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四十五話、サーシャス視点

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 私はセジャルス王国の第二王女、サーシャス。
 兄が二人と姉が一人いる末っ子。
 特に可愛がられてきた。

 お父様のお仕事は国王です。
 ・・・何をしているか・・・、知らない。国を動かす為のことをしているのでしょう。
 だって、私の仕事じゃないもの。
 お母様もお姉様も、他の夫人や令嬢を集めてお茶会をしてる。
 少し難しい話しで、私には理解できないこともあるけど、「大丈夫よ。心配しなくていいのよ」って言ってくれる。
 だから、私は知らなくていい。

           そう、思っていた。

 あの孤児院に行くまでは。

 子供を育てられない親がいる?怪我や病気で親が死んだ?捨てられた子供?犯罪に巻き込まれた子供?
 
 なに、それ。そんな馬鹿な話があるの?
 この国がおかしいのよ。

 セジャルス王国にはないわ!
 ない、わよね・・・。
 あるはず・・・ない?
 ない、わよね。
 本当に??
 私、城の外を見たことあったかしら?
 私、城の外に出た事がない。
 学園には通ってたわ。
 でも・・・馬車に揺られ、窓にはカーテン・・・、外を見たこと・・・ない。いえ、あっても気にしたことなんて、一度もなかった。
 お父様の治めている国を、知ろうと・・・、知識として知っていても、実際に知ろうとしたこと、ない。
 
 私、今まで何してたの?



「サーシャ。アンドリュー様かっこいいわね」
 
 ラフィスねゆったりした声に、顔を上げた。

「・・・そう?」
「レックス様もいいけど婚約者いるし・・・、そういえば、追っかけしてた、あの男の方はどうしたの?」
「今、こちらで開演してるんですって」
「見に行くの?」
「もちろんよ」

 ほっとする。

 そうだわ。
 こっちにきた理由、彼に会う為でした。
 あの優しい眼差しを独り占めしたい。
 ずっとそばにいて欲しい。
 
 これだわ。
 これが毎日の私よ。
 たわいもない話をするの。
 かっこいい男性の話。
 可愛いドレスや小物の話。
 貴重な宝飾品の話。

 これが、貴族である為の大事なことよ。
 流行に乗って、最先端でいなくちゃならないのよ。その為に、頑張るの。
 他の貴族との交流もその為じゃないの。
 
 私は、ラフィスと楽しく会話した。

 だけど、なぜかしら・・・

 「同じ人間」

 心に突き刺さって、取れない。

 あの少女・・・、叩いてしまった。
 あんなことするつもりはなかったのに。
 謝れ・・・謝らないわ。私は王女ですもの。

 全てあの女のせいなのよ。
 メイと言った、下賎な女の。
 あの女、嫌い。
 嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い大っ嫌い

 なのに、なのに・・・

 どうすればいいの?
 このモワモワとした感情。
 どうすればいいの?
 私はどうしたいのよ?
 教えて欲しい。




 城に帰って、連れてきた侍女に聞いた。
 セジャルス王国には孤児院はあるのか、と。
 彼女は静かに教えてくれた。

「あります。たくさん孤児はいます。ですが、国王様はそれを恥だと思い、口外されません。わたしたちも言えません」と。


 彼女は孤児院出身だと、唇を噛み締めて呟いた。
 
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