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 次の日、お兄様と王宮に上がった。
 と言っても、私は王立大図書館に行くので建物の入り口前まで送ってもらう。

「いいか。俺が迎えにくるまで図書館からは出るなよ」

 顔の傷を隠すベール付きの帽子を被ったまま頷いた。

 こんな顔を晒して歩けば、格好の的になるのは目に見えている。

「閉まる前には迎えにくるが、遅くなってもうろうろせずここで待ってろ」

 心配そうに何度も注意をしてくる。
 母には兄の手伝いということで王宮に上がる許可を貰った。邪魔になるなどと言ってなかなか許可が降りなかったが、兄が押し通してくれた。そんな兄に迷惑をかけてはいけないのはわかっている。
 でも、早く大図書館に入りたいというはやる気持ちから、私は兄の背中を押す。

「わかりましたから、お仕事に行ってきてください!遅れますっ!」
「ノエル~」
「お兄様。心配しすぎです。こんな顔を晒してまで、お兄様に迷惑をかけるようなことしませんから」
「・・・・・・」

 一瞬だけ兄は悔しそうな表情を見せた。

「・・・わかった。いってくる」

 それだけ言って、名残惜しそうに幾度も振り返りながら兄は去っていく。

 その姿が見えなくなるのを待って、私は大図書館の中を見上げた。

 とうとう、入れるんだ。
 滅多なことがない限り外出できなかった私にとって憧れの場所である。
 
 期待を膨らませ一歩踏み出したところで、私はつまづいた。
 段差があったようだ。
 誰も見てない?と左右を確認して、服の裾を払うと改めて大図書館の中へと入る。

 天井まで吹き抜けになった広く明るい館内につい感嘆の声がでてしまう。
 周りには本棚が並びたくさんの蔵書が置かれていた。そして中央には机と椅子が整然と並んでいる。なんて広いのだろう。

「ノエル様でしょうか?」

 うっとりと部屋を観察していた私に、眼鏡をかけた司書の女性が音もなく近寄ってきた。

「・・・はい。そうですが・・・」

 あまり人付き合いをしないので警戒してしまう。だが、そんな私に対して彼女は丁寧に一礼してきた。

「ライール様から話は伺っております。この図書館の説明と案内をいたしますので、どうぞ」
 
 彼女はそういって案内してくれた。

 吹き抜けの部分の一階は子供むけなのか絵本や児童書、2階から上は実用書が並んでいる。
 奥にも部屋があり、1階から4階までは様々な専門書が置かれていた。
 地下には禁書などがあり、限られた人や特別な理由がない限り入れないと説明してくれる。

「それぞれの階の机等もありますが、奥に専用の勉強部屋やパーソナルスペースもありますのでお好きにご利用ください。飲食等は一階入り口横にラウンジや休憩室、食堂がありますのでそちらで昼食などお取る場合はそちらをご利用ください」

 一通りの説明を受け、入り口前のカウンターに戻って来た。

「普段ここの蔵書は貸し出しは可能なのですが、ライール様よりノエル様のことを軽く内情を聞いておりまして、残念ながらユエル様にはお貸し出す事はできません」
 
 貸し出しは無理なのか・・・。仕方がない。兄がいないと来れないもの。兄がまた外国に言ってしまえば自由に来ることはできなくなる。そんな相手に貸し出すなんてしないだろう。それでも読めるなら文句はない。

 そう考える私に彼女は「ですが・・・」と話を続ける。

「代わりにある程度の貴重な蔵書の閲覧はできるようにいたしますので、その際はわたくしにお申し付けください」
「よいのですか??」

 予想外のことに驚きが隠せない。

「本好きと聞いております。本好きに悪い人はおりませんから。ただし、取り扱いだけはお気をつけてください」
「ありがとうございます」

 私は彼女にお礼を言った。

 
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