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五十四話、誘拐3

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 長い時間だった。
 一度ご飯を持って来てくれた。固いパンに冷めた塩味のスープ。
 二人で文句も言わずに食べた。
 食べなければいざと言う時に動けない。

「少し眠ってください」
「でも・・・」
「いざと言う時に動けないといけません。人が来たら起こしますから、目を閉じるだけでもいいので・・・」
「わかったわ・・・」

  肩にもたれるように眠った。
 ずっと緊張していたのか、ほっとしたような顔で寝ている。
 わたしはあまり動かないようにしながら、靴底を右手で触った。そこに異物・・・。
 そっと引き抜いたのは十五センチほどの仕込み短剣。
 タリオン、バルスさんありがとう。
 バルスさんはタロ=タジェロの古株ーなんでも暗殺者とか・・・なんであんな人がいるんだかーに教えてもらったもの。

 さて、はどこにいるかな?
 サーシャス殿下がいるもの早い解決を求めるはず。
 少なくとも二、三日中にはくるでしょう。

 そのための下準備はしておかないと・・・。
 サーシャス殿下の前で、流石にこれは見せれないわ。
 
 だって、真似しそうだもの。


 ・・・誰が依頼したのかしら・・・?
 セジャルス王国・・・、第一王子である王太子も第二王子も優秀と聞く。
 国王は・・・ちょっとね・・・。
 王妃、第一王女は浪費が激しいらしい。
 サーシャス殿下も・・・。
 国王は王妃や王女に甘いのよね。
 なんでも言うことを聞いちゃうらしい。
 だから国の治安はあまりよくないみたい。
 今・・・王子たちが国王を退位させようとする動きが出てる。その際、王女たちも追いやろうとしているとか・・・。
 
 その関連が強いかな・・・。
 留学中に不慮の事故に見せかけて・・・、その責任をこっちに被せて・・・賠償金?属国?も狙ってる?
 
 怖いよね・・・。
 やだやだ、これだから関わりたくないわ。
 
 だから、かしら。父さんが王族に関わりたくないって言うのは・・・。

 早く帰りたいな・・・。
 ゆっくりお風呂に入って寝たい・・・。
 学園・・・休むしかない。皆勤賞狙ってたのに・・・。仕事だから特別にお休みもらったのに・・・。
 これ、特別休暇にはいるかな~?
 殿下に苦情言わなきゃ。


 ・・・エンリュリッヒ様・・・怪我してないよね・・・


 んっ?なんで、エンリュリッヒ様が出てきた?

 どうした、わたし?
 何か変なもの食べた?
 えっと・・・・・・・・・。
 いや~、折角忘れてたのにっ!!

 うん、これもどれも、あの気持ち悪いのが悪い。あいつのせいだ。すべてあいつらが!
 
 わたしは奴らに八つ当たりをすることを誓った。
 
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