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第153話 悲しき人
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「季里《きり》……さんですか?」
生贄を使わずに、どうにか難陀《なんだ》を眠らせることができないか。
ヨウツベたちは占いさんと一緒に隣集落のお寺まで相談しにきていた。
住職の話によると件《くだん》の娘の名は季里だと言うことまではわかった。
ちなみに難陀《なんだ》の人間の頃の名は源次郎。
「伝え話によると……その娘は源次郎と別れ、別の男と契らされた後……自ら命を断ってしまったようですね」
30代くらいの若い住職は古い文献を引っ張り出し、そう聞かせてくれた。
それを横から覗き込み「ふむふむ」と興味深げにうなずく占さん。
ぬか娘もおなじく眺めてみるが、誰が書いたか達筆すぎて何が何だかわからない。
すぱぁんっ。
生のビキニアーマー姿を間近で見せられ煩悩が湧き出たか、住職は眉の間で縦じわをくっきりと走らせ自分の頬をひっぱたく。
「? 何してるんですか」
この姿に慣れてしまい、もはや見られている自覚がなくなったぬか娘は不思議な顔できょとんとするが、住職は誤魔化すように咳払いをひとつ、
「ごっほん……と、ともかく……娘の死を知らぬまま待ち続けた源次郎はやがて龍の姿に身を落とし、村人は季里の代わりとなる娘を捧げ続けなければならなくなったというわけです……チラチラ」
「……なるほどのう……死んでしまっては娘を返そうにも返せなかったということじゃの。……どちらにとっても不憫な話じゃ……」
「ま、ま、ま……まるでいまの僕とルナちゅわらんを見ているようでござる。あ、あ、愛する恋人と引き離され……し、し、し、しかも禁断のNTR……!? ああ、だめでござる!! ぼ、ぼ、僕の理性の扉よ、そっちを開けてはいかんでござる」
季里と源次郎。
二人の不幸をなんともやるせない気持ちで聞いていた三人。
アニオタだけは歪んだ背徳感に興奮しているようだがいつものことなので放っておく。
「もし季里さんが生きていてくれたら……源次郎は難陀《なんだ》にならなくてもすんだんでしょうね……」
「でも……龍にならなければ村人も反省なんてしなかっただろうし……どっちみち避けられない運命だったんじゃないかな。昔のことだし……若者の人権なんてあって無いようなものだったと思うよ」
ぬか娘のつぶやきにヨウツベがカメラを回しながら返事する。
これも動画のネタに使うようである。
「そうかなぁ……死ぬことを思えば駆け落ちでもなんでも……あ、でも……それをしようとしてダメだったんだよね」
「見張りとか……もしかしたら監禁とかされてたのかもしれないね。……でなけりゃ何をしても源次郎の元へ行くよ。死ぬほど想っていたのだから」
「か、か、か……監禁……見られながらホニャララ……ああ……まことに遺憾でござるよはぁはぁ……トイレに……トイレにイカせてくだされ~~~~」
申請なるお寺の東司《とうす》で迂闊なことはやめてくれ。と睨みをきかすヨウツベと占いさん。
アニオタはだんご虫のように丸まって悶ている。
そんな彼になぜか共感の目を向ける住職。
ひそかなカオスが広がるなか、ひとりお気楽なぬか娘が、
「でもさ、その季里さんのことを難陀《なんだ》……源次郎さんに伝えてみたらどうかな? ……もしかしたらそれで諦めてくれるかもしれないよ?」
と、言う話を持ち帰ってアルテマに聞かせたところ。
「むははははははははは!! なるほどなるほど、そういうことならあいわかった!! このクロード様があの腐れトカゲに真実をぶちまけ未練を断ち切ってくれるわ!! ゆくぞアルテマでぃやぁっ!!!!」
モジョを交えて三人で大乱闘なんちゃらシスターズをやっていたクロードがコントローラーを投げ捨て走り去っていった。
アルテマは無言でゲームの続きを再開する。
「あ、じゃあ私が入るね」
「僕たちもやりましょう」
ぬか娘、ヨウツベ、アニオタも参戦し、みんなで楽しく白熱する。
数刻の時が過ぎたころ――――、
「のれぃ!! クソトカゲめ~~~~覚えていろよーーーーーーーーっ!!!!」
ガラスを揺らす龍の咆哮と地響き、クロードの捨て台詞が屋根の上を通過した。
アルテマはコントローラーを静かに置く。
「……では回収してくるか」
「だね、行こう行こう」
みんなでクロードを拾いに行くべく立ち上がった。
「で、どうだった?」
八つ墓村のごとく畑に突き刺さっているクロードを突っつくアルテマ。
「もがもがもがーーーーー(# ゚Д゚)!!!!」
なにやら怒りの感情を下半身のジャスチャーで表現しているが、当然なにを言っているか皆目わからない。
自分の畑に大穴を開けられた六段は、
「……貴様……ワシが丹精込めてつくった茄子を台無しにしおって……」
殺気を込めた目で馬鹿を引き抜いた。
クロードは生茄子をかじりながら土から出てくると、
「だめだあいつ話が通じんっ!!!!」
喚き散らした。
だろうな。とアルテマは疲れた顔で肩を落とした。
生贄を使わずに、どうにか難陀《なんだ》を眠らせることができないか。
ヨウツベたちは占いさんと一緒に隣集落のお寺まで相談しにきていた。
住職の話によると件《くだん》の娘の名は季里だと言うことまではわかった。
ちなみに難陀《なんだ》の人間の頃の名は源次郎。
「伝え話によると……その娘は源次郎と別れ、別の男と契らされた後……自ら命を断ってしまったようですね」
30代くらいの若い住職は古い文献を引っ張り出し、そう聞かせてくれた。
それを横から覗き込み「ふむふむ」と興味深げにうなずく占さん。
ぬか娘もおなじく眺めてみるが、誰が書いたか達筆すぎて何が何だかわからない。
すぱぁんっ。
生のビキニアーマー姿を間近で見せられ煩悩が湧き出たか、住職は眉の間で縦じわをくっきりと走らせ自分の頬をひっぱたく。
「? 何してるんですか」
この姿に慣れてしまい、もはや見られている自覚がなくなったぬか娘は不思議な顔できょとんとするが、住職は誤魔化すように咳払いをひとつ、
「ごっほん……と、ともかく……娘の死を知らぬまま待ち続けた源次郎はやがて龍の姿に身を落とし、村人は季里の代わりとなる娘を捧げ続けなければならなくなったというわけです……チラチラ」
「……なるほどのう……死んでしまっては娘を返そうにも返せなかったということじゃの。……どちらにとっても不憫な話じゃ……」
「ま、ま、ま……まるでいまの僕とルナちゅわらんを見ているようでござる。あ、あ、愛する恋人と引き離され……し、し、し、しかも禁断のNTR……!? ああ、だめでござる!! ぼ、ぼ、僕の理性の扉よ、そっちを開けてはいかんでござる」
季里と源次郎。
二人の不幸をなんともやるせない気持ちで聞いていた三人。
アニオタだけは歪んだ背徳感に興奮しているようだがいつものことなので放っておく。
「もし季里さんが生きていてくれたら……源次郎は難陀《なんだ》にならなくてもすんだんでしょうね……」
「でも……龍にならなければ村人も反省なんてしなかっただろうし……どっちみち避けられない運命だったんじゃないかな。昔のことだし……若者の人権なんてあって無いようなものだったと思うよ」
ぬか娘のつぶやきにヨウツベがカメラを回しながら返事する。
これも動画のネタに使うようである。
「そうかなぁ……死ぬことを思えば駆け落ちでもなんでも……あ、でも……それをしようとしてダメだったんだよね」
「見張りとか……もしかしたら監禁とかされてたのかもしれないね。……でなけりゃ何をしても源次郎の元へ行くよ。死ぬほど想っていたのだから」
「か、か、か……監禁……見られながらホニャララ……ああ……まことに遺憾でござるよはぁはぁ……トイレに……トイレにイカせてくだされ~~~~」
申請なるお寺の東司《とうす》で迂闊なことはやめてくれ。と睨みをきかすヨウツベと占いさん。
アニオタはだんご虫のように丸まって悶ている。
そんな彼になぜか共感の目を向ける住職。
ひそかなカオスが広がるなか、ひとりお気楽なぬか娘が、
「でもさ、その季里さんのことを難陀《なんだ》……源次郎さんに伝えてみたらどうかな? ……もしかしたらそれで諦めてくれるかもしれないよ?」
と、言う話を持ち帰ってアルテマに聞かせたところ。
「むははははははははは!! なるほどなるほど、そういうことならあいわかった!! このクロード様があの腐れトカゲに真実をぶちまけ未練を断ち切ってくれるわ!! ゆくぞアルテマでぃやぁっ!!!!」
モジョを交えて三人で大乱闘なんちゃらシスターズをやっていたクロードがコントローラーを投げ捨て走り去っていった。
アルテマは無言でゲームの続きを再開する。
「あ、じゃあ私が入るね」
「僕たちもやりましょう」
ぬか娘、ヨウツベ、アニオタも参戦し、みんなで楽しく白熱する。
数刻の時が過ぎたころ――――、
「のれぃ!! クソトカゲめ~~~~覚えていろよーーーーーーーーっ!!!!」
ガラスを揺らす龍の咆哮と地響き、クロードの捨て台詞が屋根の上を通過した。
アルテマはコントローラーを静かに置く。
「……では回収してくるか」
「だね、行こう行こう」
みんなでクロードを拾いに行くべく立ち上がった。
「で、どうだった?」
八つ墓村のごとく畑に突き刺さっているクロードを突っつくアルテマ。
「もがもがもがーーーーー(# ゚Д゚)!!!!」
なにやら怒りの感情を下半身のジャスチャーで表現しているが、当然なにを言っているか皆目わからない。
自分の畑に大穴を開けられた六段は、
「……貴様……ワシが丹精込めてつくった茄子を台無しにしおって……」
殺気を込めた目で馬鹿を引き抜いた。
クロードは生茄子をかじりながら土から出てくると、
「だめだあいつ話が通じんっ!!!!」
喚き散らした。
だろうな。とアルテマは疲れた顔で肩を落とした。
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