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39.アーサー視点

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 それから毎日、彼女とは本を読むか、ひたすらその内容に対して話合いをして、メモをとっていくだけをしていた。

 そんな時、彼女は左目を隠すようにしていた髪を耳にかける。
 さりげない行為なのに自然と目がゆく。

 女性の行動は美しいのだな、と感じるのを誤魔化すように気になっていたことを聞く。

「ずっと思ってたんだが、本を読むのに邪魔じゃないのか?」

 そんな言葉に彼女は顔を上げる。

「それ・・・」

 彼女の左目には青い縦の模様が入っていた。

 綺麗だ。
 銀色の髪に水色の瞳。白い肌に浮かぶ一本の模様が彼女に似合っている。

 だが、彼女は慌て髪をおろして左目を隠した。手で目を覆い震える。

 彼女の触れられたくない・・・心の傷に踏み込んだ・・・?。

 違う話題を・・・。そうだ。以前読んだ本のなかにー。

刺青タトゥーだよな」
刺青タトゥー?」

 案の定、彼女がくいつく。よしっ!

「えっ?知らない?じゃぁ?あれ?」

 アレをどう言えばいいだろう・・・。

「これは・・・怪我でできたの・・・」
「怪我?」

 怪我で?だとしたら、変わらないよな。きっとどこかにアレに類する本があるはず。

 僕は立ち上がり探しに行った。

 意外に目的のものが早く見つかり、帰ってみると、彼女は泣きそうな顔で本を見つめていた。
 
 そんな顔してほしくないな・・・。
 
 素知らぬ顔をして持ってきた5、6冊の本を彼女に見せた。
 不思議そうな顔で見てくるのでちょっとだけ意地悪そうに笑ってみた。

「あったあった」

 僕は本を置くとページを開く。

「南方の文化に刺青タトゥーを男性だけでなく女性にも入れる文化があるらしい。俺は本でしか見たことがないが、腕や背中に紋様を入れたり絵柄を入れることもあるみたいだな」

 本には手書きの挿絵があった。確かにうずまきや三角といった幾何学紋様のほか花や動物の絵が腕や背中に描いてある。


「ファッションというのもあるが、権力の象徴や健康、幸せを願うために彫られた例もあるようだな。一部の地方では、区別や認識のためや、その人の罪の証として彫る場合もあるみたいだ。その時代や文化に対しても意味合いが変わってる」

 実際もう少し詳しく説明してあげたいが、あまり深く読んでない。以前サラッと読んで覚えた知識を引っ張り出して話をした。あぁっ、もっと勉強しとくべきだった。

 でも、彼女の表情が和らいだのはわかった。挿絵を見て目をキラキラさせている。そして、軽やかに声を出して笑ってきた。

「んっ?なにがおかしい??」 

 なんで、笑われるんだ?
 

「変な人」 
「は?失礼だな、君は」

 なんだろう。
 他人から「変人」と呼ばれる慣れていた。でもその顔はあまりいいものじゃない。眉をしかめたり、呆れていたりしていた方が多い。壁を作ってなるべく関わらないでおこうとする態度がほとんどだった。

 笑われながら「変な人」なんていわれたことはない。

 だからくすぐったく感じる。
 
 嬉しい。そんな不思議な感じがした。

 
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