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 奥の部屋をゆっくりと本棚を巡り、気になったものを取り出すお、誰もこなさそうな角の席についた。帽子をとってから座って読み出す。

 最近は古代アルベス文化について興味を持っていた。帝国の前身とも言われている。まだ古代語自体の解明がされてはいないが、伝承や逸話はまとめられ本として出版されていた。子供向けとしての本は屋敷にもあるが原作となる話はまだ読んだことはない。

 品揃えの豊富な大図書館なら絶対にあると思っていたので、やっと見つけることができ浮かれてしまう。
 夢中になって読んだ。
 本来の話は読むと長く遠回しな言い方などがたくさんあり、普通に読むには難しいかもしれない。
 よくこれを子供のためにかいつまんで要約しているものだと、感心してしまった。
 だがそのぶん、省略した部分や曲解した箇所も多いようにみられる。
 それに、帝国からこの国に入ってきた時には多少ならず、話にも変化しているようだ。
 そんな所は特に興味を引いた。
 
 ふらりと立ち上がり、また本を取りに行く。
 どうしても気になってしまう。
 言葉が意味がわからないから余計に。
 似た文化、話があったはず。理解を深めるためにもその本が必要となる。  
 どうしても書き留めておきたくて司書のお姉さんに紙とペンを借りに行く。

「汚さないように」

 と軽く注意されたが、大切な本に冒涜的行為などしない。軽く頷いて急いで、席にかえり作業に取り掛かった。
 
 手が軽く動いて文字を綴っていく。疑問に思うことを書き出していく。
 また、資料がほしい。

 立ち上がり本を探しに行った。

 2階、3階へ行き見て回る。

 『ミヒャエル国伝承と文化』という本を見つけ手を伸ばした。
 背伸びをしてやっとどうにか届きそうな高さ。
 
 背表紙の下を指先で挟み引っ張り出そうと躍起になっていると、横から人が来てそれをすっと引き抜いた。

「あっ・・・」

 誰かが見るに見かねて・・・、お礼を言おうと相手を見て言葉を失う。

 そこには黒目黒髪の綺麗な男性が立っていたからだ。
 
 咄嗟に俯く。
 綺麗な人を見て自分が恥ずかしくなる。広い館内だからこそ、他の人には出会わないだろうと、顔を隠す帽子を置いて来たことを後悔した。
 
 その人は私と本を見比べ、鼻で笑ってくる。

「君が読む?な訳ないか。ここは専門書コーナーだろ。身の程を考えた方がいいんじゃないのか?」
「えっ?」

 何を言ってるの・・・。

「読めもしないものを見てもつまらないだろう?」 

 見た目より口の悪い青年。

 それより馬鹿にされたことで胸の辺りがモヤモヤしてきたが、それを出すことはしない。

「ありがとうございます」

 私は彼の手にある本を引き抜くと小さくお礼だけを言って身をひるがえした。
 
 後ろから「おい!」と聞こえた気もしたが、一切無視する。

 急足で自分の席に戻ると大きく息をついて席に座った。
 
 本が読めないと侮られたことが不愉快でイライラする。集中できないかと思ったものの本を開けばそんな思いもどこかへゆき楽しく読むことができた。

 だから、その男が私を見ていることには気づかなかった。

 
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