【完結】わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですから、覚悟してくださいませ

彩華(あやはな)

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40.カルロ視点

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 ー話は前に戻るー


 日が経つにつれ、僕はセイラに対する違和感が大きくなり、アフタル殿下に恥を忍んで聞いてみた。

 殿下は読みかけの本を閉じ机に置くと、ため息をつきながら呼び鈴を鳴らした。

「やっと気づいたのか」
「では・・・」
「悪いが、今からお前は療養期間にはいる」
「はい?」

 殿下の答えを聞く前に従者が入ってきて、僕は拉致られるように檻のある部屋に入れられた。

 あとはきついものだった。

 禁断症状というのだろうか。レイチェルに
会いたくて触りたくてしかたなかった。あの匂いに包まれたく、何度も叫んだ。
 でも部屋から出ることはできない。食事を持ってくる者に助けを求めても無視される。僕は一人もがき苦しんだ。

 それでも、ある時を境に自分の行動がおかしいものであったのではと、思うようになっていく。

 時おりくる白衣の男性が紙を見せてくる。

 レイチェルがどんないじめを受けたかを書いた紙。なぜそんなものを見せてくるんだ?と初めは思っていたが、次第に矛盾に気がついた。
 時系列があからさまにおかしい。

 なぜ気づいていなかったのだ。なぜ疑問にも思わず、当然のように信じていたのか?

 それに気づいた時、自分がセイラに行ってきた行いに愕然とした。

 あんなにまで愛おしく思っていた相手にひどい言葉をかけたのか?彼女を悲しませたことに罪悪感が込み上げる。

「やっとまともになったか?」

 アフタル殿下とシェリナ皇女殿下がやってきた。自分の症状の改善を見に来たのだろう。
 僕は柵を握りしめ殿下に聞いた。

「殿下!セイラにセイラに合わせてください。彼女に謝りたいのです」

 セイラに謝りたい。できることなら、元の関係に戻りたかった。
 そんな僕の気持ちに気付いたのだろう。シュリナ皇女殿下が冷たく言い放った。

「無駄ですわ。あなたとセイラの婚約はすでに破棄されました」
「えっ・・・」

  ーそんな・・・
      いつの間にそんなことになっていたのか・・・

 全身の力が抜け座り込む。

 そんな絶望感に打ちひしがれる僕にお二人はなおも追い討ちをかけた。

 自分の症状のこと。
 それにより、今の自分の立場がどうなったか。
 他のレイチェルの取り巻きたちの話。
 セイラと思っていた方の本当の名前と身分。そして、セイラが皇太子殿下の婚約者になったことーを。

 自分の愚かさにから笑いする。

 レイチェルを憎みたかった。

 それより、薬の特性を聞いて自分の心が弱かったことを一番憎くく思う。

 自分の大事だった者を自らの手で捨てたのだ。

 
 数日後、セイラの従姉妹というミシェル様が会いにくる。
 確かにセイラに似ていた。
 だが、目力が違う。セイラに比べ少しきつい雰囲気もする。

「やっとまともになったみたいね」
 
 言い方も違う。セイラはこんな言い方などしない。もっとやさしい。もっと柔らかだ。
もっと・・・。

「セイラに会いたい?」

 ミシェル様の言葉に僕は頷く。

「そう。じゃあ、一度だけ。ダンスパーティがあるから、シェリナ様とアフタル殿下の従者として参加しなさい。ただし声をかけないように」

 彼女はそれだけ言って去っていった。

 ー見るだけなんて


 ダンスパーティでアフタル殿下とシェリナ様の後ろにいた僕は入り口で、セイラに会えたと思い、ミシェル様に声をかけてしまう。  
 約束を破った僕に冷たい声を浴びせかけられた。
 僕はもう近づくことさえできず、セイラを遠目から見るしかない。

 美しいドレスをまとったセイラは綺麗だった。

 レイチェルが霞むくらい輝いててみえる。

 ミシェル様たちの断罪は僕にとって辛かった。
 僕の他にレイチェルの取り巻きたちもなんとか回復したもののそれぞれ後遺症と戦いながら過ごしていくという。それを聞くだけで苦しく思った。

 なのに当の元凶であるレイチェルの身勝手さ。支離滅裂な彼女の話を聞いていると、なぜこんな人のせいで自分の人生が狂わされてしまったのかと、泣きたくなった。
 
 僕はただ、終わるまで見ているだけ。

 連れていかれるレイチェルは自分の今を嘆くだけで僕に謝ることさえなかった。 

 レイチェルたちがいなくなったあと、ミシェル様が通る声でセイラたちに声をかけた。

「皇太子殿下、セイラ様。おめでとうございます」

 ミシェル様が首を垂れる。

 その瞬間、僕は自然と敬礼していた。

 皇太子殿下とセイラ様が皇帝という頂にたつ姿を僕は見た気がしたのだった。


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