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41.アーサー視点

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 トルスター国をでてから、どうも調子がおかしかった。
 調べたり知ったことをまとめることさえできない。

 集中しているつもりなのに聞き間違いや書きミスをする。それに対して何度もライールに叱咤された。


 目的の国に着いて、宿泊施設に案内された後、ライールに部屋に呼び出される。

「どうしたよ?」
「わからない・・・」
「はぁ・・・、悩みがあるなら口に出せ。このままじゃぁ、使いめもんにならないだろ」

 形のいい眉が寄るのを見て項垂れる。
 僕は何にたいして苦しいのかかいつまんで話す。
 話すうちにライールの表示が険しいものになったり、呆れたものにと変化してゆく。

「待て待て!なぜそうなる?」

 小さい呟き。

「ええっ。いいか?いや、ちょっと・・・」
「ライール」
「いや、こっちのことだ。っか、アーサー。悪い、その正体は自分で掴むべきだ。俺の口からはとてもじゃないが言えん。ただ言えることは、肉体的病気ではない。個人差にはよるが、大概の人が通る悩みであり、避けて通れない試練だ」

 ガッチリと肩を捕まれ力説された。

「ライールも?」
「俺は・・・・・・、ないな。妹を受け入れる人物でないと無理だな・・・。アーサー・・・」

 ライールの声が低いものに変わる。
 何故こんなにも怖い顔をしているのか?

「ライール?」
「妹が学園で虐められいる。どうやればぎったんぎったんに報復できると思う?どうやれば地獄に落ちる・・・?」
「怖い・・・」
「す、すまない・・・。あっ、アーサー。もし妹に会って失礼なことをしたら・・・お前も覚悟しとけよ」

 目がいってしまっている。これは、本気マジなやつだ・・・。
 誰だよ。ライールを怒らせたのは。こっちにとばっちりが来るだろうー!

 それからは僕の悩みはそれどころではなくなった。毎日、ライールから妹の仇うち方法を考えさせられれば・・・。

 ともかく、その後も三ヶ国を周り、またトルスター国に戻った。
 
 急いで図書館に行ってみても彼女の姿はどこにもない。司書のお姉さんに聞けば、彼女の個人情報は教えられない言われた。唯一教えてもらえたのは当分来ることはないとだけ。
 
 そんな・・・・・・。
 
 愕然とする。
 ふらふらと帰っていると、所用で外出していたライールに会った。

「ライール・・・?どうした??」
「会えなかった・・・」

 涙が止まらない。
 彼女に会えないなんて・・・。図書館にいけば会えると思っていた。だから、手紙だけでかまわないと・・・。

「あらま。じゃぁ、これやる」

 彼は泣く僕に、手に持っていた。十数枚の紙を渡してきた。

「なんだ?」
「いいから読め。ついさっき学園から貰ってきたやつだ」

 仕方なく読んでいく。
 えっ・・・これは・・・!彼女と研究した事柄だ。
 自然と涙がひっこんでいた。

 初めのページには『ノエル』とだけ書かれている。
 ・・・彼女なのか?

 名前を知らないから本人かわからない。

 ライールを見ても答えはくれなかった。

「この著書は?」
「帝国に留学したらしいぞ」
「帝国!?」

 祖国にこれを書いた人がいる??

 もっと読みたい。
 会いたい・・・。彼女だったら・・・。

「帰るか?」
「帰る」

 即決で決めた。

「じゃあ、手続きしようか」

 ライールは最後まで楽しそう。
 この人はなんでも楽しんでしまうんだなー。

 ライールに手続きをしてもらい、僕は急いで帝国に帰る準備をした。

 彼から手紙を預かったりもする。

 早く、早く会いたくて・・・。読みたくて。

 あまりに興奮して周りが見えずにいた。

 だから、彼女がやはり思っていた人でよかったのもあり、感情が爆発し僕の暴走で彼女を怖がらせてしまう。やってはならないことをした。

 落ち込む。

 なんてことを・・・。

 それでも彼女の論文を読んだ。やっぱりすごい。ここまで突き詰めてかけるなんて、尊敬する。
 
 興奮気味に声を掛ければ叔父に注意された。

 そして、彼女は僕を警戒する。

 でも、彼女は改めて自己紹介してくれた。
 そこで知る事実。
 彼女がライールの妹だった。


 彼は知っていたはずだ。知っていてわざと言わなかった。なんのために・・・?

「どうやれば地獄に落ちる・・・?」

 以前話していたセリフが聞こえた気がした。背筋がゾワリ・・・。

 叔父貴や従妹エマが笑っている。

 はっきり言おう。

 色々な意味で終わった・・・。
 ライールに殺されても文句言えねぇっ!!!
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