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43.マルス視点

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 学園のどこを探してもあの美しい銀色の髪はーノエルの姿は見えない。
 すでに婚約が破棄されたのだから気にしないでおこうと思っていても、無意識に彼女を探していた。
 そんな中、彼女がすでに帝国に留学した噂を耳にする。

 留学の話がでてからすぐに婚約解消が決まり、それからまだ1ヶ月経つかどうかといったところなのに、いくらなんでも早すぎではないか?まるで僕から逃げるように去ったように感じだ。

 まさか・・・。

 

 「金で留学の資格を買って逃げたんだ」

 そんな噂話が流れていた。

 あのノエルがそんなことをするわけはないのは僕が一番わかっている。でもそれを否定するものはいなかった。



「よかったわ。ねっ、マルス様」 

 胸元がぱつぱつで、いつボタンが吹き飛ぶがわからない制服でケティが嬉しそうに擦り寄ってきた。
 たくさん視線が彼女の胸に集まっている。そういう自分も意識してしまう。

「そう、だな・・・」
「もう。もっと喜べばいいのに。マルス様。ランチをご一緒してくださいな」
「あのっ、私たちもご一緒してもいいですか!?」

 必死な顔の3人の女生徒からも昼の誘いをうけた。
 
「あぁ。いいよ」
「もうっ!!」

 ケティが不満の声をあげるのと対象に彼女たちは喜び合う。

 婚約を解消してからまだ婚約者のいない女性たちからのアプローチが激しい。
 ランチに誘われたりお茶に誘われることが多くなった。
 そこで彼女たちは自分がいかに魅力的かをアピールしてくる。
 趣味の話だけでない。どんなことが得意で、将来の僕のために何ができるのか、いかに自分の価値があるかをプレゼンしてくるのだ。

 この日のケティのアピールはすごかった。

「マナー講師にお墨付きをいただきましたの。そこらにいる女性より私の方が優れていますわ」

 胸を張って言うのでピチピチの胸元が一層強調される。
 他の女性とさえ、その膨らみに圧倒され凝視し、すぐにそらす。

 僕も気を逸らすようにずっと気になっていたことを聞いてみた。
 
「君は僕にはもったいないよ。なぜ、なんの取り柄もない僕をこんなに思ってくれるんだい?」
「それは・・・」

 ケティは顔を赤らめた。他の女の子たちもソワソワした態度をとる。

「マルス様はかっこいいですもの」
「それにお優しいですわ」
「努力家でいらっしゃいますもの」
「あと、人当たりがよいので、ご友人が多くいらっしゃいますわ」

 こうやって、学園に入ってから知ったことだが、僕の容姿はいいらしい。
 特にトルスター国の王族の象徴ともいえる、くすみのない金色の髪と宝石のような緑の瞳。昔から太陽信仰があるため太陽の金色と植物の繁栄をイメージさせる緑色は女性にとっては憧れの色といっともいい。
 パートナーに求める色にまでなっている。
 
「マルス様の髪や目の色すごく素敵ですわ」
「顔つきも端正な顔ですし」
「涼やかな目元が良いですわ」
「鼻や口元のバランスも素晴らしいわ」

 面と向かって褒められるのも悪い気はしない。嬉しくて思う。

「将来性がありますわよね」
「はい。今回のテストの結果は上位でしたわよね」
「まぁ、そうだったな」

 そう先日、テストの結果が出た。
 なんとか・・・なんとか、上から数えた方が早い程度には点がとれた。

「それにわたしの従兄のブライドとも仲がいいでしょう」

 たしかにブライド・ホッチャー侯爵令息は仲がいい。彼は一つ学年が上の皇太子殿下のご友人がでもある。そんな彼と親しくしているから、そんなことをいうのだろう。

「人当たりがよく、社交的ですもの」

 ・・・・・・そうなのか?
 ただ、必死についていこうとしていたのだが・・・。
 そうか・・・、僕は社交的といっていいのか・・・。

 女の子たちの話を聞いて自信を持つことができた。
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