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「子供に言われるなんて情けない人たちね」

 マザーは呆れ顔でクスクスと笑った。
 そんなマザーに気づいた叔父様は頭を下げた。

「フィアナ様お久しぶりです」
「お久しぶりですわ。リンセス侯爵様。皆様は息災かしら?」
「はい。皆元気にしております。フィアナ様もお元気そうですなによりです。フィアナ様に手紙を3通預かっています」

 叔父様はマザーに手紙を差し出した。

 マザーはその手紙を手に取り送り主を見て、驚いたような顔になったと思うと、目を細めた。

「懐かしい字だわ・・・」

 そう呟き、3通のうち豪華な封蝋がある手紙をあけた。
 文字を追う目がキラキラと輝いていく。

 形のいい唇に笑みが浮かんでいった。

「全て順調のようですわね」

 その手紙をお父様たちに見せる。

「あぁ、そのようだな」

 どんな内容でしょうか?誰からのものでしょう?
 お父様もお祖父様もそしてロイもその手紙を見て頷き合っている。

「ふふっ」

 マザーは笑っていた。
 残りの2通も開け読んでいるマザーは愛おしそうな眼差しをしていた。

 明るい笑い声。
 楽しそう。

「セシリア。もう一人お父様ができそうよ」

 そんな事をいうので、お父様と叔父様がばっとマザーを見た。顔がこわばっている。

「もう一人?誰だ」
「まさか??」
「やはり?」
「あの方も馬鹿な人ね」

 何かを思い出しているのか淡い微笑みが浮かんでいる。
 愛しい面影を追っているような眼差し。

 こんなマザーの顔を見たことはない。
 恋をしている一人の女性としての顔だった。
 
 きっとマザーにそんな顔をさせる人がいるとすれば・・・。

「リチャード・・・」

 そう、元婚約者だけだろう。

 グリフィアス国の宰相。
 彼は未婚のはず。

 そうか、と納得した。

 きっと、ずっと二人はお互いに思い合っているのだ。
 会うこともなくても手紙の行き来もなくても、心が通じているのだろう。

「あの男はなんて書いてきた?」

 お父様ったら。
 苦々しそうにいわなくても。

「わたしが育てたなら、自分にとっても娘当然だと。あなたたちだけで娘の取り合いをするな。自分も混ぜろって。
 セシリアに会ってみたいですって。
 アナスタシアも、楽しみにしてるみたいね。こちらも、義理でいいからお母様と呼んで欲しいそうよ」

 お祖父様もお父様も叔父様も叫ぶ。
 そこまで叫ばなくてもいいんじゃないかしら?
 なぜ堂々としてくなれないのかしら?
 せめて『どんなやつがこようと譲れない』とか言ってくれないのかな?
 あこがれの「お父様」像とは違うきもせる。

 でもー。

「愛されてるね」 

 ロイが囁いた。

「うん」
 
 見ている分には恥ずかしい。

 でも、まぁ嬉しい。

 わたしの事で大袈裟に反応をしてくれるから。昔はそんなこと考えられなかった。

 わたしには大事な人が増えていっている。

 今までの悲しい想いを塗り替えてくれている。
 それだけで、勇気をくれる。

 わたしは、それをみんなに返せたらいいと思う。

 みんながくれる愛はわたしの勇気になり自信となってくれているのだから。
 
「幸せ、だな」

 みんな一斉に見てきた。
 そして、抱きしめてくれた。
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