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第226話 急げよ
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まるで自分を携帯《ソレ》に繋げ、と言わんばかりに規格を合わせてきたアイアンゴーレム。
「……ま、マジか……?」
驚くべき知性を感じて、冷や汗を流すモジョ。
アルテマを見ると「大丈夫だ」とうなずいてきたので、恐る恐るゴーレムに触れる。
そして半信半疑に携帯側の端子に差し込むと、ゴーレムはピタリと繋がって、
――――ピ、ピピピピピピピピピピピ。
「っ!?」「よし、いいぞ」
電脳開門揖盗《サイバー・デモン・ザ・ホール》がひとりでに立ち上がった。
そして表示されたビデオ通話ボタンをモジョが押した途端。
――――ヴンッ。
再び異世界の景色が映し出された。
画面に映っているのはさっきと同じジルの寝室。
ただやはり時間が進んでいて、すでに朝になっていた。
床で丸まっていたはずのジルはいつのまにかベッドに戻っていて、ちゃっかり毛布にくるまっていた。
むにゃむにゃと口をハムハムする彼女を見て、
「お? 今度はちゃんと動いてる!? 回線が上手く繋がったってことだな!? ていうかアプリまでちゃんと把握して起動してくれるとか……すごいぞ、やるじゃないかゴーレム」
感動するモジョ。
どうやらアルテマの言う通り、同じ鉱物として半導体の原理やメモリーの構造まで把握し理解しているらしい。……恐るべき精霊。
そんなゴーレムに、さっきまでの敵対心は微塵もない。
それどころかモジョの言葉に反応して、うれしそうに胴体(?)をみょんみょん蠢《うごめ》かせている。
「成功か? ならばここからどうすればいい?」
「……とりあえず呼びかけてみろ」
アルテマはうなずくと、咳をひとつ。
「あ~~あ~~聞こえますか師匠、朝です、起きてください師匠。アルテマです、おはようございます」
言ってみるが画面の中のジルが反応してくれる気配はなかった。
ただ少しモゴモゴ動いたので、声は届いているのかもしれない。
「…………………――――……!!」
アルテマはしばらく考えて、なにやら良い考えが浮かんだと、手を叩く。
そしてもう一度、こんどは大きく息を吸って――――、
「敵襲ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
全力でそう叫んだ。
するとその声にビクッと反応したジルはカッと目を見開き、数瞬の間を挟んでガバっと飛び起きると、窓へと突進し外をうかがった。
なにも異変のない景色に『???』をいっぱい浮かべつつ、椅子の背もたれにかけてあったローブを手に取り、着替えようとして裾を踏んで転がって、置いてあった花瓶もろともひっくり返った。
おそらく大きな音がしたのだろう、すぐに扉が勢いよく開けられて、血相を変えた見習い神官の男子が二人、部屋に飛び込んできた。
二人はなにかを呼びかけながらジルを起こそうとするが、その薄布姿を見てトマトのように顔を真っ赤にして固まる。
二人の存在に気がついたジルは、同じく赤面して悲鳴らしきものを上げると、見習い神官たちは、深く頭を下げて慌てて出ていった。
そして部屋を見回し呆然としている。
ここまで、音は一切聞こえなかった。
「……おかしいな?」
一連の反応を微妙な表情で観察していた二人。
アルテマはつぶやいた。
たしかに自分の声に反応して飛び起きてくれたはずなのに、向こうからの音声はまったく聞こえない。
モジョとともに首をかしげると。
『――――!? ??? ――――!???』
ジルは耳に手を当てながら、誰かを探すように部屋内をうろつきまわっていた。
「師匠……?」
するとまたジルは反応してキョロキョロしている。
「……これは……もしかしたら……一方通行なのかもしれないな」
モジョが推測する。
「一方通行? こっちの声だけが届いているということか?」
「……かもしれない」
「だとしたら、どうすればいい?」
「……とりあえず今の状況を知らせるしかないだろう。説明してやってくれ」
「わかった」
うなずくと、戸惑うジルに対しアルテマは電脳開門揖盗《サイバー・デモン・ザ・ホール》の開発を中心に、一方的に事情を説明し始めた。
――――ピピ、ピピ、ピピピピピピピピピピッ!!!!
波形の異常を知らせるアラームが集中治療室に響きわたった。
医師たちが慌ただしく入り込み、容態復帰の処置をしている。
そのベッドに横たわるのは、傷つき、瀕死の元一。
節子はその光景を涙を流しながら、廊下で、ただ見ているしかなかった。
その後ろでクロードが何度もヒールを唱えているが、やはり発動してくれる気配はなかった。
アニオタの説明で、魔法が封じられている現状は理解した。
いますぐ難陀《なんだ》を成敗し、龍脈を開き直したかったが、くやしいがとても一人でどうにかできる相手でもない。
アルテマと、あの目立たない女がなにかをしていると聞いたが、いまはそれに賭けるしかないようだ。
強制下僕状態にされているクロード的には、集落のリーダー的存在である元一が倒れることは下剋上のきっかけとして悪くない話だったが、さすがにそこまで非情に、打算的に動くつもりもない。
なのでアルテマ。
お前は一刻も早く、意地でも、この状況を打開しろ!!
そうすれば、俺様がすべてを救ってやる。
「聖騎士の名にかけて……な」
不甲斐なさを難陀《なんだ》への怒りに変え、クロードもまた意地を燃やしていた。
「……ま、マジか……?」
驚くべき知性を感じて、冷や汗を流すモジョ。
アルテマを見ると「大丈夫だ」とうなずいてきたので、恐る恐るゴーレムに触れる。
そして半信半疑に携帯側の端子に差し込むと、ゴーレムはピタリと繋がって、
――――ピ、ピピピピピピピピピピピ。
「っ!?」「よし、いいぞ」
電脳開門揖盗《サイバー・デモン・ザ・ホール》がひとりでに立ち上がった。
そして表示されたビデオ通話ボタンをモジョが押した途端。
――――ヴンッ。
再び異世界の景色が映し出された。
画面に映っているのはさっきと同じジルの寝室。
ただやはり時間が進んでいて、すでに朝になっていた。
床で丸まっていたはずのジルはいつのまにかベッドに戻っていて、ちゃっかり毛布にくるまっていた。
むにゃむにゃと口をハムハムする彼女を見て、
「お? 今度はちゃんと動いてる!? 回線が上手く繋がったってことだな!? ていうかアプリまでちゃんと把握して起動してくれるとか……すごいぞ、やるじゃないかゴーレム」
感動するモジョ。
どうやらアルテマの言う通り、同じ鉱物として半導体の原理やメモリーの構造まで把握し理解しているらしい。……恐るべき精霊。
そんなゴーレムに、さっきまでの敵対心は微塵もない。
それどころかモジョの言葉に反応して、うれしそうに胴体(?)をみょんみょん蠢《うごめ》かせている。
「成功か? ならばここからどうすればいい?」
「……とりあえず呼びかけてみろ」
アルテマはうなずくと、咳をひとつ。
「あ~~あ~~聞こえますか師匠、朝です、起きてください師匠。アルテマです、おはようございます」
言ってみるが画面の中のジルが反応してくれる気配はなかった。
ただ少しモゴモゴ動いたので、声は届いているのかもしれない。
「…………………――――……!!」
アルテマはしばらく考えて、なにやら良い考えが浮かんだと、手を叩く。
そしてもう一度、こんどは大きく息を吸って――――、
「敵襲ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
全力でそう叫んだ。
するとその声にビクッと反応したジルはカッと目を見開き、数瞬の間を挟んでガバっと飛び起きると、窓へと突進し外をうかがった。
なにも異変のない景色に『???』をいっぱい浮かべつつ、椅子の背もたれにかけてあったローブを手に取り、着替えようとして裾を踏んで転がって、置いてあった花瓶もろともひっくり返った。
おそらく大きな音がしたのだろう、すぐに扉が勢いよく開けられて、血相を変えた見習い神官の男子が二人、部屋に飛び込んできた。
二人はなにかを呼びかけながらジルを起こそうとするが、その薄布姿を見てトマトのように顔を真っ赤にして固まる。
二人の存在に気がついたジルは、同じく赤面して悲鳴らしきものを上げると、見習い神官たちは、深く頭を下げて慌てて出ていった。
そして部屋を見回し呆然としている。
ここまで、音は一切聞こえなかった。
「……おかしいな?」
一連の反応を微妙な表情で観察していた二人。
アルテマはつぶやいた。
たしかに自分の声に反応して飛び起きてくれたはずなのに、向こうからの音声はまったく聞こえない。
モジョとともに首をかしげると。
『――――!? ??? ――――!???』
ジルは耳に手を当てながら、誰かを探すように部屋内をうろつきまわっていた。
「師匠……?」
するとまたジルは反応してキョロキョロしている。
「……これは……もしかしたら……一方通行なのかもしれないな」
モジョが推測する。
「一方通行? こっちの声だけが届いているということか?」
「……かもしれない」
「だとしたら、どうすればいい?」
「……とりあえず今の状況を知らせるしかないだろう。説明してやってくれ」
「わかった」
うなずくと、戸惑うジルに対しアルテマは電脳開門揖盗《サイバー・デモン・ザ・ホール》の開発を中心に、一方的に事情を説明し始めた。
――――ピピ、ピピ、ピピピピピピピピピピッ!!!!
波形の異常を知らせるアラームが集中治療室に響きわたった。
医師たちが慌ただしく入り込み、容態復帰の処置をしている。
そのベッドに横たわるのは、傷つき、瀕死の元一。
節子はその光景を涙を流しながら、廊下で、ただ見ているしかなかった。
その後ろでクロードが何度もヒールを唱えているが、やはり発動してくれる気配はなかった。
アニオタの説明で、魔法が封じられている現状は理解した。
いますぐ難陀《なんだ》を成敗し、龍脈を開き直したかったが、くやしいがとても一人でどうにかできる相手でもない。
アルテマと、あの目立たない女がなにかをしていると聞いたが、いまはそれに賭けるしかないようだ。
強制下僕状態にされているクロード的には、集落のリーダー的存在である元一が倒れることは下剋上のきっかけとして悪くない話だったが、さすがにそこまで非情に、打算的に動くつもりもない。
なのでアルテマ。
お前は一刻も早く、意地でも、この状況を打開しろ!!
そうすれば、俺様がすべてを救ってやる。
「聖騎士の名にかけて……な」
不甲斐なさを難陀《なんだ》への怒りに変え、クロードもまた意地を燃やしていた。
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