超能力者の私生活

盛り塩

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第155話 黒幕の正体①

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 ――――ガタッ、ガタガタガタッ!!!!

 無言で席から飛び退く三人。
 私は動けず、ただ正也さんの顔を見ているだけだった。

「おっと、店の中で喧嘩はやめませんか? さすがにマナー違反が過ぎます」

 笑顔を崩さず、正也さんは臨戦態勢をとる先生たちに微笑んで見せる。

「……自動小銃片手に何を迷いごとを言っているんじゃ貴様は!? 今までどこにいた、そしてなぜ気配を消してここにいる!??」

 騒然となる店内の視線を無視して百恵ちゃんが正也さんを睨みつけた。
 その顔面は蒼白になっている。

 正也さんはした。
 対面に座る先生や百恵ちゃんがそれまでに気付かないはずがない。
 つまり彼は『認識阻害』を使って近づいていたということ。
 それは敵対の意志を示しているのと同じことだった。

「もう察しはついているんじゃない? ですよね先生?」

 微笑んで答える正也さん。
 その表情は私が知っている彼そのもので、とても爽やかで優しげだった。

「……そうね、信じたくなかっただけかもね」

 死ぬ子先生はすでに太ももから銃を抜いていた。
 菜々ちんも同じく愛銃を構えている。
 それを見た店の客はみな一斉に私たちに注目し、店員はどこかへ連絡している。

「は、ははは、なんだかんだ先生は生徒思いですから。でも、すみませんね、僕は先生の敵でした」

 ニッコリと、悪びれもなくそう宣言する正也さん。

「……そう」

 先生はそれにそっけなく頷く。
 私は――――ただ放心してそのやり取りを聞いていた。

「で、質問の答えなんですけど。いままでずっと僕は先生の側にいました。目的は監視です」
「へえ、ずいぶん素直に答えてくれるのね? じゃあいつから私を見ていたの? 理由はなに?」
「ん~~~~、瞬を倒されちゃった後くらいかな? 子供モードの先生、可愛かったですよ。目的はもちろん封印の能力者の情報を探らせないようにするためですね」
「……あなたは、そいつの手先って事かしら?」
「ええ。っていうか、でしょ?」

 と笑って答える正也さん。
 その言葉に百恵ちゃんの顔がいっそう青ざめる。

「…………ちょっと待って下さい」

 私はようやくそれだけ言葉を絞り出した。

「やあ、宝塚さんどうしたのかな?」

 マシンガンを肩に担いで、正也さんが微笑みかけてくる。

「正也さん……あなたが本当に犯人だったんですか?」
「ん? ああ~~……そうだね、キミのスマホの事だね? 
 そうだよ、僕が犯人さ。どうしても森田先生に『透視』をさせたくなかったんでね。彼の正体を探られる前に何とか回収したかったんだけど……なかなかチャンスが作れなくてね、それであんな野蛮な方法を取らせてもらったんだよ。……ごめんね、びっくりしたかい?」

「それじゃあ、あの襲撃者はやっぱり……」
「僕の仲間たちさ。……でも、一瞬遅かったみたいでさ、森田先生はすでにあの画像から情報を『見通した』後だったみたいなんだよね。……だから始末するしかなくなったんだよ」

 それを聞いた先生の表情がス……と無になった。
 そして正也さんに問いただした。

「始末する方法はしかなかったの?」
「はい。色々考えたんです。……でも宝塚さんがいる以上、普通に殺しても復活させられるでしょう? かといって三人まとめて殺す戦闘力は僕には無いですからね。だったら自滅してもらおうかと……」
「ま、正也さんが真唯さんをベヒモス化させた犯人だったんですか……? それってつまり……封印の能力者!?」

 青ざめて私は正也さんを見る。
 しかし正也さんは大笑いでそれを否定した。

「はっははははは、まさか。僕はただの所長のお手伝いさ。森田先生を暴走させたのは彼の意志だよ」

「………………………………は?」

 ――――――――いま……なんて言った――――所長??

 思考の回転がぐっと遅くなり、景色がゆれる。

 ……所長? 所長がなんだって?

 所長の意志で真唯さんを暴走させた……と、いま言ったのか?
 百恵ちゃんの頬が引きつり、唇が震えだす。
 菜々ちんはじっと難しい顔をして銃を向けたまま。
 先生は私に向かって説明する。

「この画像に写った影……『マステマ』は、大西所長のファントムよ」

 それを聞いた途端、私の目の前が暗くなった。
 所長が……封印の能力者??
 真唯さんを暴走させた犯人?

「……な、なんで……」

 かろうじて、それだけ呟くのがやっとだった。

「なんでってそれはもちろん……まあ、ここで説明するのも長くなるし止めとこうか。ともかく先生たちがその正体に辿り着いちゃった今、僕の目的は半分失敗しちゃってね。だから姿を現した、と言うわけさ」

 やれやれといった様子で頭を掻く正也さん。

「じゃあ残りの半分は何かしら?」
 先生が訊く。

「残りは所長からの伝言を伝える事ですよ。そして返事次第で後の事もね……」
「……聞かさてもらえる?」

 そう言う先生の冷たい視線に、正也さんは肩を竦めて内容を話す。

「そのままの言葉で伝えます『やあ君たち、僕と一緒にバカな一般人を殺して遊ばないかい? 仲間になってくれたら飴玉をあげるよ』だそうです」

「狂ってるわね」

 間髪入れず返事する先生。
 それに対して正也さんは深くうなずいて、

「全くですね。でも七瀬先生もかなり狂ってましたよね? でしたらどうでしょう、所長と一緒にヤンチャしませんか? 今ならビスケットも付けてくれるかも知れませんよ?」

 とニヤニヤ笑う。
 その顔はとても本気で勧誘しているようには見えなかった。
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