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第68話 薬の効果
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「ん、籠城戦じゃーーーーーーーーぃ!!!!」
話を聞いた六段は気合一発、拳を天井に突き上げた!!
ここは元一宅の居間。
老人たちが集まって今朝の出来事について話し合っていた。
「面白くなってきたじゃないか!! 敵がその手でくるのなら、ワシらもとことんやってやるわ、のお、占いさんや!?」
「じゃの。顔も知らんよそ者にこの蹄沢を好きにイジらせてなるものかいな。そもそも山を削ったりなんぞしたら龍脈の流れがどう変わるかわからん。そんな事を説明してもどうせ理解出来んじゃろうから、こっちも態度で示すしかないのう」
「ワシはぁ……ヒック、酒が飲めれば何でもええわ。……ネットもテレビも別にいらん。飲めればそれでどこでも都じゃわ。がははは……ヒック」
笑う飲兵衛の傍らで、ぬか娘が悲しそうに手を上げる。
「……あの~~~~……それじゃあ私んちが困るんですけど」
「ん? ああ、あいつらか? あいつらは……ラジオとか聞かせればええんちゃうやろか……ヒック」
「それじゃよけい凶暴化しちゃうよ……。今朝から私、怖くて校舎に帰ってないんですからね~~!!」
涙ながらに訴えてくるぬか娘。
「奴らはそんなに荒《すさ》んでいるのか?」
アルテマが尋ねると、
「荒んでるどころじゃないよ……。ヨウツベさんは『動画……編集……加工……アップロード……』ってブツブツ言いながら校舎中ゾンビみたいにうろついてるし、アニオタさんは……なんだかその……アニメの女の子の名前を連呼しながら床をバタバタ、バタフライで泳いでいるし、モジョは奇声を上げながらキーボードを叩きまくってるのよ? もう怖くて怖くて近寄れないよ~~~~……!!」
「そ、それはまた壮絶な光景だな……」
この世界の若者にとって、通信回線が切れると言うことはそれほどまでに重大な出来事なのか、とアルテマは冷や汗を流す。
「……早く帰ってぬか床ひっくり返したいのに……このままじゃカビちゃうよ」
まあ、かくいう自分も開門揖盗《デモン・ザ・ホール》が使えないと知ったときは絶望にも似た寂寥感《せきりょうかん》を感じたもの。
なので気持ちはよくわかる。
そう思い返したその時――――。
から~~んころ~~んからん♪
噂をすればのタイミングで開門揖盗《デモン・ザ・ホール》の鐘が鳴った。
半透明に輝く金色にのベルを見て、
「師匠だ!! 待ちかねておったぞ!!」
と、アルテマが顔を輝かす。
一同も、待ってましたと注目する。
飲兵衛も酔いが冷めたかのようにシャッキリ背筋を正すと、そのベルを見上げた。
「では、薬は確かに効いたと言うんやな?」
充実感に満たされた顔の飲兵衛が、ジルにあらためてそう確認した。
『はい……女性も……子供も……ぐすぐすじゅるぅぅぅ~~……妊婦でさえも持ち直し、みな回復に向かっております。水源のほうの浄化も……ずずじゅる、僅かながら進んでおり……ひ、ひっくひっく……貴方様がたの用意して下さった薬は……ま、まるで神(魔神)の落とし奇跡だと村人みんなで崇めておりますぅぅぅびえぇぇええぇん!!』
感謝と安堵と希望の気持ちを、涙と鼻水に変えて、魔法の向こう側にいるジルはぐじゅぐじゅになって頭を下げる。
垂れた鼻水が美人を台無しにしているが、そんなことはまるで気にしていない様子。
後ろの景色は皇宮の法具部屋ではなく、どこかの簡素で貧乏くさい板の間だった。
どうやらジル本人が直接ザダブの街へと出向いて処置をしていたようだ。
服装も普段の綺麗なローブではなく、吐瀉物などで薄汚れた前掛け。
その様子と自身の経験を重ねて、現場の凄惨さを理解した飲兵衛は、
「なにを言う。一番頑張ったのはジルさんやろう? 安い薬しか用意できひんこっちに礼を言うことなんかあらへん。まずは自分を褒めたればええ」
そう優しく言ってあげた。
下げたままのジルの頭から、鼻水がいっそう伸びて床に付きそうになる。
アルテマも飲兵衛の後ろで涙と鼻水だらけになって震えていた。
その顔を元一と節子、そしてぬか娘のハンカチが拭いまくった。
「ふむ、まずは良かったようじゃが……まだまだ患者はいるのじゃろう? 効果があるとわかったのなら、次はその先を考えねばならんのう……」
と、占いさん。
「そうだな。ではさっそく追加の薬を大量発注させて――――おい、アニオタ」
六段が調達係のアニオタを呼ぶが、
「む……そう言えば……あのバカは」
「うん。より一層バカになってる。いまは手を付けられないよ……」
渋い顔で固まる六段に、情けない顔でぬか娘がこたえた。
話を聞いた六段は気合一発、拳を天井に突き上げた!!
ここは元一宅の居間。
老人たちが集まって今朝の出来事について話し合っていた。
「面白くなってきたじゃないか!! 敵がその手でくるのなら、ワシらもとことんやってやるわ、のお、占いさんや!?」
「じゃの。顔も知らんよそ者にこの蹄沢を好きにイジらせてなるものかいな。そもそも山を削ったりなんぞしたら龍脈の流れがどう変わるかわからん。そんな事を説明してもどうせ理解出来んじゃろうから、こっちも態度で示すしかないのう」
「ワシはぁ……ヒック、酒が飲めれば何でもええわ。……ネットもテレビも別にいらん。飲めればそれでどこでも都じゃわ。がははは……ヒック」
笑う飲兵衛の傍らで、ぬか娘が悲しそうに手を上げる。
「……あの~~~~……それじゃあ私んちが困るんですけど」
「ん? ああ、あいつらか? あいつらは……ラジオとか聞かせればええんちゃうやろか……ヒック」
「それじゃよけい凶暴化しちゃうよ……。今朝から私、怖くて校舎に帰ってないんですからね~~!!」
涙ながらに訴えてくるぬか娘。
「奴らはそんなに荒《すさ》んでいるのか?」
アルテマが尋ねると、
「荒んでるどころじゃないよ……。ヨウツベさんは『動画……編集……加工……アップロード……』ってブツブツ言いながら校舎中ゾンビみたいにうろついてるし、アニオタさんは……なんだかその……アニメの女の子の名前を連呼しながら床をバタバタ、バタフライで泳いでいるし、モジョは奇声を上げながらキーボードを叩きまくってるのよ? もう怖くて怖くて近寄れないよ~~~~……!!」
「そ、それはまた壮絶な光景だな……」
この世界の若者にとって、通信回線が切れると言うことはそれほどまでに重大な出来事なのか、とアルテマは冷や汗を流す。
「……早く帰ってぬか床ひっくり返したいのに……このままじゃカビちゃうよ」
まあ、かくいう自分も開門揖盗《デモン・ザ・ホール》が使えないと知ったときは絶望にも似た寂寥感《せきりょうかん》を感じたもの。
なので気持ちはよくわかる。
そう思い返したその時――――。
から~~んころ~~んからん♪
噂をすればのタイミングで開門揖盗《デモン・ザ・ホール》の鐘が鳴った。
半透明に輝く金色にのベルを見て、
「師匠だ!! 待ちかねておったぞ!!」
と、アルテマが顔を輝かす。
一同も、待ってましたと注目する。
飲兵衛も酔いが冷めたかのようにシャッキリ背筋を正すと、そのベルを見上げた。
「では、薬は確かに効いたと言うんやな?」
充実感に満たされた顔の飲兵衛が、ジルにあらためてそう確認した。
『はい……女性も……子供も……ぐすぐすじゅるぅぅぅ~~……妊婦でさえも持ち直し、みな回復に向かっております。水源のほうの浄化も……ずずじゅる、僅かながら進んでおり……ひ、ひっくひっく……貴方様がたの用意して下さった薬は……ま、まるで神(魔神)の落とし奇跡だと村人みんなで崇めておりますぅぅぅびえぇぇええぇん!!』
感謝と安堵と希望の気持ちを、涙と鼻水に変えて、魔法の向こう側にいるジルはぐじゅぐじゅになって頭を下げる。
垂れた鼻水が美人を台無しにしているが、そんなことはまるで気にしていない様子。
後ろの景色は皇宮の法具部屋ではなく、どこかの簡素で貧乏くさい板の間だった。
どうやらジル本人が直接ザダブの街へと出向いて処置をしていたようだ。
服装も普段の綺麗なローブではなく、吐瀉物などで薄汚れた前掛け。
その様子と自身の経験を重ねて、現場の凄惨さを理解した飲兵衛は、
「なにを言う。一番頑張ったのはジルさんやろう? 安い薬しか用意できひんこっちに礼を言うことなんかあらへん。まずは自分を褒めたればええ」
そう優しく言ってあげた。
下げたままのジルの頭から、鼻水がいっそう伸びて床に付きそうになる。
アルテマも飲兵衛の後ろで涙と鼻水だらけになって震えていた。
その顔を元一と節子、そしてぬか娘のハンカチが拭いまくった。
「ふむ、まずは良かったようじゃが……まだまだ患者はいるのじゃろう? 効果があるとわかったのなら、次はその先を考えねばならんのう……」
と、占いさん。
「そうだな。ではさっそく追加の薬を大量発注させて――――おい、アニオタ」
六段が調達係のアニオタを呼ぶが、
「む……そう言えば……あのバカは」
「うん。より一層バカになってる。いまは手を付けられないよ……」
渋い顔で固まる六段に、情けない顔でぬか娘がこたえた。
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