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第146話 謎の襲撃者⑨
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「ああ~~~~……私の格安スマホがぁぁぁ…………!!」
先生の言葉を聞いて突っ伏す私。
正也さんの疑いは気になるが、それと別問題として自分のスマホを失ったショックは大きかった。
コツコツコツコツと雀の涙ほどのバイト代を貯めて、ようやく買った私の愛機。
それがこんな形でお別れする事になろうとは、誰が想像しただろうか……。
「あんな低スペック板あとでいくらでも買ってあげるわよ!! くそ、これで完全にあの画像データはロストしたわ、なんてことかしら!!」
一縷の望みが絶たれて、押さえていた怒りが爆発する死ぬ子先生。
「人の携帯を板呼ばわりしないで下さいっ!! あれには私の血と汗と涙が詰まってるんですからねっ!! 青春の思い出が一杯なんですからねっ!!」
「BLスケベ絵ばかりの画像ホルダーがそんなに惜しいか、あぁぁぁぁぁん? 大した青春ですなぁ~~ゴミが――――ぺっ!!!!」
「つ、つばを吐いたか貴様~~~~~~っ!!!!」
ドタバタドタバタ!!!!
私と先生が取っ組み合いの喧嘩をしていると、心底疲れた顔をした真唯さんが間に入ってきた。
「……あんた達、とりあえず落ち着きなさい。スケベ絵は上手くやれば復元出来るし、例の画像もほとんど解析は終わってるわ。そこまで悲観することじゃないわよ」
『マジかっ!??』
私たちの声がハモった。
先生は事件の追求者として。
私は禁断の愛の観測者として。
……いかん、これじゃいつもと立場が逆じゃないか(汗)
「じゃあ今度こそ聞かせてもらうわよ!? 黒幕の能力は何??」
今にもかじり付きそうな顔をして先生が真唯さんに詰め寄った。
私も興味津々と彼女に注目する。
瞬の記憶に封印をかけ、肉体をも操り、そして私のスマホを奪っていった連中の黒幕は一体どんなヤツなのか、その能力は何なのか。
それを暴く事が出来ればそいつにかなり近づく事が出来るはずである。
「あの写真の男の能力は――――」
そこまで言って真唯さんの唇が止まった。
私と先生はその顔を怪訝に見つめる。
真唯さんはそのまま固まって動かなくなっていた。
――――はて、なんだろう? 様子がおかしいが……?
「ちょ、ちょっとちょっとマユっち……もうおあずけは充分よ?」
先生が真唯さんの顔を覗きこむ。
いやな予感が走った。
そういえば……襲撃者たちが襲ってきたタイミングもこの時だった。
黒幕の正体を伝えようとした時、彼らはまるでそれを言わせないとばかりに突入してきたのだ。
今、何となくそんな考えに至り、考えすぎかと思い直す。
だけども――――、
「マユっち――――?」
顔を覗き込んでいた先生の表情が歪んだ。
「――――え?」
私も自分の目を疑った。
――――ぽたぽたぽたぽた。
真唯さんの口からだらしなく涎が落ちていた。
「うが……が、ガガガ……がが」
喉の奥から絞り出すような呻きがもれる。
額には大樹の根っこのように血管が浮き立ち始め、それがやがて全身へと広がっていく。筋肉が盛り上がり、来ていた服がビリビリと破れ、肌はどす黒く変色して目が左右対称にグルグルと回り始めた。
彼女は――――ベヒモス化していた。
「――――なっ!???」
先生が反射的に飛び下がった。
私も同じく下がり。ラミアに臨戦態勢を命じる。
ゆらり……と、真唯さんが立ち上がりベッドから降りてくる。
そしてそのベッドの端を掴むとメリっと床から引き剥がし。
――――ゴッ!!
とぶん投げてきたっ!!
「ラミア、結界術よっ!!」
『キュイッ!!!!』
瞬時に私の体が青の結界に包まれる。
剛速で迫りくるベッドに私の右ストレートが突き刺さった!!
バキャァァァァァァンッ!!!!
ベッドは一瞬にして粉微塵に吹き飛んだ。
「――――先生っ!??」
私は先生を振り返る。
事態が理解出来なかったからだ。
しかし死ぬ子先生の顔は青ざめて、いつもの飄々とした雰囲気は無くなっていた。
「ウルウガ……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ベヒモス化した真唯さんが吠えた!!
同時に彼女の身体から青の光が弾け飛ぶ!!
それはベヒモス化によって強化された彼女の結界だった。
「――――ぐぅぅぅぅぅぅっ!??」
その物凄い出力に私の結界が耐えかねて吹き飛ばされそうになる。
バチバチバチバチバチッ――――――――ドゴンッ!!!!
ギリギリで相殺したが、衝撃で吹き飛ばされ、壁に背中を叩きつけられた。
「う――――ぐはぁっ!!!!」
メキメキ……と背骨が砕けた音がした。
結界を消された私の防御力はただの人と変わらない。
車にでも撥ねられたような衝撃で意識が遠くなる。
「ラ……ラミア……」
気力を振り絞ってラミアに回復をさせる。
私の身体は真唯さんの回復で、一段回消耗していた。
だから、この回復で私の持ち弾はゼロになる計算だ。
「あんた……大丈夫……?」
先生が私に声を掛けてくる。
見ると先生も私と同じく真唯さんの結界に弾き飛ばされ、ボロボロになって床に転がっていた。
「ぐう……先生……これは?? どうして真唯さんが……?」
「わからない……今は何もわからない…………けど、見えている景色は現実よ」
そして先生は変わり果てた姿になった真唯さんを睨む。
「問題は全て後で考えるわ……今は……」
そこで先生が一旦言葉を切る。
そして逡巡のすえ、声を絞り出した。
「今は――――この標的を処分する事だけを考えなさい」
その目はもう、いつもの先生ではなく監視官のそれに変わっていた。
先生の言葉を聞いて突っ伏す私。
正也さんの疑いは気になるが、それと別問題として自分のスマホを失ったショックは大きかった。
コツコツコツコツと雀の涙ほどのバイト代を貯めて、ようやく買った私の愛機。
それがこんな形でお別れする事になろうとは、誰が想像しただろうか……。
「あんな低スペック板あとでいくらでも買ってあげるわよ!! くそ、これで完全にあの画像データはロストしたわ、なんてことかしら!!」
一縷の望みが絶たれて、押さえていた怒りが爆発する死ぬ子先生。
「人の携帯を板呼ばわりしないで下さいっ!! あれには私の血と汗と涙が詰まってるんですからねっ!! 青春の思い出が一杯なんですからねっ!!」
「BLスケベ絵ばかりの画像ホルダーがそんなに惜しいか、あぁぁぁぁぁん? 大した青春ですなぁ~~ゴミが――――ぺっ!!!!」
「つ、つばを吐いたか貴様~~~~~~っ!!!!」
ドタバタドタバタ!!!!
私と先生が取っ組み合いの喧嘩をしていると、心底疲れた顔をした真唯さんが間に入ってきた。
「……あんた達、とりあえず落ち着きなさい。スケベ絵は上手くやれば復元出来るし、例の画像もほとんど解析は終わってるわ。そこまで悲観することじゃないわよ」
『マジかっ!??』
私たちの声がハモった。
先生は事件の追求者として。
私は禁断の愛の観測者として。
……いかん、これじゃいつもと立場が逆じゃないか(汗)
「じゃあ今度こそ聞かせてもらうわよ!? 黒幕の能力は何??」
今にもかじり付きそうな顔をして先生が真唯さんに詰め寄った。
私も興味津々と彼女に注目する。
瞬の記憶に封印をかけ、肉体をも操り、そして私のスマホを奪っていった連中の黒幕は一体どんなヤツなのか、その能力は何なのか。
それを暴く事が出来ればそいつにかなり近づく事が出来るはずである。
「あの写真の男の能力は――――」
そこまで言って真唯さんの唇が止まった。
私と先生はその顔を怪訝に見つめる。
真唯さんはそのまま固まって動かなくなっていた。
――――はて、なんだろう? 様子がおかしいが……?
「ちょ、ちょっとちょっとマユっち……もうおあずけは充分よ?」
先生が真唯さんの顔を覗きこむ。
いやな予感が走った。
そういえば……襲撃者たちが襲ってきたタイミングもこの時だった。
黒幕の正体を伝えようとした時、彼らはまるでそれを言わせないとばかりに突入してきたのだ。
今、何となくそんな考えに至り、考えすぎかと思い直す。
だけども――――、
「マユっち――――?」
顔を覗き込んでいた先生の表情が歪んだ。
「――――え?」
私も自分の目を疑った。
――――ぽたぽたぽたぽた。
真唯さんの口からだらしなく涎が落ちていた。
「うが……が、ガガガ……がが」
喉の奥から絞り出すような呻きがもれる。
額には大樹の根っこのように血管が浮き立ち始め、それがやがて全身へと広がっていく。筋肉が盛り上がり、来ていた服がビリビリと破れ、肌はどす黒く変色して目が左右対称にグルグルと回り始めた。
彼女は――――ベヒモス化していた。
「――――なっ!???」
先生が反射的に飛び下がった。
私も同じく下がり。ラミアに臨戦態勢を命じる。
ゆらり……と、真唯さんが立ち上がりベッドから降りてくる。
そしてそのベッドの端を掴むとメリっと床から引き剥がし。
――――ゴッ!!
とぶん投げてきたっ!!
「ラミア、結界術よっ!!」
『キュイッ!!!!』
瞬時に私の体が青の結界に包まれる。
剛速で迫りくるベッドに私の右ストレートが突き刺さった!!
バキャァァァァァァンッ!!!!
ベッドは一瞬にして粉微塵に吹き飛んだ。
「――――先生っ!??」
私は先生を振り返る。
事態が理解出来なかったからだ。
しかし死ぬ子先生の顔は青ざめて、いつもの飄々とした雰囲気は無くなっていた。
「ウルウガ……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ベヒモス化した真唯さんが吠えた!!
同時に彼女の身体から青の光が弾け飛ぶ!!
それはベヒモス化によって強化された彼女の結界だった。
「――――ぐぅぅぅぅぅぅっ!??」
その物凄い出力に私の結界が耐えかねて吹き飛ばされそうになる。
バチバチバチバチバチッ――――――――ドゴンッ!!!!
ギリギリで相殺したが、衝撃で吹き飛ばされ、壁に背中を叩きつけられた。
「う――――ぐはぁっ!!!!」
メキメキ……と背骨が砕けた音がした。
結界を消された私の防御力はただの人と変わらない。
車にでも撥ねられたような衝撃で意識が遠くなる。
「ラ……ラミア……」
気力を振り絞ってラミアに回復をさせる。
私の身体は真唯さんの回復で、一段回消耗していた。
だから、この回復で私の持ち弾はゼロになる計算だ。
「あんた……大丈夫……?」
先生が私に声を掛けてくる。
見ると先生も私と同じく真唯さんの結界に弾き飛ばされ、ボロボロになって床に転がっていた。
「ぐう……先生……これは?? どうして真唯さんが……?」
「わからない……今は何もわからない…………けど、見えている景色は現実よ」
そして先生は変わり果てた姿になった真唯さんを睨む。
「問題は全て後で考えるわ……今は……」
そこで先生が一旦言葉を切る。
そして逡巡のすえ、声を絞り出した。
「今は――――この標的を処分する事だけを考えなさい」
その目はもう、いつもの先生ではなく監視官のそれに変わっていた。
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