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六十二話、アンのこと

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 幼い頃、母様がまだ生きていた時、近所の高齢のおばあちゃんに、悪ガキどもが悪戯をした。わたしはそれを止めに入ったものの、失敗しておばあちゃんを巻き込んで怪我を負わせた。悪ガキたちは、全てわたしせいにした。
 母様は、わたしを叱った。腹が立って家出。と言っても、家の地下にある倉庫に逃げ込んだのだ。
 暗い地下室・・・物音が響き、隙間風で、荷物がはためく。それがお化けにみえて・・・。
 怖くて動けなくて、泣いた。
 見つけてもらえなくて寂しくて・・・。
 そんな時アンが見つけてくれた。

「リア、大丈夫。落ち着いて。大丈夫。わたしがいるから・・・」
 
 抱きしめてくれた。
 温かった。

 あのあと、おばあちゃんが母様にあったことを話してくれたので、無罪方面になった。
 お化け嫌いになったこともいいお仕置きになったと思われたらしい・・・のさ後で知った。


*****

「・・・」

 アンドリュー様はさっと目を逸らしました。

「アン」

 見たことがある。

 そうだ。
 アンだ。
 アン・・・女の子?
 気のせい?
 いや、絶対アン。
 だから、見たことあると思ったんだ。
 アンを大きくしたら、こうなる!!
 ん、じゃあ・・・?

「どういうこと?」

 訳がわかりません。


ぐああああああぁぁぁぁ!


   ひっ!
 いっ、やああああぁぁぁぁっ!!!!

 こ、ここ、お化け屋敷だった!

 ガッツリとアンドリュー様にしがみつきました。アンドリュー様はなぜか笑ってますっ。

 お化け屋敷迷路をでると、マロン様がいました。

「アメリア。すごい悲鳴でしたわよ」

 聞こえてましたか・・・。
 というより・・・。
 アンドリュー様を見ます。
 
 ジリジリ・・・。

 あっ、逃げた!
 
 アンドリュー様は逃げました。

 追いかけます。

「アメリア?!」

 ドレス姿のアンドリュー様、早いです。
 なぜ?
 ドレス捌き見事です。
 確実にアン、です。
 アンならできる!

 追いかけます。
 少しばかり手加減されてる気もしますが、追いかけます。

 例のカゼボに来た時、アンドリュー様は振り返りわたしを抱きとめました。

 お互いに息切れの呼吸音だけが辺りに聞こえる。


「ごめん、リア」
 
 アンドリュー様は謝りました。

「黙ってて、ごめん」
「アン、やっぱりアンなのね・・・」
「・・・」
「アン?」
「この姿・・・」
「?」
「この姿で思い出されるのは、ないだろう・・・」

 ・・・そうこと・・・。

「いつから、気づいてたの?」
「・・・入学時・・・から。ずっと目で追いかけてた」
「なんで言わなかったの?」
「思い出して欲しくて・・・。でも、あの時女の子姿だったの忘れてて、その・・・」


 タイミングを逃したんですね。

 わたしもアンが男だなんて、想像してませんでした。まさか、アンがアンドリュー様だとは・・・。

 では、初恋はいつ?

「アンが・・・女の子でなく、アンドリュー様なのはわかりました」

 側から見ればヤバい雰囲気でしょう。
 誰もいなくてよかった。

 よかったから、素で語り合いましょうかね。
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