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31.カルロ視点

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 手分をして探していく。
 後ろにナンバーがあるのは違うのだから、それを排除すればいいのはわかる。

 だが、どれだけあるのだ?

 一つ一つ裏返しにして見ていくだけでも重労働だった。

「どのくらい作ってもらったの?」

 いつの間にかシェリナ皇女殿下たちが机と椅子を用意して優雅にお茶をしながら、僕たちの成り行きをみまもっていた。

「各店から100個づつお願いしました。初めは殿下からの紹介があった10店舗の予定でしたが、噂を聞きつけたのか売り込みをしてきた店もありまして、追加でその店々には50個づつ追加しましたから全部で2000個ほどですかの ね」

 2000個!!

 具体的な数字を聞いてしまい、手が止まる。

 目の前に広がるブローチが果てしないもののように見えたのは僕だけではないだろう。
 レイチェルのブローチを同じように探していた者たちの手が止まり、絶望的な表情をしたのをみてしまう。

「2000個?どこからその費用が?」
「個人資産全て使い切りましたわ」
「ドヤ顔しないで。それで、資金足りたの?」
「まさか。足りませんでしたわ。でも、どうにかこうにか頑張りましたわ」

 軽やかに笑う声が怖く感じた。


 個人資産を注ぎ込んで作ったのか!!

 レイチェルのブローチのために?

 いや、待て・・・。

 レイチェルのブローチを探させるためだけにこんな手の込んだ嫌がらせをしているのか?もし僕が嫌がらせをするなら・・・。
 
 僕は手を止めたセイラを見た。

「この中にレイチェルのブローチはあるのか?」

 僕の言葉にセイラは飲んでいたカップを机に置いた。

「ありませんわ」

 当然と言わんばかりの返答。

「セイラ、お前!!」
「私はブローチなど盗っていませんもの、あるわけありませんわね」
「だましたのか!?」
「失礼ですわね。ですが、こうでもしなければあなた方は信じないのではなくて?だいたい、わたしはレイチェル様のブローチなんて見たことありませんわ。皆様は見たことありますの?」
「・・・・・・」

 見たことはなかった。聞いただけ。

 彼女が言うから信じたのだ。

「本当よ!本当に盗まれたのよ!」
「だそうよ。なら、テキパキと探してくださいませ」

 セイラは意地悪そうに笑った。
 その言葉にレイチェルは悔しそうに顔を歪ませたのだった。


 僕は、その顔に不自然さを感じた。

 いつからセイラはこんな顔をするようになったのだろう?
 控えめに微笑んでいた彼女はどこにいったのだろうか?いつの間に変わってしまったのだろうか?
 
 僕の知っているセイラではない気がする。

 本当にセイラなのかー?

 そんな考えを振り払うように僕もブローチ探しを再開したのだった。



 

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