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第238話 捕縛作戦⑩
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『それはわかってるけど、私にとっては菜々ちんの救出はもっと大事なことなのよ!!』
『そ、そ、そんな堂々と私情を持ち出さんでくだされよ……い、い、一応、拙僧は上司なんですけど……(汗)』
『欲情ダダ漏れの念話飛ばすあんたに言われたくない!!』
『で、ござるよな。しかしここはまず椿殿に集中してくだされ。まずは新たな戦力を把握しなければ勝てる戦も勝てないでござるよ?』
言われて椿を睨みつける。
先に菜々ちんを無力化して、彼女のベヒモス化を解除したかったが、当然、頭の良い菜々ちんはそんな私の思惑などお見通しなのだろう。そう簡単に私に近寄ることはしなさそうだ。
ならばやはり、椿は実力で排除するしかなさそうだ。
私は覚悟を決めて戦闘態勢を取った。
「結界術!!」
――――ドゴンッ!!!!
力を込めるといままでにない強固な結界が私を覆った。
クソ饅頭のドミニオンのおかげでレベルがアップされているからだ。
すごい……。
私はあらためてそのパワーに感動する。
今のこの結界なら女将のそれと匹敵するかも知れない。
それはすなわちエロ饅頭の精神レベルが女将に匹敵しているということ。
それにももちろん驚いたが、しかし真に驚いたのは、そのレベルをドミニオンを介して他人に分け与えることが出来るというところだ。
――――能力強化。
精神を支配しベヒモス化にて術者のレベルを爆上げするマステマに対して、自分の精神エネルギーを送ることによって相手を強化するドミニオン。
どちらも相手を強化すると言ったところは同じだが、その手段はぜんぜん違う。
私は断然ドミニオンのほうが好きだった。
『拙僧もいまのプリティ~~な宝塚どのならば全然オッケーでござるよ』
『し、思考を読むな思考を!! 褒めたのは能力のことだけなんだからねっ!!』
『ソソル反応ありがとうでござる。しかし一つ断っておくことがあるでござる』
『断っておくこと!?』
『拙僧のドミニオン……力を相手に貸し与えることが出来るでござるが、その間、拙僧の能力はガタ落ちになるでござる。なのでここから先はサポート出来ないのでよろしく頼むでござるよ』
『はっ!?』
と、筆頭がいただろう場所を見るが彼の姿はすでにそこに無かった。
『いまの拙僧は拳銃の弾一つ防げないほど弱体化しているでござるから……とりあえず身を隠させてもらったでござる。さあ、宝塚殿。拙僧のことは気にせず存分に戦うでござるよ!!』
と言う念話。
それと同時に、
――――ダンッ!!!!
椿が飛びかかってきた。
『ちょちょちょっ!! じゃあ、念話でこの子の妨害は出来ないってこと!?』
『いかにも。いまの拙僧は無力にござるゆえ。ほら、氷が迫って来るでござるぞ?』
『なっ!??』
椿の吐く息が凍り、それを切っ掛けに周囲の空気が氷に変わる。
――――ザンッザンッザンッザンッ!!!!
地面から大きな氷柱が生えて一斉に襲いかかって来た!!
「――――くっ、こんなものっ!!」
バキャアァァァァァァンッ!!!!
強化版結界術の一撃でそれを薙ぎ払う。
さっきは術切り替えの隙きを突かれて凍らされてしまったが、同じ手はもう二度と食らわない。
このまま結界術で氷から身を守りつつ、椿の消耗を待つ。
充分に弱ったところを満を持して回復術をかけてやる。
強化されたいまの私の結界術なら、油断さえしなければ椿の能力など全て無効化出来るはずだ。
そう作戦を立てたとき、
――――ボッ!!
飛び散った氷片を突き抜け、椿が無防備状態で突っ込んできた。
その身体にはなぜか結界は張られていなかった。
そしてその丸腰状態で私に組み付いてくる!!
――――なっ!? 待ってそんなことしたら!??
ババッ!! バババババババババババッ!!!!
結界が反応して彼女の身体を焼き焦がした!!
「バカッ!??」
防御策も無く、物理干渉出来る結界術に飛び込んできたらそりゃこうなる!!
――――ババババババババババッ!!!!
全身が青く発光し、まるで青い炎に焼かれているかのように身を焦がす彼女。
四肢の肉が引き裂かれ血が吹き出る。
その意味がわからない自殺行為に、思わず私は結界を解いた。
「何やってるのっ!?? あなた結界術の怖さ知らないの!??」
ボロボロになり崩れ落ちる椿を抱きかかえる私だが、
『ダメでござる宝塚殿!! それは大西氏の罠でござる!!』
「――――へっ!?」
呆気に取られると同時に、
『その通りだよ、宝塚くん?』
と、突然マステマが椿の中から顔を出した。
瞬間、椿の気配がもう一段ヤバくなった気がする。
焼き焦げた椿の右手が私の胸に触れる。
しまった!? ――――結界術を!!
再び張り直そうとしたが、遅かった。
「……雪女郎《ゆきじょろう》」
虚ろな意識で椿が呟く。すると彼女の背中から肌蹴《はだけ》た着物を着た黒髪美人が姿を現した!!
「――――雪女郎!? これがあんたのファントムか!??」
まさに雪女を彷彿とさせる、冷たい美女が凍った息を吐く。
――――パキッ……パキキキキキキキッ!!!!
するといままでとは比べようもない冷気が周囲を襲い、全てを凍らせた。
「――――く、あっ!?」
視界が氷に覆われる。
氷漬けになる瞬間、わずかに纏った結界術で椿に殴りかかるが凍った下半身に引っ張られ届かない。拳はそのまま地面に突き刺さった。
パキパキパキパキッ!!!!
強烈な絶対零度が体に浸透してくる。
さっきはほんの表面だけ凍らされた感じだったが、今回は桁が違う。
身体の全細胞、血液にいたるまで全て一瞬で凍らされた。
そして脳味噌まで全て凍らされた瞬間。
フッと視界が暗くなり、私の意識は途絶えた。
『そ、そ、そんな堂々と私情を持ち出さんでくだされよ……い、い、一応、拙僧は上司なんですけど……(汗)』
『欲情ダダ漏れの念話飛ばすあんたに言われたくない!!』
『で、ござるよな。しかしここはまず椿殿に集中してくだされ。まずは新たな戦力を把握しなければ勝てる戦も勝てないでござるよ?』
言われて椿を睨みつける。
先に菜々ちんを無力化して、彼女のベヒモス化を解除したかったが、当然、頭の良い菜々ちんはそんな私の思惑などお見通しなのだろう。そう簡単に私に近寄ることはしなさそうだ。
ならばやはり、椿は実力で排除するしかなさそうだ。
私は覚悟を決めて戦闘態勢を取った。
「結界術!!」
――――ドゴンッ!!!!
力を込めるといままでにない強固な結界が私を覆った。
クソ饅頭のドミニオンのおかげでレベルがアップされているからだ。
すごい……。
私はあらためてそのパワーに感動する。
今のこの結界なら女将のそれと匹敵するかも知れない。
それはすなわちエロ饅頭の精神レベルが女将に匹敵しているということ。
それにももちろん驚いたが、しかし真に驚いたのは、そのレベルをドミニオンを介して他人に分け与えることが出来るというところだ。
――――能力強化。
精神を支配しベヒモス化にて術者のレベルを爆上げするマステマに対して、自分の精神エネルギーを送ることによって相手を強化するドミニオン。
どちらも相手を強化すると言ったところは同じだが、その手段はぜんぜん違う。
私は断然ドミニオンのほうが好きだった。
『拙僧もいまのプリティ~~な宝塚どのならば全然オッケーでござるよ』
『し、思考を読むな思考を!! 褒めたのは能力のことだけなんだからねっ!!』
『ソソル反応ありがとうでござる。しかし一つ断っておくことがあるでござる』
『断っておくこと!?』
『拙僧のドミニオン……力を相手に貸し与えることが出来るでござるが、その間、拙僧の能力はガタ落ちになるでござる。なのでここから先はサポート出来ないのでよろしく頼むでござるよ』
『はっ!?』
と、筆頭がいただろう場所を見るが彼の姿はすでにそこに無かった。
『いまの拙僧は拳銃の弾一つ防げないほど弱体化しているでござるから……とりあえず身を隠させてもらったでござる。さあ、宝塚殿。拙僧のことは気にせず存分に戦うでござるよ!!』
と言う念話。
それと同時に、
――――ダンッ!!!!
椿が飛びかかってきた。
『ちょちょちょっ!! じゃあ、念話でこの子の妨害は出来ないってこと!?』
『いかにも。いまの拙僧は無力にござるゆえ。ほら、氷が迫って来るでござるぞ?』
『なっ!??』
椿の吐く息が凍り、それを切っ掛けに周囲の空気が氷に変わる。
――――ザンッザンッザンッザンッ!!!!
地面から大きな氷柱が生えて一斉に襲いかかって来た!!
「――――くっ、こんなものっ!!」
バキャアァァァァァァンッ!!!!
強化版結界術の一撃でそれを薙ぎ払う。
さっきは術切り替えの隙きを突かれて凍らされてしまったが、同じ手はもう二度と食らわない。
このまま結界術で氷から身を守りつつ、椿の消耗を待つ。
充分に弱ったところを満を持して回復術をかけてやる。
強化されたいまの私の結界術なら、油断さえしなければ椿の能力など全て無効化出来るはずだ。
そう作戦を立てたとき、
――――ボッ!!
飛び散った氷片を突き抜け、椿が無防備状態で突っ込んできた。
その身体にはなぜか結界は張られていなかった。
そしてその丸腰状態で私に組み付いてくる!!
――――なっ!? 待ってそんなことしたら!??
ババッ!! バババババババババババッ!!!!
結界が反応して彼女の身体を焼き焦がした!!
「バカッ!??」
防御策も無く、物理干渉出来る結界術に飛び込んできたらそりゃこうなる!!
――――ババババババババババッ!!!!
全身が青く発光し、まるで青い炎に焼かれているかのように身を焦がす彼女。
四肢の肉が引き裂かれ血が吹き出る。
その意味がわからない自殺行為に、思わず私は結界を解いた。
「何やってるのっ!?? あなた結界術の怖さ知らないの!??」
ボロボロになり崩れ落ちる椿を抱きかかえる私だが、
『ダメでござる宝塚殿!! それは大西氏の罠でござる!!』
「――――へっ!?」
呆気に取られると同時に、
『その通りだよ、宝塚くん?』
と、突然マステマが椿の中から顔を出した。
瞬間、椿の気配がもう一段ヤバくなった気がする。
焼き焦げた椿の右手が私の胸に触れる。
しまった!? ――――結界術を!!
再び張り直そうとしたが、遅かった。
「……雪女郎《ゆきじょろう》」
虚ろな意識で椿が呟く。すると彼女の背中から肌蹴《はだけ》た着物を着た黒髪美人が姿を現した!!
「――――雪女郎!? これがあんたのファントムか!??」
まさに雪女を彷彿とさせる、冷たい美女が凍った息を吐く。
――――パキッ……パキキキキキキキッ!!!!
するといままでとは比べようもない冷気が周囲を襲い、全てを凍らせた。
「――――く、あっ!?」
視界が氷に覆われる。
氷漬けになる瞬間、わずかに纏った結界術で椿に殴りかかるが凍った下半身に引っ張られ届かない。拳はそのまま地面に突き刺さった。
パキパキパキパキッ!!!!
強烈な絶対零度が体に浸透してくる。
さっきはほんの表面だけ凍らされた感じだったが、今回は桁が違う。
身体の全細胞、血液にいたるまで全て一瞬で凍らされた。
そして脳味噌まで全て凍らされた瞬間。
フッと視界が暗くなり、私の意識は途絶えた。
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