処を敬いましょうか?
先ほどの話ですが、嫁教育できるという口は何処ですか?何を語ろうとしましたのかしら?ありませんわよね~?
私の母の方が堅実で素晴らしい女性でしたわ。亡くなった先の夫のお義母様はそれはそれは素晴らしい方でしたわ。
あっ!そうですわ!!わたくしがお義母様教育をして差し上げますわ」
「ひっっ!」
私は一目散で部屋に逃げこんで鍵をかけた。
胸の早い鼓動が耳に届いた。
やばい。
あの女はやばい。
バルトのことより、自分が大事だ。
だが、そうはならなかった。
お姉様の屋敷に逃げ込んでいた私は強制的にバルトの屋敷に帰ることになった。お姉様はにこやかに見送ってきた。
絶対にお姉様が知らせたわね!!
どんなに行きたくないと言っても誰も取り合ってくれなかった。
「一緒に住めるなんて素晴らしいではないですか。親孝行しなきゃですわ♡」
笑いながら言わないで。
いや、目が笑ってない!
いや、いやよぉ!
「お義母様。少しは動きませんと。身体にも悪いですわ」
逃げたいです。
無理やりに散歩を強制させないで!
「もう、『お年寄り』枠なんですもの。派手な衣装もいりませんわよね?年相応の持ち物で十分ですわ~」
私の趣味を否定しないでぇ~。
友人には好評だけど、好きに買い物をさせて!心ゆくまでお金を使わせて!
行動を見張らないで!
私を見ないで!
声をかけないで!
笑いながら私を見ないで~!
せめて笑うなら心から笑って~!
バルト!
あなたも何か・・・言ってちょうだい。
ねぇ!バルト。
バルト?
目が死んだ魚のよう・・・。
バルト・・・・・・。
バルト。
サリーナが笑いかけてくる顔を思い出し懐かしく思った・・・。
いきなりバルトに紹介され、帝国から迎かい入れたというアルミスとかいう女。
私が住んでいる王都の別宅に来たバルトと女性。凛とした感じの背が高くて気持ちいいほど姿勢が良いのが印象的だったが、私を冷たい黒い瞳で見下ろしてきたのだった。
その目は笑ってなかった。
口は笑ってみていたが、目は笑っていない。
「お義母様ですか?わたしはアルミスと言いますわ。よろしくお願いします」
怖い!
バルトをみれば、あの子の表情はなかった。
無我の境地というのだろうか、目がいってしまっている。
何があったの?
数週間前・・・つまりエフタール風邪がやっと治ったころ・・・エフタール風邪から逃れるように海外旅行を終え王都のにある別宅に帰ってみると手紙が来ていたのだ。
王太子殿下の新しい婚約者である皇妹殿下から、紹介していただいた女性と結婚することになったと・・・。
あの子がサリーナと婚姻関係がなかったことには驚き少しばかりの罪悪感が生まれたが、ほんの少しだけのこと。逆に婚姻関係がなくて喜んだが、そのせいでバルトが王太子殿下の右腕から降ろされることになったのだから、サリーナに対して怒りの方が大きかった。
でも、今回のことを聞いて、再び王太子殿下から信用を得ることができたのだと、喜んでいたのに、これはなんだ!
夫を立てるどころか、威張っているではないか!
この女の横で小さくなっているバルトが可哀想ではないか!
追い出してやる!
私は負けじと見返してやった。
「お義母様。お話がありますわ」
「そう、私もじっくり嫁の勤めを話したいですわね。教育してあげます」
嫁がどんなものか教育してあげるわ。
そう思っていると、彼女はその唇をくいっと持ちあげた。
「お義母様はお金を湯水のように使うのが嫁の勤めですか?」
「はっ?」
何を言った?
彼女はわざとらしくため息をついた。
「お義母様もアルスターニ伯爵に嫁がれてきたのですわよね。つまり『嫁』として。そのお義母様は今、どんなお暮らしをしていますか?」
「えっ?」
「旅行や買い物ばかりですわよね。一月でいくらお使いになったかご存知ですの?」
「それは・・・、私の慰労のためよ」
「慰労?どんな事をなさっての?」
「それは・・・」
くそっ!
この女!
「ご自分のしでかした事を振り返って、お義母様に模範にすべき事があれば、嫁の勤めのお話、並びに教育を受けますが、いかがでしょう?」
何ですって・・・。
言葉が出てこなかった。
「もし、ございませんのでしたら受けなくてもよろしいわね」
にっこりと笑ってきた。
「それと、今までのようにお金は使わせることはできません」
「何ですって!」
「働かざるもの食うべからず」
「へぇ?」
「あなたのお金ではないと言っているのですわ」
「まぁ、アルスター二前伯爵夫人に向かってなんて言い草!」
生意気にもふっと鼻で笑ってきた。
瞬きもしない黒い目が私を見つめてくる。
なんなのよ~!!
「『前』ですよね。あなたの時代は終わったのですわ。『前』ですので、『現』にお従いくださいませ」
くうううぅっ!!
「『前』だからこそ、敬うべきでしょうが!」
「何を?」
素で聞き返してくる。
「あっ?」
「どのような敬うべき事をなさっていましたの?」
「あの・・・」
「お金を使う事を見習えと?いいですわね~。でもそれでは金食い虫でしかありませんが」
「それは・・・」
「過去の帳簿を拝見しましたが、見事なまでの使いよう。違う意味で感服しましたわ」
呆れた目で見てこないでよ。
「前伯爵様が可哀想になるほどの使いっぷり。で、何処を敬いましょうか?
先ほどの話ですが、嫁教育できるという口は何処ですか?何を語ろうとしましたのかしら?ありませんわよね~?
私の母の方が堅実で素晴らしい女性でしたわ。亡くなった先の夫のお義母様はそれはそれは素晴らしい方でしたわ。
あっ!そうですわ!!わたくしがお義母様教育をして差し上げますわ」
「ひっっ!」
私は一目散で部屋に逃げこんで鍵をかけた。
胸の早い鼓動が耳に届いた。
やばい。
あの女はやばい。
バルトのことより、自分が大事だ。
だが、そうはならなかった。
お姉様の屋敷に逃げ込んでいた私は強制的にバルトの屋敷に帰ることになった。お姉様はにこやかに見送ってきた。
絶対にお姉様が知らせたわね!!
どんなに行きたくないと言っても誰も取り合ってくれなかった。
「一緒に住めるなんて素晴らしいではないですか。親孝行しなきゃですわ♡」
笑いながら言わないで。
いや、目が笑ってない!
いや、いやよぉ!
「お義母様。少しは動きませんと。身体にも悪いですわ」
逃げたいです。
無理やりに散歩を強制させないで!
「もう、『お年寄り』枠なんですもの。派手な衣装もいりませんわよね?年相応の持ち物で十分ですわ~」
私の趣味を否定しないでぇ~。
友人には好評だけど、好きに買い物をさせて!心ゆくまでお金を使わせて!
行動を見張らないで!
私を見ないで!
声をかけないで!
笑いながら私を見ないで~!
せめて笑うなら心から笑って~!
バルト!
あなたも何か・・・言ってちょうだい。
ねぇ!バルト。
バルト?
目が死んだ魚のよう・・・。
バルト・・・・・・。
バルト。
サリーナが笑いかけてくる顔を思い出し懐かしく思った・・・。
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