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第140話 謎の襲撃者③
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真唯さんの処置をしてくれている看護師さんに話を訊くと、なんと彼女はJPAS所属の超能力者だった。
それだけじゃない、この診療所のスタッフ全員がそうだと言う。
「森田先生の持つ天眼通は世界でも希少な能力ですからね。彼女を欲しがる組織は国内外問わず星の数ほど存在します。その為、私たちJPASが仕事のお手伝いと護衛を兼ねて組織から派遣されているんです」
この人――――河合さんが言うには実際に真唯さんを狙った誘拐未遂や襲撃事件は過去に何度かあったそうなのだ。
診療所の外観がボロボロだったのはその名残だそうな。
「え……てことはこいつらは真唯さんをさらおうと襲撃してきたってこと?」
「そうですね……どこの組織かはわかりませんが。ちょうど私達の護衛が手薄な時間帯を狙ってくるあたり、かなり用意周到で計画性のある組織の仕業かと……」
厳しい表情でそう言う河合さんに、しかし死ぬ子先生が反論した。
「いや、それはどうかしらね。そんな計算高い連中なら、私やこの宝塚さんがやってくる事くらい調べてあるでしょ。もし、知らなかったとしてもこの場で確認出来たら作戦は中断するはずよ?
言っちゃなんだけど、あなた達JPASの護衛数人よりも、この子の方が何倍も脅威な存在のはずだからね」
と先生は私を指差した。
おっと……どうした、いきなりの高評価にちょっと照れる私。
「それにこいつらは真唯をも狙って発砲してたわ。さらって利用しようという貴重な道具をそう簡単に傷つけようとするかしらね?」
確かに、先生が庇わなかったら真唯さんは傷つくどころか頭を撃ち抜かれて死んでいたかも知れない。
「そ、それはそうですが……ではどうして……?」
河合さんは眉を下げ、困ったように真唯さんを見つめた。
彼女の出血はまだ止まってなく、包帯の赤い染みが大きく広がっている。
「ともかく、宝塚さん。あなたは早く精気を補充して真唯を回復させてあげてちょうだい。最悪の場合は河合さんの精気を借りる事になるかも知れないけどね?」
「は、はい……?」
河合さんはまだ私の能力を詳しくは知らない。
組織からはかなり貴重な超能力治療師《ヒーラー》が現れたと情報を共有しているみたいだが、それ聞かされていないらしい。
なので、襲撃者をミイラに変えたもう一つの能力までは知らないだろう。
「でも、まだ襲撃があるかも知れないから河合さんは戦力として元気でいてもらわないといけないし、真唯の容態も命に関わるほどではないから、あなたは通常通り食事で回復なさいな。あと他のJPASの者も呼んでおいてちょうだい」
「それはさっきの襲撃と同時に私が連絡しておきました。じき集まります」
と、河合さん。
「じゃあ、ついでに警察も呼んでおいて。戦力としてはあまり期待出来ないけど、注目は集められるわ。それだけでもかなり襲撃はし辛くなるはずよ」
テキパキと指示をだす死ぬ子先生。
さすがにこういう時は頼りになる。口調もまともだ。
出来るんなら普段からこのくらいキチンとしてほしい。
などと考えながら、私は自分の携帯を探す。
せっかく用意してもらった朝食がひっくり返ってメチャクチャになっている。
なのでデリバリーでも頼もうと電話を探しているんだが……。
「あ、そういえば真唯さんが持ってたんだっけ?」
彼女が見ていた問題の画像は私のスマホに収められたものだった。
それを思い出し私は彼女の手を確認した。
しかし……――――無い。
きっと襲撃の騒動でどこかに飛ばされたんだろうと部屋を見回すが。
「んんん???」
やはりどこにも見当たらなかった。
「あんた……何してるのよ」
「いや、その……ピザでも頼んで補給しようとスマホを探してるんですけど……」
「……バカね、こんな時間にピザ屋がやっているわけないでしょ?」
「あ……そうか」
「緊急時だからマユっちの冷蔵庫から何か拝借してきなさいな。……独身者でも卵くらいは置いてあるでしょ?」
ううむ……家主にだまって食料を物色するのは気が引けるがしょうがないか。
コンビニに行こうにも、今はまだ下手にこの場を離れるわけにはいかないし。
「――――て、ちょっと待て」
先生が待ったをかけた。
「いまあんた何探してるっていった?」
ギギギ……と油の切れた人形のごとく私を見てくる。
「ん? 私のスマホですけど?」
「…………で、それは見つかったの?」
「いいえ?」
チクタク、チクタク、チクタク、チクタク。
しばし時計の針がリズムを刻む。
「探せ~~~~~~~~~~っっっつつっ!!!!!!!!」
青ざめた顔で先生が叫んだ。
それから小一時間後。
集合した他の看護師さんたちも総出で私のスマホを探したが、どこにも見つからなかった。
「ちょっと待ってよ、あれが無いと画像の解析が出来ないじゃない!!」
「……バックアップは取れていないんでしょうか?」
応援に駆けつけた看護師の一人が先生にそう訊ねるが、
「ただの写真じゃないの、念写した映像よ!! コピーなんか出来やしないわ!!」
そう言って先生は浅い質問をした看護師さんの頭にかじりついた。
気の毒に……八つ当たりされている。
「もしかして……こいつらが取ったんじゃ……?」
私が倒れている襲撃者を指して言うと、
「とっくに調べたわよ、持ってやしなかったし、そんな暇も無かったはずよ!!」
「じゃあ、一体どこに……」
私と先生、河合さん、応援に来てくれた看護師さんの合計七人で探しても見つからない。これはもう完全にここには無いと言うこと。
もちろん電話を掛けてみたが音は聞こえなかった。
私たちが途方に暮れていると、
「少し……能力の匂いがします」
河合さんが鼻をヒクヒクさせてそう呟いた。
それだけじゃない、この診療所のスタッフ全員がそうだと言う。
「森田先生の持つ天眼通は世界でも希少な能力ですからね。彼女を欲しがる組織は国内外問わず星の数ほど存在します。その為、私たちJPASが仕事のお手伝いと護衛を兼ねて組織から派遣されているんです」
この人――――河合さんが言うには実際に真唯さんを狙った誘拐未遂や襲撃事件は過去に何度かあったそうなのだ。
診療所の外観がボロボロだったのはその名残だそうな。
「え……てことはこいつらは真唯さんをさらおうと襲撃してきたってこと?」
「そうですね……どこの組織かはわかりませんが。ちょうど私達の護衛が手薄な時間帯を狙ってくるあたり、かなり用意周到で計画性のある組織の仕業かと……」
厳しい表情でそう言う河合さんに、しかし死ぬ子先生が反論した。
「いや、それはどうかしらね。そんな計算高い連中なら、私やこの宝塚さんがやってくる事くらい調べてあるでしょ。もし、知らなかったとしてもこの場で確認出来たら作戦は中断するはずよ?
言っちゃなんだけど、あなた達JPASの護衛数人よりも、この子の方が何倍も脅威な存在のはずだからね」
と先生は私を指差した。
おっと……どうした、いきなりの高評価にちょっと照れる私。
「それにこいつらは真唯をも狙って発砲してたわ。さらって利用しようという貴重な道具をそう簡単に傷つけようとするかしらね?」
確かに、先生が庇わなかったら真唯さんは傷つくどころか頭を撃ち抜かれて死んでいたかも知れない。
「そ、それはそうですが……ではどうして……?」
河合さんは眉を下げ、困ったように真唯さんを見つめた。
彼女の出血はまだ止まってなく、包帯の赤い染みが大きく広がっている。
「ともかく、宝塚さん。あなたは早く精気を補充して真唯を回復させてあげてちょうだい。最悪の場合は河合さんの精気を借りる事になるかも知れないけどね?」
「は、はい……?」
河合さんはまだ私の能力を詳しくは知らない。
組織からはかなり貴重な超能力治療師《ヒーラー》が現れたと情報を共有しているみたいだが、それ聞かされていないらしい。
なので、襲撃者をミイラに変えたもう一つの能力までは知らないだろう。
「でも、まだ襲撃があるかも知れないから河合さんは戦力として元気でいてもらわないといけないし、真唯の容態も命に関わるほどではないから、あなたは通常通り食事で回復なさいな。あと他のJPASの者も呼んでおいてちょうだい」
「それはさっきの襲撃と同時に私が連絡しておきました。じき集まります」
と、河合さん。
「じゃあ、ついでに警察も呼んでおいて。戦力としてはあまり期待出来ないけど、注目は集められるわ。それだけでもかなり襲撃はし辛くなるはずよ」
テキパキと指示をだす死ぬ子先生。
さすがにこういう時は頼りになる。口調もまともだ。
出来るんなら普段からこのくらいキチンとしてほしい。
などと考えながら、私は自分の携帯を探す。
せっかく用意してもらった朝食がひっくり返ってメチャクチャになっている。
なのでデリバリーでも頼もうと電話を探しているんだが……。
「あ、そういえば真唯さんが持ってたんだっけ?」
彼女が見ていた問題の画像は私のスマホに収められたものだった。
それを思い出し私は彼女の手を確認した。
しかし……――――無い。
きっと襲撃の騒動でどこかに飛ばされたんだろうと部屋を見回すが。
「んんん???」
やはりどこにも見当たらなかった。
「あんた……何してるのよ」
「いや、その……ピザでも頼んで補給しようとスマホを探してるんですけど……」
「……バカね、こんな時間にピザ屋がやっているわけないでしょ?」
「あ……そうか」
「緊急時だからマユっちの冷蔵庫から何か拝借してきなさいな。……独身者でも卵くらいは置いてあるでしょ?」
ううむ……家主にだまって食料を物色するのは気が引けるがしょうがないか。
コンビニに行こうにも、今はまだ下手にこの場を離れるわけにはいかないし。
「――――て、ちょっと待て」
先生が待ったをかけた。
「いまあんた何探してるっていった?」
ギギギ……と油の切れた人形のごとく私を見てくる。
「ん? 私のスマホですけど?」
「…………で、それは見つかったの?」
「いいえ?」
チクタク、チクタク、チクタク、チクタク。
しばし時計の針がリズムを刻む。
「探せ~~~~~~~~~~っっっつつっ!!!!!!!!」
青ざめた顔で先生が叫んだ。
それから小一時間後。
集合した他の看護師さんたちも総出で私のスマホを探したが、どこにも見つからなかった。
「ちょっと待ってよ、あれが無いと画像の解析が出来ないじゃない!!」
「……バックアップは取れていないんでしょうか?」
応援に駆けつけた看護師の一人が先生にそう訊ねるが、
「ただの写真じゃないの、念写した映像よ!! コピーなんか出来やしないわ!!」
そう言って先生は浅い質問をした看護師さんの頭にかじりついた。
気の毒に……八つ当たりされている。
「もしかして……こいつらが取ったんじゃ……?」
私が倒れている襲撃者を指して言うと、
「とっくに調べたわよ、持ってやしなかったし、そんな暇も無かったはずよ!!」
「じゃあ、一体どこに……」
私と先生、河合さん、応援に来てくれた看護師さんの合計七人で探しても見つからない。これはもう完全にここには無いと言うこと。
もちろん電話を掛けてみたが音は聞こえなかった。
私たちが途方に暮れていると、
「少し……能力の匂いがします」
河合さんが鼻をヒクヒクさせてそう呟いた。
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