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10.アニス

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 なによ、これ?

 上手くいってたはずよ。
 なのに何?

 ルーカスに、侯爵家に借金があるの?
 慰謝料?
 聞いてない。
  
 わたしの計画が破綻する。


 
 学園に入学して、いろんな男を観察した。
 その中にルーカスがいた。
 婚約者はいたけど、ルーカスがあの女を毛嫌いしているのは聞いていたから、知っていた。

 ルーカスの容姿もわたし好みだし、地位もよくて、近づいた。

 わざと、彼に泣いたし、アピールもした。
 案の定、ルーカスはわたしを庇ってくれた。

 貧乏を誇張すれば、なんでも買ってくれた。
 このままいけばルーカスの愛人?
 もしかすると侯爵夫人?
 そうなれば、贅沢して生きていける。
 
 ルーカスはずっとそばにいてくれた。
 あの女の目つきは本当に怖かったけど、してこなかったから、弱虫なんだろうって思っていた。

 それでも、念の為に保険をかけた。
 ずっと、ルーカスといる為に。

 そのおかげで、ルーカスとは真実の愛で結ばれていると噂されるようになった。
 あの女は逆にわたしたちの中を割く、『悪女』なった。
 
 いいざまだわ。
 あの鼻につく女が悔しがるのを見るのが面白かった。


 しばらくすると、あの女は変わった。
 わたしたちに無関心になった。
 その事にルーカスは気にするようになった。
 だから、あの女が学園に来れないようにと、虐めてやった。階段から落としたのに、のうのうと学園に来た。
 どれだけ図太いのかと思った。

 まさか、に『悪女を殺してもらった』だなんて。
 対価に怒りと哀しみ?
 馬鹿じゃないのかしら。


 それより、魔女が王太子殿下だなんて、びっくり。
 
 婚約破棄とともに借金まみれの男より、王太子殿下に近づこうかしら?

 目の前のいけすかない女・・・いえ、男だったセシルもいいけど、うざそうだし。

 魔女姿の王太子殿下を見れば、身体がこわばった。

「そろそろ、対価を頂こうかしらね」

 あっ・・・。

「あなたもわたしに願ったわよね?確か、自分の魅力を引き出せるようにと」

 そうだった。
 ルーカスの心を捉えるために、自分の魅力を引き出したいと魔女に願ったのだ。
 対価は・・・。

「対価は『出世払い』だったけど、出世しなさそうだわ。だから、今貰うわね。そうね、あなたの大事なものでいいわ」

 冷たい目がわたしを見る。

 怖い。

「あなたの『美しさ』を貰うわ」
「嫌!!嫌よ!!」

 白い手がわたしに向けられる。
 なんだろう。
 その手から逃れられない。

 力だろうか、何かが抜けていくのがわかった。

「ひっ・・・」

 ルーカス様の悲鳴。

「ルーカス、彼女と幸せになるんだよ。きちんと家の借金も返して、リディア嬢に慰謝料も払うんだよ」

 振り返ると、魔女はいない。
 魔女の代わりに王太子殿下がいるだけ。

「王太子殿下・・・わたしは・・・」

 声がおかしい。
 顔を触る。皺?
 わたしの顔に皺がある。

 まさか・・・。

「ルーカス、アニス嬢。それが、君たちが望んだ事だよ。王太子である僕の命だよ。二人でになってね」

 そんな・・・。
 わたしは・・・、何を間違えたの?

「悪女は殺したんだ。もう、いないんだからね!?」

 王太子殿下は、笑った。
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