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1章、契約の内容

28.グレン視点

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 マクロンを追求しても口を割らない。のらりくらりとかわす。

 幾度目かの口論になった時、メイドがかけてきた。
 ノックもなしに執務室に入ってくる。
 ザックの言う通り、メイドの質が落ちている。
 叱ろうとしたがメイドの言葉にそれどころでは無かった。

「聖女がニーナ様のお部屋に!!」
「なんだと?!」
「チッ」

 チッ?

 バッとマクロンを見る。変わらない顔色。

「お前何か知ってるな!!」

 詰め寄って、胸ぐらを掴んだ。

「ああっ。でも悪いことではない。少しでいい。少しだけ待て!!」
「ふざけるな!待てるわけないだろう!」

 ぐいっと押しのけるとニーナの部屋に向かった。
 部屋の近く来ると光が漏れ出ていた。

 なんだ?

 慌てて行くと、光が消えたところだった。

 ニーナ!!

 無我夢中で駆け寄った。ニーナの前にあるが邪魔で押し退けて。

 小さな悲鳴が幾つも上がって気がしたがそれどころではなかった。

「ニーナ!!」

 彼女を抱きしめた。

「大丈夫か?ニーナ。何をされた?ニーナ」

  彼女の顔を触り顔を見ようとした。だが、彼女の視線は違うところにあった。

 視線を追う。

 銀髪の女性が同じく銀髪の少女を抱きしめていた。ハイセン医師が少女を見ている。

 誰だったか?

「先生!!」

 ニーナが叫ぶ。
 人の心配をするとは。やはり優しいのだな。
 

「大丈夫ですよ」
「先生、わたしたちは部屋に戻ります。そちらの方を優先してください。後でよろしくお願いします」

 ぞっとする視線を俺に送ったのち、銀髪メイドは少女を抱きかかえてさ去って行った。

「伯爵様、失礼します。ニーナ様の診断をさせてください」

 ハイセン医師はニーナの元に来て、硬い表情で言った。

 診察。何があった・・・。
 一度部屋から出て診察が終わるのを待つ。
 マクロンとザックもやってきた。

「どういうことだ?」

 二人に聞いた。
 二人は目をさまよわせ、苦々しそうにしている。

「聖女様がニーナ様のご病気を治されたのです」
「あっ?」
「ですから、ニーナ様の病気を治される為に聖女様が力を使われたのですっ」
「まさか・・・」
「なのに、聖女様を押し退けたそうで・・・」

 眉間の皺が深くなる。

「それならそうと・・・」
「契約を結んだのでしょうが。もう、お忘れですか?!」

 そうだった。
 ニーナに会うな。部屋に近づくなと言ったのは自分であった。

「聖女様はそれを守ろうと・・・。治すと言っても賛同しなかったでしょう。だから、わたしたちに協力を仰いだというに、旦那様、貴方様は・・・」
「素直に言われたら・・・」
「聖女様の声に耳を傾けるとは思いませんね」

 ぐっ・・・。
 確かに・・・。

 悪いことを、してしまった・・・。
 やらかしてしまった。












◇◇◇◇◇

イライラの未消化になりそうなので最終行っちゃいます。少しおまちください。
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