5 / 241
第5話 入学説明会のご案内
しおりを挟む
「んああ~~~~うまいっ!!」
すっかり料理に没頭してしまった私が遅い夕飯を口にしたのは、もう夜も九時を回った頃だった。
作ったメニューは豚丼の具、生姜焼き、豚バラ味噌大根、回鍋肉、豚とナスの胡麻味噌炒め、そして豚汁。
今はさっそく豚汁をいただいている。
ちなみにおかずは他にお新香だけ。もうこれで十分。
豚汁は汁物でありながら同時にメインでもある。
これ以上、他になにか加えたらむしろ失礼というものだ。
ずずず……と汁を一口。そして飯を三口。
豚肉を一口。そして飯をまた三口。
箸休めにゴボウと人参、油揚げなどに寄り道し、そしてまた汁に戻る。
これを永遠に繰り返せと言われたら、私は余裕で合点承知の助と答えるだろう。
それほどまでに白飯と豚汁の相性は無敵なのだ。
そうして三杯目の丼ぶりご飯を平らげた頃、ようやく私のお腹も膨れてきた。
あと一杯で終わりにしようかしらん、と四杯目をよそいに向かったところで、届いていた封筒のことを思い出す。
「ああ、そういえば何か届いていたよね?」
丼ぶりご飯を抱えながら床に放り投げられていた封筒を拾い上げる。
その封筒には私の宛名と住所、そして『親展』『重要書類在中』とのスタンプも押してあった。
裏の差出人には文部科学省、科学技術・学術政策局、研究開発戦略特別課と書かれていた。
「はて……??」
まったく見に覚えのない相手に私は困惑する。
文部科学省なんたらかんたらと言われてもな……。
自慢じゃないが、こちとらもうそんなお勉強的なお役所なんぞには1ミリも接点なんかありゃしないですけど?
しかも重要書類とか……相手間違ってませんか?
しかし書いてあるのは間違いなく私の名前と住所である。
名前の優の文字の最後らへんがプルプル震えてるのは見なかったことにしておいてやろう。
封筒の重みはほとんどない。振っても音さえしない。
わけがわからないが、とりあえず開いてみなければ始まらないだろう。
ビリビリと封筒の端を切り、中身を確認する。
中に入っていたのは紙切れ一枚だけだった。
「……なになに?」
私は豚汁の残りをすすりながら、それに書いてある文に目を通す。
ESP・PK取り扱い特別訓練学校入学説明会のご案内
拝啓、時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
この度、厳正なる鑑定の結果、あなた様がPK能力者と認定された事をここにご報告致します。
つきましては特別訓練学校入学説明会を下記の予定にて実地致しますのでご案内いたします。
日時 10月11日 午前10:00~
場所 東京都新宿区高田馬場1丁目 AKビル4F 森川貸会議室高田馬場
持ち物 筆記用具、身分証明書、印鑑(拇印でも可)
※ 食事につきましてはご用意させて頂きますのでお持ち頂く必要は御座いません。
尚、参加していただいた方には日当として三万円を支給させて頂きます。
ご参加の可否につきましては、お手数ですが
10月10日 13:00までにご連絡下さい。
※ 基本的に絶対参加とさせて頂いております。
ご理解のほどお願い申し上げます。
文部科学省
科学技術・学術政策局
研究開発戦略特別課
課長 大西 健吾
「わかるか~~~~~~い!!」
私は紙を放り投げた。
なんじゃいこれは??
ESP・PK取り扱い特別訓練学校??
入学説明会??
なにこれ、新たな職業訓練学校の一種か?
いや、私、ハローワークでそんな登録した覚えないけど??
やっぱり何か間違ってるなこれ。
そもそもPK能力者ってなんですか?
サッカーのゴールキーパーでもやれってか?
そりゃ意外と得意だよわたしゃ、ゴールキーパー。
なんせ中学のサッカーの授業では走りたくないもんで、ずっとキーパーやってたらいつの間にか『ゴールネットの大女優』の異名を欲しいままにしていたわ。
でも、だからといって訓練所に招待されるほどの実績は無かったはずだけど?
それとも密かに来ていたスカウトにでも見られたのかしら?
あの私の華麗な体捌きを。
体捌きと言っても大したことじゃないけども。
ただ、ゴール前にやってきた、かつて私をいじめてた女にプレーに見せかけてラリアットや真空飛び膝蹴りを食らわせてたたけだもの。
まぁおかげでみんな怖がって私の守るゴールには近寄らなくなっていたけどもね。
「でも、そんな事でスカウトされてもねぇ……」
私はご飯を頬張りながら再び案内を読む。
「ぶっ!!」
米粒が彼方に飛んでいった。
「何これ!?
参加の可否については10日の13:00までって……もう過ぎてるじゃん!!」
今は10日の21:20分である。
「しかも、説明会は明日で基本的に絶対参加って……ずいぶん勝手な……。
連絡先も書いてないし、最初っから断らせる気無しじゃ…………んんんんんんん??????」
私は非常に気になる、ある一行に目が釘付けになった。
『尚、参加していただいた方には日当として三万円を支給させて頂きます』
ま・じ・か・!?
え? なに? これ、参加すればお金がもらえるの?
しかも三万円?
そんでもって食事付き?
わたしゃ同じだけのお金を稼ぐのに飯代自腹で四日かかってますがな。
「ちょいちょいちょいちょい……これはちょっと、どうだろう……」
私は悩んだ。
だってこんなもの、胡散臭い以外の何物でもない。
ほぼ確実に詐欺だ。
最近、役所を名乗る詐欺も多いと聞く。
しかし……三万円。
ダメだとわかっていても惹かれる額である。
絶対釣りだ。
お金で釣って誘っておいて、その場でなんか怪しげな商売とか宗教とか押し付けるつもりだ。
わかっている。
わかっているんだけども、んんんんんんんん………。
翌日。
私は指定されたビルの前に立っていた。
すっかり料理に没頭してしまった私が遅い夕飯を口にしたのは、もう夜も九時を回った頃だった。
作ったメニューは豚丼の具、生姜焼き、豚バラ味噌大根、回鍋肉、豚とナスの胡麻味噌炒め、そして豚汁。
今はさっそく豚汁をいただいている。
ちなみにおかずは他にお新香だけ。もうこれで十分。
豚汁は汁物でありながら同時にメインでもある。
これ以上、他になにか加えたらむしろ失礼というものだ。
ずずず……と汁を一口。そして飯を三口。
豚肉を一口。そして飯をまた三口。
箸休めにゴボウと人参、油揚げなどに寄り道し、そしてまた汁に戻る。
これを永遠に繰り返せと言われたら、私は余裕で合点承知の助と答えるだろう。
それほどまでに白飯と豚汁の相性は無敵なのだ。
そうして三杯目の丼ぶりご飯を平らげた頃、ようやく私のお腹も膨れてきた。
あと一杯で終わりにしようかしらん、と四杯目をよそいに向かったところで、届いていた封筒のことを思い出す。
「ああ、そういえば何か届いていたよね?」
丼ぶりご飯を抱えながら床に放り投げられていた封筒を拾い上げる。
その封筒には私の宛名と住所、そして『親展』『重要書類在中』とのスタンプも押してあった。
裏の差出人には文部科学省、科学技術・学術政策局、研究開発戦略特別課と書かれていた。
「はて……??」
まったく見に覚えのない相手に私は困惑する。
文部科学省なんたらかんたらと言われてもな……。
自慢じゃないが、こちとらもうそんなお勉強的なお役所なんぞには1ミリも接点なんかありゃしないですけど?
しかも重要書類とか……相手間違ってませんか?
しかし書いてあるのは間違いなく私の名前と住所である。
名前の優の文字の最後らへんがプルプル震えてるのは見なかったことにしておいてやろう。
封筒の重みはほとんどない。振っても音さえしない。
わけがわからないが、とりあえず開いてみなければ始まらないだろう。
ビリビリと封筒の端を切り、中身を確認する。
中に入っていたのは紙切れ一枚だけだった。
「……なになに?」
私は豚汁の残りをすすりながら、それに書いてある文に目を通す。
ESP・PK取り扱い特別訓練学校入学説明会のご案内
拝啓、時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
この度、厳正なる鑑定の結果、あなた様がPK能力者と認定された事をここにご報告致します。
つきましては特別訓練学校入学説明会を下記の予定にて実地致しますのでご案内いたします。
日時 10月11日 午前10:00~
場所 東京都新宿区高田馬場1丁目 AKビル4F 森川貸会議室高田馬場
持ち物 筆記用具、身分証明書、印鑑(拇印でも可)
※ 食事につきましてはご用意させて頂きますのでお持ち頂く必要は御座いません。
尚、参加していただいた方には日当として三万円を支給させて頂きます。
ご参加の可否につきましては、お手数ですが
10月10日 13:00までにご連絡下さい。
※ 基本的に絶対参加とさせて頂いております。
ご理解のほどお願い申し上げます。
文部科学省
科学技術・学術政策局
研究開発戦略特別課
課長 大西 健吾
「わかるか~~~~~~い!!」
私は紙を放り投げた。
なんじゃいこれは??
ESP・PK取り扱い特別訓練学校??
入学説明会??
なにこれ、新たな職業訓練学校の一種か?
いや、私、ハローワークでそんな登録した覚えないけど??
やっぱり何か間違ってるなこれ。
そもそもPK能力者ってなんですか?
サッカーのゴールキーパーでもやれってか?
そりゃ意外と得意だよわたしゃ、ゴールキーパー。
なんせ中学のサッカーの授業では走りたくないもんで、ずっとキーパーやってたらいつの間にか『ゴールネットの大女優』の異名を欲しいままにしていたわ。
でも、だからといって訓練所に招待されるほどの実績は無かったはずだけど?
それとも密かに来ていたスカウトにでも見られたのかしら?
あの私の華麗な体捌きを。
体捌きと言っても大したことじゃないけども。
ただ、ゴール前にやってきた、かつて私をいじめてた女にプレーに見せかけてラリアットや真空飛び膝蹴りを食らわせてたたけだもの。
まぁおかげでみんな怖がって私の守るゴールには近寄らなくなっていたけどもね。
「でも、そんな事でスカウトされてもねぇ……」
私はご飯を頬張りながら再び案内を読む。
「ぶっ!!」
米粒が彼方に飛んでいった。
「何これ!?
参加の可否については10日の13:00までって……もう過ぎてるじゃん!!」
今は10日の21:20分である。
「しかも、説明会は明日で基本的に絶対参加って……ずいぶん勝手な……。
連絡先も書いてないし、最初っから断らせる気無しじゃ…………んんんんんんん??????」
私は非常に気になる、ある一行に目が釘付けになった。
『尚、参加していただいた方には日当として三万円を支給させて頂きます』
ま・じ・か・!?
え? なに? これ、参加すればお金がもらえるの?
しかも三万円?
そんでもって食事付き?
わたしゃ同じだけのお金を稼ぐのに飯代自腹で四日かかってますがな。
「ちょいちょいちょいちょい……これはちょっと、どうだろう……」
私は悩んだ。
だってこんなもの、胡散臭い以外の何物でもない。
ほぼ確実に詐欺だ。
最近、役所を名乗る詐欺も多いと聞く。
しかし……三万円。
ダメだとわかっていても惹かれる額である。
絶対釣りだ。
お金で釣って誘っておいて、その場でなんか怪しげな商売とか宗教とか押し付けるつもりだ。
わかっている。
わかっているんだけども、んんんんんんんん………。
翌日。
私は指定されたビルの前に立っていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
第二王女は死に戻る
さくたろう
恋愛
死を繰り返す死に戻り王女はループの中で謎を解く!
「ヴィクトリカ、お前とヒースの婚約は解消された。今日の花婿は、このレイブンだ」
王女ヴィクトリカは、結婚式の当日、冷酷な兄からそう告げられる。
元の婚約者は妹と結婚し、同時に国で一番評判の悪い魔法使いレイズナー・レイブンとの結婚を命じらてしまった。だがヴィクトリカに驚きはなかった。なぜなら告げられるのは二回目だったからだ。
初めて告げられた時、逃げ出したヴィクトリカは広場で謎の爆発に巻き込まれ、そのまま死んでしまったのだ。目覚めると、再び結婚を命じられる場面に戻っていた。何度も逃げ、何度も死に、何度も戻る。
死のループに嫌気が差したヴィクトリカだが、一つだけ試していないこと、レイズナーとの結婚をすると死なずに生き残った。
かくして否応なく結婚生活が始まったのだが――。
初めは警戒心を抱くが、ヴィクトリカも彼の不器用な愛を受け入れ始め、共に何度も巻き戻る時の謎を解くことにした。時を繰り返しながら、徐々に真相が明らかになっていく!
突然の結婚を、本物の結婚にする物語。
※約10万字のお話です
※話数はヴィクトリカが時を戻る度にリセットされます。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
学生のうちは自由恋愛を楽しもうと彼は言った
mios
恋愛
学園を卒業したらすぐに、私は婚約者と結婚することになる。
学生の間にすることはたくさんありますのに、あろうことか、自由恋愛を楽しみたい?
良いですわ。学生のうち、と仰らなくても、今後ずっと自由にして下さって良いのですわよ。
9話で完結
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
観月異能奇譚
千歳叶
キャラ文芸
「君に頼みたいことがある」
突然記憶を失った「わたし」は救護者の兄妹に協力を要請される。その内容とは――彼らの目となり耳となって様々な情報を得ること。
「協力してくれるなら身の安全を確保しよう。さぁ、君はどうしたい?」
他に拠り所のない「わたし」は「音島律月」として〈九十九月〉に所属することを決意する。
「ようこそ〈九十九月〉へ、音島律月さん。ここはこの国における異能者の最終防衛線だ」
内部政治、異能排斥論、武装組織からの宣戦布告。内外に無数の爆弾を抱えた〈異能者の最終防衛線〉にて、律月は多くの人々と出会い、交流を深めていく。
奇譚の果てに、律月は何を失い何を得るのか。
――――――――
毎週月曜日更新。
※レイティングを設定する(R15相当)ほどではありませんが、人によっては残酷と感じられるシーン・戦闘シーンがあります。ご了承ください。
※カクヨムにも同じ内容を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる