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第179話 最強の追手②
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百恵ちゃんの腕が持ち上がる。
それは能力発動の予備動作。
それと繋がるように圧縮空気の種が片桐さんの頭上すぐに出現する。
そして振り下ろされる彼女の腕!!
「食らえっ!! ガルー――――っ!???」
よしっ!! とらえたっ!!!!
そう思った。が、しかし――――、
発動の鍵となる言葉を言い終わる前に百恵ちゃんの声が途切れた。
――――え?
振り下ろされるはずだった百恵ちゃんの腕は下りてくることは無かった。
下ろせなかった。
なぜならそこに腕は無かったからだ。
「馬鹿な真似はやめることね百恵。代償はその腕一本で勘弁してあげるわ」
振り返ることなく片桐さんはそう言った。
頭上の種が消えて無くなる。
「う……ぐぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁーーーーーーーーっ!!!!」
消された腕の断面から血を吹き出し、絶叫する百恵ちゃん。
彼女の能力が発動されるよりも一瞬早く、片桐さんの戦乙女《ワルキューレ》が発動し、百恵ちゃんの腕を消し去ったのだ。
しかしその予備動作は私には全く見えなかった。
ノーアクションでの攻撃だった。
まるで後ろに目でも付いているかのように百恵ちゃんの動きを察知し、攻撃されるよりも早く相手を仕留めるその一連の所作は、私たち訓練生ごときでは到底太刀打ちできない凄みがあった。
「所長から、できれば百恵は殺すなと言われているからね。これ以上おかしな真似をしなければ見逃してあげるわ」
「片桐っ!!!!」
先生が銃を構える!!
しかしカウンター気味に片桐さんの指が空を切った。
――――バヒュッ!!
空間が削られる音がして、先生の銃が消えた。
「――――くぁあっ!!」
銃身もろとも数本の指も消されて悲鳴を上げる先生。
「……同じ監視官でしたが、七瀬先輩は戦闘向きではないでしょう? 有象無象ならいざしらず、私に向かってきても殺されるだけですよ。それがわからないあなたじゃないでしょう?」
ほぼ無表情。しかし若干の哀れみを込めた目で先生に忠告する片桐さん。
そして片桐さんの前に大きな空間の歪みが現れる。
それは人一人を飲み込めるほどの大きさのアポート。
「さようなら七瀬先輩。やっと死ねますね」
背中に現われた戦乙女が剣を振るった。
同時に空間の歪みは、先生を飲み込む死への門となり、襲いかかる。
「やめてくださいっ!!」
とっさに私はその前へと飛び出した!!
「――――っ!?」
歪みが私を飲み込もうとする寸前、それはかき消される。
片桐さんが能力をキャンセルしたのだ。
「……馬鹿なのかしら? それとも殺されない確信があっての事なのかしら? どちらにせよ無謀な行動よ、今のは」
呆れた顔で戦乙女の剣を止めている片桐さん。
私は冷や汗をだらだら流しながら膝をカクカク揺らした。
もし、彼女が能力を止めてくれなければ、いまので私は死んでいただろう。
しかしそうしなければ死ぬ子先生が殺されていた。
片桐さんは私を殺さない。
それに賭けたギャンブルだった。
「ついていきますから!! だからもう攻撃はやめて下さいっ!!」
「……心外ね。攻撃してきたのはそっちの方でしょう? 私はそれを迎撃しただけよ?」
「う……あ、誤りますから!! これ以上は抵抗しませんから!!」
私は必死に片桐さんをなだめにかかった。
ほんの少しでも彼女を仕留められると思ってしまった私たちが馬鹿だった。
彼女の戦闘力の前には私たちなんて、やはり雑魚同然。
百恵ちゃんも先生も、もちろん私だって敵うはずがないのだ。
「ようやく理解したようね。それが賢い選択よ」
そして片桐さんは、細かく震える私へと近づいて耳に囁いてくる。
「これからは私に服従しなさい。でなければあなたを磔にしてでも能力を搾り取る事になるから。それはあなたも嫌でしょう」
それを聞いて私は無言でうなずくしかなかった。
灰色の市街地戦用迷彩服を着込んだ構成員が私たちを取り囲んでいる。
あれからすぐに現われた追加の追っ手は、みな元JPASの機動部隊たち。
彼らに拘束され、私たちは自由を奪われた。
「片桐監視官おまたせ致しましたっ!!」
用意された軍用SUVに乗り込まされる私。
手には手錠がかけられ、首には青白く光る首輪がつけられていた。
「……これは何ですか?」
隣に乗り込んできた片桐さんに尋ねる。
「ブレーカーよ」
「ブレーカー??」
「その首輪には強力な結界エネルギーをたっぷり染み込ませてあるの。能力を使った瞬間そのエネルギーと共鳴して力を相殺するわ」
「能力者用の足枷って事ですか」
「飲み込みがいいわね」
「……先生が同じようなテープを使っていましたから」
「この首輪を開発したのは彼女よ。皮肉なことね」
つまり結界術などで脱出しようとしても無駄と言うことか。
力任せのフルパワーで首輪の結界を押し切ったとしても、その一瞬の動作の固まりで片桐さんは私を消滅させるだろう。
どう足掻いても逃げられる気がしない。
先生たち三人も同じ首輪をかけられて道路に座らされ、マシンガンを構える構成員たちに監視されている。
腕を失った百恵ちゃんの消耗は激しく、そのダメージで意識が混沌としている。
私はせめて彼女の回復だけでもさせてくれと頼んだが、片桐さんはそれを許してくれなかった。
「あなたは今から私のモノだから。私の命令以外でその能力を使うことは許さないわ。肝に銘じておくことね」
そう告げてくる彼女の目は氷のように冷たかった。
それは能力発動の予備動作。
それと繋がるように圧縮空気の種が片桐さんの頭上すぐに出現する。
そして振り下ろされる彼女の腕!!
「食らえっ!! ガルー――――っ!???」
よしっ!! とらえたっ!!!!
そう思った。が、しかし――――、
発動の鍵となる言葉を言い終わる前に百恵ちゃんの声が途切れた。
――――え?
振り下ろされるはずだった百恵ちゃんの腕は下りてくることは無かった。
下ろせなかった。
なぜならそこに腕は無かったからだ。
「馬鹿な真似はやめることね百恵。代償はその腕一本で勘弁してあげるわ」
振り返ることなく片桐さんはそう言った。
頭上の種が消えて無くなる。
「う……ぐぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁーーーーーーーーっ!!!!」
消された腕の断面から血を吹き出し、絶叫する百恵ちゃん。
彼女の能力が発動されるよりも一瞬早く、片桐さんの戦乙女《ワルキューレ》が発動し、百恵ちゃんの腕を消し去ったのだ。
しかしその予備動作は私には全く見えなかった。
ノーアクションでの攻撃だった。
まるで後ろに目でも付いているかのように百恵ちゃんの動きを察知し、攻撃されるよりも早く相手を仕留めるその一連の所作は、私たち訓練生ごときでは到底太刀打ちできない凄みがあった。
「所長から、できれば百恵は殺すなと言われているからね。これ以上おかしな真似をしなければ見逃してあげるわ」
「片桐っ!!!!」
先生が銃を構える!!
しかしカウンター気味に片桐さんの指が空を切った。
――――バヒュッ!!
空間が削られる音がして、先生の銃が消えた。
「――――くぁあっ!!」
銃身もろとも数本の指も消されて悲鳴を上げる先生。
「……同じ監視官でしたが、七瀬先輩は戦闘向きではないでしょう? 有象無象ならいざしらず、私に向かってきても殺されるだけですよ。それがわからないあなたじゃないでしょう?」
ほぼ無表情。しかし若干の哀れみを込めた目で先生に忠告する片桐さん。
そして片桐さんの前に大きな空間の歪みが現れる。
それは人一人を飲み込めるほどの大きさのアポート。
「さようなら七瀬先輩。やっと死ねますね」
背中に現われた戦乙女が剣を振るった。
同時に空間の歪みは、先生を飲み込む死への門となり、襲いかかる。
「やめてくださいっ!!」
とっさに私はその前へと飛び出した!!
「――――っ!?」
歪みが私を飲み込もうとする寸前、それはかき消される。
片桐さんが能力をキャンセルしたのだ。
「……馬鹿なのかしら? それとも殺されない確信があっての事なのかしら? どちらにせよ無謀な行動よ、今のは」
呆れた顔で戦乙女の剣を止めている片桐さん。
私は冷や汗をだらだら流しながら膝をカクカク揺らした。
もし、彼女が能力を止めてくれなければ、いまので私は死んでいただろう。
しかしそうしなければ死ぬ子先生が殺されていた。
片桐さんは私を殺さない。
それに賭けたギャンブルだった。
「ついていきますから!! だからもう攻撃はやめて下さいっ!!」
「……心外ね。攻撃してきたのはそっちの方でしょう? 私はそれを迎撃しただけよ?」
「う……あ、誤りますから!! これ以上は抵抗しませんから!!」
私は必死に片桐さんをなだめにかかった。
ほんの少しでも彼女を仕留められると思ってしまった私たちが馬鹿だった。
彼女の戦闘力の前には私たちなんて、やはり雑魚同然。
百恵ちゃんも先生も、もちろん私だって敵うはずがないのだ。
「ようやく理解したようね。それが賢い選択よ」
そして片桐さんは、細かく震える私へと近づいて耳に囁いてくる。
「これからは私に服従しなさい。でなければあなたを磔にしてでも能力を搾り取る事になるから。それはあなたも嫌でしょう」
それを聞いて私は無言でうなずくしかなかった。
灰色の市街地戦用迷彩服を着込んだ構成員が私たちを取り囲んでいる。
あれからすぐに現われた追加の追っ手は、みな元JPASの機動部隊たち。
彼らに拘束され、私たちは自由を奪われた。
「片桐監視官おまたせ致しましたっ!!」
用意された軍用SUVに乗り込まされる私。
手には手錠がかけられ、首には青白く光る首輪がつけられていた。
「……これは何ですか?」
隣に乗り込んできた片桐さんに尋ねる。
「ブレーカーよ」
「ブレーカー??」
「その首輪には強力な結界エネルギーをたっぷり染み込ませてあるの。能力を使った瞬間そのエネルギーと共鳴して力を相殺するわ」
「能力者用の足枷って事ですか」
「飲み込みがいいわね」
「……先生が同じようなテープを使っていましたから」
「この首輪を開発したのは彼女よ。皮肉なことね」
つまり結界術などで脱出しようとしても無駄と言うことか。
力任せのフルパワーで首輪の結界を押し切ったとしても、その一瞬の動作の固まりで片桐さんは私を消滅させるだろう。
どう足掻いても逃げられる気がしない。
先生たち三人も同じ首輪をかけられて道路に座らされ、マシンガンを構える構成員たちに監視されている。
腕を失った百恵ちゃんの消耗は激しく、そのダメージで意識が混沌としている。
私はせめて彼女の回復だけでもさせてくれと頼んだが、片桐さんはそれを許してくれなかった。
「あなたは今から私のモノだから。私の命令以外でその能力を使うことは許さないわ。肝に銘じておくことね」
そう告げてくる彼女の目は氷のように冷たかった。
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