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8.ミシェル視点

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 ちなみに、教室に行くまでに三人の貴公子たちに絡まれた。
 皆言うことは同じ。

『レイチェル嬢を泣かすな!』

 一体何事?と言いたくなるほどの変わり映えしないセリフに辟易してくる。

 カルロとファルスしか知らない為、他の貴公子に言われてもどうすればいいかわからない。しかも名乗ってくれないのだから誰なのか想像すらつかない。
 
「あの方誰?」

 絡まれるたび、近くで見ていた令嬢に聞いてみた。

 みんな懇切丁寧に説明してくれた。

「オールド国からの留学生。経済学2年目のアリゼード・ベイス伯爵令息ですわ」
「バトラス公国大使令息マリスク・マーセル伯爵令息です。半年前の大使赴任に合わせて編入されました」
「オズス国からの留学生でエルバス・オブラー伯爵令息です。去年から政治学を学びにきていますわ」

 それはそれは彼女たちは、笑顔でこと細かに説明してくれた。
 誕生日から趣味、好きな料理に色や花の名前まで。
 なぜそこまで詳しいのかしら?
 憧れに満ちた言いようではなく、どこか呆れや軽蔑感が含まれている所をみると、どうやら問題があるのかもしれない。
 聞いていないことまで説明してくれるのだから、わたしに何かしらのことを期待しているのかしらと思いたくなってしまった。

 情報をもらい教室に向かう。

 教室ではシュリナ様とアフタル殿下が迷惑そうに迎えてくれた。

「臭いわ」

 シュリナ様が顔を顰めながらわたしを見てきた。

「少しだけですが、そんなに匂いますか?」
「ぷんぷんするわ」

 自分の腕を嗅いでみた。
 確かに独特な甘い匂いがするがもう気にならない。もしかすると匂いに慣れて鼻が馬鹿になっているのかもしれなかった。

「今日は帰りなさい。近くにいて欲しくないわ」

 しっしっと右手で追い払うようにしてくる。わざわざ鼻に皺を寄せながら言ってくるのだから、よほど臭うのだろう。

「わかりました。今日は帰りますわ。・・・アフタル殿下はこの匂いはどうですの?」

 シュリナ様の横で微妙な表情を浮かべているアフタル殿下に聞いてみた。

「あまり、好ましくない・・・かな・・・」
「・・・・・・、そう、ですか・・・」
「どうしたの?」
「わたしに忠告をしてきた者たちは全て他国の貴公子だったなぁと、思いまして。それも公爵より低い者たち・・・。この学園には高位貴族もいますのに・・・」
「高位貴族はのクラスではないだけじゃないの?」
「そののクラスに探りを入れないといけませんね」

 うふふふっと笑って見せた。

 周囲にいたクラスメイトたちが会話を止めわたしを戦々恐々と見てくるのがわかった。

「ミシェル・・・」

 はぁ・・・とシュリナがため息をついていたが、構わずににっこり笑いながら呟いた。

「わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですもの覚悟してもらうに決まっているでしょう?」

 その瞬間、どこからともなく短い悲鳴がいくつも聞こえてきたのは無視することにした。

 
 


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