超能力者の私生活

盛り塩

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第92話 ラミア⑫

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『きゅきゅるぅぅぅぅ!!!!』

 そんな私の懇願もむなしく、蛇は再び階上へと放たれた!!
 ――――ダメ、また被害が大きくなる!!
 
 と――――、
 バババ――――、バチバチバチバチッ!!!!

 激しい反応と青白い光が、階上へと伸びる穴全体に輝き、空気を叩いた!!

 ――――え? なに!??

 散り、階上の人たちに襲いかかろうとしていた光の蛇たちは一斉に掻き消える。
 その青の光は蛇を突き抜け、ラミアに向かい襲いかかってくる!!

『ぎぎぎゅぎゅっ!!!!』

 本能的に危険を察知して即座に結界を生み出すラミア。
 その結界と青の光が衝突する!!

 ――――バババッ!! バリバリバリッ!!!!
 
 激しい火花を散らしてその光は結界によってかき消えてしまうが、 
 その隙き突いて――――どぉぉぉぉぉんっ!!!!
 畳に激しく衝撃が走り、細かい瓦礫が辺りを曇らせた。

 ――――誰か下りてきた!??

 私は思わず片桐さんの顔を思い浮かべて恐怖した。
 しかし――――、

「ほぉぉぉう……魑魅風情が生意気に結界を作り出すとはねぇ……これじゃあ人間の方が立場が無くなるってもんだよ?」

 埃を払いつつ現れたのは、和服の似合う見慣れない老婦人だった。

 ――――えっと、どちらさまでしょう!???

 どこかで見た気がしないでもないが……旅館の人だろうか??? とりあえず片桐さんじゃなかったから良かったが、しかしこれはこれで嫌な予感がする……。

「げぇ……女将……か??」

 瀕死の百恵ちゃんが、老婦人を見上げると呻きを漏らした。

 ……いま……『げぇ』って言ったか??
 彼女に、げぇと言わせるこの人物……どうやら只者ではないことは確定した。

「……ロビーは酷い有様だよ。
 あんたの仕業だね……掃除はキチンとするんだろうね?」

 ゴゴゴゴゴと、有無を言わせぬ眼力で百恵ちゃんを見下ろす老婦人。

「……う……うむ。む……無論」

 女将……? 女将って旅館の?? ってことは私にとっては寮長ってこと?

「あんたも……挨拶もろくに来ないで、随分な暴れっぷりじゃないかい?」

 そしてその矛先は私にも向けられてきた。
 あ、いや……その、色々忙しくて、その挨拶が遅れましてというか、存在を知らなかったと言うか、何も考えてなかったと言うか……!!

 必死に言い訳するが、しかし私の言葉は外に届かない。
 代わりにラミアが威嚇の息を吹く。

『シャーーーーーーーーッ!!!!』

 そして再び髪の毛を蛇に変え、その牙が無数の吸血針となって女将を襲った!!

 ――――シュバババッ!!!!

「ふん、主人も主人なら魑魅も魑魅だねぇ。どれ……ひとつ折檻でもしてやるか」

 ゆらぁ……と、身にオーラを纏わせて凄む女将。
 そしてそのオーラは青い結界へと変わり、

「ぬぅんっ!!!!」

 気合一閃、それが弾けた!!
 ――――バ、バリバリバリッ!!!!

 爆発の如く膨張する結界。
 蛇たちはみなそれに押しつぶされ、一瞬にしてかき消された!!

 ――――これは、さっきと同じ攻撃!??

 この人、結界を武器に戦うのか!??
 結界にそんな使い方あるの!??
 驚き、目を剥いた私だったが結界の壁は蛇をかき消しただけでは止まらない!!

 ――――げ!? やばい、このままじゃ私も餌食に!???

 迫る来る結界の壁に、私は階上の悲鳴の意味を理解した。

『ぎぎゅぎゅーーーーっ!!!!』

 ラミアもまた同じように結界を生み出し、抵抗しようとする!!
 だが――――、

「ふん。今度はちと強めにしたからねぇ、受け止めきれるかい?」

 不敵に笑う女将。

 ガキィィィィンッ!!!!
 と、結界と結界がぶつかり合うっ!!

 女将の後ろで攻撃にさらされた百恵ちゃんの断末魔が聞こえるが、今はかまっていられない!!

 ラミアの結界は一瞬の抵抗に成功するが、
 ――――バキィィィンッ!!!!

 それもほんとに一瞬だけ。
 呆気なく粉砕されてしまう!!

『ぎゅるぅっ!!??』

 そして女将の結界は、その勢いを殺すことなく私とラミアに襲いかかってきた!!

『ぎゅきゅるるるるるるるるっぅっつっ!???』
 ――――んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっつっ!!!!

 説明会の時や、死ぬ子先生のそれとは桁が違う衝撃に、私たちは体をエビ反らせて悲鳴を上げた。

 痛いなんてもんじゃないっ!! 

 四肢を吹き飛ばされた百恵ちゃんの攻撃も、もちろん痛かったが、これはその更に上を行く。身体ではなく、まるで魂にナイフを突き立てられたような苦しみ!!
 自分の存在そのものが吹き飛ばされるかの恐怖に、私は気が遠くなり、ラミアもその姿を壊れた液晶モニターのように瞬かせた。

「……おや? この一撃でも消えないとはねぇ……なかなか強情な魑魅じゃないか?」

 言うと女将は、とんっ、と間を詰めて、

 ドンッ!!!!

 と私の胸に掌底を当ててきた。
 その掌に青い結界の破片を含ませながら!!

『ぎゅふっ!!??』

 さらなる結界の追撃にラミアは、さらにその姿をブレさせる!!

「痛いかい? 痛いだろうねぇ?? 結界って言うのはね、人間にもそれなりに効くが、本来は対能力用の防御壁だ、その力の源である魑魅にとってこれは痛恨の一撃に匹敵するだろうよ?」

 そしてもう一撃、さらにもう一撃とラミアに結界を撃ち込む女将!!

『ぎゅふっ!! ぎゃふっ!!??』

 ラミアはその一撃一撃を苦しそうに受け止め、その度に姿が欠けて飛び、身体の瞬きも激しくなってくる。

 ――――まるで、存在が消えてしまうかのように。

「……ぐ……だめ……だ、ヒロイン……女将から…逃げろ……。……ファントムラミアを……消されてしまう……ぞ」

 結界の壁に打ちのめされて瀕死の百恵ちゃん。
 息も絶え絶えに、それでもそう忠告をくれた。

 ラミアが…………消される!?

 私はその言葉に、強い恐怖と、真逆の安堵を、同時に感じた。
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