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第216話 本当の想い③
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「――――!?」
「ひっ!??」
「なんだってっ!???」
「――――マ、マステマっ!???」
突如、百恵ちゃんの体から出現したマステマ。
ガタッ――――ガタガタッ!!!!
最悪の展開に、私たちはみな一斉に立ち上がり臨戦態勢をとった!!
――――まさか……コイツが彼女の身体から出てきたと言うことは……。
ビクンビクンと痙攣する百恵ちゃん。
彼女の胸の中から生えて出るようにそのファントムは不気味に私たちを見回した。
私はその姿を見てガクガク体が震えた。
マステマが怖いから? ううん、違う。
恐れていた僅かな可能性が現実になったからだ。
――――自分の感情が作り物だとしたら……。
それが怖くてボロボロ泣いていた百恵ちゃんの顔を思い返す。
……マステマが憑依していたということは……それはつまり彼女もずっと所長の支配下にいたということ。そしてそれは同時に、これまで慕ってきた所長への思いが都合よく作られた道具だったかもしれない……ということ。
意識が無いはずの百恵ちゃんの目から涙がこぼれてくる。
それを見た私は、彼女がこの先受け止めるだろう辛い事実を想像し、唇を噛みしめ、そして先生へと視線を移した。
先生の顔はこれまでに見たことがないほど冷たく凍りつき、怒りを具現化したオーラはその全身を逆立てていた。
――――ギィンッ!!!!
先生の手に握られていた拳銃から激しい青の光が放たれた!!
それは銃に纏わせた結界の光!!
これまでにないほどの輝きを放つその光は、そのまま先生の怒りの程度を現していた。
その気配に反応してマステマが先生を睨んだ。
『シュァアァァァァァァァァァアァッ!!!!』
不気味に吠え、そしてその鋭い骨の指で先生に襲いかかった!!
「――――先生っ!!」
――――ブォンッ!!
加勢しようと結界術を発動させるが、
「……この、どぐされペテン師が」
先生はその攻撃に一切怯むことなく、マステマを真正面で迎え撃つ。
迫りくるマステマの鋭い爪。
それは命を刈り取る死神の鎌のごとく先生の首に狙いをつける。
――――カッ!!!!
銃口からまばゆい光が、爆発したかのように激しく放たれた!!
「いつから騙していたっ!?? ボケがぁぁぁぁぁっ!!!!」
――――ドゴッ!! ドゴドゴドゴッ!!!!
爪が先生の首の皮に触れる一瞬先。
本気の怒りを乗せた結界弾は、その威力を極限まで高め。まるで大口径銃のような大きな衝撃でマステマを貫いた!!
『――――グッゲキャァァァァァァァァァァァッ!!!!』
貫かれた四つの大きな穴は、そこからさらに結界の作用が広がり、それは青いヒビとなってマステマの霊体全体に広がる。
そして――――、
『グギガッ!!!!』
バキィンッ!! バシュゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!
粉微塵に分解しマステマは耳障りな呻きを残して、あっけなく蒸発した。
「――――ふう……ふう、ふう」
先生が玉の汗を流して膝をついた。
息は乱れ、肩が揺れている。
いまの連撃で力を使い果たしたのだろう。
本来は消耗が少ないはずの結界術で、ここまで一気に消耗するとは……それほどに力を集中させてたという証。それはそのまま妹である百恵ちゃんを欺き、操り続けていた所長への怒りの現われでもあったのだろう。
「百恵様!!」
瀬戸さんが百恵ちゃんに駆け寄る。
彼女はまだ意識が戻っていないが、さきほどの不思議な痙攣は治まり、いまは静かな吐息をたてていた。
「おおおお、お、お、お、お、驚いたでござるぅ~~~~~~~~!!」
筆頭がダラダラ冷汗を吹き出し泡を食っている。
「……いや、あなた一応、筆頭監視官なんですよね!? …………確かに驚きましたけど、あなたが一番驚いてどうするんですか……?」
そんな情けない筆頭を見て、宇恵ちゃんは呆れの視線を向けた。
すると筆頭は眼鏡をクイクイクイっと神経質に上げまくると、
「い、いいいいやいやいや、いまのはマリア殿の強さに面食らっただけでありますよ、マ、マママママ、マ、マステマにおお驚いたわけではござらん!!」
「そんなことよりも!!」
私は筆頭の胸ぐらを掴み、噛みつかん勢いで訊いた!!
「マステマが! マステマが百恵ちゃんの中から現れたってことは!! …………百恵ちゃんは……彼女はずっと操られて……いたということですか?」
言葉の後半は、涙声になっていたかもしれない。
答えは分かっているから。
正也さんや渦女……片桐さん……みんなと同じだったから。
もはや誰に訊くまでもなく、百恵ちゃんは彼女らと同じく所長の操り人形だったということ。
――――菜々ちんに加えて……百恵ちゃんまでも…………。
その事実をすぐに飲み込むことが出来なくて、私はあえて筆頭にわかりきった答えを求めていた。
先生はいまだ怒りでチリチリと結界を乱している。
女将と料理長、そして宇恵ちゃんは難しい顔をして百恵ちゃんを見つめている。
瀬戸さんは怒りではなく、悲しみの顔で百恵ちゃんの頬を撫でている。
しかしその奥には先生と同格のうごめく何かが感じられた。
みんな、彼女の恋の悲しい現実に、言葉を無くしていた……。
そんな私たちに、筆頭は汗を拭き拭きあっけらかんと答えを言った。
「い、い、い、いいいいや……百恵どのには、あやあやっやっや操られていたような妙な形跡は無かったでござござござござるぞ?」と。
「ひっ!??」
「なんだってっ!???」
「――――マ、マステマっ!???」
突如、百恵ちゃんの体から出現したマステマ。
ガタッ――――ガタガタッ!!!!
最悪の展開に、私たちはみな一斉に立ち上がり臨戦態勢をとった!!
――――まさか……コイツが彼女の身体から出てきたと言うことは……。
ビクンビクンと痙攣する百恵ちゃん。
彼女の胸の中から生えて出るようにそのファントムは不気味に私たちを見回した。
私はその姿を見てガクガク体が震えた。
マステマが怖いから? ううん、違う。
恐れていた僅かな可能性が現実になったからだ。
――――自分の感情が作り物だとしたら……。
それが怖くてボロボロ泣いていた百恵ちゃんの顔を思い返す。
……マステマが憑依していたということは……それはつまり彼女もずっと所長の支配下にいたということ。そしてそれは同時に、これまで慕ってきた所長への思いが都合よく作られた道具だったかもしれない……ということ。
意識が無いはずの百恵ちゃんの目から涙がこぼれてくる。
それを見た私は、彼女がこの先受け止めるだろう辛い事実を想像し、唇を噛みしめ、そして先生へと視線を移した。
先生の顔はこれまでに見たことがないほど冷たく凍りつき、怒りを具現化したオーラはその全身を逆立てていた。
――――ギィンッ!!!!
先生の手に握られていた拳銃から激しい青の光が放たれた!!
それは銃に纏わせた結界の光!!
これまでにないほどの輝きを放つその光は、そのまま先生の怒りの程度を現していた。
その気配に反応してマステマが先生を睨んだ。
『シュァアァァァァァァァァァアァッ!!!!』
不気味に吠え、そしてその鋭い骨の指で先生に襲いかかった!!
「――――先生っ!!」
――――ブォンッ!!
加勢しようと結界術を発動させるが、
「……この、どぐされペテン師が」
先生はその攻撃に一切怯むことなく、マステマを真正面で迎え撃つ。
迫りくるマステマの鋭い爪。
それは命を刈り取る死神の鎌のごとく先生の首に狙いをつける。
――――カッ!!!!
銃口からまばゆい光が、爆発したかのように激しく放たれた!!
「いつから騙していたっ!?? ボケがぁぁぁぁぁっ!!!!」
――――ドゴッ!! ドゴドゴドゴッ!!!!
爪が先生の首の皮に触れる一瞬先。
本気の怒りを乗せた結界弾は、その威力を極限まで高め。まるで大口径銃のような大きな衝撃でマステマを貫いた!!
『――――グッゲキャァァァァァァァァァァァッ!!!!』
貫かれた四つの大きな穴は、そこからさらに結界の作用が広がり、それは青いヒビとなってマステマの霊体全体に広がる。
そして――――、
『グギガッ!!!!』
バキィンッ!! バシュゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!
粉微塵に分解しマステマは耳障りな呻きを残して、あっけなく蒸発した。
「――――ふう……ふう、ふう」
先生が玉の汗を流して膝をついた。
息は乱れ、肩が揺れている。
いまの連撃で力を使い果たしたのだろう。
本来は消耗が少ないはずの結界術で、ここまで一気に消耗するとは……それほどに力を集中させてたという証。それはそのまま妹である百恵ちゃんを欺き、操り続けていた所長への怒りの現われでもあったのだろう。
「百恵様!!」
瀬戸さんが百恵ちゃんに駆け寄る。
彼女はまだ意識が戻っていないが、さきほどの不思議な痙攣は治まり、いまは静かな吐息をたてていた。
「おおおお、お、お、お、お、驚いたでござるぅ~~~~~~~~!!」
筆頭がダラダラ冷汗を吹き出し泡を食っている。
「……いや、あなた一応、筆頭監視官なんですよね!? …………確かに驚きましたけど、あなたが一番驚いてどうするんですか……?」
そんな情けない筆頭を見て、宇恵ちゃんは呆れの視線を向けた。
すると筆頭は眼鏡をクイクイクイっと神経質に上げまくると、
「い、いいいいやいやいや、いまのはマリア殿の強さに面食らっただけでありますよ、マ、マママママ、マ、マステマにおお驚いたわけではござらん!!」
「そんなことよりも!!」
私は筆頭の胸ぐらを掴み、噛みつかん勢いで訊いた!!
「マステマが! マステマが百恵ちゃんの中から現れたってことは!! …………百恵ちゃんは……彼女はずっと操られて……いたということですか?」
言葉の後半は、涙声になっていたかもしれない。
答えは分かっているから。
正也さんや渦女……片桐さん……みんなと同じだったから。
もはや誰に訊くまでもなく、百恵ちゃんは彼女らと同じく所長の操り人形だったということ。
――――菜々ちんに加えて……百恵ちゃんまでも…………。
その事実をすぐに飲み込むことが出来なくて、私はあえて筆頭にわかりきった答えを求めていた。
先生はいまだ怒りでチリチリと結界を乱している。
女将と料理長、そして宇恵ちゃんは難しい顔をして百恵ちゃんを見つめている。
瀬戸さんは怒りではなく、悲しみの顔で百恵ちゃんの頬を撫でている。
しかしその奥には先生と同格のうごめく何かが感じられた。
みんな、彼女の恋の悲しい現実に、言葉を無くしていた……。
そんな私たちに、筆頭は汗を拭き拭きあっけらかんと答えを言った。
「い、い、い、いいいいや……百恵どのには、あやあやっやっや操られていたような妙な形跡は無かったでござござござござるぞ?」と。
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