12 / 32
第二章: リヴァイアサン
第十二話: 客が来た
しおりを挟むタマキは会社員だ。
朝、名残惜しそうに家を出る。
会社はセイヤクカイシャとか言っていた。そこのジムらしい。
「ごめんね、お仕事行ってくるね。いい子でいるのよ?台風来てるから早く帰ってくるね。」
「なー(おぅ任せとけ。そんなもんへっちゃらだぜ!)」
「あーん、怖いよね?ごめんねごめんね!!」
環は仔猫をぎゅーっと抱きしめる。
もふもふ毛皮に頬擦りすれば顔が毛皮に埋まりほうと環はうっとり息をついた。
仔猫はジタバタもがく。
なぜだ?!平気だと言ってるのに!なぜ念話が通じない?!
タマキよ、今生の別れではないんでこれはいらない。魔力はもうよい!もうよいと!ぐぇぇ!!
ふぅ、やっとタマキはシゴトに行ったな。
シゴトとは人間は大変だな。オレが養ってやれればいいが猫の身では限界がある。
もう少しオレの能力が開花するまで待つしかないのだ。許せタマキよ。
そう!これは仕方なく時を待っているのだ!
そうして仔猫は窓際の日向で腹を出してごろごろしていた。
タマキがいない間は胃を休めなくてはならん!これは決して惰眠ではない!
そうして仔猫はふごーっと昼寝をしていた。
すると次第に外の雲行きが怪しくなる。空を分厚い雨雲が覆い出す。ポツリポツリと雨が降り出した。風も強くなり窓を叩く雨風が強くなる。ついでに遠くに雷の音までする。
何やら馴染みのある気配がした。うにゃ?と目を覚ませば、窓の外に懐かしい姿があった。
『よお兄弟!久しいな!』
そこには空を飛ぶ蛇の姿があった。東洋の竜の姿に似ている。よくある蛇の大きさだ。
実際は旧約聖書で史上最強と謳われている不死身の怪物。
名をリヴァイアサン。
まあそうは言っても陸最強のオレもいるから海での最強となるんだがな。
そういうわけで最強のオレから見ればただのニョロ蛇だ。
『ベヒーモスよ。お前何をしている。』
ニョロ蛇は冷めた声を出す。正確には念話だが。
『うん?昼寝だが?惰眠ではないぞ、決して。』
これには海よりも深い訳が‥‥と語ろうとしたところで、リヴァイアサンの喝が入った。
『お前がいなくなって初めて気配がすると思って来てみれば。何と嘆かわしい!陸最強と謳われたベヒーモスが封じられ、このような仔猫の姿で人間に飼われているなどと。誇りあるお前はどこに行ってしまったのだ?!』
ちょうどピカッと雷もなって迫力満点だ。
ん?なんか機嫌が悪そうだな。
『ああそうか。お前腹が減ってるな?』
『は、腹など減っておらん!』
『ちょうど良い。今の主が過剰で吐き気を催してたところだ。お前も一緒に‥‥』
『はん!この私が人間如きと契約するとでも思うてか?!』
ニョロ蛇がふん!と顔を背ける。
しかもお前そんなにぶくぶくと太りやがって!と嫌味を言われた。仔猫ははぁと嘆息した。
こういえばこいつは面倒臭いヤツだった。異常にプライドが高い。人間と契約もしない。だから魔力不足でいつも腹ヘリだ。
それでいてあれはどいつと契約しただのぐちぐちいうもんだから嫉妬深いと思われている。
ちょっとばかし暴れん坊で喧嘩っ早いだけで、こうしてオレを心配してわざわざ駆けつけるいいヤツなんだがなぁ。
仔猫は前足で頭を掻いた、つもりだったが顔を洗っているようにしか見えない。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる