上 下
42 / 42

42.ミシェル視点(最終話)

しおりを挟む
 あれからセルジオ兄様はレイチェルが飲んでいた薬の製造元を突き止め破壊した。
 
 国をいくつもまたぐことになったため各国の協力を要請したらしい。

 レイチェルに薬を売っていた店主は薬のために殺人まで犯していたのも分かった。

 これ以上、被害をださないために『テンフェアール』の規制をもっと強くする議会案をセルジオ兄様は他の国にも出したようだ。各国でも、すでに被害はあったようで実行は早かった。

 オルセイド兄様も、学園長として騒ぎの収集にあたった。

 この騒ぎの中心にいたを私は留学と言う名の学園停学をいい渡された、サーシャス国に来ている。

 貞のいい厄介払いである。
 これまでしがらみに無縁で自由気ままに生きていた私に王太子妃教育という脅威が待っていた。

 王妃様とはそれなりにいい関係を気付けているのではと思っている。
 まぁ、巷でも聞く嫁いびりがあっても屈する気はなかったが、蓋を開けば似たもの同士かもしれない。

 アリスに「互いに化かし合いしてますね」と言われてしまったぐらいだ。

 私にはちょうどいいのかもしれない。退屈しなくてすむ。


「お嬢様。シャルル様からお手紙です」
 
 一緒に来たシャルルが手紙を差しだしてきた。

 ロディク殿下の仕事の一部を手伝っていた手を止め、手紙を受けとり読む。

「どうかしましたか?」
「レイチェルの被害者たちは各々、後遺症と戦いながら生活しているようね。ファルスは廃人同然だそうよ」
「確か後遺症は倦怠感や頭痛、思考低下ですよね」
「そうよ。普通の生活でも大変でしょうね。ファルスに至っては薬の影響が長かったぶん、薬の効果切れの反動も大きいでしょう」

 今頃、ファルスは療養所に入って苦しんでいることだろう。

「あの方は?」 
「娼館へ行ったわ」
「娼館ですか?」
「あの匂いはもう取れないくらい染み付いてるもの。街中でなんて暮らせはしないでしょう。ならば娼館しかないじゃない」
「それはそうですが、甘くありませんか?」
「そう?」
「お嬢様のことですから泣くほど苦しませるのだと思っていましたが」

 すごいことを言ってくれる。
 アリスには私が鬼畜に見えるのだろうか・・・。

「彼女、考えることも放棄したらしいわ」
「放棄?」
「そう。自分で自分の精神に蓋したってこと」
「あら、まぁ・・・。自分の罪から逃げたのですか」
「そう言うことね。薬になんて頼らず、人に頼れたら自分を変えることもできたでしょうに」
「お嬢様・・・」

 ー自分の力をもっと信じていたら、よかったのに・・・。でも、できないこともある。一人が寂しくなることも・・・

 私は息を吐き天井を見上げた。これ以上考えてもどうにもならない。

「ままならないこともあるか・・・」
「お嬢様・・・」


 私はうーんと腕と背中を伸ばし、これからの予定を思い浮かべる。

「さてと、王妃様のお茶会にでも行きましょう。半年後のセイラの結婚式に行く打ち合わせも兼ねてるのよねぇ~。
 さぁて、今日はどんなおもてなしをしてくるのかしら。ふふふっ。楽しみだわ」
「そうか、僕も楽しみだ」

 ロディク殿下が部屋に入ってきた。
 彼は王妃様とわたしの様子を楽しみにしているようで、忙しくても毎度お茶会のたびにこうしてやってくる。

 憎らしいのに、それが嫌でない自分がいるので最近は困っていた。

 でも、素直にはまだなりたくない。
 

「あら?エスコートしてくれるのかしら」

 とびっきりの笑顔をつくり、高飛車な感じで私は彼の前に手を差し出してやった。



      



             ーおわりー

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(18件)

かりぽん
2023.10.27 かりぽん

ご返信いただきありがとうございます。
書いたつもりが抜けていましたね。
17話の冒頭です。

彩華(あやはな)
2023.10.27 彩華(あやはな)

ありがとうございます😊

助かりました。

解除
かりぽん
2023.10.25 かりぽん

美しいからと手にかけられ
→手をつけられ、もしくは手を出されですね。
手にかけられるは、殺されるという意味になります。

彩華(あやはな)
2023.10.25 彩華(あやはな)

ありが・・・うっきー(猿化)どこだ!?

 できるならば場所を求ム・・・(泣)どこだぁ〜💦

 頑張って探します・・・・・・
 すいません・・・

解除
Vitch
2023.09.20 Vitch

レイチェルに最初に薬を渡した男、殺されたのか。

文字通り『チャンス』をあげたのに、店主に殺されるとは……

解除

あなたにおすすめの小説

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

【完結】婚約破棄された公爵令嬢、やることもないので趣味に没頭した結果

バレシエ
恋愛
サンカレア公爵令嬢オリビア・サンカレアは、恋愛小説が好きなごく普通の公爵令嬢である。 そんな彼女は学院の卒業パーティーを友人のリリアナと楽しんでいた。 そこに遅れて登場したのが彼女の婚約者で、王国の第一王子レオンハルト・フォン・グランベルである。 彼のそばにはあろうことか、婚約者のオリビアを差し置いて、王子とイチャイチャする少女がいるではないか! 「今日こそはガツンといってやりますわ!」と、心強いお供を引き連れ王子を詰めるオリビア。 やりこまれてしまいそうになりながらも、優秀な援護射撃を受け、王子をたしなめることに成功したかと思ったのもつかの間、王子は起死回生の一手を打つ! 「オリビア、お前との婚約は今日限りだ! 今、この時をもって婚約を破棄させてもらう!」 「なぁッ!! なんですってぇー!!!」 あまりの出来事に昏倒するオリビア! この事件は王国に大きな波紋を起こすことになるが、徐々に日常が回復するにつれて、オリビアは手持ち無沙汰を感じるようになる。 学園も卒業し、王妃教育も無くなってしまって、やることがなくなってしまったのだ。 そこで唯一の趣味である恋愛小説を読んで時間を潰そうとするが、なにか物足りない。 そして、ふと思いついてしまうのである。 「そうだ! わたくしも小説を書いてみようかしら!」 ここに謎の恋愛小説家オリビア~ンが爆誕した。 彼女の作品は王国全土で人気を博し、次第にオリビアを捨てた王子たちを苦しめていくのであった。  

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。 だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。 しかも新たな婚約者は妹のロゼ。 誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。 だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。 それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。 主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。 婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。 この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。 これに追加して書いていきます。 新しい作品では ①主人公の感情が薄い ②視点変更で読みずらい というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。 見比べて見るのも面白いかも知れません。 ご迷惑をお掛けいたしました

婚約破棄されたのは私ではなく……実は、あなたなのです。

当麻月菜
恋愛
アネッサ=モータリアはこの度、婚約者であるライオット=シネヴァから一方的に婚約を破棄されてしまった。 しかもその理由は、アネッサの大親友に心変わりをしてしまったというあり得ない理由で………。 婚約破棄をされたアネッサは、失意のどん底に突き落とされたまま、大親友の元へと向かう。 向かう理由は、『この泥棒猫』と罵るためか、『お願いだから身を引いて』と懇願する為なのか。 でも真相は、そのどれでもなく……ちょいとした理由がありました。 ※別タイトル(ほぼ同じ内容)で、他のサイトに重複投稿させていただいております。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

公爵令嬢ディアセーラの旦那様

cyaru
恋愛
パッと見は冴えないブロスカキ公爵家の令嬢ディアセーラ。 そんなディアセーラの事が本当は病むほどに好きな王太子のベネディクトだが、ディアセーラの気をひきたいがために執務を丸投げし「今月の恋人」と呼ばれる令嬢を月替わりで隣に侍らせる。 色事と怠慢の度が過ぎるベネディクトとディアセーラが言い争うのは日常茶飯事だった。 出来の悪い王太子に王宮で働く者達も辟易していたある日、ベネディクトはディアセーラを突き飛ばし婚約破棄を告げてしまった。 「しかと承りました」と応えたディアセーラ。 婚約破棄を告げる場面で突き飛ばされたディアセーラを受け止める形で一緒に転がってしまったペルセス。偶然居合わせ、とばっちりで巻き込まれただけのリーフ子爵家のペルセスだが婚約破棄の上、下賜するとも取れる発言をこれ幸いとブロスカキ公爵からディアセーラとの婚姻を打診されてしまう。 中央ではなく自然豊かな地方で開拓から始めたい夢を持っていたディアセーラ。当初は困惑するがペルセスもそれまで「氷の令嬢」と呼ばれ次期王妃と言われていたディアセーラの知らなかった一面に段々と惹かれていく。 一方ベネディクトは本当に登城しなくなったディアセーラに会うため公爵家に行くが門前払いされ、手紙すら受け取って貰えなくなった。焦り始めたベネディクトはペルセスを罪人として投獄してしまうが…。 シリアスっぽく見える気がしますが、コメディに近いです。 痛い記述があるのでR指定しました。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。

悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」  ぱさっ。  伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。 「きちんと目は通してもらえましたか?」 「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」  ざわざわ。ざわざわ。  王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。 「──女のカン、というやつでしょうか」 「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」 「素直、とは」 「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」  カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。 「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」 「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」  カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。 「それではどうぞ、お好きになさいませ」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。