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第139話 役に立たないやつ。
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アルテマが嫌がった理由。それはもちろん。
「……ほう、これがその龍穴の祠というやつか。思っていたよりも質素なものだったな――――ところでアルテマ、貴様たちはなぜそんな離れたところから見ているのだ?」
案内された祠の前に立ち、クロードは不思議そうにアルテマへと振り返った。
アルテマと元一は少し離れた木の陰から隠れるようにこちらを覗き込んでいる。
「い、いや、気にするな……それよりどうだ? どこか気になるところは見つかったか?」
「……いや、とくになにも……これといって普通などこにでもある石造りの祠に見えるが……。そういえば貴様、来るとき危険があって近寄れないとか言っていたが、あれは何だったのだ?」
「……うむ、実はな……」
「そういえばさっきから魔素が減っているように感じているのだが……? はて、この光は何だ、どうして祠に吸い込まれていっている??」
アルテマはこの祠がどういうものか説明した。
「おぉぉっっぉぉぉおおぉぃっ!! ふ、ふ、ふざけるなよ貴様!!!!」
祠が龍脈につながっていること。
その流れが変わって気(魔素)を吸い込むようになっていること。
そして吸われすぎると最悪死ぬ、と聞いたところで――――、
全力で逃げてきたクロードが汗だくでアルテマを締め上げた。
「ぐえ……お、お前が勝手に近寄ったんだろうが、私は知らんぞ……苦しい……離せ……!!」
「3秒以内に離せ、さもなくば3,2,1」
ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!
「ワシの銃が火を吹くことになるぞ」
猟銃を構えた元一が目を座らせる。
辺りにはキラキラと舞う金色の髪の毛と、それを焦がした嫌なニオイが広がった。
「う……撃ってからいうな貴様!!」
「言っておくが、ワシはまだお前を認めたわけではない。いまは協力していても、いずれはまた敵になるのじゃろう? ならばいっそここで葬ってしまっても……」
「おぉ、やるかこの年寄が!! そんな銃など俺のラグエルで一瞬にして――――」
「わかった、わかったから、いいからやめろ二人ともゴホッゴホンッ!!」
締められた首をさすりながらアルテマは元一を後ろに下がらせた。
「……ともかく、そういうわけでな。私もできることなら隅々まで調べてみたいのだが近寄れんのだ。だからこの問題はいったん置いといて、後々状況が変わってくるようならその時に調べてみようと思っていたのだ」
「……ずいぶんと悠長なことを」
「仕方がないだろう? まさか異世界側であんな変化があるとは思ってもいなかったからな」
「しかしこうなってしまっては調べないわけにもいかないだろう」
「うむ、だからお前が男気をみせてカラダをはっているのを影で見守っていたのだ」
「貴様……ものは言いようだな……」
「ほお、お前は東京に転移したのか? 元一、東京とはここから遠いのか?」
とりあえず祠を遠巻きに見ながら調べる手段を模索する三人。
祠を中心にウロウロと周りを歩き回り、そのうちクロードが転移した状況はどうだったのだとアルテマが尋ねた。
「……遠いな。400キロくらいじゃろうか?」
「歩きで10日くらいか……」
「ああ、奥多摩あたりの山奥にいきなり子供姿で放り出されてな。着るものもないし……あのときはわりと真剣に泣きそうになったぞ」
その後、警察に保護され色々調べ尽くされたあげく役所をたらい回しにされて施設に預けられた。その間、実際に泣いた回数は十数回にのぼったが、それは絶対に言わないクロード。
「で、その時の状況はどうだったのじゃ? アレに似た祠はそこになかったのか?」
元一が聞くがクロードは、
「あったかな……あったかもしれんが……どうだろうか? ……なにせ15年も前の記憶だからな……よく思い返せない」
頭を押さえて渋い顔をみせた。
「おい、ここは大事なところだぞ? 同じ状況ならば、やはり祠が転移の核になっていると考えていいのだからな」
「わかっている。しかしアルテマよ、あのときの俺は子供だったのだぞ。そんな冷静にまわりを観察などできはしなかったのだ」
「頭は大人だったんだろうが!?」
「そうだがあの場面は大人でも充分怖いぞ。貴様もそうだったんだろうが」
「いや、私は目覚める前に元一に拾われていたからな。案外冷静だったぞ」
「お前……この俺は素っ裸で山道を転げ落ちていた言うのに……」
おまけにクロードはアルテマが使うような探索系魔法《フェアリーズ》は持ち合わせていない。
そんな状況で冷静に行動できなかったのは、仕方のないことかもしれない。
「では場所はどこなんだ? 奥多摩の山奥と言ったが何山のどのあたりだ?」
「いや、だから……知らん。とにかく二、三日山を這いずり回ってようやく人里を見つけたからな。……その頃は俺も必死で」
「わかった。もういい……」
子供の足とはいえ二日以上歩いたのならばその範囲は相当なもの。
連なる山々からその場所を見つけ出すのはもはや不可能……とまでは言わないが労力が惜しすぎる。
結局なんにも役立つ情報を持っていないポンコツに、アルテマは頭を押さえて頭痛を我慢した。
「……ほう、これがその龍穴の祠というやつか。思っていたよりも質素なものだったな――――ところでアルテマ、貴様たちはなぜそんな離れたところから見ているのだ?」
案内された祠の前に立ち、クロードは不思議そうにアルテマへと振り返った。
アルテマと元一は少し離れた木の陰から隠れるようにこちらを覗き込んでいる。
「い、いや、気にするな……それよりどうだ? どこか気になるところは見つかったか?」
「……いや、とくになにも……これといって普通などこにでもある石造りの祠に見えるが……。そういえば貴様、来るとき危険があって近寄れないとか言っていたが、あれは何だったのだ?」
「……うむ、実はな……」
「そういえばさっきから魔素が減っているように感じているのだが……? はて、この光は何だ、どうして祠に吸い込まれていっている??」
アルテマはこの祠がどういうものか説明した。
「おぉぉっっぉぉぉおおぉぃっ!! ふ、ふ、ふざけるなよ貴様!!!!」
祠が龍脈につながっていること。
その流れが変わって気(魔素)を吸い込むようになっていること。
そして吸われすぎると最悪死ぬ、と聞いたところで――――、
全力で逃げてきたクロードが汗だくでアルテマを締め上げた。
「ぐえ……お、お前が勝手に近寄ったんだろうが、私は知らんぞ……苦しい……離せ……!!」
「3秒以内に離せ、さもなくば3,2,1」
ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!
「ワシの銃が火を吹くことになるぞ」
猟銃を構えた元一が目を座らせる。
辺りにはキラキラと舞う金色の髪の毛と、それを焦がした嫌なニオイが広がった。
「う……撃ってからいうな貴様!!」
「言っておくが、ワシはまだお前を認めたわけではない。いまは協力していても、いずれはまた敵になるのじゃろう? ならばいっそここで葬ってしまっても……」
「おぉ、やるかこの年寄が!! そんな銃など俺のラグエルで一瞬にして――――」
「わかった、わかったから、いいからやめろ二人ともゴホッゴホンッ!!」
締められた首をさすりながらアルテマは元一を後ろに下がらせた。
「……ともかく、そういうわけでな。私もできることなら隅々まで調べてみたいのだが近寄れんのだ。だからこの問題はいったん置いといて、後々状況が変わってくるようならその時に調べてみようと思っていたのだ」
「……ずいぶんと悠長なことを」
「仕方がないだろう? まさか異世界側であんな変化があるとは思ってもいなかったからな」
「しかしこうなってしまっては調べないわけにもいかないだろう」
「うむ、だからお前が男気をみせてカラダをはっているのを影で見守っていたのだ」
「貴様……ものは言いようだな……」
「ほお、お前は東京に転移したのか? 元一、東京とはここから遠いのか?」
とりあえず祠を遠巻きに見ながら調べる手段を模索する三人。
祠を中心にウロウロと周りを歩き回り、そのうちクロードが転移した状況はどうだったのだとアルテマが尋ねた。
「……遠いな。400キロくらいじゃろうか?」
「歩きで10日くらいか……」
「ああ、奥多摩あたりの山奥にいきなり子供姿で放り出されてな。着るものもないし……あのときはわりと真剣に泣きそうになったぞ」
その後、警察に保護され色々調べ尽くされたあげく役所をたらい回しにされて施設に預けられた。その間、実際に泣いた回数は十数回にのぼったが、それは絶対に言わないクロード。
「で、その時の状況はどうだったのじゃ? アレに似た祠はそこになかったのか?」
元一が聞くがクロードは、
「あったかな……あったかもしれんが……どうだろうか? ……なにせ15年も前の記憶だからな……よく思い返せない」
頭を押さえて渋い顔をみせた。
「おい、ここは大事なところだぞ? 同じ状況ならば、やはり祠が転移の核になっていると考えていいのだからな」
「わかっている。しかしアルテマよ、あのときの俺は子供だったのだぞ。そんな冷静にまわりを観察などできはしなかったのだ」
「頭は大人だったんだろうが!?」
「そうだがあの場面は大人でも充分怖いぞ。貴様もそうだったんだろうが」
「いや、私は目覚める前に元一に拾われていたからな。案外冷静だったぞ」
「お前……この俺は素っ裸で山道を転げ落ちていた言うのに……」
おまけにクロードはアルテマが使うような探索系魔法《フェアリーズ》は持ち合わせていない。
そんな状況で冷静に行動できなかったのは、仕方のないことかもしれない。
「では場所はどこなんだ? 奥多摩の山奥と言ったが何山のどのあたりだ?」
「いや、だから……知らん。とにかく二、三日山を這いずり回ってようやく人里を見つけたからな。……その頃は俺も必死で」
「わかった。もういい……」
子供の足とはいえ二日以上歩いたのならばその範囲は相当なもの。
連なる山々からその場所を見つけ出すのはもはや不可能……とまでは言わないが労力が惜しすぎる。
結局なんにも役立つ情報を持っていないポンコツに、アルテマは頭を押さえて頭痛を我慢した。
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