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兄の見送りが終わった翌日、学園に来たもののいつものように図書室で本を読んでいると、とある先生のもとに行くよう司書の先生に言われた。
指定された先生の部屋にはいると、目の前にいる初老の男性がいる。
にこにこと笑うその先生の顔は曲者めいていた。
きっと彼こそが兄の言っていた人なのだろう。
兄が私にレポートと論文を書かせた本当の理由はこの先生に会うためだった。
これが兄が言った布石である。
「いいか、あの学園には変人教師がいる。いつもはやる気のないじーさんだが、実は国王陛下の親友だ。国内政治のアドバイザー的存在で宰相様も信用をおいている」
「そんな方が学園の教師をしているの?」
「もとは学園内にある専門科の教授をしていたらしいが、教え子の不祥事があって腑抜けにったんだ。それでも陛下は逃したくない思いから学園に縛り付けている」
「その方に見せればいいのですか?」
「見てくれと頼んで見るようなじーさんじゃない。偏屈というか、興味がある事柄じゃないと動かない変人だ」
「ではどうすれば・・・」
「ただ置いておくだけでいい。いずれ目にする。いつになるかはわからんが絶対だ。あの人は暇を持て余してるから面白いものを探している。目につけば何かが起こる」
「なりますか?」
「なる。僕の名前。その妹であるノエルの存在。その傷。それと論文が揃えばじーさんは動く」
自信たっぷりに兄は言っていたが本当になるとは。
「ロードだ。君の書いた論文に興味が湧いてね、呼んでもらったんだよ」
「ありがとうございます。ノエル•エルトニーと申します。兄がお世話になったと聞いております。兄が『よろしくお願いします』と言っておりました」
私は兄の部分を強調した。彼の笑みが笑いにかわる。
「ふはっ!やはり、あいつの企か。やはり面白い。君はどうかね?こんな発想をするなんて興味がある」
笑いながら論文をちらつかせた。
ここまで来て引きたくない。
怖わかった。
でも、そんなこと言っていられない。
「それが、全てだと思っています」
「なるほど」
彼は目を細め頷いた。楽しそうだ。
「じゃぁ、僕の生徒になりなさい。僕の授業にでること。それでもいいかい?」
「あっ、・・・はい。お願いします」
「代わりに他に論文があるなら見せて。悪いことはしないから。興味があるから楽しもうじゃないか」
やったわ。お兄様!後は・・・。
兄の不適な顔を思い出す。
「ロード先生、私からもお願いがあります」
「なんだい?」
「いずれ留学をしたいです」
目をぱちくりとさせた後、ロード先生はクククッと笑いだした。
「女性で留学?いやぁ~、君も面白い。さすがライールの妹だね。噂に聞いていたより面白いよ」
ひとしきり笑った後、先生は真面目な顔になる。
「いいよ。実力を見せることができれば君の希望が通るよう後押ししよう」
「ありがとうございます」
一歩前進できたと思うと嬉しかった。
次の日からロード先生の個人授業が始まる。
それは基礎ができているのを前提に授業が進んでゆく。
昼からは大図書館で調べ上げた資料を、一つにまとめあげ論文の形にしていった。
それを見ている先生の顔はますます楽しそうに輝いている。
大図書館でメモした題名の本をわざわざ取り寄せてくれたら、資料となる文献を教えてくれるのでありがたい。
「さあさあ、気にせずにまとめてくれ」
にこにこと私の作業を見ている、ロード先生。兄に聞いていたより変人度が高い気がした。
指定された先生の部屋にはいると、目の前にいる初老の男性がいる。
にこにこと笑うその先生の顔は曲者めいていた。
きっと彼こそが兄の言っていた人なのだろう。
兄が私にレポートと論文を書かせた本当の理由はこの先生に会うためだった。
これが兄が言った布石である。
「いいか、あの学園には変人教師がいる。いつもはやる気のないじーさんだが、実は国王陛下の親友だ。国内政治のアドバイザー的存在で宰相様も信用をおいている」
「そんな方が学園の教師をしているの?」
「もとは学園内にある専門科の教授をしていたらしいが、教え子の不祥事があって腑抜けにったんだ。それでも陛下は逃したくない思いから学園に縛り付けている」
「その方に見せればいいのですか?」
「見てくれと頼んで見るようなじーさんじゃない。偏屈というか、興味がある事柄じゃないと動かない変人だ」
「ではどうすれば・・・」
「ただ置いておくだけでいい。いずれ目にする。いつになるかはわからんが絶対だ。あの人は暇を持て余してるから面白いものを探している。目につけば何かが起こる」
「なりますか?」
「なる。僕の名前。その妹であるノエルの存在。その傷。それと論文が揃えばじーさんは動く」
自信たっぷりに兄は言っていたが本当になるとは。
「ロードだ。君の書いた論文に興味が湧いてね、呼んでもらったんだよ」
「ありがとうございます。ノエル•エルトニーと申します。兄がお世話になったと聞いております。兄が『よろしくお願いします』と言っておりました」
私は兄の部分を強調した。彼の笑みが笑いにかわる。
「ふはっ!やはり、あいつの企か。やはり面白い。君はどうかね?こんな発想をするなんて興味がある」
笑いながら論文をちらつかせた。
ここまで来て引きたくない。
怖わかった。
でも、そんなこと言っていられない。
「それが、全てだと思っています」
「なるほど」
彼は目を細め頷いた。楽しそうだ。
「じゃぁ、僕の生徒になりなさい。僕の授業にでること。それでもいいかい?」
「あっ、・・・はい。お願いします」
「代わりに他に論文があるなら見せて。悪いことはしないから。興味があるから楽しもうじゃないか」
やったわ。お兄様!後は・・・。
兄の不適な顔を思い出す。
「ロード先生、私からもお願いがあります」
「なんだい?」
「いずれ留学をしたいです」
目をぱちくりとさせた後、ロード先生はクククッと笑いだした。
「女性で留学?いやぁ~、君も面白い。さすがライールの妹だね。噂に聞いていたより面白いよ」
ひとしきり笑った後、先生は真面目な顔になる。
「いいよ。実力を見せることができれば君の希望が通るよう後押ししよう」
「ありがとうございます」
一歩前進できたと思うと嬉しかった。
次の日からロード先生の個人授業が始まる。
それは基礎ができているのを前提に授業が進んでゆく。
昼からは大図書館で調べ上げた資料を、一つにまとめあげ論文の形にしていった。
それを見ている先生の顔はますます楽しそうに輝いている。
大図書館でメモした題名の本をわざわざ取り寄せてくれたら、資料となる文献を教えてくれるのでありがたい。
「さあさあ、気にせずにまとめてくれ」
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