君の名はベヒーモス

ユリーカ

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第二章: リヴァイアサン

第十二話: 客が来た

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 タマキは会社員だ。

 朝、名残惜しそうに家を出る。
 会社はセイヤクカイシャとか言っていた。そこのジムらしい。

「ごめんね、お仕事行ってくるね。いい子でいるのよ?台風来てるから早く帰ってくるね。」
「なー(おぅ任せとけ。そんなもんへっちゃらだぜ!)」
「あーん、怖いよね?ごめんねごめんね!!」

 環は仔猫をぎゅーっと抱きしめる。
 もふもふ毛皮に頬擦りすれば顔が毛皮に埋まりほうと環はうっとり息をついた。

 仔猫はジタバタもがく。

 なぜだ?!平気だと言ってるのに!なぜ念話が通じない?!
 タマキよ、今生の別れではないんでこれはいらない。魔力はもうよい!もうよいと!ぐぇぇ!!


 ふぅ、やっとタマキはシゴトに行ったな。

 シゴトとは人間は大変だな。オレが養ってやれればいいが猫の身では限界がある。
 もう少しオレの能力が開花するまで待つしかないのだ。許せタマキよ。

 そう!これは仕方なく時を待っているのだ!
 そうして仔猫は窓際の日向で腹を出してごろごろしていた。

 タマキがいない間は胃を休めなくてはならん!これは決して惰眠ではない!
 そうして仔猫はふごーっと昼寝をしていた。


 すると次第に外の雲行きが怪しくなる。空を分厚い雨雲が覆い出す。ポツリポツリと雨が降り出した。風も強くなり窓を叩く雨風が強くなる。ついでに遠くに雷の音までする。

 何やら馴染みのある気配がした。うにゃ?と目を覚ませば、窓の外に懐かしい姿があった。

『よお兄弟!久しいな!』

 そこには空を飛ぶ蛇の姿があった。東洋の竜の姿に似ている。よくある蛇の大きさだ。
 実際は旧約聖書で史上最強と謳われている不死身の怪物。

 名をリヴァイアサン。

 まあそうは言っても陸最強のオレもいるから海での最強となるんだがな。
 そういうわけで最強のオレから見ればただのニョロ蛇だ。


『ベヒーモスよ。お前何をしている。』

 ニョロ蛇は冷めた声を出す。正確には念話だが。

『うん?昼寝だが?惰眠ではないぞ、決して。』

 これには海よりも深い訳が‥‥と語ろうとしたところで、リヴァイアサンの喝が入った。

『お前がいなくなって初めて気配がすると思って来てみれば。何と嘆かわしい!陸最強と謳われたベヒーモスが封じられ、このような仔猫の姿で人間に飼われているなどと。誇りあるお前はどこに行ってしまったのだ?!』

 ちょうどピカッと雷もなって迫力満点だ。
 ん?なんか機嫌が悪そうだな。

『ああそうか。お前腹が減ってるな?』
『は、腹など減っておらん!』
『ちょうど良い。今の主が過剰で吐き気を催してたところだ。お前も一緒に‥‥』
『はん!この私が人間如きと契約するとでも思うてか?!』

 ニョロ蛇がふん!と顔を背ける。
 しかもお前そんなにぶくぶくと太りやがって!と嫌味を言われた。仔猫ははぁと嘆息した。

 こういえばこいつは面倒臭いヤツだった。異常にプライドが高い。人間と契約もしない。だから魔力不足でいつも腹ヘリだ。
 それでいてあれはどいつと契約しただのぐちぐちいうもんだから嫉妬深いと思われている。

 ちょっとばかし暴れん坊で喧嘩っ早いだけで、こうしてオレを心配してわざわざ駆けつけるいいヤツなんだがなぁ。

 仔猫は前足で頭を掻いた、つもりだったが顔を洗っているようにしか見えない。





 





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