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第39話 害虫駆除⑦
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「はぁはぁはぁ……くそっ!! どいつもこいつも役に立たねぇっ!!
俺を助けろよっ!! ぶち殺すぞ、勝手な連中がっ!!!!」
ガタガタと震えながら望月は階下へ向かう。
乗り込むときにサイレンの音が聞こえた。
「へっへへ……親父め……やっと来たかっ!! よしよし、これで俺は助かった。
……あの化け物許さねぇ。
絶対に親父の部下どもけしかけて殺してやるからなっ!!」
到着のベルが鳴り、扉が開く。
転がり出るようにエレベータを出て外に向かう。
もう一つのエレベーターが下に向かってきているのがランプで確認できた。
たぶんあの化け物女だ。
だがもう遅い。サイレンはもう近くまでやって来ている。
俺を襲うのはもう不可能だ。
「ふひゃひゃひゃひゃ、残念でした~~~~っ!!」
逃げ切れたと確信したら強気になり、勝ち誇った笑いを上げて外に飛び出す。
同時にパトカーが二台滑り込んでくる。
ギャギャギャッキッ!!
ガチャッガチャチャッ。
けたたましい音とともに中から数人の警官と、一人、あきらかに貫禄の違う男が降りてくる。
望月平次、県警の本部長を務める警視長で、望月武の父親である。
「――――パ、パパっ!!」
「武っ!! 無事だったか!?」
もつれる足で父親に駆け寄り、警官たちはそれを保護するように取り巻く。
「どうした一体何があった!? ――お前、その怪我は!??」
顔を切られた傷は浅かったが、血は派手に流れている。一見すれば大怪我に見えるかも知れない。
「突然、部屋に銃を持った女二人組が乱入してきて友達を撃ったんだ!!」
「撃っただと!? お前……撃たれたのか!??」
「僕は平気さ、でも他のみんなは全員撃たれた……」
「なんて事だ……しかしお前が無事なら幸いだ。
おい、お前!! 救急車はまだかっ!??」
傷ついた息子を心配し、部下の一人に怒鳴りつける。
「は!! 連絡は済んでおりますが近郊で事故と事件が相次いでおり、こちらへはもう少し時間が掛かるかと」
「馬鹿が、一般人の搬送など後回しにしろっ!! いいから一番近くの車両をこっちに回せと伝えろ!! ワシの名前を使えっ!! そんなこともわからんかっ!??」
「も、申し訳ありません、す、すぐに伝えますっ!!」
角材でも刺さったかのように背筋を伸ばし最敬礼する中堅警官。
慌てて無線を手に取り何かを喚いている。
「大丈夫か武? もうすぐ病院に連れて行くからなっ!!」
「うん、でもっ!! それよりアイツが追いかけてくる。気を付けてパパっ!!」
「アイツ? アイツとは誰だ!??」
「女の片割れだよ!! 撃っても殴っても効かなくって僕を殺そうとしてくるんだっ!! 矢島も妙な殺され方をした!! わけがわからないんだ!!」
撃っても殴っても効果が無い相手??
そんなホラー映画のような化け物いるわけがない。
可哀想に、襲われた恐怖に混乱してしまっているのだろう。
だが、襲撃者がじきここへやってくるのは本当だろう。
「お前ら、犯人が出てくるのに備えて構えてろ!! 抵抗するなら発砲も許可する。ただし殺すなっ!!」
『はっ!!』
取り巻いていた警官六人が全員銃を構え、マンションの入口を見据えた。
そこへ――――、
パッパーーッ!! パパパパーーーーゥ!!!!
と、安っぽいクラクションを鳴らして一台の古い車が走ってきた。
「な……なんだ!?」
ギィィィッ!! ――――ガチャ。
そして警官達とマンションの間に割り込むと停車しドアが開く。
――――1966年製、パブリカ・デラックス。
その車に望月警視長は見覚えがあった。
あれは……まさか、学術政策局の……。
中から一人の渋めな中年と、美女が降りてくる。
中年の方は黒いトレンチコートに白いリボンのシルクハットという、やや時代がかった出で立ちだが、その顔に見覚えがあった。
間違いない……。学術政策局・研究開発戦略特別課の大西 健吾だ。
――――日本神術協会、通称JPA。
そこの幹部であるこの男が一体ここへ何の用で来たというのだ!?
望月警視長は嫌な汗を額に滲ませた。
一応、国家機関の一つであるから公にはされているものの、その存在と特に実態に関しては政府レベルで秘匿曲筆され、黙認されている組織。
政治家や官僚達でもごく一部の者しか本当の正体を知らされていないという。
望月警視長はかろうじてその一部に入っていた。
とはいえ本当にかろうじてで、連中が起こした騒ぎや破壊工作を隠匿するのに利用されている程度の知識ではあるが。
少なくとも、目の前に立つ男――大西健吾は階級はともかく実権では自分の遥か上にいる存在だと理解している。
そんな男が、なぜ今、目の前に現れた!??
まさか……今回の事件に関係しているのか???
息子が……まさか、連中となにか問題でも起こしたというのか!???
だとしたらマズい。非常にマズい。
JPAの連中と事を構えるくらいなら中国系マフィア、いや、自衛隊と喧嘩をするほうがまだマシかもしれないと言われている。
ダラダラと流れ出る汗を拭う余裕すらなく、固まる望月警視長。
すると大西がおどけた仕草で陽気に話しかけてきた。
「やあ、どうも。今夜は月が綺麗ですな。
こんな夜に騒がしく登場してしまって申し訳ない」
軽くハットを持ち上げ、そして葉巻に火を点け気だるそうに首を掻いた。
俺を助けろよっ!! ぶち殺すぞ、勝手な連中がっ!!!!」
ガタガタと震えながら望月は階下へ向かう。
乗り込むときにサイレンの音が聞こえた。
「へっへへ……親父め……やっと来たかっ!! よしよし、これで俺は助かった。
……あの化け物許さねぇ。
絶対に親父の部下どもけしかけて殺してやるからなっ!!」
到着のベルが鳴り、扉が開く。
転がり出るようにエレベータを出て外に向かう。
もう一つのエレベーターが下に向かってきているのがランプで確認できた。
たぶんあの化け物女だ。
だがもう遅い。サイレンはもう近くまでやって来ている。
俺を襲うのはもう不可能だ。
「ふひゃひゃひゃひゃ、残念でした~~~~っ!!」
逃げ切れたと確信したら強気になり、勝ち誇った笑いを上げて外に飛び出す。
同時にパトカーが二台滑り込んでくる。
ギャギャギャッキッ!!
ガチャッガチャチャッ。
けたたましい音とともに中から数人の警官と、一人、あきらかに貫禄の違う男が降りてくる。
望月平次、県警の本部長を務める警視長で、望月武の父親である。
「――――パ、パパっ!!」
「武っ!! 無事だったか!?」
もつれる足で父親に駆け寄り、警官たちはそれを保護するように取り巻く。
「どうした一体何があった!? ――お前、その怪我は!??」
顔を切られた傷は浅かったが、血は派手に流れている。一見すれば大怪我に見えるかも知れない。
「突然、部屋に銃を持った女二人組が乱入してきて友達を撃ったんだ!!」
「撃っただと!? お前……撃たれたのか!??」
「僕は平気さ、でも他のみんなは全員撃たれた……」
「なんて事だ……しかしお前が無事なら幸いだ。
おい、お前!! 救急車はまだかっ!??」
傷ついた息子を心配し、部下の一人に怒鳴りつける。
「は!! 連絡は済んでおりますが近郊で事故と事件が相次いでおり、こちらへはもう少し時間が掛かるかと」
「馬鹿が、一般人の搬送など後回しにしろっ!! いいから一番近くの車両をこっちに回せと伝えろ!! ワシの名前を使えっ!! そんなこともわからんかっ!??」
「も、申し訳ありません、す、すぐに伝えますっ!!」
角材でも刺さったかのように背筋を伸ばし最敬礼する中堅警官。
慌てて無線を手に取り何かを喚いている。
「大丈夫か武? もうすぐ病院に連れて行くからなっ!!」
「うん、でもっ!! それよりアイツが追いかけてくる。気を付けてパパっ!!」
「アイツ? アイツとは誰だ!??」
「女の片割れだよ!! 撃っても殴っても効かなくって僕を殺そうとしてくるんだっ!! 矢島も妙な殺され方をした!! わけがわからないんだ!!」
撃っても殴っても効果が無い相手??
そんなホラー映画のような化け物いるわけがない。
可哀想に、襲われた恐怖に混乱してしまっているのだろう。
だが、襲撃者がじきここへやってくるのは本当だろう。
「お前ら、犯人が出てくるのに備えて構えてろ!! 抵抗するなら発砲も許可する。ただし殺すなっ!!」
『はっ!!』
取り巻いていた警官六人が全員銃を構え、マンションの入口を見据えた。
そこへ――――、
パッパーーッ!! パパパパーーーーゥ!!!!
と、安っぽいクラクションを鳴らして一台の古い車が走ってきた。
「な……なんだ!?」
ギィィィッ!! ――――ガチャ。
そして警官達とマンションの間に割り込むと停車しドアが開く。
――――1966年製、パブリカ・デラックス。
その車に望月警視長は見覚えがあった。
あれは……まさか、学術政策局の……。
中から一人の渋めな中年と、美女が降りてくる。
中年の方は黒いトレンチコートに白いリボンのシルクハットという、やや時代がかった出で立ちだが、その顔に見覚えがあった。
間違いない……。学術政策局・研究開発戦略特別課の大西 健吾だ。
――――日本神術協会、通称JPA。
そこの幹部であるこの男が一体ここへ何の用で来たというのだ!?
望月警視長は嫌な汗を額に滲ませた。
一応、国家機関の一つであるから公にはされているものの、その存在と特に実態に関しては政府レベルで秘匿曲筆され、黙認されている組織。
政治家や官僚達でもごく一部の者しか本当の正体を知らされていないという。
望月警視長はかろうじてその一部に入っていた。
とはいえ本当にかろうじてで、連中が起こした騒ぎや破壊工作を隠匿するのに利用されている程度の知識ではあるが。
少なくとも、目の前に立つ男――大西健吾は階級はともかく実権では自分の遥か上にいる存在だと理解している。
そんな男が、なぜ今、目の前に現れた!??
まさか……今回の事件に関係しているのか???
息子が……まさか、連中となにか問題でも起こしたというのか!???
だとしたらマズい。非常にマズい。
JPAの連中と事を構えるくらいなら中国系マフィア、いや、自衛隊と喧嘩をするほうがまだマシかもしれないと言われている。
ダラダラと流れ出る汗を拭う余裕すらなく、固まる望月警視長。
すると大西がおどけた仕草で陽気に話しかけてきた。
「やあ、どうも。今夜は月が綺麗ですな。
こんな夜に騒がしく登場してしまって申し訳ない」
軽くハットを持ち上げ、そして葉巻に火を点け気だるそうに首を掻いた。
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