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 アーサー様にの熱が下がってほっとしている。
 ずっと熱にうなされて眠ったままじゃないかと不安だった。だから黒くて綺麗な目が私を映してくれたのを見て、どれだけ安堵したか。

 あの目を見て、一層自分の気持ちを自覚する。
 どうすればいいのだろう。
 きっと、私の思いは迷惑になる。
 彼にとって私は研究を一緒にするパートナーであって、それ以上ではない。

 彼が私の気持ちを知ってしまったら、今の関係は終わりかもしれない。
 
 第一、こんな傷のある女を好きになるわけがない・・・。
 なぜだろう。帝国に来てからはじめてマルス様の顔が浮かんだ。トルスター国の学園で言われ続けた心無い言葉が耳元で聞こえる。
 思い出すな・・・。
 帝国は違う。

 気持ちを切り替えるためにエマに聞く。

「私になんのようなの?」
「医師が来てるから、ついでにノエルも見てもらうのよ」
「私も?」

 私、どこか悪かったかしら?
 風邪?いえ、元気よ。風邪症状といわれる倦怠感や関節痛、頭痛、発熱も咳もない。

「いいから」

 そう案内されたのは応接室だった。

 医師とエマの母親、あとミリア様がいる。

「言っておきますが、わたしは内科医ですから、詳しくはわかりませんよ」

 医師はそう前置きをして、私の左目を見てくれた。

「あのっ??」

 どうして目を?
 怪我をして以来、目の診察などしていない。

「少し見え方もみますよ」

 訳のわからない状態でいわれがまま視力検診を受けた。

「左目の視力がかなり悪いですね」
「「「やっぱり」」」
 
 私以外の三人の声が重なる。

「髪で隠してることでの見え方に影響はあるものなの?」
「いえ、きっと傷自体の影響でしょう。元来、目の角膜が傷ついても自己修復がありますので自然に治るものですが、怪我することで稀に視力が落ちることがあるそうです。失礼ですがその傷はいつできましたか?」

 医師に問われ、正直に傷のできた経緯を話した。
 エマたちの表情が一瞬にして鬼の形相になる。
 あまりの女性陣の殺気に医師はハンカチで額の汗を拭き始めた。

「では、その時の草の汁も影響の一つかもしれませんね。左右の視力に違いがあると段差がわかりづらいといいますから、転けやすいのはそのせいかと」

 はじめての場所でよく転けるのはそのせいか・・・。そうなのかと、納得してしまう。
 
「眼鏡がある方がいいもの?」
「それは、あるに越したことないですね。今のところは大きな怪我はされてはないようですが、階段踏み外さないとは限りませんから」

 ばっと、誰もが私を見てくる。不安やまさかといった眼差しに慌てた。
 
「流石に階段を踏み外したことはないですから」

 うん、ない。
 階段から下りる際は念の為に手すりを持つようにしてるから。

 だが、三人は鼻息荒くする。

「いえ、今すぐ作りましょう!」
「賛成だわ!」
「じゃあ、どんなのにする?」

 私を取り残し、三人は意気揚揚と相談を始めたのだった。
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