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30.エマ視点
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早足で叔父様の研究室に行く。
軽くノックをして部屋に入った。集中している彼らにはノック程度の音は入らないのは知っている。
案の定、部屋に入ると叔父様とノエルは真剣な声でディベートをしていた。
おどおどしたノエルはいない。銀色の長い髪が邪魔にならないように後ろにまとめている。
叔父様もノエルの傷が気になったことがないのか、わたしが知る限り話題にしたことはなかった。
「君の視点は面白いね・・・」
ノエルの説明を受け、叔父様は感心している。
仲のいい二人を少しの間、眺めた。
叔父様は結婚をしていない。お付き合いしている方がいるかもわからないが、研究室にいつもこもっているのだからきっといないと思う。だからはじめは中年とはいえ、未婚の男性である叔父様のもとにノエルを置いて置くのはどうかと思っていた。
この二人がそんな関係に・・・と思ったものの杞憂だったようだ。今では親子のように見えた。
二人とも研究肌の似たもの同士なのだろう。
「エマ?」
先にノエルが気づいてくれる。
「おや?エマか。どうしたのかい?」
叔父様もわたしの姿を見て笑って問いかけできた。
「ノエルのおかげで部屋が綺麗ですね」
つい、そんなことを言う。
「全くだよ。いい子が入ってくれたよ。でも、よくこけるのはどうかと思うけど」
「先生が床に物をすぐ置くからです」
「君が注意散漫なだけだよ」
本当に仲が良さそう。
それを確認してから、本題にはいる。
「叔父様。アーサーが帰ってくるそうよ」
叔父様は驚いた表情をした。
「やっとか・・・」
「アーサー?」
ノエルが首を傾げるので説明する。
「私の従兄よ。ロマニズ公爵家の次男で、あいつも変わり者なの。問題児っていう方が正確かもしれないんだけど・・・。訳あって隣国に留学したはずが、そこに来た他国の外交官と仲良くなって、その彼について諸国を巡ることにしたど変人ね」
「あの時は・・・僕の助手だからと・・・手続きが面倒だった・・・」
遠い目をしている叔父様にイラッとする。
「何言ってるのよ。そのほとんどを学園長先生に丸投げして、書類はわたしが運んだのよ。叔父様はそれにサインだけしたんでしょ!」
「そうだったか?」
「そうよ!!」
あの時は大変だった。まだ未学生だってわたしを呼び出し、何度学園長室とこの研究室を行き来したことか。
思い出すだけでうんざりしてくる。
「過ぎたことは置いて、そうか、帰ってくるか~」
楽しそう。
きっと土産話を楽しみにしてるんだろうと察することができた。
でも、どうなるのだろう。
ノエルを見る。
案の定、ノエルの顔は引き攣っている。
今の環境が変わるのだから、また一から対人関係を作らないといけないことを怖がっているのだろう。
アーサーとノエルがうまくやっていけるか、わたしも不安だった。
こればかりは会ってみないとわからない。
でも、アーサーなら、ノエルの傷なんて気にしないとは思うのだが、いかんせん、アーサーはわたし以上に口が悪い。
大丈夫かしら?
胃が痛くなりそうだった。
軽くノックをして部屋に入った。集中している彼らにはノック程度の音は入らないのは知っている。
案の定、部屋に入ると叔父様とノエルは真剣な声でディベートをしていた。
おどおどしたノエルはいない。銀色の長い髪が邪魔にならないように後ろにまとめている。
叔父様もノエルの傷が気になったことがないのか、わたしが知る限り話題にしたことはなかった。
「君の視点は面白いね・・・」
ノエルの説明を受け、叔父様は感心している。
仲のいい二人を少しの間、眺めた。
叔父様は結婚をしていない。お付き合いしている方がいるかもわからないが、研究室にいつもこもっているのだからきっといないと思う。だからはじめは中年とはいえ、未婚の男性である叔父様のもとにノエルを置いて置くのはどうかと思っていた。
この二人がそんな関係に・・・と思ったものの杞憂だったようだ。今では親子のように見えた。
二人とも研究肌の似たもの同士なのだろう。
「エマ?」
先にノエルが気づいてくれる。
「おや?エマか。どうしたのかい?」
叔父様もわたしの姿を見て笑って問いかけできた。
「ノエルのおかげで部屋が綺麗ですね」
つい、そんなことを言う。
「全くだよ。いい子が入ってくれたよ。でも、よくこけるのはどうかと思うけど」
「先生が床に物をすぐ置くからです」
「君が注意散漫なだけだよ」
本当に仲が良さそう。
それを確認してから、本題にはいる。
「叔父様。アーサーが帰ってくるそうよ」
叔父様は驚いた表情をした。
「やっとか・・・」
「アーサー?」
ノエルが首を傾げるので説明する。
「私の従兄よ。ロマニズ公爵家の次男で、あいつも変わり者なの。問題児っていう方が正確かもしれないんだけど・・・。訳あって隣国に留学したはずが、そこに来た他国の外交官と仲良くなって、その彼について諸国を巡ることにしたど変人ね」
「あの時は・・・僕の助手だからと・・・手続きが面倒だった・・・」
遠い目をしている叔父様にイラッとする。
「何言ってるのよ。そのほとんどを学園長先生に丸投げして、書類はわたしが運んだのよ。叔父様はそれにサインだけしたんでしょ!」
「そうだったか?」
「そうよ!!」
あの時は大変だった。まだ未学生だってわたしを呼び出し、何度学園長室とこの研究室を行き来したことか。
思い出すだけでうんざりしてくる。
「過ぎたことは置いて、そうか、帰ってくるか~」
楽しそう。
きっと土産話を楽しみにしてるんだろうと察することができた。
でも、どうなるのだろう。
ノエルを見る。
案の定、ノエルの顔は引き攣っている。
今の環境が変わるのだから、また一から対人関係を作らないといけないことを怖がっているのだろう。
アーサーとノエルがうまくやっていけるか、わたしも不安だった。
こればかりは会ってみないとわからない。
でも、アーサーなら、ノエルの傷なんて気にしないとは思うのだが、いかんせん、アーサーはわたし以上に口が悪い。
大丈夫かしら?
胃が痛くなりそうだった。
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