燐火の魔女〜あなたのために生きたわたし〜

彩華(あやはな)

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二章、学園時代

カリナ 2

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 そんなわたくしを慰めてくれたのはレイドリック殿下だった。
 一つ上の学年だったが、何かとわたくしのことを気にかけ、話しかけてくれる。

「君は頑張り屋だね」

 にこやかに励ましてくれた。 
 そう、わたくしはこの言葉を欲しかったのだ。認めてくれる言葉はわたくしの力になる。

 どんなに頑張ってもお姉様には勝てなかった。必死になっても両親は当たり前のことだと言って誉めてくれず、親友たちは努力をしていることに気づいてくれない。
 だから、殿下からその言葉をかけてくれたとき、嬉しかった。

 ーこの方は、わたくしを見てくれる。この方のためなら頑張ることができる。

 そう思った。

 ーレイドリック殿下が王太子に決まればいいのに・・・

 期待した。レイドリック殿下のために王太子妃教育も頑張れる。どんなに大変なことでもできると思った。
 わたくしの思い描く近い未来を夢見て、頑張り続けた。


 でも、お姉様はわたくしの努力などお構いなしにわたくしの前を行く。
 わたくしが2年生になる前にお姉様は魔術科に編入した。
 どんなに頑張ろうと追いつけない。
 上級生たちはお姉様は天才だと陰で言う。誰もがお姉様に憧れ、興味を持ち畏怖の眼差しを向けるのがわかった。

 わたくしは王太子妃になるのが決まっているのに、みんなはお姉様を見ていた。
 自慢したいのに妬みの方が強くなり、黒くモヤモヤとした感情が増していく。

 クラルテクラリが『あなたはあなたよ~』と言ってくるが、それがなんなのか意味が分からない。

 誰もが求めているのは才色兼備な女性。
 そうならなければならないのだ。
 国のために生きる素晴らしい女性にならないといけない。今のままではお姉様に奪われるかもしれない。
 誰もわたくしを見なくなるかもしれなくなる。

 怖かった。

 そんな中、王太子を決めるためにアスナルド殿下とレイドリック殿下の試合が行われることになった。
 わたくしは国王様、王妃様、ガナッシュ殿下の隣に座りそれを観戦する。

 まだ、拙い魔術しかできないわたくしでもわかるほど素晴らしい戦いだった。
 手に汗を握るとはこういうことを言うのだと実感する。

 わたくしはレイドリック殿下を応援していた。

 もどかしかった。
 未来の王太子妃であるわたくしが決めて良いならレイドリック殿下を選ぶというのに。この試合でアスナルド殿下が勝ってしまうと・・・、嫌だ。わたくしは強く祈った。

 レイドリック殿下が勝ちますように・・・

  そして、レイドリック様が勝った。

 嬉しい!

 アスナルド様が地面に倒れていた。それを助けるレイドリック殿下の姿を見て感激を受ける。

 舞い上がりそうなほど嬉しかった。

 でも、わたくしは見てしまった。


 アスナルド殿下が運ばれていったあと、レイドリック殿下はどこかを見て微笑んだのを。
 わたくしではない誰かに向かってー。

 わたくしは確認した。
 レイドリック殿下が見た先にはアウスラー先生と話をしているお姉様がいた。
 目線はあってはいないとは思う。レイドリック殿下はすぐに顔を背けるのが見えたから。
 でも、レイドリック殿下が去って行く後ろ姿をを見るお姉様の顔が、わたくしにも見せたことのない優しい眼差しだったのを見逃さなかった。

 あんな顔知らない

 手を握りしめた。
 手袋ごしなのに、爪が掌に食い込んだ。

「なんで?」

 いつの間に知り合ったの?
 悔しい。憎い・・・。
 お姉様ばかり・・・許さない・・・

「カリナ嬢?」

 隣でいたガナッシュ殿下がわたくしの独り言を聞いたのか声をかけてきた。

「いえ、なんでもありませんわ」

 わたくしは振り返り、にこりと笑って見せた。
 

 



 


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