暗黒騎士様の町おこし ~魔族娘の異世界交易~

盛り塩

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第268話 決意

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「わかっとる、わかっとる。お前の言い分はもっともじゃ偽島よ」
「ならばすぐにでも戦いの準備をしましょう!! そうしなければ帝国も敗れ、真子も捕虜になり、アルテマ殿も帰る場所を失います!! 違いますかっ!?」
「ルナちゅわん!! ルナちゅわわわんのことも忘れないで欲しいでござるっ!!」
「アルテマが帰る場所はココじゃ!! もうどこにもやらんっ!!!!」

 夕飯を終え、さっそく今後の会議を始めたアルテマたち。
 偽島とアニオタ、そしてアルテマの三人は難陀《なんだ》打倒を訴えた。
 しかし元一と節子は断固としてそれを認めない。

「……もうあの龍に関わってはダメじゃ。魔神級の悪魔なのじゃろう? 魔法も打撃もなにも効かない相手にどう立ち向かうというんじゃ? また殺されるだけじゃ。こんどはワシやお前だけじゃない。アルテマの命まで危ないのかもしれんのじゃ」
「それは……だからアマテラスの……ですよねアルテマ殿?」
「ああ……魔法陣はもう完成している。私も覚醒して魔力が格段に上がった。勝機はあると思う……」
「思う、程度で許せるか!! 魔力が戻ったと言っても、そもそも効かない相手になんの意味がある!! アマテラスの陣にしてもそうじゃ!!」

 たしかに、元一の言う通りアマテラスの召喚など実際はできるかどうかわからない。できたとしても効くかどうかもわからないものを根拠として勝機は語れない。

「しかし……このまま手をこまねいていても……。それに私はなにもあいつと戦うつもりはない。……最悪、そういう展開になるかもしれないと言っているだけだ」

「……どういうことじゃ?」




「なるほど……倒してしまっては逆に何が起こるかわからん……と? ではどうするつもりじゃ?」

 討伐してしまった場合の危険性を説明したアルテマ。
 帝国と真子、そしてルナの運命がかかっている以上、慎重に行動しなければならないとも話した。それについては元一と節子も大賛成だった。

「……話し合ってみようと思う」
「できる相手だと?」
「思っている」

〝……それでも止めると言うのならば、相応の覚悟をもって挑んでまいれ。異世界の戦士よ、貴様の持つ〝鬼〟の力……その程度ではないはずだ……〟

 あのとき……元一たちが倒されたとき難陀《なんだ》はアルテマにそう告げた。
 そして何もせず祠に戻っていった。

「……あのとき……難陀《なんだ》が本気なら私たちは全滅していた。そうせずに……挑発するような言葉を残して消えたのは、なにか私に求めているものがあったからなのだと思う……」
「………………それを聞きに行くと言うのか?」
「ああ。……そして話し合い、折り合いがつけば戦いも避けられるだろう。……そもそも私にアイツと戦う理由はなかったのだから……」

 元一《ちち》を殺されかけたと言う私恨は残っているがな……。
 これは口に出さず、密かに思う。

「で、でもアルテマちゃん。アイツが生きてたら……それだけでズッと犠牲が出続けるかもしれないんでしょ? ほっとけないんじゃ……?」

 ぬか娘が不安そうに聞いてくる。
 誠司も、偽島も激しくうなずいている。

「それも含めて折り合いがつけられれば、と言う話だ。何事も交渉してみなければわからないものだ」
「それでも戦いになったらどうする? 相手は龍じゃぞ。人間の話に応じるとも思えんが……?」

 元一の心配に、偽島が返事をする。

「そうなったら今度こそ総力で相手をします。いま我々のルートを使って世界中から武器を集めています」

 そう言って懐から拳銃を取り出す。

「もちろん次に用意するものはこんなオモチャじゃありません。ロケットランチャー。対戦車機関砲も持ってくるつもりです」
「う、う、う、うぉ~~~~~そ、そ、そ、それは凄いでござる!! 重装甲も貫く機銃ならワンチャン効くかもでござるぅ~~~~!!」
「そんな物騒なもの準備するなバカモン!! 集落を潰す気かっ!??」

 そうでなくても公安に目をつけられている。
 そこにそんなテロまっしぐらな兵器を持ち込んでしまったら、もう言い訳などできない。

「……わたしも一緒に行ってやろう。老いぼれじゃが、一撃必殺の力は依茉《えま》よりも上じゃぞ。鉄壁の結界も張ってやれるしの」

 ボソリと占いさんが言ってくれる。
 たしかに頼もしい言葉だが、アルテマはそんな二人に首を振る。

「いや……こんどは私一人で行ってこようと思う。……どうもあの龍は私を攻撃しようとしないのでな。そのほうが安全だろう」
「し、しかし依茉《えま》――――いやアルテマ!!」
「ゲンさん、いいんだよ!!」

 ――――ゲシッ!!
 興奮するぬか娘をぶっ叩いて反対する元一。
 しかしアルテマは真剣な顔をして父を見返した。

「大丈夫だ元一。私はもう決して無茶はしない。もう二度と消えたりはしない。……しかしだからこそ難陀《なんだ》とは決着をつけておかねばならない。そう思うのだ……」
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