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4.父
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一冊の本を前に、わたしは力が抜けた。
フィオナの双子の姉が愛読していた本。
獣の引っ掻かれた傷がついて、ボロボロになった本。
わたしは何をしていたのか?
あの子の声も姿さえ思い出せるものが存在しなかった。
わたしの娘は二人いたはずなのに、思い出せるのはフィオナ一人。
フィオナの声と姿しか思い出せない。
いつ寝返りをして、いつ言葉を発し、いつ一人で歩いたのか?
フィオナは思い出せる。
フィオナのことは妻と会話した内容も昨日のように思い出せるのに、あの子のことは、思い出すことさえできない。見たことさえないのではなかろうか・・・。
いや、気にしたことがあっただろうか?
いるだけの存在だった。
いて当然。
ただそれだけ。
あの子はわたしのことを呼んだことがあっただろうか?
わたしはあの子の名前を呼んだことがあっただろうか?
何が好きなのかさえ知らなかった。
何が嫌いだったのかさえわからない。
あの子の名前は誰がつけたのだろうか?
記憶がなかった。
悲しさより不甲斐なさの方が大きくて愕然とした。
わたしはあの子を娘として扱っていたのか?
あの子がいなくなって、2日。
フィオナの浄化をするにあたり、力を消耗したため熱をだした。
誰もが、フィオナを心配した。
熱が下がって、落ち着いた時初めて、あの子がいないことが発覚した。
それまで、誰も気にしていなかった。
あの子の世話を任せた、メイドと執事がその日に気づいたと言うのに、捜査の命令はわたしの手によって有耶無耶にしていた。後回しにしたのだ。
フィオナのことだけしか見ていなかった。
わたしの責任だった。
やっと探しだす。
森の中、崖の手前でこの本が落ちていた。
崖から落ちたのだろうと、結論にいたり捜査は打ち切りになった。
わずか半日の事だった。
妻は言った。
「フィオナでなくてよかった」と。
言葉を失った。
「『聖女』でなくて良かった」
あの子に申し訳なかった。
妻は『聖女』であるフィオナを愛しているのだと気づいた。
妻は悲しまなかった。
フィオナを大事に抱きしめ、よかったと幾度も呟くだけ。
カイトは部屋で呆然としている。
わたしと同じくして、改めて妹の存在に戸惑っているようだった。どう受け止めていいのかわかっていなかった。
あの子につけていたメイドは死んだ。
責任を取った。
執事と乳母もやめると言ってきた。
泣いていた。
二人は言った。
「お嬢様の名前はわかりますか?」と。
確か・・・
なんだった?
なんと言う名前だった?
「ミィです。わたしたちがつけました」
そうだ。
ミィ、だ。
フィオナが生まれ王家や神殿から人がきて慌ただしかった。
執事にあの子のことを見てくれと言われたのに、わたしは乳母に全てを任して、フィオナを見ていた。
あの子の名前さえつけなかった。
顔も見ていなかった。
見たのは、フィオナ、だけ。
わたしは父ではなかった。
わたしはあの子にとってなんだったのか?
わたしは悲しむ資格はなかったのだ。
涙は出ることがなかったー。
フィオナの双子の姉が愛読していた本。
獣の引っ掻かれた傷がついて、ボロボロになった本。
わたしは何をしていたのか?
あの子の声も姿さえ思い出せるものが存在しなかった。
わたしの娘は二人いたはずなのに、思い出せるのはフィオナ一人。
フィオナの声と姿しか思い出せない。
いつ寝返りをして、いつ言葉を発し、いつ一人で歩いたのか?
フィオナは思い出せる。
フィオナのことは妻と会話した内容も昨日のように思い出せるのに、あの子のことは、思い出すことさえできない。見たことさえないのではなかろうか・・・。
いや、気にしたことがあっただろうか?
いるだけの存在だった。
いて当然。
ただそれだけ。
あの子はわたしのことを呼んだことがあっただろうか?
わたしはあの子の名前を呼んだことがあっただろうか?
何が好きなのかさえ知らなかった。
何が嫌いだったのかさえわからない。
あの子の名前は誰がつけたのだろうか?
記憶がなかった。
悲しさより不甲斐なさの方が大きくて愕然とした。
わたしはあの子を娘として扱っていたのか?
あの子がいなくなって、2日。
フィオナの浄化をするにあたり、力を消耗したため熱をだした。
誰もが、フィオナを心配した。
熱が下がって、落ち着いた時初めて、あの子がいないことが発覚した。
それまで、誰も気にしていなかった。
あの子の世話を任せた、メイドと執事がその日に気づいたと言うのに、捜査の命令はわたしの手によって有耶無耶にしていた。後回しにしたのだ。
フィオナのことだけしか見ていなかった。
わたしの責任だった。
やっと探しだす。
森の中、崖の手前でこの本が落ちていた。
崖から落ちたのだろうと、結論にいたり捜査は打ち切りになった。
わずか半日の事だった。
妻は言った。
「フィオナでなくてよかった」と。
言葉を失った。
「『聖女』でなくて良かった」
あの子に申し訳なかった。
妻は『聖女』であるフィオナを愛しているのだと気づいた。
妻は悲しまなかった。
フィオナを大事に抱きしめ、よかったと幾度も呟くだけ。
カイトは部屋で呆然としている。
わたしと同じくして、改めて妹の存在に戸惑っているようだった。どう受け止めていいのかわかっていなかった。
あの子につけていたメイドは死んだ。
責任を取った。
執事と乳母もやめると言ってきた。
泣いていた。
二人は言った。
「お嬢様の名前はわかりますか?」と。
確か・・・
なんだった?
なんと言う名前だった?
「ミィです。わたしたちがつけました」
そうだ。
ミィ、だ。
フィオナが生まれ王家や神殿から人がきて慌ただしかった。
執事にあの子のことを見てくれと言われたのに、わたしは乳母に全てを任して、フィオナを見ていた。
あの子の名前さえつけなかった。
顔も見ていなかった。
見たのは、フィオナ、だけ。
わたしは父ではなかった。
わたしはあの子にとってなんだったのか?
わたしは悲しむ資格はなかったのだ。
涙は出ることがなかったー。
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