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1章、契約の内容
9.
しおりを挟む「そっちは?」
アシュリーが自分のプレートを見せる。
「Aランク。名前、えっ・・・」
「間違いありません」
アシュリーはエルバスに近づき、耳打ちした。美人が耳元で囁くのだ。彼の顔は赤くなる。しかしその顔はすぐに真顔に戻り、驚きに満ちた表情を見せた。先ほどと同じようにプレートとを見比べる。
「アシュと呼んでください。この依頼い受けますね」
ペロリと見せた依頼書はサウス樹海Aランクの魔獣討伐依頼だった。ランクの高いがアシュリーならできる。
「ああ、わかった・・・」
「あと、薬草が生えてる場所を教えてください。わたしは薬草取りするんで」
「・・・ああっ。先に、手続き更新するからま待ってくれ。これは少し預からせてもらえるか?」
「帰って来るまでに精算してくださればかまいません。そこからこちらの依頼書の金額を差し引いてくださればいいですから」
もはや、二人の独断場だった。
誰もがそんな三人のやり取りを静かに見守っていた。
手続きの更新も終わり、薬草の生えている場所を聞くと、二人は動き出した。
部屋から出ようとすれば冒険者たちが群がってきたのだ。
「そんなヒョロヒョロが何できるんだ?」
「さっきポーションとか言ったよな。俺に譲ってくれねぇかぁ?」
黄色い歯を見せながら言い寄ってきた。
「退いてください」
アシュリーの眼差しがキツくなる。
紫の瞳が濃くなった。
「姉ちゃん、俺たちと遊ぼうぜ」
それは一瞬だった。ニヤける男達の壁が波のように崩れ落ちたのだ。
エルバラが止めようと大声をだす。
「お前ら、やめろ!そいつはA級だ。しかも特例で止めてる、S級クラスの実力者だ!!」
アシュリーは、シェリルを守ると言う任務を行うA級冒険者だった。S級ともなれば、国の依頼をこなさなければならないため、あえてA級でいる変わり者。仲間もそれを理解しているため、年に数度ギルドノルマを達成するためパーティで討伐を行う以外、こうしてシェリルの元で侍女と警護を認めてくれている。
そんなアシュリーに叶うものはいなかった。
エルバスの止める声も空しく、既に床に這いつくばった冒険者たちを、シェリルはしゃがみ込んで眺める。
「アシュを怒らしちゃ駄目よ。みんな仲良くしてね。薬はまだ材料がないからごめんね。今からとってきて、作るから一週間はかかるかな・・・。待っててね」
ニコニコの顔は冒険者たちは誰も見ることはなかった。
エルバスとミルル、この諍いに関わらなかった者たちは戦々恐々とその様子を見ていた。誰も言葉はなかった。
「それじゃ、いってきまーす」
シェリルの声が響いた。
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