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「わたしが形だけとはいえ、皇帝陛下の従兄妹であり、バウンゼント公爵の妻だからこそ、国での関わりになります」
わたしは変わった。
わたしはバウンゼント公爵の妻になるため、身寄りもないわたしを皇帝陛下の叔父上様であるターナ様が異例にも娘として迎えてくださいました。
そして皇帝妃セシル様は元バウンゼント公爵令嬢。わたしにとって義姉になります。
それが今のわたし。
わたしが歩んだ道です。
もし、わたしが欲しい言葉をくれたなら、皇帝陛下の式に招待するつもりでした。わたしの身内として・・・。
でも、あなた方はくれなかった。
「なんで?あなたがわたくしの姉?嘘よ。わたくしより偉いだなんて・・・」
わたしは聖女に近づく。
美しく化粧を施した白い顔に手を当てる。
温かな肌の温もりを感じる。
「可哀想ね。聖女だと言うだけでちやほやされて。周りの気持ちなん考えず崇められることを当たり前に享受して・・・。苦労も哀しみさえ知らないのにね?そんなものが下々の心がわかるのかしら?どんなに良いことを言おうと響かないの。ねぇ、知ってる?それを『偽善者』と言うのよ」
同じ髪の色。
同じ瞳の色。
目に映るのは同じ顔。
裏と表?
闇と光?
聖女の瞳に映り込む自分を見た。
聖女も私の目を見た。
同じ顔でも全てが違う。
昔のわたしはもういない。
昔のわたしは死んだ。
「あっ、あぁ・・・」
名前が出てこないのでしょう。
アドリア侯爵は膝をつき泣いていた。
アドリア侯爵夫人に至っては何も答えません。
嫌われているどころか、わたしはいない存在だったのだと、改めて思い知らされる。
「カイト。身の振り方はどうする」
エイト様が言う。
「ここまで腐っていたとは思わなかった。僕は国を出て行くよ」
「カイト?!」
「アミー嬢。君の側で見守らせてくれ」
「わたしは何もしませんよ」
「それでもいい。エイト、いやバウンゼント公爵、妹をミィをお願いします」
「・・・。幸せにするさ。ぼくの最愛の妻だからね」
「我が国は・・・」
「さあ、自分でお考えください。腐った国が破滅する前にどうすれば良いかを。立ち直った暁には帝国を使者をお遣しください」
私たちは去ります。
振り返らずにー。
*******
「よかったのか?」
帝国に帰る馬車の中。
エイト様・・・旦那様がわたしを抱きしめながら聞いてきます。
「はい。あの国は既にダメでした。聖女の我儘を当たり前に受け入れ、表面だけ取り繕っていました。聖女自体も何も見ていなかった」
「活気のない寂れた街だったな・・・」
「汚れたものを上手に隠してた。わたしと一緒・・・」
「もし、君の欲しい言葉を、くれたなら?」
「資金援助と提案をして差し上げたわ」
「甘いね」
「ふふっ、そうね」
「・・・アミーの欲しかった、言葉は、なに?」
「『おかえり』・・・」
「・・・そうか。帰ろう。我が家に・・・」
旦那様は痛いほど抱きしめてくれた。
温かな胸のなか。
貴方に逢えたことを感謝する。
わたしの大切な人。
わたしは貴方がいてくれたから、決着をつけることができた。
憎しみに囚われたわたしを冷静にしてくれた。
硬い掌の温もりを感じた。
わたしは、帰る。
ドアを開けたら温かな言葉で迎えてくれる、我が家へとー。
おかえり
その言葉を聞くためにー。
わたしは変わった。
わたしはバウンゼント公爵の妻になるため、身寄りもないわたしを皇帝陛下の叔父上様であるターナ様が異例にも娘として迎えてくださいました。
そして皇帝妃セシル様は元バウンゼント公爵令嬢。わたしにとって義姉になります。
それが今のわたし。
わたしが歩んだ道です。
もし、わたしが欲しい言葉をくれたなら、皇帝陛下の式に招待するつもりでした。わたしの身内として・・・。
でも、あなた方はくれなかった。
「なんで?あなたがわたくしの姉?嘘よ。わたくしより偉いだなんて・・・」
わたしは聖女に近づく。
美しく化粧を施した白い顔に手を当てる。
温かな肌の温もりを感じる。
「可哀想ね。聖女だと言うだけでちやほやされて。周りの気持ちなん考えず崇められることを当たり前に享受して・・・。苦労も哀しみさえ知らないのにね?そんなものが下々の心がわかるのかしら?どんなに良いことを言おうと響かないの。ねぇ、知ってる?それを『偽善者』と言うのよ」
同じ髪の色。
同じ瞳の色。
目に映るのは同じ顔。
裏と表?
闇と光?
聖女の瞳に映り込む自分を見た。
聖女も私の目を見た。
同じ顔でも全てが違う。
昔のわたしはもういない。
昔のわたしは死んだ。
「あっ、あぁ・・・」
名前が出てこないのでしょう。
アドリア侯爵は膝をつき泣いていた。
アドリア侯爵夫人に至っては何も答えません。
嫌われているどころか、わたしはいない存在だったのだと、改めて思い知らされる。
「カイト。身の振り方はどうする」
エイト様が言う。
「ここまで腐っていたとは思わなかった。僕は国を出て行くよ」
「カイト?!」
「アミー嬢。君の側で見守らせてくれ」
「わたしは何もしませんよ」
「それでもいい。エイト、いやバウンゼント公爵、妹をミィをお願いします」
「・・・。幸せにするさ。ぼくの最愛の妻だからね」
「我が国は・・・」
「さあ、自分でお考えください。腐った国が破滅する前にどうすれば良いかを。立ち直った暁には帝国を使者をお遣しください」
私たちは去ります。
振り返らずにー。
*******
「よかったのか?」
帝国に帰る馬車の中。
エイト様・・・旦那様がわたしを抱きしめながら聞いてきます。
「はい。あの国は既にダメでした。聖女の我儘を当たり前に受け入れ、表面だけ取り繕っていました。聖女自体も何も見ていなかった」
「活気のない寂れた街だったな・・・」
「汚れたものを上手に隠してた。わたしと一緒・・・」
「もし、君の欲しい言葉を、くれたなら?」
「資金援助と提案をして差し上げたわ」
「甘いね」
「ふふっ、そうね」
「・・・アミーの欲しかった、言葉は、なに?」
「『おかえり』・・・」
「・・・そうか。帰ろう。我が家に・・・」
旦那様は痛いほど抱きしめてくれた。
温かな胸のなか。
貴方に逢えたことを感謝する。
わたしの大切な人。
わたしは貴方がいてくれたから、決着をつけることができた。
憎しみに囚われたわたしを冷静にしてくれた。
硬い掌の温もりを感じた。
わたしは、帰る。
ドアを開けたら温かな言葉で迎えてくれる、我が家へとー。
おかえり
その言葉を聞くためにー。
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