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父が部屋に入ってきた。
怖い顔で・・・。
わたしの顔を殴った。
「情けをかけたのが仇になった。アレが死んだ時に殺せばよかった」
父は髪を乱暴に掴むと引きずるように外へ連れ出した。
縄を乱暴にかけ、猿ぐつわされた。
逃げないよ。
喋らないよ。
貴方の言うこと聞くよ。
わたしはシロの地下牢に入れられた。
あの地下室と変わらない。
かなり狭いぐらい。
魔力封じの腕輪をかせられた。
あまり意味ない。
すぐに壊れるよ?
わたしのところに幾人ものだった人が来た。
怖かった。
間接的にみるのと、直接見るのとでは違う。
沢山の人間。
自分を責めるような口調。
呼吸が荒くなるのがわかった。
怖い。
怖い。
これが、恐怖なのだと初めて理解した。
言っている言葉が、意味が理解し難い。
言葉として頭に入ってくるものの、意味として入ってこないのだ。
身を縮め、壁の隙間でただじっとしていた。
みな、わたしを見て、最後はため息と共に去って行った。
義弟とオウタイシ、そして、数人が来た。
初めて見る姿。
胸が痛い。
「おまえか?」
なにが?
「なぜ、彼女の魅了がわかった?なぜといたのだ?」
オウタイシの声はトリのように聞きやすかった。
「ミテ、タ」
片言のようにしか言えない。
「見てた?」
「マル、ス。ワタ、シノ、オト、ウト」
「マルス?」
「知りません。わたしには姉弟はいません」
声が聞けた。
想い描いていたよりも低い声。
そうだ。
わたしは隠された存在。
知らないのは当然。
「何、笑う?」
笑ってる?
わたしが?
笑えてる?
「ワタ、シ、ドウ、ナル?」
「魔女は火刑と決まっている。裁判はおこなわれない。だから・・・、こうして非公式にお礼を言いに来た」
やはり、火刑。
わかっていたこと。
「ソウ。ワカリ、マシタ」
「それで、いいのか?」
「イママデ、イキレタ、キセキ。アノ、チカガ、ワタシノ、セカイ。アノヒ、マルスノ、コエ、キコエタ。アノヒカラ、カワッタ。ズット、ミタ。ソレガ、シアワセ」
言いたいこと言った。
長い言葉を初めて言った。
「家の地下室の、魔女?まさか、手紙も・・・」
マルスの声。
嬉しい。
覚えていてくれた。
あの日の事を。
手紙の事も。
あぁっ、初めて貴方の顔を見れた。
言葉を聞けた。
今日ほどの幸せがあろうか。
涙が溢れた。
嬉しいー
一ヶ月後、広場の中央で、
わたしは見せ物のように磔にされ、火にかけられた。
わたしが自分の扱いを話した事で、
父がわたしを隠匿した罪に問われた。だが、その罪は、わたしが魅了を解いた事で相殺される事になった。わたしがそうお願いした。
だって、あの人は父であって父としての愛情をもらったことないのだから。
あの人はわたしの扱いに困っただけ。
ご飯はくれた。
寝るとこはくれた。
それでいいではないか。
だから、もう、いいのだ。
髪を綺麗に切ってくれて、汚れもない白い服を着せてくれた。
お肉を食べさせてくれた。
温かいスープに柔らかいパン。
嬉しかった。
空は青いと、初めて知った。
青を知った。
葉っぱは緑。
花は・・・きれい?
いろいろな色。
風を知った。
川を見た。
道を通った。
お店を見た。
わたしは幸せだ。
最後の最期で沢山のものを見せてくれた。
マルスが説明してくれた。
幸せだ
足元に火がつけられた。
薪が燃え勢いが増す。
熱い。
肉が焦げる。
あぁっ、これで、わたしの人生は終わる。
それでいい。
悔いもなにもない。
でも、覚えていて欲しい。
マルス
わたしね
貴方のことが好きなの
愛してたの
ずっとずっと
だから、覚えていて欲しい
無理なお願いかな?
心のどこか片隅でいいの
どうか、わたしがいたことを、
覚えていてー
最期に貴方の顔が見れて、
幸せだわ
ーおわり
怖い顔で・・・。
わたしの顔を殴った。
「情けをかけたのが仇になった。アレが死んだ時に殺せばよかった」
父は髪を乱暴に掴むと引きずるように外へ連れ出した。
縄を乱暴にかけ、猿ぐつわされた。
逃げないよ。
喋らないよ。
貴方の言うこと聞くよ。
わたしはシロの地下牢に入れられた。
あの地下室と変わらない。
かなり狭いぐらい。
魔力封じの腕輪をかせられた。
あまり意味ない。
すぐに壊れるよ?
わたしのところに幾人ものだった人が来た。
怖かった。
間接的にみるのと、直接見るのとでは違う。
沢山の人間。
自分を責めるような口調。
呼吸が荒くなるのがわかった。
怖い。
怖い。
これが、恐怖なのだと初めて理解した。
言っている言葉が、意味が理解し難い。
言葉として頭に入ってくるものの、意味として入ってこないのだ。
身を縮め、壁の隙間でただじっとしていた。
みな、わたしを見て、最後はため息と共に去って行った。
義弟とオウタイシ、そして、数人が来た。
初めて見る姿。
胸が痛い。
「おまえか?」
なにが?
「なぜ、彼女の魅了がわかった?なぜといたのだ?」
オウタイシの声はトリのように聞きやすかった。
「ミテ、タ」
片言のようにしか言えない。
「見てた?」
「マル、ス。ワタ、シノ、オト、ウト」
「マルス?」
「知りません。わたしには姉弟はいません」
声が聞けた。
想い描いていたよりも低い声。
そうだ。
わたしは隠された存在。
知らないのは当然。
「何、笑う?」
笑ってる?
わたしが?
笑えてる?
「ワタ、シ、ドウ、ナル?」
「魔女は火刑と決まっている。裁判はおこなわれない。だから・・・、こうして非公式にお礼を言いに来た」
やはり、火刑。
わかっていたこと。
「ソウ。ワカリ、マシタ」
「それで、いいのか?」
「イママデ、イキレタ、キセキ。アノ、チカガ、ワタシノ、セカイ。アノヒ、マルスノ、コエ、キコエタ。アノヒカラ、カワッタ。ズット、ミタ。ソレガ、シアワセ」
言いたいこと言った。
長い言葉を初めて言った。
「家の地下室の、魔女?まさか、手紙も・・・」
マルスの声。
嬉しい。
覚えていてくれた。
あの日の事を。
手紙の事も。
あぁっ、初めて貴方の顔を見れた。
言葉を聞けた。
今日ほどの幸せがあろうか。
涙が溢れた。
嬉しいー
一ヶ月後、広場の中央で、
わたしは見せ物のように磔にされ、火にかけられた。
わたしが自分の扱いを話した事で、
父がわたしを隠匿した罪に問われた。だが、その罪は、わたしが魅了を解いた事で相殺される事になった。わたしがそうお願いした。
だって、あの人は父であって父としての愛情をもらったことないのだから。
あの人はわたしの扱いに困っただけ。
ご飯はくれた。
寝るとこはくれた。
それでいいではないか。
だから、もう、いいのだ。
髪を綺麗に切ってくれて、汚れもない白い服を着せてくれた。
お肉を食べさせてくれた。
温かいスープに柔らかいパン。
嬉しかった。
空は青いと、初めて知った。
青を知った。
葉っぱは緑。
花は・・・きれい?
いろいろな色。
風を知った。
川を見た。
道を通った。
お店を見た。
わたしは幸せだ。
最後の最期で沢山のものを見せてくれた。
マルスが説明してくれた。
幸せだ
足元に火がつけられた。
薪が燃え勢いが増す。
熱い。
肉が焦げる。
あぁっ、これで、わたしの人生は終わる。
それでいい。
悔いもなにもない。
でも、覚えていて欲しい。
マルス
わたしね
貴方のことが好きなの
愛してたの
ずっとずっと
だから、覚えていて欲しい
無理なお願いかな?
心のどこか片隅でいいの
どうか、わたしがいたことを、
覚えていてー
最期に貴方の顔が見れて、
幸せだわ
ーおわり
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