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照れるエマに教室などを案内してもらった。
最後にアルバート博士の研究室に連れて行ってもらう。
「ノエル、入る前にいい?」
「なに?」
エマはもじもじしながら少し言いにくそうにする。
「その・・・あのね。私を見てもわかるとおもうだけど、ロマニズ公爵家って変な人が多いの。叔父様はその筆頭だと思ってる。従兄妹も大概なんだけど・・・。えっと、その・・・ね。引かないでくれる?」
返答しづらいことを言われても・・・。
「善処・・・します?」
「そうなるよね~」
二人で顔を見合わせ、ハハハッと乾いた笑いをする。
そして、いざ部屋の中へ・・・と扉を開けた瞬間、本が崩れ落ちてきた。
「おじさまあぁぁぁぁぁぁっ!!」
エマの絶叫がこだまする。
「いつも言ってるわよね!!ちゃあんと片付けなさいって!アーサーがいないからって怠慢するのはやめてって!!な、ん、で、一週間でこうなるわけ~?」
本をかき分けエマは部屋に入っていく。
私は・・・崩れた本が可哀想で、拾い集める。
「おぅ、エマか」
「おぅ、エマか、じゃない!!こんなんだから、わたしが叔父様の繋ぎ役になるの。いい加減にしてよ!」
エマが声を張り上げ、説教がはじまっている。
「こんなに適当でどこに何があるかわからないでしょっ!」
「いや、わかってる」
「汚くする人って、絶対そう言うのよね。でも、違う。効率が悪いの!」
「エマ」
「文句は受け付けないわよ」
「エマ。そんなことを言いに来たのかい?」
「あっ・・・」
「エマ?」
「そうよ。留学生が来たから、案内しに来たのよ」
「えっ、来たの?どこどこ?」
「ノエル。こちらがアルバート・・・・・・、ノエル?」
エマの声が中から聞こえてくる。
「ノエル?」
エマが戻ってきた。しかし、私を見るなり絶句し、額に手をやり天井を仰ぐ。
なぜなら、私は広い集めた本の中に気になるのがあって、その場に座って読んでいたのだ。
「うっそぉ~!?叔父様と同種なんて・・・」
残念そうな声を聞いて、顔を上げた。
「わお!君、その本に興味あるの?」
「はいっ」
ヒョロリとした中年男性が部屋から出てくるなり聞いてくるので、思いっきりいい返事をしてしまう。
だって、トルスター国ではまだ発売されていない本ですもの。最近帝国で発刊したばかりというのは、こっそり新聞を読んで知っていた。それがここにあるなんて、素晴らしい。
彼は豪快に笑う。
「なかなかな子だ。そんな廊下に直に座ってで読んでたら身体が冷えるよ。中に入りなさい」
私は本を抱えたまま、部屋に入った。
無造作に積み上がった本の山。見たことない題名ばかりに興奮してしまう。
その様子を見たエマが諦めたように言ってきた。
「ノエルも変わり者だわ」
「そう?私は普通よ。本が好きなだけだよ」
「変わり者は自分はまともだと言うのよね~」
「そうなの?まともじゃないと自覚したらなにか変わるの?」
「真の変わり者になるのよ・・・」
「そうなの!?」
「君たちなんの話をしてるんだい」
長い髪を無造作に一つにまとめた長身の男性ーアルバート博士は私たちにお茶を振る舞いながら呆れたように聞いてくる。
「変わり者は叔父様だけじゃないと言う話ですわ」
エマはつんけんと言い返した。
「僕は変わり者かい?」
「この部屋が物語っています。それとノエルもよ」
「自覚ないんだけど・・・」
「その本を抱きしめてるあたりが普通じゃないわよ」
そういえば、ずっと抱きしめてた。離したくない。
「うんうん。僕が見込んだだけある。そうそう、ノエル嬢」
「はい!なんですか?」
憧れのアルバート博士に名前を呼んでもらえるなんて嬉しい。
「僕のことは先生って呼んで」
「はいっ!」
エマは私たちを見てため息をついた。
「では早速、例の論文について語ろうか・・・」
「ぜひ、お願いします」
「ちょっ、待って!」
エマの「待って」が入り、先生と私は彼女をみた。眉間に皺を寄せたエマの顔があまりに真剣なもので、怖い。
「同じようなのが二人いるのは見過ごせないわ。いい、ノエル。ここにくるのは昼から夕方まで。夜は絶対に寮に帰ること。お泊りはダメよ。ちなみに時間を忘れそうだから、わたしが必ず迎えにくるわ!!」
「過保護だよ、エマ」
先生の言葉に私も同意だと頷く。
さすがに時間を忘れてまではしない。
「ノエルは女の子よ。叔父様、忘れちゃダメだからね。絶対に迎えにくるから。いいわね!!」
有無を言わせない強い物言いに私と先生は圧倒されて震えてしまう。そしてー。
「「はいっ」」
声が揃ったー。
最後にアルバート博士の研究室に連れて行ってもらう。
「ノエル、入る前にいい?」
「なに?」
エマはもじもじしながら少し言いにくそうにする。
「その・・・あのね。私を見てもわかるとおもうだけど、ロマニズ公爵家って変な人が多いの。叔父様はその筆頭だと思ってる。従兄妹も大概なんだけど・・・。えっと、その・・・ね。引かないでくれる?」
返答しづらいことを言われても・・・。
「善処・・・します?」
「そうなるよね~」
二人で顔を見合わせ、ハハハッと乾いた笑いをする。
そして、いざ部屋の中へ・・・と扉を開けた瞬間、本が崩れ落ちてきた。
「おじさまあぁぁぁぁぁぁっ!!」
エマの絶叫がこだまする。
「いつも言ってるわよね!!ちゃあんと片付けなさいって!アーサーがいないからって怠慢するのはやめてって!!な、ん、で、一週間でこうなるわけ~?」
本をかき分けエマは部屋に入っていく。
私は・・・崩れた本が可哀想で、拾い集める。
「おぅ、エマか」
「おぅ、エマか、じゃない!!こんなんだから、わたしが叔父様の繋ぎ役になるの。いい加減にしてよ!」
エマが声を張り上げ、説教がはじまっている。
「こんなに適当でどこに何があるかわからないでしょっ!」
「いや、わかってる」
「汚くする人って、絶対そう言うのよね。でも、違う。効率が悪いの!」
「エマ」
「文句は受け付けないわよ」
「エマ。そんなことを言いに来たのかい?」
「あっ・・・」
「エマ?」
「そうよ。留学生が来たから、案内しに来たのよ」
「えっ、来たの?どこどこ?」
「ノエル。こちらがアルバート・・・・・・、ノエル?」
エマの声が中から聞こえてくる。
「ノエル?」
エマが戻ってきた。しかし、私を見るなり絶句し、額に手をやり天井を仰ぐ。
なぜなら、私は広い集めた本の中に気になるのがあって、その場に座って読んでいたのだ。
「うっそぉ~!?叔父様と同種なんて・・・」
残念そうな声を聞いて、顔を上げた。
「わお!君、その本に興味あるの?」
「はいっ」
ヒョロリとした中年男性が部屋から出てくるなり聞いてくるので、思いっきりいい返事をしてしまう。
だって、トルスター国ではまだ発売されていない本ですもの。最近帝国で発刊したばかりというのは、こっそり新聞を読んで知っていた。それがここにあるなんて、素晴らしい。
彼は豪快に笑う。
「なかなかな子だ。そんな廊下に直に座ってで読んでたら身体が冷えるよ。中に入りなさい」
私は本を抱えたまま、部屋に入った。
無造作に積み上がった本の山。見たことない題名ばかりに興奮してしまう。
その様子を見たエマが諦めたように言ってきた。
「ノエルも変わり者だわ」
「そう?私は普通よ。本が好きなだけだよ」
「変わり者は自分はまともだと言うのよね~」
「そうなの?まともじゃないと自覚したらなにか変わるの?」
「真の変わり者になるのよ・・・」
「そうなの!?」
「君たちなんの話をしてるんだい」
長い髪を無造作に一つにまとめた長身の男性ーアルバート博士は私たちにお茶を振る舞いながら呆れたように聞いてくる。
「変わり者は叔父様だけじゃないと言う話ですわ」
エマはつんけんと言い返した。
「僕は変わり者かい?」
「この部屋が物語っています。それとノエルもよ」
「自覚ないんだけど・・・」
「その本を抱きしめてるあたりが普通じゃないわよ」
そういえば、ずっと抱きしめてた。離したくない。
「うんうん。僕が見込んだだけある。そうそう、ノエル嬢」
「はい!なんですか?」
憧れのアルバート博士に名前を呼んでもらえるなんて嬉しい。
「僕のことは先生って呼んで」
「はいっ!」
エマは私たちを見てため息をついた。
「では早速、例の論文について語ろうか・・・」
「ぜひ、お願いします」
「ちょっ、待って!」
エマの「待って」が入り、先生と私は彼女をみた。眉間に皺を寄せたエマの顔があまりに真剣なもので、怖い。
「同じようなのが二人いるのは見過ごせないわ。いい、ノエル。ここにくるのは昼から夕方まで。夜は絶対に寮に帰ること。お泊りはダメよ。ちなみに時間を忘れそうだから、わたしが必ず迎えにくるわ!!」
「過保護だよ、エマ」
先生の言葉に私も同意だと頷く。
さすがに時間を忘れてまではしない。
「ノエルは女の子よ。叔父様、忘れちゃダメだからね。絶対に迎えにくるから。いいわね!!」
有無を言わせない強い物言いに私と先生は圧倒されて震えてしまう。そしてー。
「「はいっ」」
声が揃ったー。
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